ニエルブ・ストマック

登録日:2025/07/15 Tue 08:28:20
更新日:2025/08/24 Sun 10:41:01
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企むだなんて嫌だな。僕は面白い実験をしたいだけ。
改造したバイト君達の性能を試すのに赤ガヴ達は丁度いいのさ。

ニエルブ・ストマックとは特撮テレビドラマ『仮面ライダーガヴ』の登場人物である。


【データ】

身長:207.0cm
体重:80.8kg
特色/力:毒/弓
演:滝澤諒
スーツアクター(怪人態):中田裕士
キャラクターソング:「The Formula」

【概要】

本作の異種族であるグラニュートで、ストマック家の次男。
デンテ・ストマックの研究を引き継いだ技術者で、ストマック社においては技術開発を担当している。
バイトのグラニュート達が人間に擬態できるよう生体改造を施したのもニエルブの仕業である。
人間態は、丸眼鏡をかけた茶髪の青年。オーディオコメンタリーによると、眼鏡は伊達。
本来の姿では全身が蛇のような鱗で覆われており、さらに首回りや肩などに牙状の追加武装をチューブで接続するなど自分自身の肉体まで改造している。

【人物像】

一人称は「僕」
職務より知的好奇心を優先するマッドサイエンティスト気質。普段は軽く飄々とした口調で話すが、常に浮かべた不敵な笑みの裏には悪意が見え隠れする。
模範にならなくてはいけないだろう創業者一族でありながら、機密エリアで怪人態になることを始め違反行為を繰り返すといった素行不良が目立ち、またショウマの生存を知っても見逃しつつ密かに配下のエージェントを動かすなどして独自に暗躍してもおり、その本心や考えを推し量ることは難しい。
一方、血の気自体は薄いため、シータ達からはランゴグロッタと比べれば話しやすい相手と思われている模様。

しかし、血の気は薄い代わりに兄妹の中でも特に肉親の情という感情が薄い節があり、シータがガヴに倒された際はその場に居合わせたにも(かかわ)らず援護どころかガヴの戦闘記録を優先し、死亡報告の際にもランゴやグロッタ以上に感情が揺れ動いた様子を見せずに「尊い犠牲」という表現で揶揄した。
基本的に人間どころか肉親を含めたグラニュートすらも実験材料や命を失う様子に何かしらの感情を見せないため、ある意味ニエルブは生物全てを実験材料として見ていると思われる。

一方で、人間に対しては外道な姿勢で見下している様子こそ見られるが、研究のために人間と協力することや食文化に触れてみるといった行動を見せており、他の兄妹よりも嫌悪感は薄いようだ。
ちなみに本編前にはブーシュにショウマを紹介された際には人間は闇菓子のスパイスではないのかと普通に狼狽えていたため、この時点では他の闇菓子を知るグラニュート達と人間に対する認識は特に変わってはいなかった模様。

人間界では酸賀研造と内通しており、絆斗を改造する際に用いたグラニュートの臓器を提供したと見られる。
そして、情報交換の中で得たヴァレンの戦闘データとデンテの研究資料に加えて、酸賀から振る舞われたプリンを基にヴラムシステムを開発、テスターとしてあえて腹に一物抱えているラーゲ9、もといラキアを選抜したが結局離反され、敵に塩を送ることになってしまった。
ショウマとラキアに闇菓子工場を襲撃されて折角の高品質ヒトプレスを奪い返された直後だった事もあり、それを聞いた時は流石に本気で焦っていた。それどころか、デンテにヴラスタムギアを複製されたことで、ヴァレン フラッペカスタム誕生の遠因となるなど、ニエルブもニエルブで戦犯になってしまった。

