――それは、突然の轟臨だった。

 地を揺らしながら、天から落ちてきた荘厳なる巨躯。
 牛の頭と二本の角を持ち、手には大斧を握った鬼神が、幻想蠢く凍土の渋谷に出現する。
 シストセルカが、エパメイノンダスが、そしてウートガルザ・ロキがその突然の事態を認識した瞬間。

「■■■■■■■■■ォォォォ――――!!!!」

 響く、雷鳴の如き嘶き。
 轟くは、敵の一切を天網恢恢疎にして漏らさず消し飛ばす蒼い稲妻だった。
 まさに神威としか呼びようのないであろう雷霆は、明確に死界の主であるロキだけを狙い放たれている。

 これにロキは、舌打ちをしながら片手に呼び寄せた神殺しの槍、ミストルティンで迎撃。
 不測の事態であるにも関わらず、瞬時に顕れたこれを神霊の類と見抜いたらしい。
 相手が神であるのなら、光神バルドルを屠ったヤドリギの武器は最高の相性を発揮する。
 雷を一蹴しつつ、ロキの手を離れて光の線と化し、鬼神の心臓へと迸る神器。
 対処としてはこれで十分。そう踏んだのであろうが、しかし。

「……何?」

 ミストルティンの一撃は、鬼神・牛頭天王の装甲を剥がすこともなくあっさり弾かれた。
 ロキの顔に微かな驚きが滲む。
 その瞬間にはもう、牛頭天王の大斧が奇術師を誅するべく振り下ろされていた。

「あー、なるほど? そういうことか――この俺に嘘で勝負挑んでくるとはな。命知らずというか、なんというか」

 此処で初めて、ロキが回避を行った。
 吉備真備は幻術の正体に気付いている。
 つまり、幻を所詮幻と見限った上で殴れるのだ。
 "運命の人"と巡り合い、かつてないほどに自己の現実に対する干渉力を強化しているロキではあったが――この"偽りの神霊"と無策に殴り合うのは、それを含めても少し具合が悪いと認識した。

「■■■■――――」

 牛頭天王の斧が、天高く振り上げられる。
 ニブルヘイムの空を切り裂いて、そこにこれまでの天気を無視した極太の落雷が降った。
 否、これはただの自然現象ではない。偽物なれど牛頭の神が求め、それに応える形で天が寄越した清浄の雷である。

「――――■■■■ッッ!!」

 名付けるならば牛王降臨・天網恢恢。
 地を引き裂きながら、しかし基の都市には何の被害も及ぼさず、ただ悪だけを滅するという気高き稲光が迸る。

「いいよ、受けて立とうじゃない」

 ロキの右手に、少し前にも振るった雷神の槌が創造される。
 投影ではなく、創造だ。影絵は影絵でも、端から影のない場所にそれを作り出すのがロキの幻術の恐るべき点。
 しがらみがないからこそ、そこには限界が存在しない。
 トールのミョルニルさえ、一息の内にこの通り。宿る雷のエネルギーもまた、牛頭天王のにまったく劣らない壮絶なるものだ。

 スキーズブラズニルとワルキューレの大空襲。
 ニブルヘイムの番人たるはフェンリル。
 フリズスキャルヴに座る偽りのオーディンが弄した、〈この世界の神〉。
 これらに続く第四の演目、雷神対決が煌々とその幕を開けようとして――


 その時。
 渋谷の一帯に、赤い雨が降った。


「よう。不味かったぜ、テメエの親友は」


 頭蓋を一撃で粉砕されたヨルムンガンドの血肉や脳漿が降り頻る中で。
 ウートガルザ・ロキは、からからと笑う虫螻の王の声を聞いた。

 シストセルカ・グレガリアはロキの世界の欺瞞に気付いていない。
 だが、彼にはそもそも、そうした事情はあまり関係がないのだ。
 一匹一匹は惰弱な虫だから、攻撃の強弱が持つ意味は薄く。
 そして彼が、彼らが突き立てる牙には、強度という概念が意味を成さない。

 何故なら彼らは神代渡り。
 一枚の葉と一体の神を同じルールの下に食い尽くす、暴食の死。飢餓の担い手なのだから。

「不味い飯だったが、代金は支払ってやるよ。たぁんと受け取れや、なぁ――!!」

 殺到した飛蝗の軍勢が、ロキにミョルニルを振り下ろさせない。
 これにより、雷神同士の対決は成立さえすることなく。
 槌を振るえなかった奇術師の身体は、蒼白の閃光と黒い砂嵐にたちまち呑み込まれていった。



◇◇



 ――高乃河二は、魔術師であり、武道家である。

 高乃家の血と魔術は大陸にそのルーツを持つ。
 両腕を霊木製の生体義肢に換装し、平時から常に術師を修行状態に置くことができる。
 そんな高乃の魔術師にとって、陰陽思想と縁深い中国武術の習得は修行の効率化と、いつか来るかもしれない有事に備えての自己強化を一挙に兼ねる、非常に効率のいいライフスタイルとして活用されていた。

