文献に残るその姿はおおよそ人族なのか怪しく、「獣のような燃える眼と癖のある金色の髪をした、恐ろしく威圧感と説得力のある声を出せる大男」「止まっているのが苦手で、絵画として肖像が遺されることはなかった」という。
彼は間違いなく天才だった。一族の商会を拡大、銀行家としても活動を開始。その両方で大成功を納めてガスペリ家を共和国同盟屈指の一族に育て上げた。
ガスペリ商会を息子の何人かに任せ、銀行にその資金を管理させることで当主の権力を弱めながら仕事を減らし、かといって統制が出来ないわけではない体制を次代に受け継がせる。
ガスペリ商会を息子の何人かに任せ、銀行にその資金を管理させることで当主の権力を弱めながら仕事を減らし、かといって統制が出来ないわけではない体制を次代に受け継がせる。
そして――ジュゼッペ・ベンソの死と独立のための嘘で心が折れて、下野した戦時の指導者達の代わりとなる者のいなかった共和国同盟を崩壊させないため、弁が立つ傀儡を立たせてそのフィクサーとして振る舞い始めた男である。
彼は「共和国同盟は産まれたときから死んでいた」と息子に語った。それが真実であったかは、誰も知らない。
ただ。「だからこそガスペリ家こそが共和国同盟の屋台骨でなければならない。ガスペリ家こそが共和国同盟を采配せねばならない」と続けたこの言葉がどうなったかは、誰もが知っている。
彼は「共和国同盟は産まれたときから死んでいた」と息子に語った。それが真実であったかは、誰も知らない。
ただ。「だからこそガスペリ家こそが共和国同盟の屋台骨でなければならない。ガスペリ家こそが共和国同盟を采配せねばならない」と続けたこの言葉がどうなったかは、誰もが知っている。