酸賀の研究データを引き継ぐと、ビターガヴの培養やベイクマグナムの複製に着手(※もちろんランゴ達には内緒)
さらにその技術力に着目したボッカからヘッドハンティングを受け、あろうことかジャルダック家お抱えの技術者として鞍替え。
ただ完全にストマック家を裏切ったかというと現状そういうわけでもなく、ランゴから毒ガス散布機開発の要請を受けた際も「もう兄さんの部下じゃないんだけどなぁ」と減らず口を叩きつつも渋らず快諾している。
しかしそんな彼も終盤の激動の展開に余裕を保てなくなっており、大統領親子の無茶ぶりに辟易した様子で溜息を吐いたり、またジープを改造した件をグロッタに詰められた際には「姉さんに相談して何とかなった事あった?すぐ手が出て終わりじゃないか」と鬱憤を晴らすように言い捨てている。
言い捨てた時の態度はめんどくさい姉に被害を被り続けた弟としての態度であり、ニエルブは双子が産まれる前では末っ子だったということがよくわかる描写でもあった。

上述のように基本的に倫理観の無いマッドサイエンティストであることは疑うまでもないが、実際にはニエルブなりの他者への情や倫理観はあると考えられなくもない描写も見られる。
兄弟でもグロッタやシータへは冷酷な態度だったが、ランゴに対してはジャルダック家に鞍替えした後も互いに性格を分かり切っているのか軽いノリでコミュニケーションをしており、ランゴが撃破された後も彼の実力を評価している言動が見られる。
一族の裏切り者である大叔父のデンテに対しては秘密裏に接触した際に戻ってくるように呼び掛け、拒否された際も落胆こそ吐き捨てるが手を出すようなことはせずに素直に引き下がり、その後も他の兄姉にも隠れ家を明かさず、偶然グロッタがデンテの生存を知った際にはばつが悪い顔をしていた。
大統領が人間界を牧場にする計画を明かした際には無謀な計画として流石に動揺しており、その後に「思った以上にヤバい」と大統領に対して引いた心境を漏らす一面もあった。

ちなみに人間の食事であるプリンを実食しているが、試食前に顔を顰めながら「人間はこんな物を喜んで食べるのかい?」と漏らし、口に入れた際も何とも言えない表情をしている。ニエルブを演じた滝澤氏は口に合わなかったと解釈している模様。
後のエピソードでグラニュートは鉱物食である事が語られているため、それを考慮すると対極とも言える性質を持つプリンの存在や食感などを怪訝に感じても仕方ないところか。*1

第46話の回想において、幼少期は母親に似て病弱体質だったことが判明。ゆえに祖父のゾンブからは他の兄妹達よりも脆弱で非力だと常に見下され、コンプレックスを抱いていた
ランゴもグロッタもいなくなった今、自力でストマック家を再興しようと画策し、その足掛かりとしてランゴを倒したショウマすらも利用しようとしたのだが…。

【戦闘能力】

武器はリム部分が刃になった
体術や戦闘力は弱いものの、研究者としての優れた頭脳と正確で打突力の高い射矢による中〜遠距離攻撃を駆使して戦う。
固有能力は体液*2を媒介にした溶解効果のある毒液の生成。*3
ひとたび触れればオーバーモードすら侵し衰弱に追い込むほどの威力を有し、毒を地面に撒き散らすことで周囲に毒の沼を形成して敵の接近を阻むなどクレバーな運用を得意とする。
ニエルブ自身は「兄さんに比べればこんなものさ」と自嘲する通りランゴやグロッタに比べれば派手さはないのだが、"毒"である性質上オーバーモードの防御力を無視して効果を発揮し、地面に撒き散らして侵入そのものを阻むことでマスターガヴさえも退ける特性が力で勝てないガヴに却って有効打となるのは皮肉。

ちなみに毒液はニエルブ自身が舐めて特に何ともない描写があるので出している本人に対する害はないと思われるが、顔を歪めて「苦っ…」と漏らしていたので、本人ですらもキツい苦味を感じるようだ。

【暗躍する眼鏡、その真意とは】

第41話において、ボッカが企てる「人間界牧場化計画」の足がかりとして、実験の中で死亡した酸賀をボッカが保管していた催眠能力を持つグラニュートと無理矢理合体させてゾンビ化させたのち利用、計画そのものはショウマたちに阻止されるも催眠能力の実験として一定の成果を得る。