 あくまでも、本懐とすべきは魔術師としての大成。
 極致に至り、悲願を成し遂げることをこそ目指すべきなのは言うまでもない。
 だが河二は、そちら側の才能はあまりなかった。
 せいぜいが二流程度で、家を背負って秘技を繋ぐ役を担うには資質不足が著しい。

 けれど――彼には、武術の才能はあったのだ。
 むしろそれは、跡継ぎに選ばれた兄をも上回っていた。
 父が死んだ後も、復讐の道を志してからも、一日として鍛錬を怠った日はない。

 彼は自分の才能で、自分の意思で、修羅道を選んだ。
 だから一切、何事においても妥協はせず自分を苛め抜いてきた。
 より強く、鋭く。奇しくもそれは、魔術師が人の幸せを切り捨てながらひとつの目的に向けて、自己を先鋭化させていくように。
 善因善果、悪因悪果。要するに、正しいことも悪いことも、何かを成したなら見合うだけの報いがあるべきだと願って。

 極め育ててきた父譲りの武術が、今、悪因に悪果をもたらすべく疾風(はやて)と化して閃いた。


(ま、ずッ――――)


 踏み込みは速く、鋭く。
 更にひとりだけサーヴァントを連れていない河二は此処まで、ほぼほぼ一切目の前の状況に関与する手立てがなかった。
 彼自身の技と、殺し続けた存在感が、衆人環視の中で完璧な奇襲を成立させる。

 普段のイリスならば、この状況からでも防ぐ手段は如何様にでも用意できたろう。
 しかし今、彼女は魔力の消耗を背負っている。
 シストセルカに冷気への耐性を与えるための命令は、令呪の後押し込みでも殺人的な魔力消費を彼女にもたらしていた。
 だからこそ、今だけは防ぐ手段がない。
 いや、あるにはある。だが、間に合わない。

 結果、いざ放たれた復讐者の鉄拳は。
 驕りと不測、二種類の理由によって戦闘力を削ぎ落とされた魔女の腹腔に吸い込まれ――

「が、はッ――――?!」

 その口から、血反吐の花を咲かせた。
 一撃。イリスの背をベンチの背凭れにまで吹き飛ばし、強打させ、がくりと脱力させる。
 咄嗟の肉体強化で内臓の破損までは避けたものの、武道家が"覚悟"を決めて放った不意討ちの鉄拳だ。
 結果的に致命でなくとも威力は絶大。それは、喘鳴のような呼吸音を漏らしながら肩を上下させ、咳き込むイリスの姿を見れば明らかだった。

「……いーちゃんっ!」

 仁杜の悲鳴が響く。
 瞬間、河二も叫んだ。
 ただし、追撃を試みるべくあげる裂帛の雄叫びではない。

「今だ、琴峯さん――!」
「――分かってる! 令呪を持って命ずる、アサシン!!」

 すべての条件は整った。
 であれば後は、事前に打ち合わせていた通りに動く。
 深追いはしない。今此処で欲をかけば、たちまちそれは全滅に繋がると分かっているから。
 河二の行動は鉄拳の炸裂も含めてデコイなのだ。
 重要なのは琴峯ナシロの響かせる命令。それを問題なく遂行できる空隙を作り出すことにこそある。


「"おまえの出せる全力で、私と高乃をこの場から離脱させろ"!!」


 令呪が一画、ナシロの手から消える。
 刹那、空を舞うヤドリバエが急転回して、彼女の身体を抱え去る。
 撤退を察知したトバルカインの一撃がわずかに掠めたが、令呪による命令だったことが幸いしたと言えよう。もしそうでなかったらこの一瞬で、ヤドリバエの身体は両断されてすべてが御破算に終わっていたに違いない。

 河二に同じことをしたのは、あえて戦闘に参加させず、離れた位置に待機させていた眷属の一体だった。
 せっかく増やした眷属達を贅沢に足止めと肉壁に用いることで、こちらもなんとか、河二を抱え離脱することに成功する。
 すべてが紙一重。ひとつでも何か歯車がかけ違えていたら、間違いなく全員が命を落としていたと断言できる鉄火場。
 されど、少女と少年は賭けに勝った。得るものこそなかったものの、失うことだけは避けながら。

 苦い痛みとほんのわずかな成長を戦利品に――魔女のお茶会から逃げ遂せてみせたのであった。



◇◇



「――おー、痛ってぇな」

 光と嵐が、内側から衝撃によってこじ開けられる。
 万死に匹敵して余りある死の牢獄をまるでカプセルのように開けながら現れたのは、ウートガルザ・ロキ。
 渋谷を瞬きの内に地獄へ変えた奇術師は、これだけの死を用立てても尚殺されなかった。
 が、今までの彼とは目に見えて違う箇所がひとつある。

「イイ姿になったじゃねえの。戦場なんだしよ、そっちの方が泥臭くて格好イイかもだぜ? 王子様よ」
「キャラじゃねえよ。あーあ、俺はいつも飄々とカッコよく勝って帰ってくるのが魅力のプリンスだったのになぁ……」

