登録日:2025/06/07 Sat 20:23:55
更新日:2025/06/08 Sun 17:04:14NEW!
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ルタとは
ねこねこソフトから2003年に発売されたアダルトゲーム「朱-Aka-」のキャラクターの一人で、オムニバス形式に展開する全てのストーリーに登場する重要人物である。
◆概要
本編第一章主人公のカダンが10年ほど昔に出会い、彼を「守護者」に任命してその力を授けた張本人。
外見は十代前半程度のまだ幼さの残る少女だが、その雰囲気は非常に厳かでどこか貴族のような佇まいを持つ。
カダン以外にも自分が認めた人間に対して、異能の力を与え、それと引き換えに己の眷属として様々な地へと派遣する。
(と言うよりも異能を与えた人間を守るための役割としてカダンのような守護者が存在し、ルタとしては守護者より異能を与えた人物を重視している)
不老不死ではないかとも言われ、実際にカダンは10年前に初めて会った時と現在とでは全く姿が変わっていないと評している。
◆力を与えしもの達
カダン:第一章主人公。10年前時点で現在のルタとほぼ同い年くらいだった青年。幼馴染みのアラミスが「還す者」に任命されたため、彼女を守るべく「守護者」となった。彼もまた不完全ながら「還す者」としての力を使える。
アラミス:第一章ヒロイン。カダンより少し年下の少女。ルタより「還す者」の力を与えられ、他人の記憶を一定期間分消すことが出来る。そのことに苦悩を抱えているが、やがて「還すことは優しさである」と教えられ……
ナンディニ:カダンとアラミスが出会う女性。彼女もまた「還す者」である。しかし、長年の使命に疲れた彼女はアラミスに自分を還すように願う。「その力はルタの優しさよ」と言葉を残して……
ニムラム:ナンディニの守護者である女性。守護者であるため、カダン同様不完全ながら他人を還す事が出来る上にかなり腕が立つ。
イブラ:還す者にルタの使命を伝える「水鏡の者」である女性。
チュチュ:第二章ヒロイン。天真爛漫な少女だが、彼女には一定以上前の記憶がない。
ファウ:第3章ヒロイン。薬師をやっている女性。かつて幼い頃にルタにより「癒やす者」の力を与えられた。しかし、幼かったこともあり、記憶はあやふやであり、中々その力を使えずにいた。
10,0691day's ago
ある日、海を渡っていた男がいた。しかし嵐に遭い、流されてしまう。
命からがら、懐のものをしっかりと抱きしめながら砂浜に流れ着いた彼を、一人の少女が助けた。
◆ラッテという少女
11世紀。ヨーロッパ。とある封建主の家に生まれたご令嬢・ラッテ。金髪ツインテールの十代前半程度の少女。その性格や言動は年齢以上に幼く感じられる。
生まれた家とは別の海辺にメイドのマィラと共に静かに暮らす彼女は、ある日重大な使命を帯びている男「ルタ」と出会った。
海をゆく船から投げ出されたことで動くこともままならない怪我を負った彼に対してラッテは甲斐甲斐しく身の回りの世話をしながらも、興味本位であらゆる事を尋ねる。
ずっとこの家で生まれ育ったラッテは外の世界を知らなかった。
ルタは最初は煩わしく思いながらも、命を助けてくれた恩人を無碍には出来ず、傷が治るまでの間、ラッテに外の世界の話をすることにした。
やがて、傷が治り、己の使命のために出立することを決めたルタ。
しかし、ラッテは彼に自分も連れて行ってくれと頼んで聞かない。使命のための旅に外の世界を知らないご令嬢など足手まといでしかない。
ルタは当然彼女を置いて一人で旅に戻ることにしたのだが、そんな彼の前に現れた彼女はその立派なツインテールを切り、純白のマントを纏った姿となっていた。
さらにその胸には彼女が生まれた時に親より与えられ、マィラによってラッテの名前が彫られた赤い宝石も下げられている。
事前にマィラからラッテは生まれ持った病で少しずつ視力が衰えていく事を知っていたルタは尚更旅には連れて行けないと冷たく突き放すのだが、しかし彼女は聞かない。
「俺は使命を優先する。だから、お前のことを助けない。それでもいいなら勝手にしろ」
こうしてルタとラッテの東を目指す旅は始まった。
初めての旅路。最初は期待のまなざしだったラッテだが、厳しい砂漠の海を歩いて行く旅路。飢えで死んでいく民達。夜盗にあって皆殺しにされてしばらく経つキャラバン。
どうにかして助けようとしても助からない命達に、その表情を変えていく。