そして第44話でヴァレンの襲撃をかわしたのち、彼のゴチゾウを追尾して「はぴぱれ」の場所を突き止め、ショウマと対峙。
すぐさま応戦しようとゴチポッドを手に取るショウマと戦闘する意思はなく、ある提案を彼に告げる。

それは、間もなく行われる大統領選にてボッカを大統領から引きずり下ろし、ショウマがグラニュート界の大統領になるというもの。

驚きの提案に困惑するショウマだったが、ニエルブは内心ではジャルダック家のことを良く思っておらず、ショウマが当主になることでストマック家を再興したいと考えていることを伝える。
実はニエルブは、みちるがヒトプレスにされてグロッタに殺害されたあの日から、ショウマこそ後継者になる素質があると感じていた。
そしてその素質を試すために、幽閉されていたショウマをわざと解放し、人間界へ脱出できるよう手助けを行っていたのだ。

そして彼が大統領になることで、二度と闇菓子になる人間が出ないように人間界とグラニュート界を繋ぐ扉を閉じられることも教える。
この際、ショウマへの信頼の表れとしてデンデ以外のストマック家で初めて蔑称である「赤ガヴ」から「ショウマ」と本名で呼んだ。

なおもまだ信頼しきれないショウマのために、提案が本気ならまだ闇菓子として加工していないヒトプレスを返却して欲しいという要望をあっさり受け入れ、はぴぱれの前に置き配として届ける*4
ニエルブの決意が本気であることを確信したショウマは、人間界を守るため苦渋の決断として、もう人間界に戻れなくなることを覚悟の上で、彼の作戦に乗りグラニュート界に渡るのであった。

ニエルブの作戦とは、以前酸賀に使わせたベイクマグナムの催眠を用いてボッカを暗殺するというもの。
そして、「ボッカは異種族である人間の個体差が分からない」という点をついて、ニエルブに扮したショウマがボッカの元へ訪れる。
実際、ボッカはショウマが仮面ライダーに変身するまで完全にニエルブだと思い込んでいたため、暗殺は成功する……はずだった。
しかし、二つの誤算が生じたことでこの作戦は失敗に終わってしまう。
一つは、ボッカがニエルブの謀反を視野に入れて催眠対策を講じていたこと。もう一つは、ボッカはショウマを軽々と返り討ちにできるほどの実力者だったこと。
当然、この作戦はボッカに催眠が効くことが大前提だったため、代替案は用意していない。
それどころか、ショウマに自分の変装をさせたことで「ニエルブが暗殺を企てた」ことがボッカに露見してしまう。
結果、何食わぬ顔で帰還したボッカに詰め寄られてしまい、唖然とする他なかった…。

【自身を「最高の頭脳」と驕った技術者の哀れな末路】

その後、暗殺を企てたことでバトラーたちに折檻されたらしく顔面が傷だらけとなり、「処刑でもなんでもしてください」と死を覚悟するも、ボッカとリゼルに人間界牧場化計画に必要なゴチゾウの最終調整が終わるまでは死んでもらっては困ると生かされる。

その計画とは以前ラキアから抽出した人間を幸福にするエキスと、酸賀ゾンビで実験を行った催眠能力両方の能力を持つダミーゴチゾウを人間界に大量に送り込み、幸福にした人間を催眠術で一箇所に集めて一気にヒトプレス化するというもの。

目論みは順調に運びリゼルの催眠で集めた人間を続々とヒトプレスにしていくが、ショウマたちに嗅ぎつけられる。
この際に調整が終わったことで、「君はもう用済みだ」とボッカから今度こそ事実上の処刑宣告を受けるが、もう一度チャンスをくれと懇願し、人間界に戻りガヴとヴァレンと交戦。
両者能力をぶつけ合い一歩も引かない中、様子を見にきたボッカとリゼルが現われると彼らの方を向き、戦闘を停止してあるリモコンを手に取る。


その目でしっかり見てください…!あなたの野望が、砕けるところを…!
大統領ボッカ・ジャルダックゥ!!!僕の…勝ちだ。

ニエルブの真の目的は、ダミーゴチゾウに忍ばせた爆薬を起爆させ、ジャルダック親子を人間界もろとも消し去ることにあったのだ。
ガヴとヴァレンが制止する間もなく、起爆用のリモコンのスイッチを押すニエルブ。

えっ…?