 右半身が、黒く焼け焦げ、その上で大きく抉れていた。
 断裂こそしていないものの、ひと目で分かる重傷だ。
 シストセルカの大群が食い千切り、こじ開け、そこを真備の牛頭天王の雷撃が焼き尽くした形。
 原初のルーンにも精通するロキには表層の傷を癒やすなど朝飯前であるが、偽りなれど神霊の一撃を受けたことと、傷口から染み込んだサバクトビバッタの猛毒によるダメージはすぐには拭い去れない。
 まごうことなき、手傷である。無敵のウートガルザ・ロキをして、まんまと鼻を明かされた結果なのは明らかだった。

「……で、どうするよイケメンホストくん。まだやるか?」
「そうだね、殴られたら相手が死ぬまで殴り返すってのが俺のモットーなんだが」

 地形を塗り替えるほどの規模で戦いを繰り広げた後とは思えない、どこか軽いやり取り。
 虫螻の王と奇術師の王の会話を、エパメイノンダスは言葉を挟むことなく、一挙一動すら見逃さぬとばかりに注視していた。
 そしてその理由は明白。

(冗談じゃねえ。この先は、いよいよ俺も帰れなくなっちまう)

 恐らくロキには、まだ余力がある。手札の残りも然りだ。
 シストセルカもそれは同じであろう。だとするとこの先があるとすれば、今までのが軽く思えるような地獄絵図が顕現する可能性が高い。
 そうなれば、エパメイノンダスも撤退を考えねばならなくなる。
 最悪河二に念話で令呪の行使を求めてでも、この怪物どもに背を向けて逃げ出す羽目になるだろう。

 陰陽師が遣わした牛頭天王も、エパメイノンダスの肌を痺れさすほどの殺気を放ちながらも、今は静観を保っていた。
 彼もまた、主たる陰陽師の意向に従って趨勢を見守っているのだろうとエパメイノンダスは察する。
 続行か、否か。運命のサイコロが出した目は、果たして――

「どうやら"あっち"が一段落ついたみたいだ。残念だったね、虫螻の王様。勝負は君の負けのようだ」
「……らしいな。チッ、テメエいくら何でもズルすぎんだろ。もっと真面目に殺し合えってんだ、スカし野郎が」

 ――幸いにも、二体の怪物は共に、此処で戦いを打ち止めにすることで合意したらしい。
 会話の意味を理解し、エパメイノンダスは静かに拳を握り込む。

(……コージもナシロの嬢ちゃんも、上手くやったみてえだな。勝ちではないが負けじゃねえ。まったく、大したガキどもだぜ)

 代々木公園なる場所で、河二達が白黒の魔女……楪依里朱らと遭遇したことは既に聞き及んでいる。
 指示や助言をする余力はさしもの彼にもなかったが、上手く行ってくれた事実に安堵を禁じ得ない。
 体を張って死ぬ気で奮戦した甲斐があったというものだ。
 これだけの激戦に身を投じて生還した経験は、生前を含めても流石にない。許されるなら座り込んで、酒の一杯でも呑み干したい気分だった。

 そんなエパメイノンダスを、ロキが一瞥する。
 その後周囲を見回すが、牛頭天王を遣わした陰陽師の姿はやはりないことを悟ると、つまらなそうに息を吐いて。

「じゃあ、そういうわけだから。
 今回はこんなところで帰るよ。君らもお疲れ様、なかなか骨のある奴らで楽しめたよ」
「……よく言うぜ。そんな殊勝なこと、本当は一寸も思ってねえんだろう?」
「はは、まあ流石にバレるか。じゃあ最後くらい、少しだけ奇術師の本音ってヤツを聞かせてあげよう」

 ――にこり、と、爽やかに笑った。


「お前、顔覚えたからな」


 その言葉を最後に、ロキの姿が薄れ、消え。
 それと時を同じくして、戦場一帯を支配していた寒気が急激に元の気温へと戻り始める。
 だがエパメイノンダスは、まだ寒さを感じ続けていた。

「あ、俺も一応覚えとくわ。オッサンずいぶん食いでがありそうだからな。また会った時はよ、アンタのことも味見させてくれよ」

 約束だぜ、と言い残し、シストセルカ・グレガリアも無数の蝗の群れに変わって姿を消す。
 渋谷を地獄に変えた二騎が完全に退いてようやく、エパメイノンダスは地に腰を下ろすことができた。

「……ゾッとしねえや。お前らとは二度と会いたくねえよ、できることならな」

 人の世界、人の領分で、あらゆる戦を経験した。
 残虐極まりない光景が演じられることもあった。
 それでもエパメイノンダスはテーバイの将軍として勇猛に戦い、栄光を積み上げ続けてきた。

 だがその己ですら、この奇怪な都市の中では演者のひとりに過ぎないのだと理解する。
 あんな怪物達が平然と彷徨き、挙句、〈白い少女〉という更に上の荒唐無稽まで待っている事実。
 心は折れないが、改めてどうやら自分はとんでもない戦に巻き込まれたらしいと感じ入ってしまうのは避けられなかった。
 弱音めいた台詞を河二達に聞かせず済んだことが今はただ嬉しい。
 もっとも――街がこの惨状な以上、声高らかに土産話をするわけにはいかないだろうが。

