カルネージハート

登録日:2025/11/12 Wed 13:40:
更新日:2025/11/12 Wed 14:10:41NEW!
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西暦2059年。
月面で鉱物資源を巡る紛争を経験した人類は、国際機関SMRPA<宇宙鉱物資源探査協会>を設立し、なんとか秩序を取り戻していた。
だが、すでに火星の資源採掘と移住を果たした人類は、新たな発展の場を必要としていた。
そして、待ち望んでいた新たな資源が、木星の3つの衛星で発見される。
それは次なる試練の序章だった。

ドラッケン・グループ──
それは資本主義陣営の旗印、世界中の数百の企業が集まってできたこの巨大な企業集合体。
総資産は日本円にして890兆という途方もないもので、長年の宇宙開発でも多大な貢献をしており、ついにはSMRPAに対し見返りを求めてきたのである。
そして両者の関係が冷え込む中、あってはならない事が起こってしまう。
ドラッケンの所有する輸送艦が世界連合の巡洋艦に撃墜された瞬間の写真。
それは交渉の決裂と、今後の展開を如実に物語っていた。

2073年、世界連合は条約にのっとり、戦争を解決法とする事を正式に宣言。
ドラッケン側の代表団も同意し、歴史上類を見ない企業対国家の戦争が勃発したのだった。








概要

カルネージハート(Carnage Heart)とは、1995年にアートディンクが開発したロボットシミュレーションゲームである。
対応機種はプレイステーション。
その他のシリーズ作品についてはカルネージハートシリーズを参照のこと。
ジャンルとしては戦略シミュレーションにあたる。
プレイヤーはOKE(オーバーキルエンジン)という自立行動ロボットを設計し、これを生産してマップ上の敵基地を全て制圧することで勝利となる。




OKEの設計

本作の主力であるOKEはその設計をプレイヤーが行う。
これ自体は今となっては珍しいものではないが、本作を本作たらしめているのは、OKEの行動はあらかじめ設定されたプログラムによって自動で動くというもので、これすらもプレイヤーが設計せねばならない、という点である。


ハードウェア

設計はハードウェアとソフトウェアの二つに分かれるが、とりあえずはハードウェアつまり機体から設計を始める事になる。
ハードウェアはどちらかといえば既存のものを選択するので、さほどバリエーションはない。
というのも、OKEそのものは地球の軍需企業から「設計図」を購入しているため、基本フレームにしろ武装にしろ、各社の提供したものに留まるからである。

なぜ設計図かというと、戦場は木星の衛星であり地球から遠すぎるため。
つまり地球で生産しても意味はなく、かといって軍需企業も売れるかもわからないのに現地に会社を建てる事はできない。
そこで考え出されたのが、設計図だけを商品とし、生産は現地の鉱物資源を利用するというやり方なのである。



OKEの設計は以下の要素で成り立つ。
  • 機体
  • エンジン
  • メイン武装
  • サブ武装
  • CPU
  • 燃料タンク
  • 装甲
  • オプション

機体

機体は企業各社の代表的な目玉商品であり、4カテゴリ各3種、合計12機種が存在する。
この選択によって、アクションそのものが大きく変わり、装備できる武装も変わってくる。

エンジン

機体に搭載できる重量に直結する。
当然、性能が高いエンジンほど消費する燃料も増えるので、稼働時間の兼ね合いも考えて選択しなければならない。
燃料が切れるとOKEは動作不能となり、ただの的になってしまう。
これがもし飛行型だった場合、墜落して自爆扱いになる。

メイン武装

アサルト、レーザー、ショットガンの3つから選択。
いずれも威力は弾倉もしくは発振器に依存する。

アサルトは威力が高く、発射時の発熱量も低いが、弾速が遅く、射程距離も短い。
レーザーは威力と弾速に優れるが、発射時の発熱量が高い。
ショットガンは広範囲に弾を撒くので命中率が非常に高いが、至近距離でないと火力が低く、弾数も少ない。

サブ武装

OKEの瞬間火力を補強するサブウェポン。
機体によって装備できる種類や弾数が異なるが、最大で小型ミサイル、大型ミサイル、ロケット、地雷、機雷の5種類から選ぶ。

ミサイル系は自立誘導して高い命中率と威力を両立する。
ただしオプションの誘導妨害装置によって役立たずになる可能性がある。
ロケットは発射後一定距離で分裂して敵を爆炎に包む。
弾速はさほどでもなく、良くも悪くも弾道が素直な性能。
地雷・機雷は文字通りポッドから射出・敷設する。