しかし、ダミーゴチゾウたちは爆発せず、その状況にニエルブが戸惑った直後、彼が持っていたリモコンが大爆発を起こした。
ニエルブは何が起こったのかもわからないまま、爆風に飲み込まれて跡形もなく消滅した。

実はボッカはニエルブの裏切りを既に予測しており*5、リモコンが逆に爆発するようバトラーに細工させていたのだ。
そしてボッカはすぐさま、それを唖然と見つめるガヴとヴァレンに攻撃を仕掛けた。

こうして自分のことを「最高の頭脳」と驕り、多くの登場人物の命を、人生を弄び、その暗躍ぶりからラスボス候補にまで名前が上がった技術者は、散り際に自分がもっとも自信を持っていた智略で完全敗北し、まともな断末魔すら残せないまま、あっけなく物語から退場するのだった…。

とはいえ、どんな手を使ってでもボッカに一矢報いようとした覚悟は本物であり、それを最期まで貫いた事を通してニエルブに対する疑念を完全に捨てられなかった絆斗にも最終的には認められたりと、ショウマ達もかつての敵の死を惜しんだのだった。

【余談】

名前の由来は舌のハンガリー語表記である「Nyelv」から。
演じる滝澤氏はOPダンスシーンの振り付けも担当している。そして「冷えルブ」「消えルブ」などのダジャレを普及させルブことも目論んでいルブ。お茶目さん。
本作の放送開始時点で他のニチアサキッズタイムや特撮ヒーロー番組への出演はないが、舞台作品であるもののプリキュアに変身した経験がある石ノ森章太郎が原作の作品に出演経験があるという、一風変わった経歴の持ち主でもある。
ところで、平成以降の『仮面ライダー』シリーズにおいて、メガネありのインテリ系キャラはネタキャラと化す傾向があるが、ニエルブは寧ろ11年前の極悪サイエンティストに近い気質と言えよう。

怪人態のデザインモチーフは邪神ロキの子供である大蛇「ヨルムンガンド」。何気に元ネタも次男である。
デザイナーの篠原氏によると、インテリらしからぬやたら屈強な体躯の怪人態は自らに生体改造を施すことで仕上げたイメージとのことで、両肩やガヴから生えてる長い牙は改造の産物によるイメージとのこと。

第47話の爆発シーンで「実は生きているのでは?」という声も少なからず挙がったが、東映公式サイト及び滝澤氏の公式Xでクランクアップが報告されたため、退場が確定*6
そして後日、YouTubeの仮面ライダー公式チャンネルの『ぱくっとガヴ』に例の爆発シーンが投稿されたのだった。


まあまあ……過ぎたことを責め合っても仕方ない。ここは建設的な追記・修正をしよう。

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最終更新:2025年08月24日 10:41

*1 後にラキア(ラーゲ9)がプリンを食べた際は美味しそうにしていたが、これは好みの差というよりはプリンに対する思い入れの違いからと思われる。グラニュートは「感情」を味覚で感じられるため、明言されてはいないがその点が影響した可能性もある。

*2 主に血

*3 能力の初お披露目の際親指の腹を犬歯で嚙み切ってから毒沼を展開していることから

*4 この時返却されたヒトプレスは1メートル四方の大きな箱二つで漸く収まりきる程の量。しかもこれは工場が操業停止になって保管されていた分であり、これまでショウマ達がバイトを倒して奪還していたヒトプレスは氷山の一角に過ぎなかった事を改めて視聴者に突き付けて来る描写である。

*5 彼の渾身の作戦すらも「小賢しい」と一蹴している。

*6 第48話からのOP映像でも、先に死亡したシータとグロッタと同様にパッと消える描写がされた。