「で。結局アンタは何だったんだ? 東洋の陰陽師(キャスター)よ」
『ただの通りすがりじゃ、覚えんでいいぞ。
 ちと面白そうな騒ぎが起きとるようだったんでの、情報収集も兼ねて首突っ込んでみただけの話よ』
「そうかい。だが、アンタのおかげで助かったぜ。良かったらまた力貸してくれよ、何かの折には」
『図々しい男じゃなぁ、金も払わずに次回の予約とは。
 しかし、そうさな。また会うことがあるかは知らんが、確かにお前さんはあの莫迦どもよりはまともに見えるのう』

 陰陽師・吉備真備に伝えた感謝は本心だ。
 エパメイノンダスはロキとは違い、戦略以外の場でならちゃんと本音を伝える。
 もしも真備の助力がなかったなら、此処まで深く戦い切ることはまず無理だった筈だ。
 目的が情報収集だろうが物見遊山だろうが、恩を受けたことには違いない。
 そんなエパメイノンダスに、老人は何やら考えるような素振りを見せた後、一言。

『〈この世界の神〉は今見たな? 奴が従えるサーヴァントは、大方、オルフィレウスっちゅう詐欺師じゃ』
「……、オルフィレウス……?
 いや待て、なんでアンタはそんなことを――」
『儂らは聖杯を狙っとるが、だからこそこの奇怪な都を遊び場みてえに見下ろしてる奴らは邪魔なのよ。
 阿呆の祓葉も厄介なのは同じじゃが、儂はアレを造り上げた獣の方をこそ、面倒臭えと思っとってな』

 エパメイノンダスの質問への答えは返さず。
 喋りたいことだけを、まるでボケの始まった老人のように呵呵と笑いながら並べ立てる。
 しかし妄言と聞き流してはいけない気がした。
 この老人の語る言葉には、きっと文面上では計り知れないほどの意味がある。

『気ィ付けよ、希臘の英雄。この都の〈主役〉気取りどもは、お前らが思っとる以上に拗れてるぞ』

 そんな言葉を最後に、もう二度と、老人の声は聞こえなかった。
 掌に貼り付けていた式神――真備との通話を繋げていたそれが、ただの紙切れに変わって力なく地面に落ちる。
 見れば牛頭天王の姿も既にない。エパメイノンダスひとりだけが、祭りのあとの渋谷に取り残された形となっていた。

「……頭が痛えぜ」

 らしくもなく、ため息をついて。
 エパメイノンダスはひとり、黒く染まり始めた空を見上げるのだった。



◇◇



「――ふう。
 悪かったの、仲さん。お前を抜く時はせめてもの義理で、華々しく勝ち切れる場を狙おうと思っとったんじゃが」

 自身の隣へ戻ってきた、偽りの牛頭天王の骨子。
 阿倍仲麻呂の気配を、吉備真備はそう労う。
 返事はなかったが、不服を示されている感覚はあった。
 何分怨霊なので気難しく、臍を曲げられるとなかなか面倒臭い男なのだ。
 それでいて妙に義理堅い部分もある。今で言うと、ツンデレ、って言葉が正しいのかのう……と風に当たりながら独りごちる真備に、此処までずっと黙っていた、そうせざるを得なかった青年が言葉を投げた。

「……なんです、アレ。なんで貴方は、あの惨状を見て平気な顔していられるんですか……?」

 吉備真備の召喚者(マスター)。
 香篤井希彦は、語気を荒げる余裕もなく、戦慄していた。

 理由はひとつ。
 ひとつの街を舞台に行われていた、神話もかくやの大合戦を見たからである。

「あんなもの、もはや……!」

 聖杯戦争ですらないだろう、と。
 真備の術により一時的に彼と同様の千里眼能力を付与され、戦いの一部始終を見届けた希彦は吐く。
 幻術の類だというロジックを聞いた上でも、何ひとつ納得の行く点はない。

 世界そのものを騙し、テクスチャを書き換えて現実へ物理的に干渉する幻術?
 何だそれは、聞いたこともない。そんな力、たとえ英霊だって持っていいものじゃない筈だ。
 再現だろうが何だろうがグングニルやミョルニルが飛び交い、スキーズブラズニルが空爆を仕掛けるなんて絵空事が罷り通るものか。
 全知全能にも等しい奇術師の御業。これと真っ向から殴り合えるサーヴァントが存在する事実も、希彦を動揺させるには十分すぎたが。

 何より、あのキャスターは――希彦の心を射止めた少女、神寂祓葉の偶像さえも造り出してみせた。
 希彦は、祓葉の戦う姿を知らない。彼女がどれだけ無法な存在なのかも、知らぬまま〈恋慕〉の狂気を抱えている。
 赤ちゃんはコウノトリが運んでくると信じている子どものようなものだ。
 その彼にとっては形だけ再現しただけの劣化コピー品の祓葉でさえ、十分すぎるほどに心を震撼させる衝撃であった。

