夏への扉(小説)

登録日:2012/05/26 Sat 21:12:15
更新日:2025/05/05 Mon 17:19:15
所要時間:約 4 分で読めます





A・P、
フィリス、
ミックとアントネットほか
世のなべての猫好きに
この本を捧げる。


「夏への扉」(原題"The Door into Summer")はロバート・A・ハインラインによるタイムトラベルを扱ったSF小説。
今となってはタイムトラベル物にありがちとなってしまった「過去の自分と会ってしまったらどうなるか」といった問題や、
タイムトラベルによる過去と未来の運命湾曲などを扱った初期の一作。


※以下、多少のネタバレを含みます。
また、登場人物名や固有名詞などは福島正実の訳によるハヤカワ文庫版を参考にしています。

あらすじ
西暦1970年、主人公のダンは友人マイルズと共に経営していた会社で、家事用ロボット「文化女中器(ハイヤード・ガール)」を発明した。
その後も新型ロボである「窓ふきウィリイ」「万能(フレキシブル)フランク」らを次々と開発し、さらには新たに雇った美人秘書ベルとの恋愛などもあり、
ダンはまさに人生の幸福の絶頂にあった。

…しかし、万能(フレキシブル)フランクの売り出し方で親友マイルズと対立、
さらには裏でマイルズと結託していた恋人ベルの裏切りによって会社を追い出されてしまう。

失意の底で、唯一残った親友である飼い猫ピートと共に冷凍睡眠で30年先の2000年まで眠りにつくことを決めたダンだが、冷凍睡眠の直前に二人への復讐を決意。
自分に何かあった時のため、マイルズの義理の娘であり自分を慕ってくれているリッキィに郵送で自分の持つ全ての権利を譲渡し、マイルズとベルの元へと向かい、
その悪事を口論で暴いていった。
しかし、油断した隙にベルに麻薬で動きを止められ、親友ピートとも離れ離れになり、そのまま冷凍睡眠にかけられてしまう。
…そして西暦2000年、ダンは冷凍睡眠から目覚めた。
が、ピートとは離れ離れ、さらに残った財産も保険会社の倒産によって消失と散々な状況。
自動車解体業を営みつつ30年分の知識を蓄えることとなった。

その後ようやく文化女中器製造会社に転職できたダンは、
自分が考えていた新型文化女中器が自分と同姓同名の人物により1970年に特許取得されていたことを知る。
その後も自分の記憶と史実の辻褄が合わないことに悩む日々を過ごすこととなるダンだが、
ある日同僚のチャックより軍事機密とされるタイムマシンの話を聞いてしまう。

タイムマシンは過去に飛ぶか、未来に飛ぶかを選ぶことの出来ない未完成品であったが、
ダンは1970年に飛ぶことに賭け、タイムマシンに乗り込むのであった。
真実を確かめ、過去に置いてきた友人ピートとリッキィに再び会うために…。


●登場人物
○ダニエル・ブーン・デイウス
通称ダン。この物語の主人公。
友人や恋人に裏切られ、飼い猫と離れ離れになり、未来の世界に一人ぼっちになってしまう不憫な人。
彼の記憶と史実の違いがこの物語のキーポイント。

○護民官ペトロニウス
ダンの飼い猫。通称ピート。性別はオス。
季節が冬でも、家のドアのうちどれか1つは夏へ通じていると信じているようで、冬になると全てのドアの先を見せろとダンにせがむ癖がある。
題名である「夏への扉」はここから来ている。

○マイルズ・ジェントリィ
ダンの友人で、元弁護士。
ダンと共に起業するも、裏切る。

○ベリンダ・シュルツ・ダーキン
ダンの恋人で通称ベル。クソビッチ。
ダンを裏切り注射器で麻薬を投与した詐欺師。

○フレドリカ・ヴァージニア・ハイニック
マイルズの義理の娘。通称リッキィ。
本作の清涼剤。ピートと仲良し。

○サットン夫妻
1970年へ戻ったダンが出会うヌーディストの夫婦。
ヌーディストだがいい人達。


●今から読むなら
現在この作品を読むために手に入れやすいのは2009年に早川書房から発刊された 小尾芙佐による翻訳の「夏への扉 新訳版」と、
1979年にハヤカワ文庫から出版された福島正実による「夏への扉」(及び2010年に出た同書の新装版)の2本のうちどちらかであろう。

勿論同じ物を和訳しているだけあってどちらを読んでも大筋は一緒なので、表紙や和訳の雰囲気の好みなどで選んで構わない。
参考として、原文における「hired girl」が福島版では「文化女中器」、小尾版では「おそうじガール」となっている。


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最終更新:2025年05月05日 17:19