どうしようもない、出来ない、そんな現実を受けてなおさらに彼女の目からは光が失われていく。
それでも彼女はルタとの旅路の足を止めることはなかった。
◆ルタという男
かつてとある宝具を守り続けてきた一族の末裔。厳密に言えば分家筋であり、その役目は本家の補助にあった。
しかし、時が流れていくごとに少しずつ疎遠になっていく内、宝玉は分家筋に与えられ、いつしか本家との繋がりは消えてしまった。
中世も始まったばかりの古代の世界に、救いの光とならんためにその宝具は存在していた。
だが、その宝具は人の手には余るものではないかと言う意見が生まれ始め、守り続ける役目はいつしか封印し続ける使命に変わる。
そんな矢先、本家の末裔が実はまだ生きていた事が判明する。
人の手には過ぎたその力を、本家末裔へと還すために一族は使いを出す事となった。
それは、代替わりを果たしたばかりの族長であるルタが自ら立候補した事により、旅は始まった。
代々に伝わりしその宝具の大いなる力ーーー
どんな願いでも叶う銀色の糸ーーーその力は一体何のために存在するのか。
そんな思いを胸にルタは何人かの仲間を連れて旅に出た。
しかし、海を渡ろうとしたところで嵐に遭い、宝具の入った木箱を胸に固く抱いたルタだけが生き残り、ラッテのもとへ流れ着いたのだった。
貧困のために死んでいく命、飢えを凌ぐためにキャラバンを襲う夜盗達、やがて光を失うことが約束されたラッテの目。
旅の中で幾度も遭遇する理不尽な「生きる」という名の試練。
どこまでも純粋なラッテの言葉を受けていつしかルタの心にはかつて彼も抱いた純粋な迷いが再び芽生え始めていた。
「この力を使う事で救える命があるかも知れない。それを見捨てて誰かに力を託す事が本当に世界を救う光になることなのか……?」
ルタとラッテの旅はやがて目的地である東の地へと迫りつつあった。険しい谷を越えればその先に旅の終わりが待っている。
だが、その時を以てついにラッテの目が完全に見えなくなってしまう。
それでも二人は言葉を語らず、その身を重ねて先へ進もうとする。
だが、やはり無理があった。目の見えなくなったラッテは手を滑らせてしまい、谷底へと落ちていく。
「何があっても任務を優先し、ラッテを守るつもりはない」
かつてそう告げた口で、しかしルタの手は暗闇に落ちる彼女へと伸びていた。
目の見えないままのラッテ。地に足は付く。だが、傍らからするルタの気配は非常に弱々しかった。
いざという時には自分を見捨てると約束してくれたルタは、しかしラッテを庇って決して無視できない怪我を負ってしまった。
ルタはもう自分が助からないことを悟ると、懐の木箱へと手を伸ばした。
34day's after
ラッテは東への旅路を独りで進んでいた。確かに失われたその光は確かに砂嵐の向こうを見据えていた。
己の名前が彫られた石は失われた。代わりにルタが大事に持っていた一族の長を意味する宝玉を手に。
だが、ルタを失った悲しみと険しい砂嵐が彼女の体力を激しく奪い続ける。
やがて、砂嵐を抜けた時には既に彼女の命は尽きかけていた。
その時だった。
満月を背に一人の女性がそこに立っていた。
その女性こそ、この旅の目的であり、ルタが果たしたかった使命、本家の末裔である石切(いすな)だった。
立ち上がる体力すら残されていないラッテは木箱を石切に渡して、その力で世界を救ってくれと願う。
しかし、石切の目的はどんな願いでも叶えてしまう銀糸をこの世からなくすことだった。
ルタがかつて望んでいたこととは言え、この旅の中で何度も世界を救うことを願っていたラッテは絶望した。
その絶望が、ラッテに最後の力を与え、決断をさせた。
懐にあった銀糸が再び輝き出す。砂漠の夜を照らす月の光よりも。
異能の力で命を取り戻しただけでなく、永遠の命までを得た少女はそれまでの名前を捨てて今、朱い宝玉を身につけ、夜の砂漠に立ったのである。
力に怯え、なくすことを願う石切を拒絶し、どんな小さな幸せも見捨てない、優しき覇道を心に誓って。
◆時の止まった部屋で彼女は還る
10,1049day's
カダンは何人もの人間をその不完全な力で還してきた。
同じ守護者を、罪なき民を、金目を奪う賊を、幼馴染みであり己の主人であるアラミスをも。
果てない旅の中で、石切と出会ったカダンは、アラミスだけが還されてしまってからの旅を経て胸に生まれた迷いの在処を見つけた。
今はもはや誰も名前を知らないとある封建主の別荘。
たどり着いたカダンとアラミスはそこでルタと再会を果たした。
ルタが身を委ねる小さな椅子だけを残したその部屋で、彼女は問う。
何が望みか?