「おう希彦。お前さん、なぁに眠てえこと抜かしとるんじゃ」

 訴える希彦に、しかし真備は呆れたような顔で言った。
 何を寝ぼけているのかと。
 それは本来、プライドの高い希彦を噴飯させる筈の態度だったが……

「お前が自分で考え、自分で選んだ道じゃろうが。
 それなのにピーピー泣き言漏らすもんじゃないわ、みっともない」
「ッ……」
「あの状況でケツ捲くるんじゃなくむしろ奮い立つのが狂人ってもんの在り方よ。
 ……まあ、儂から言わせればろくでもないことこの上ない在り方だがの。それに」

 有無を言わさぬ痛辣な指摘が、希彦に生半な反論を許さない。
 普段ならいざ知らず、常識も認識もすべて吹き飛ばすような神域の戦場を目撃したショックの冷めやらぬ今ではそれも不可能だった。
 立ち尽くす希彦に、真備は更に続ける。

「お前も分かっとるじゃろ。この聖杯戦争は、そもそもはじまりからして取り返しが付かないほどに歪んどる。
 生まれつきの奇形なんじゃから、そりゃ時が経つにつれて無茶苦茶になっていくのは普遍の道理さな。
 こればかりはお前さんも儂も、だぁれも悪くない。餓鬼どもの遊びに巻き込まれちまった不運を呪うしかないわ」

 その言葉は、陰陽道の始祖と呼んでも差し支えない偉人が告げる、預言にも等しかった。
 世界はこの先も、聖杯戦争が続く限り混沌だけを描いていく。
 誰にも止められない。それどころか、都市はより壊れ果てる。
 〈熾天の冠〉が降りるまで。誰かの願いが、叶うまで。

「――それでも、お前は生きるんじゃろう?」
「あ……当たり前、です……!
 僕はそのために、この懐中時計を手にした。そして彼女に、神寂さんに想いを伝えたんだッ」
「ならせめて前向けい。ンで自分で考えぇよ。
 世界がどれだけ狂っていようと、結局最後はそれを歩く人間次第だからの。
 逆に言えば、自分が今どこにいるかも分からん阿呆に掴めるもんなぞ何もないわ。
 上陸のアテもなく荒れ狂う海に漕ぎ出すのは端から聞けば美談じゃが、実際はただの向こう見ずじゃ」

 希彦が思い出していたのは、炎の狂人の嘲笑だった。
 赤坂亜切。彼は、心底自分を滑稽なものだと見下していた。
 どこに行っても、何をしても天才と、美男子と賞賛された希彦にとって初めて味わった屈辱。
 単なるやっかみと切り捨てた筈のあの顔が、何故か今になってまた瞼の裏に蘇ってきたのは何故なのか。

 ――君は、彼女とどのくらいの付き合いなのかな?

 あの言葉は、本当に額面通りの意味だったのだろうか。
 祓葉という少女と出会い、命を奪われて燃え尽きた〈はじまりの残骸〉。
 彼があの質問を通じて推し測ろうとしていたのは、ただの付き合いの長さ?

 それとも……。

「……行きましょう、キャスター。今の醜態は忘れてください」

 希彦は、小さく咳払いをして、それで思考を切り替えた。
 足を止めてはいられない。心底癪だったが、今の真備の説教はいつになく身に響いた。

「赤坂亜切との協定に従って、〈脱出王〉を始めとした他の残骸どもを探します」
「はいよ。なんじゃい、妙にしおらしい顔しよって。夜は雨かの? できれば普通の、風流な雨であってほしいもんだがなあ」
「それと」

 神寂祓葉について、香篤井希彦が知っていることはごく限定的だ。
 虫螻の王と自身のサーヴァント、その両方から理解の浅さを酷評されたウートガルザ・ロキよりも更に下。
 あるいは、だからこそ気持ちよく酔っていられたというのもあるのだろうが……その点、まがい物なれど驚天動地の大立ち回りを演じながら破壊の限りを尽くす想い人の姿は希彦の熱を冷まさせてくれた。
 何せ、祓葉の強さに関しては虫も陰陽師も、一切否定していなかったのだ。
 それはつまり、あの人は嘘でも何でもなく、ああいう規模での戦いを行える怪物であるということで。
 そんな驚きは希彦に、ひとつの気付きを与えた。

「約束の時間が来る前に、もう一度、祓葉さんと会います」

 ――僕は、あの人のことを何も知らない。
 ――知りたい。それが何を招くにせよ、知らなければいけないと今は強くそう思う。

「……ま、多少はマシな答えと認めてやるか」

 真備はニヤリと笑って、希彦の頭をぼふぼふと撫でる。
 「子供扱いしないでください! 僕二十七ですよ!!」と憤慨する希彦をよそに、老陰陽師は考えていた。

 吉備真備は、そこまで善人でもお人好しでもない。
 もしやろうと思えば、マスターなしで現界を継続させることも不可能ではない。
 希彦が狂気の方に傾いてしまった時点で切ることも、真備にとっては冗談でも何でもなく択のひとつだったのだ。
 なのに彼は、それをしなかった。その理由が、これである。