CPU

プログラムの設計に直結するパーツ。
処理速度と記憶領域の2つからなり、前者は低速・中速・高速、後者は8×8から14×14までのテーブルの広さを提供する。
詳しくは後述のソフトウェアの項で。

燃料タンク

文字通り。唯一、最初から全ての設計図を所有している。

装甲

OKEの防御性能を高める装甲。
機体には個別にHPが設定されており、装甲にHPを増加させる効果はないが、受けるダメージを減らしてくれる。
ただし厚い装甲ほど重量が増大し、しかも放熱効率が悪くなるという欠点もある。

オプション

機体冷却装置、誘導妨害装置、機体修理装置の3つがある。
このパーツのみ、何も積まなくても構わない。
逆に言えばこれ以外のパーツは全て必須である(サブ武装も)。



ソフトウェア

カルネージハート最大の特徴であるプログラム制作がこれ。
全40種のプログラムチップをCPUのテーブルに配置していく。



プログラムの処理はテーブルの左上から始まり、右下まで行くと再び左上に戻る。
テーブルの周囲はフレームに囲まれており、いずれかに接続するとそのまま右下に処理が移動していく。

さて、このチップの量を見てだいたい察すると思うが……。
前後左右への移動や旋回、ジャンプまで個別に存在している。
「敵の弾が飛んで来たら避けろ」といったような甘い命令は無い

じゃあどうするかって?


こうして飛来物を検索して、その先の処理でジャンプさせたりしなければならないのだ。
必然的に、敵や味方、飛来物、障害物といった探索系チップを並べ、その分岐先に行動チップを並べていく、というのが基本となる。
挫折者が出るのも当然である。

もう少し詳しく言うと、
「敵を探してそちらに進んだり向きを調整」
「障害物は避けて進む」
「弾が飛んできたら回避」
「敵に向かって攻撃」
という風になる。

でもね……
例えば一口に攻撃といっても、しっかり残弾チェックも挟まないと空撃ちするし、味方のチェックもしないと平気で誤射するし、温度チェックもしとかないと高温でダメージを受け続けるし、移動と障害物避ける処理がぶつかるとその場で右往左往したりするし……

まあとにかく、一筋縄ではいかないのだ。


やり始めると、とにかく練習場で機体テストを繰り返すハメになる。
慣れてくると楽しい……どころか中毒性がすさまじく、熱中してしまったプレイヤーは数多くのプログラムを生み出していった。

有名なものでは、たった4×4(16チップ)のみで高性能なプログラムを作り出す者たちがいる。
これは一見すると奇天烈だが、実は理にかなっている部分もあり、実際に生半可な強さではない。

なぜそんな事が可能なのか?
それはメイン武装発射・サブ武装発射の命令である「攻撃チップ」が、このゲームで唯一複合した性質を持ったものであるため。
このゲームにおいて攻撃チップは、範囲内の敵の射撃というだけである。
しかし、砲塔を持たないOKEではこれを「敵の方向を向きつつ攻撃する」という行動になる。
二脚型は全て砲塔を持っていない。
従って索敵という行動を捨て去り、無駄弾上等で敵の方を向くのだ。
そしてもう一つ、4×4のプログラムはコンパクトな分、非常に回転が早い。
CPUは処理速度が高速のものでも、1秒間に処理できるチップの数は限られる。
つまりコンパクトなプログラムはそれだけで反応速度が段違いになるということ。

もちろん弱点はあり、大抵は地雷に滅茶苦茶弱いし、散開して囲むプログラムが相手だとなすすべなくボコされる。
しかしそれを差し引いても強い事には変わりなく、もし今でもネット上で公開されているものがあれば、これだけで一人プレイの攻略にも十分すぎるものになるだろう。





OKE紹介

OKEのハードウェアはそのフレームともいうべき「機体」がある事に触れた。
以下では登場する12機種について紹介。

月影  二脚型/河島製作所

最初から使用できるOKE。
メイン武装の同時攻撃数は1、かつ使用できるサブ武装も少ない、攻撃面では最弱の機体。
だが小型でジャンプ力に優れており、回避力が極めて高い。
またうまく格闘に持ち込みさえすれば攻撃面のカバーも容易。
全てのプレイヤーが最初に使う事になる。

