「やはりアメーリア・ディ・ガスペリは何かしらの病を抱えていると見ていい。つまりこれに介入できれば私と彼女の間に強い接点が生まれるというわけだ」
「へぇ……、そうなのか。まさかあの家のご令嬢にそんなことがあるとは……」
「というわけでファルーク、ガスペリ家まで潜入していってくれないか? そして彼女の秘密を……」
「残念ながら私でもあの家に潜入する度胸はないよ。変に睨まれたくないから受け付けないよ」
「へぇ……、そうなのか。まさかあの家のご令嬢にそんなことがあるとは……」
「というわけでファルーク、ガスペリ家まで潜入していってくれないか? そして彼女の秘密を……」
「残念ながら私でもあの家に潜入する度胸はないよ。変に睨まれたくないから受け付けないよ」
オライオの言葉を全て聞く前に断りを入れる。その事実にオライオは愕然とする。
「そんな……! 君以外頼れる冒険者はいないというのに……!」
「そんなに彼女の秘密を知りたいのなら直接出向けばいいじゃないか」
「そんなに彼女の秘密を知りたいのなら直接出向けばいいじゃないか」
ファルークのその言葉にオライオは無言になる。そしてしばらくして重々しく口を開き……。
「……何故か魔晶石の商談以外断られてるんだよ……。特にアメーリア・ディ・ガスペリ関連は……」
「キミ、ひょっとしてあの家に嫌われてるんじゃないのか?」
「キミ、ひょっとしてあの家に嫌われてるんじゃないのか?」
頼りにしている冒険者の冷静なツッコみにオライオはとどめを刺され打ちひしがることとなった。オライオが完全に立ち直るまでファルークは一人ワインを飲み続けた。とても美味であったと後に回顧する。
ガスペリ邸にて、アメーリア・ディ・ガスペリは体調不良に悩まされていた。近頃奇病の発作が酷くなりつつあるのだ。グラジオ・シンプソンは必死に彼女の荒ぶる魔力を鎮めてはいたがそれでも追い付かず最近では外出する機会が減っていったのだった。そして今日もアメーリアは自室のベッドで一日を過ごしていた。現在は小康状態なのだがいつ体調を崩すか不明なためだ。そしてグラジオは当然彼女に付き添ってかいがいしく世話を焼いている。そんな彼にアメーリアは体調不良で弱っていたこともあって甘え続けていた。
「グラジオ君……、食べさせてください……」
「ハイハイ……、口空けて」
「ハイハイ……、口空けて」
カットした果物をアメーリアの口へ運び食べさせる。すると彼女は頬を緩ませておいしそうに咀嚼する。
「美味しいです……」
「それは良かった」
「グラジオ君の愛情のおかげですね……」
「それは良かった」
「グラジオ君の愛情のおかげですね……」
アメーリアの放った愛情という単語にグラジオは思わず赤面する。そんな彼を見てアメーリアはくすくすと笑う。いつもの彼女の遊びなのだ。グラジオをあの手この手でからかうという。従妹のリリアーナ・ディ・ガスペリは趣味が悪いと評していたが彼女にだけは言われたくないとアメーリアは内心思ったという。
「冗談ですよ。また顔が赤くなってます」
「……またそうやって人をからかって……」
「グラジオ君が素直な反応を見せてくれるからです」
「……またそうやって人をからかって……」
「グラジオ君が素直な反応を見せてくれるからです」
アメーリアの言葉にグラジオはむくれ、そんな彼を見て再びくすくすと笑う。もはやガスペリ邸ではいつもの光景と評されていた。そして部屋のドアの隙間からそっと二人の様子を眺めている人物がいた。
「……まーたイチャイチャしちゃってもう……。別に羨ましくないんですから……」
リリアーナ・ディ・ガスペリだった。そして彼女の近くにはテオドロ・ディ・ガスペリもいた。妹であるアメーリアの様子を見に来たのだが従妹が何やら羨まし気に部屋の様子を観察しているところに遭遇してしまい、部屋に入るタイミングを見失ってしまっていたのだ。テオドロはため息をつきながらリリアーナに話しかける。
「何やってるんだ覗き魔。変質者みたいだぞ」
「誰が変質者ですか、誰が」
「誰が変質者ですか、誰が」
心外なと言いたげな表情でテオドロの方へ向く。良いところを邪魔されたと表情に書いてあるのをテオドロは幻視する。この従妹は他人の恋愛に関してやたら興味を示すのだ。
「とりあえずアメーリアの様子を見に来たんだが……」
「後にしなさい。今折角いい雰囲気になってるんだから邪魔してはだめよ」
「後にしなさい。今折角いい雰囲気になってるんだから邪魔してはだめよ」
リリアーナは別に二人を気遣っているわけではない。むしろ面白がっているのだ。そしてついでに二人をからかうネタの収集を兼ねている。
「趣味が悪いぞ」
テオドロはリリアーナのそれをそう評するのであった。今日もガスペリ邸は平和だった。