 香篤井希彦は実にからかい甲斐のある男だ。
 しかし彼は道化ではあっても、愚かではない。
 形がどうあれ常に前を向き、へこたれず、進み続けられる男。
 彼がそんな青年だからこそ、吉備真備はこうしてその迷走に寄り添い、助けてやっている。
 要するに――気に入っているのだ。その証拠にまたひとつ、こうして面白い方針転換を見せてくれた。

 神に魅入られ、〈恋慕〉を抱き、恐怖に震えて、また歩き出す。
 実に退屈のしない男である。真備は一貫性というものをそれほど重視しない。大事なのはどこへ向かうか、進むか戻るか。
 獣の香りに包まれ、誰も彼もが歪んでいくこの都市において、彼らは明確にただ前だけを向いていた。



◇◇



 悪魔と少年少女が去った代々木公園の中で、魔女は最悪の気分のまま腹の鈍痛に汗を流していた。
 仁杜達を殺し、英霊の気配に寄せられてきた者がいればそれも殺す。
 その腹積もりでいた数十分前の自分の楽観的な思考にさえ腹が立つ。
 更に言うなら、相変わらずこっちの都合というものを考えずに暴れてくれたシストセルカにもひどく苛ついている。

 が、嘆いても当たっても現状は変わらない。
 三人のマスターと、二体のサーヴァント。
 そして、魔力が枯渇し、肉体にも大きなダメージを受けた手負いの自分。
 それが、魔女の開いたお茶会の顛末であった。

「……だいじょうぶ、いーちゃん……?」
「……うっさい……。あんたに心配されるようなことじゃ、ないから……」

 おろおろとしている仁杜を手で制しながら、睨み付けるのは彼女の"保護者"二名だ。
 高天小都音伊原薊美。彼女達のサーヴァント、セイバーとライダー。
 不用意な行動を取れば殺すと、彼らの目線がイリスにそう告げていた。
 暫しの沈黙。それを破ったのは、小都音であった。 

「――いいかな、イリスさん」
「……、……」
「さっきも言ったけど、私達に交戦の意思はない。
 別に直接的に組まなくたっていい。不可侵条約とか、都合いい時だけの共闘とか、そういうのでも十分。
 私達にしてみたらあなたの〈蝗害〉と揉めなくてよくなるだけで嬉しいし、……"あの子"に備える戦力にもなる。何も仲良しこよしでやろうってわけじゃないんだよ」

 仁杜は論外として、薊美もイリスとはまず間違いなく相性が悪い。
 茨の王子がどれほど取り繕ったとして、その言葉は激情を買うばかりだろう。相手は癇癪持ちなのだ。
 そこで、穏当な交渉をするべく前に出たのがこの小都音。
 自分達が魔女へ求める条件(ハードル)の低さを示し、その上で享受させて貰うメリットについても余さず明かす。

「それに。この状況で私達と戦うのは、如何に〈蝗害の魔女〉さんでもちょっと美味しくないんじゃないかな」

 もっとも、甘言だけで釣れてくれる相手とも思えない。
 最後に付け加えた言葉は、最低限のオブラートに包んだ脅しだった。

 そっちの状態は把握している。
 条件を呑めば、悪いようにはしない。貴女の方針を縛ることもない。
 だが、〈蝗害〉がこっちに牙を剥く可能性が残るのであれば、それなりの対応は取らせてもらう。
 小都音は優秀な社会人だった。なので多少なり、物事の進め方というものを心得ている。
 イリスの射殺すような眼光と、努めて平静を装った小都音の視線が交差する。
 あくまで平静ぶっているだけで、内心は冷や汗ダラダラだ。
 これでも拗れるようなら本当にどうしようか……と、気を抜くと焦りが態度に出そうで怖い。

「…………つくづく、ムカつく奴らね」

 イリスは、忌まわしそうに呟く。
 なのに彼女が激昂せず、シストセルカを令呪で呼ぶ気配も見せないのは、小都音の言葉が図星だからだ。

 ――色間魔術の応用で、失った魔力の回復は常人より遥かに速い速度で行うことができる。
 土地そのものに色を浸潤させ、自分を逆の色彩に設定することで、土地の魔力を吸い上げてしまえばいい。
 ただしそれでも、すぐに完全回復とはいかない。魔力が枯渇していようがシストセルカ・グレガリアは最強の暴力装置として君臨するだろうが、そこで不測の事態が起こらないとは限らない。

 何より……仁杜の陣営には、あのキャスターがいる。
 シストセルカ・グレガリアを一時圧倒し、まんまとイリスの想定を破綻させてくれた奇術師。
 アレが此処に飛んできてもう一戦となると、流石にそれは本当にお手上げだ。
 なのでイリスは、此処で事を荒立てるわけにはもういかなかった。
 どうする。考えを巡らす魔女の袖が、そこでくいくい、と引かれる。

「あの……いーちゃん……」

 眉をはの字にして、困ったように見上げてくる女(二十四歳・無職)。
 見ているだけでなんだかムカムカしてくる人畜無害を装った人畜大有害生物が、小首を傾げながら言った。