ジュジュマン  二脚型/マクモレル

フランスの軍需企業が開発した二脚型。
月影よりジャンプ力こそ低いものの、移動速度の早さと武装の充実が売り。攻撃速度でも優る。
一人プレイだと時期的に不遇(誘導妨害がまだ開発されていないので敵が大型ミサイルを使ってくると事実上回避不能)だが、対戦では移動速度は戦術的にも重要なため、火影キラーになれる可能性を秘める。


火影  二脚型/河島製作所

後半に登場する高性能の二脚。
全てにおいて高い性能を誇り、特に二脚で唯一同時攻撃数が2と多く、しかもサブ武装では6連大型ミサイルまで搭載できる。
一人プレイではこれを入手できればほぼクリア同然。

ファイアインセクト  多脚型/AAC

最も早く登場する多脚。
多脚は本作では少々厳しい立場にあり、HPはあるが挙動が重いため対戦では非常に苦しい。
しかし一人プレイでは早めに登場しながらも16連小型ミサイル、16連ロケットなどサブ武装の弾数に優れる。
同時攻撃数は2。

塵界  多脚型/河島製作所

多脚の中では最も動作が機敏で、二脚に近い動きができる。
とはいえそれでも所詮は多脚であり、同じようにジャンプ回避をしているだけでは二脚の劣化になりかねず、使い方に工夫が必要。
サブ武装に関しては火影のほぼ劣化版な事、一人プレイでは生産にかかる工数が高いなど向かい風の激しい機体。
同時攻撃数は2。

ゾルダード  多脚型/ブレナン

多脚では最も大柄でジャンプ力も低いデカブツ機体。
その割にサブ武装は最大でも8連小型ミサイル、2連大型ミサイル、8連ロケットしかない。
一方で、メイン武装の同時攻撃数は4と他を突き放すものを持っている。
ただし発熱量に気を付ける必要はある。


クーゲル  車両型/ブレナン

全OKE最大のHPを持つタフな車両型。
最初から使用できる……というより全てのシナリオでドラッケンがまず使ってくる。
同時攻撃数は4と多いが、サブ武装は地雷か機雷のみ、しかも機体後部についている変な機体。
使いこなすにはクセが強いものの、対戦では大化けする可能性はある。

クラッベ  車両型/ブレナン

クーゲルの後継機で、サブ武装に特化した車両型。同時攻撃数は3。
その数、24連小型ミサイル、8連大型ミサイル、24連ロケットなど火力満載。地雷・機雷ですら12連とクーゲルに次ぐ多さ。
唯一難点と言えるのがメイン武装の位置。機体中央から少し離れた腕から発射しているため、しばしば軸ズレを起こして命中しにくくなる場面がある。

ワイルドボア  車両型/AAC

最新鋭の車両型。
車両型ではもっとも防御面で劣るが、それを補って余りある移動速度が持ち味。
砲塔が機体中央にあるので挙動が素直なのも利点。同時攻撃数は3。
問題はサブ武装で、ロケットを装備できない。候補は6連大型ミサイルか10連地雷・機雷に絞られる事から、戦術的な工夫が求められる。

リヒター  飛行型/マクモレル

初登場の飛行型にして火影同様に一人プレイの強力なお供となる機体。
HP・エンジン効率ともに最弱だが、攻撃面がとにかく恐ろしく強い。18連にもなるサブ武装ロケットと全周砲塔のメイン武装は使い方次第でバランスブレイカー。
ぶっちゃけ索敵も回避もなく左右旋回と攻撃を繰り返すだけでも大抵の敵には勝ててしまう。機雷が出てこない限りは……だが。

プロキュルール  飛行型/マクモレル

ロケットが装備できず、全周方法も持たないが、代わりに地雷が装備できるようになった飛行型。
地雷が装備可能なOKEでは最も移動速度があり、これを利用した開幕からの突撃デススフィア宅配はあらゆる地上OKEを一瞬で壊滅させる悪魔と化す。
プログラム次第では機雷で撃墜される前に消し炭にもできるのだから恐ろしい……。
代償として空戦能力はイマイチ。HPも低い。

