ある日のこと、グラジオは偶然にもリリアーナと二人で話す機会を得た。正確にはリリアーナが設けた茶会に『たまたま』誰も来なかったため、グラジオが『仕方なく』抜擢されたという具合なのだが。
因みに当時のグラジオの視点だとわからないが、リリアーナが列挙した茶会の参加者は、故人か非実在人物か当日物理的に参加できない距離の人物ばかりであったことは留意すべきである。
因みに当時のグラジオの視点だとわからないが、リリアーナが列挙した茶会の参加者は、故人か非実在人物か当日物理的に参加できない距離の人物ばかりであったことは留意すべきである。
グラジオは即座に悟る。この海蛇、従妹を守りきれなかったことを気にしていると――
「いえ、誰にでも思わぬ失敗はあります。むしろ、失敗から学ぶことが大切だと思っております」
「……そう、ですね。確かに一般論的にはその通りです。私も、手元の組織全てにおいては失敗から学ぶことを推奨しています」
「ですよね?ですから……」
「……一度の失敗で、従妹を深く傷つけても?」
「……そう、ですね。確かに一般論的にはその通りです。私も、手元の組織全てにおいては失敗から学ぶことを推奨しています」
「ですよね?ですから……」
「……一度の失敗で、従妹を深く傷つけても?」
一瞬だけ和らいだ空気も一気に冷える。なまじリリアーナが嘘をついてるようにも思えないので、更に空気は酷いが。
「……正直なところ、失敗の理由はわかっています。同国民におだてられ、最も弱い部分をくすぐられ、アメーリアがいたことでそちらにも意識を向ける必要があり、その上で私も少し油断していたことです」
「そこまでわかっていて、何故落ち込み続けて――」
「この私が一手だけミスをした。その事実が非常に苛立つし、落ち込むのよ」
「そこまでわかっていて、何故落ち込み続けて――」
「この私が一手だけミスをした。その事実が非常に苛立つし、落ち込むのよ」
また知らない世界の理屈。リリアーナの才覚は凄まじいそうだが、まさかその上で自分のミスに厳しいとは。グラジオには全くわからないが、これだけは言えた。
「リリアーナ様は自分に対して怒りすぎなのでは?」
たったこれだけしか紡げなかった。だが、リリアーナは落ち着きを取り戻した。むしろ、茶目っ気すら回復してきたようで――
「かも、しれないわね。自分に厳しく他人に甘く、良い主たらんと考えすぎたのかも……」
そうして、一拍置いてから一言。
「そういえば。シンプソン姓を名乗り続けるのと、ガスペリ家の一門になる。どちらが好みかしら」
そう一言、とんでもないことを溢すリリアーナだった。
グラジオが反応して、茶会を去ったあと。リリアーナはとある人物を呼ぶ。
「カロリーナ」
「……はい、お嬢様」
「……はい、お嬢様」
カロリーナ・エル=トリア。リリアーナ付きのメイドの一人であり、リリアーナにとって防諜を任せるにたる信用をしている人物である。
「グラジオ・シンプソンの周囲を洗い直すように。といっても、変な付き合いは増えていないと思うわ」
「畏まりました。そしてお嬢様。もし増えていた場合は?」
「……グラジオを傷つけないようカバーストーリーを作って、内密に処理するように。方法は任せるわ」
「畏まりました。そしてお嬢様。もし増えていた場合は?」
「……グラジオを傷つけないようカバーストーリーを作って、内密に処理するように。方法は任せるわ」
この海蛇にとって、共和国同盟は巨大な巣穴である。
ならば、その管理くらいは容易いのだろう。
ならば、その管理くらいは容易いのだろう。