「……、だめ?」
「……………………はぁ~~~~…………」

 肺の酸素を全部吐き出したみたいな、深い溜め息が出た。
 もういい加減にしてくれ、という気分が止まらない。
 何だか考えるのも馬鹿らしくなって、まだ倦怠感の残る身体を背凭れに委ねる。
 そしてひらひらと、諦めたように手を振った。

「……直接組むことはしない。
 邪魔をすれば殺す。そして祓葉を殺す役目も、あんた達には渡さない」

 同行者など、もう二度と御免である。
 いつかの思い出を否応なく脳裏に過ぎらせながら、イリスは続ける。
 続けたくもなかった言葉だが、背に腹は代えられない。
 今だけだ。そう自分に言い聞かせて、魔女は折れた。

「それでもいいなら、あんた達の要求を呑んであげる」
「よ……よかったぁ~~~!! えへへ、うへへへへ! いーちゃん大好きぃぃ……!!」
「うるさい暑いひっつくな! 腹に響くのよ今すぐ離れろボケ女!!」

 魔女のお茶会、これにて閉会。
 半泣きで戯れる仁杜と、それを鬱陶しげに足蹴にするイリス。
 本当に疲れたという様子でぐったり息を吐く小都音。
 そんな三者三様のリアクションをよそに、伊原薊美だけがひとり、思うところありげな眼差しで魔女を見つめていた。



◇◇



 同盟とは行かないが、協定は成立した。
 魔女・楪依里朱は当面、〈蝗害〉を仁杜一行へ向けない。
 対価としてイリスも、彼女達の戦力へ場合によって行動を求める権利を得た。
 シストセルカ・グレガリアとウートガルザ・ロキという最大戦力同士が完全に並び立つ結果こそ叶わなかったが、〈蝗害〉を気にせず聖杯戦争ができるというだけでお釣りが来る。
 尚、同盟は結ばないとは言っても、魔力と体力の回復が完了するまではイリスは仁杜達のもとへ留まることになった。
 長くても数時間だろうが、この間だけは、仁杜と愉快な仲間達は聖杯戦争上における最大の武力を持つ軍団になったわけである。

 ――状況は悪くない。伊原薊美は、冷静に自分の現状を分析していた。
 その上で、彼女はカスターへとある指示を飛ばす。

「ライダー。念のため、逃げた彼女達を追跡して貰ってもいいですか?
 深追いはしなくていいけど、多分まだそう遠くには行ってないと思うので」
「了解した、令嬢(マスター)。なかなかに気骨のある連中だったしな、うむ。追討しておくに越したことはないだろう」

 皆さんもいいですよね、と他三人に同意を求める。
 無論、異論は返ってこなかった。
 それを確認してから、薊美は今度は念話を使って、カスターに命令を追加する。

『決裂が明らかだったら殺していいです。ただ、できれば少し話を聞いてきてください』
『ふむ? 何だね、獅子身中の虫でもやる気かな?』
『そういうわけじゃないですけど、情報はなるべく多く集めておきたいから。
 もし今後高天さん達に見切りを付ける時があったら、その方が柔軟に動けるでしょ』
『はははは、怖いお人だ! だが合理的だな、了解した! 可能な限り善処しよう、黄色人種の子どもら相手に噛み砕いて物事を伝えるのは少々難儀するかもしれないが……』
『そこは大丈夫。難儀するのはきっとあっちの方だから』

 これでいい。
 薊美も、今すぐこの陣営に見切りを付ける気はない。
 が、何が起こるかわからないのが聖杯戦争だ。
 そのことは余裕綽々で会談に臨んだ白黒の魔女が、こうしてまんまとやり込められてしまった事の経緯からも窺える。
 慎重に、かつ時には大胆に。利用できるものは、何であれ貪欲に利用する。
 それが伊原薊美という"王子"の、人生の歩き方だった。

 カスターは動かした。
 得た情報を仁杜達に共有するかはその時また決めればいい。
 後は――。薊美はおもむろに、足をイリスの方へと向けた。


「……何? 人でなしのソルジャー・ブルーのマスターさん」
「ちょっとお話いいですか、いーちゃんさん」
「その呼び方やめろ」
「いいじゃないですか。可愛くていいと思いますよ、いーちゃんさん」

 この少女には、こちらも一度煮え湯を飲まされているのだ。
 少しの嫌がらせくらいはさせて貰おうと思いつつ、話しかける。
 ちら、と見れば、仁杜は小都音とお話中らしい。
 良かった、これならきっと邪魔は入らない。
 話そうとしている内容が内容だから、できればあのきゃんきゃんやかましい生き物(年上)に突撃されるのは避けたかった。

「……で、何の用なのよ。クソニートならともかく、あんたと話す理由は特に思い浮かばないんだけど?」
「あなたの"お友達"について聞きたいんです」

 お友達――その単語を発した瞬間、目の前の手負いの魔女の殺気が氷点下に落ちたのを感じる。
 舞台上での、お芝居としての殺意なら何度となく浴びてきた。
 薊美の輝かしい足取りに嫉妬した雑魚どもが、そういう眼で自分を見てきたことも数え切れないほどある。
 けれど、これは本物の殺意だ。冗談でも見窄らしい自己に対する慰めでもない、目の前の命を奪おうとする時の感情。