サンダーラプター  飛行型/AAC

最も遅い登場となる機体。
性能的にはプロキュルールの防御面を全面強化し、さらに同時攻撃数4を得た。
移動速度こそプロキュルールに劣るものの、それでも月影の倍。
こちらも地雷を持って突撃されると地上OKEで止めるのは至難である。




戦略室

ここまででも数十時間かかっておかしくないのだが、テストを繰り返しようやく設計が完成しても、ゲームクリアまでの道のりはまだ遠い。
今度はこの機体を生産工場で生産し、生産体制を確立して敵基地に進軍させなければならない。
敵であるドラッケン側もまたOKEを生産してこちらに進軍してくる。
これがまた、初見ではあまりにも強い……。

使える兵器そのものは同条件とはいえ、ドラッケン側が繰り出してくるクーゲルはけっこうなゴリ押しタイプなので、プログラム制作に熟達しないとまるで太刀打ちできない。とにかくこれを撃破できる設計が第一目標となる。


技術取引

軍需企業はゲームスタートと同時に、ターンごとに新たな兵器の開発を始める。
それは機体はもちろんエンジンから弾薬までさまざまだ。
そんでもって、基本的に後発のものほど性能が高くなるので、嫌でも設計図を買い付けにいかねばならない。


しかもこの中には「研究投資」というコマンドまである。
企業たちはほっといても勝手に開発を進めて商品ラインナップを更新していくが、投資するとその兵器の開発期間を縮めたり、ドラッケン側に売られるのを遅らせたりできる。
そう、こいつらはドラッケンにも普通に売るので、戦争の結果どちらが負けても懐が痛んだりはしないのだ。
逆に、「この兵器の状況、いつまで経っても開発中だな……」なんて事もあり、それはつまりドラッケン側からの投資による妨害作戦なわけである。



そんなこんなで、本作ではとにかく(序盤の)予算が足りない。いくらあっても足りない。
攻略方法は一つだけ。
強力なOKEを設計して、1マップごとに40ターン以内でクリアし、早期突破報酬として本部から特別予算をいただくこと、……である。


もっとも、あまりに早くクリアしすぎると、全ての機体がお目見えできずに終わってしまう可能性もある。
合計ターンはシナリオごとに継続しており、合計200ぐらいにならないとサンダーラプターが登場しないし、エンジンなどさらにターン数のかかるものもある。
このゲームは対戦モードも用意されているので、できるだけ全ての兵器を登場させたデータを用意したい。
すなわち終盤余裕ができたら、引き延ばしも視野に入れなければならないわけである。



裏技

+ ...
OKEの手動操作も可能。
後のシリーズと違い、本作ではあくまで裏技である。

やり方は戦闘中にポーズ画面を開き、SELECTボタンを連打すると、OKE操作を自動から手動に変更できる。
操作方法は下記の通り。
  • 方向ボタン:前進・後退・左右旋回
  • ○:メイン武装射撃
  • □:格闘
  • ×:しゃがむ
  • △:ジャンプ(その場ジャンプ。方向ボタン同時入力でその方向にジャンプ)
  • L1:押しながら方向ボタン左右で平行移動、上下で高度変更(飛行型のみ)
  • R1:押しながら○□×△ボタンでサブ武装射撃(ボタンによって連続発射数変化。△で1発)

攻撃は中央に表示されるマーカーを敵に合わせる事でロックオンする。
回転砲塔を持ったOKEであれば後はそちらに向かって自動で狙ってくれるが、固定砲塔のOKEの場合は高度調整しかしてくれない。
リヒターのように「メイン武装は回転砲塔だがサブ武装は固定」の場合、当然サブ武装は正面に捉えなければならない。

慣れないとかなり難しい上、誘導妨害ができないのでミサイル相手は死ねる。
代わりに格闘がいつでも出せるため、使いようによっては初期量産配備の機体でもそれなりに戦えたりする。
他には、敵の飛行型に向けて即座に大型ミサイル2発を発射して退場させたり、脚型相手にはショットガンを撃ちまくって相手を拘束し、その間に味方に囲んでもらう…等がある。




画像出典:「カルネージハート」 ゲーム画面スクリーンショット、開発:アートディンク/発売日:1995年12月8日


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最終更新:2025年11月12日 14:10