カダンは答える。
自分自身を取り戻したい。
ルタの力を受けたアラミスはかつてカダンに還された記憶の全てを取り戻す。
その後カダンは石切を含め、かつて旅の中で出会った人々からルタへ返すように渡された赤い宝玉を、そしてウェズと言う青年から渡された赤い石を彼女に渡した。
そこに刻まれていたのは、もはや数える意味さえない程の昔に、失われたと思われていた、己の名前。
そして彼女は、これまでの厳かな雰囲気とは打って変わった、外見通りの幼い少女同然に泣きわめく彼女の姿にカダンは驚きを示す。
「こんなの、ルタも望んでいなかったはずなのに……!!」
涙を止めることもなく、泣き続ける少女。
自分の中にこそ存在する、大切なものの名前を何度も口にする少女。
「還りたいか?」
カダンは口を開いた。
少女は、力なくうなずく。
「さらばだ、ルタ……」
向けられた掌。少女は口を開いた。
「違うよ……私は……ラッテ……ラッテなんだよ……」
「そうか。なら、さらばだ。ラッテ……」
己が与えた光の中で少女はかつての記憶を胸に蘇らせる。
◆余談
彼女の素性が明らかになる第4章は基本的にずっとモノクロで物語が進んでいき、カダンによってラッテの名前が刻まれた石を彼女が目にするところで初めてカラーになる。
また、作中では主に回想シーンでの登場と言う事もあり、少なくともルタとして振る舞う彼女がカラーで描かれることはほとんどない。
この項目にもあるが、作中では「~day's~」という表記が多い。「ago」と付いている場合はラッテがルタと出会うその日までを遡った際の日数で、「after」が付いている場合はその逆となる。
これを鑑みると、この物語がおおよそ11世紀頃(西暦1070年前後)の封建社会時代のヨーロッパが舞台と予想される。
この作品以降、ねこねこソフトのお祭り系作品では高確率で彼女も登場するが、ご丁寧にルタとしての彼女とラッテとしての彼女の2キャラが用意されていることが多い。
その際、短髪状態の彼女はルタ(ラッテ)と表記されるのだが、髪を切ったのは旅に出た時であり、ルタとして不老不死の運命を選んだ時ではないので注意。
ちなみに「麻雀」や「すみれ」などではこの状態の二人の彼女が会話をするシーンなどがあり、大抵ルタとなった彼女が昔の彼女の幼さを笑うのだが、逆にかつての無垢さでカウンターを食らう事になる。
彼女がルタになったシーン以降、彼女は「叶える者」と呼ばれ、銀糸を用いてあらゆる願いを叶えているのだが、彼女自身がどんな願いを叶えてルタとなったかは定かではなく、かつての自分の名が刻まれた石を見てラッテとしての自分を取り戻すシーンから、単純に数百年ぶりにラッテとしての自分を思い出しただけなのか、自分が叶えた願いがこの石を見たことで解除されたのかは定かではない。
- この時代にルタの記事が作られるとは -- 名無しさん (2025-06-08 13:48:22)
340711day's after
どこかの洋上。クルーザーの上で二人の女性は昔話をしていた。
かつてと変わらない青い髪の女性と金髪の少女。
やはり何が正しいのかは今になっても分からない。
けれど、それが悪いことだとは思わなかった。
「そろそろ帰りましょうか、ラッテ」
「うん。お腹すいたね、イスナ!」
気の遠くなるほど、永い永い年月を経ても
見上げた空は変わらない。
眩しかった日のこと、そんなよく晴れた日のこと……
最終更新:2025年06月08日 17:04