 それを受けても怯まない辺り、やはり薊美も十分すぎるほど非凡だった。
 涼しい顔で魔女の殺気を受け流し、怯みも臆しもせず言葉を重ねる。

「神寂祓葉さん。知ってますよね、この世界の〈太陽〉」

 薊美だって、進んで狂人の逆鱗など撫でたくはない。
 だが、それが必要なことであるならば、茨の王子は迷わない。
 そも――この話題で臆病風に吹かれるなど、薊美にとっては死にも値する屈辱である。

「ねえ、いーちゃんさん」

 問わねばならない。
 "彼女"をよく知るこの魔女に。
 そうでなければ、自分は停滞したまま腐るだけだ。
 茨は枯れ、地面に落ちる。あの、踏み潰された林檎のように。


『――備えなさい、茨の君。
 美しく咲き続けたいのなら、あなたは"太陽"に勝たなきゃいけない』



 ふざけるな。



「聞かせてください。神寂祓葉って、いったい"何"なんですか?」



◇◇



「よかったねぇ、わたし一時はどうなることかと思っちゃったよ」
「誰のせいだと思ってんのよ馬鹿」
「へにゃっ」

 頭に手刀を落とされて涙目になる腐れ縁の親友。
 彼女の姿を見つめながら、高天小都音は何度目とも分からないため息を吐き出した。

 そもそも、それはこちらの台詞だ。
 本当に、どうなることかと思った。
 このニートは恐らく、自分がどれだけいろいろ考えていたかも知らずにこうして呑気に成功を噛み締めているのだろう。
 冗談ではない。冗談でも何でもなく、一生分気を張った自信がある。
 イリスのこともそうだが、途中で乱入してきた琴峯と呼ばれていた少女達のこともそうだ。
 彼女達への対処には特に気を遣った。ともすれば、イリスに対するそれ以上に。

(ごめんね、セイバー。毎回無茶なことお願いしちゃって)
(マジでな。まさか、"なるべく殺さないで済ませてほしい"なんて頼まれるとは思わなかったぜ。
 まあ最後は何をしてくるか分かんなかったからな。サーヴァントだけでも殺しとくつもりだったが)

 ――そう。小都音はトバルカインに対し、ナシロ達の殺害を極力避けるよう頼んでいた。

(仕方ないでしょ。私の目的はあくまでも、にーとちゃんと一緒にこの世界から帰ること。
 もし方法さえ見つかったら、その時は勝つことじゃなくて逃げること、脱出を主目的に動く可能性もぜんぜんある。
 だったらああいう、いかにもないい子たちは敵に回したくないって考えたの。もしかしたら、私達の助けになるかもしれないし)

 小都音は仁杜とは違って大局を見ているし、薊美ともまた違う視点で現状を認識している。
 今回の聖杯戦争の仕組み上、普通は不可能である複数の参加者による同時生還。
 それを成し遂げられる手段が見つかる可能性は、夢と断じて捨ててしまうには惜しい程度にはあると小都音は踏んでいた。
 これだけイレギュラーづくめの儀式なのだ。どこかで、そういう方面の綻びが出てくることだってあり得ないと断言すべきではないだろう。

 ナシロ達は、見ていて罪悪感を覚えるくらいには善玉に見えた。
 だから、小都音はトバルカインに積極的な殺害を命じず、牽制と軽い掃討に留めたのである。
 もしそうでなければ、トバルカインが本気だったなら、高乃河二の予想通り、誰ひとりただでは済まなかった。
 結果的に誰の命も失われることなく状況が終結したのは、小都音の戦略によるところもあったのだ。

(……お前は、甘いんだか冷たいんだか分かんねえナ)
(どうなんだろうね。にーとちゃんやイリスさんみたいに、モブが死んでもノーダメって感じの割り切りはまだできないつもりだけど)
(まあ、いいんじゃねえの。あのアホニートのブレーキ役は大事だろ。お前までイカれたらいよいよどうしようもねえ)

 付き合わされる私は堪ったもんじゃねえけどナ……?
 と睨み付けてくる彼女を、小都音は苦笑してどうどうと宥めるしかなかった。
 と、まあこのように。小都音は小都音で、月並みなりにいろいろ考えていたのだが。

「ねえことちゃん、わたし疲れたー。一回おうち帰らない?」
「帰ってどうすんの。……まあ、どこか場所を変えて休むのには賛成だけど」
「ロキくん戻ってきたら、何か建物とか作れないか聞いてみよっか。
 どうせならお城みたいなすっごいのがいいよね、へへ……。
 超高速の回線通ってて、エナドリもストゼロも飲み放題。ぼふんぼふんのベッドの上で朝まで寝たいなぁ……」
「却下。これ以上目立ったら絶対ろくなことになりません」
「あう」

 陣営のお姫さまはこの通りである。
 まったく、あのロキは何だってこれをあんなにも気に入っているのだろうと思う。
 思ったところで、自分がその答えを知っていることに気付いて苦笑した。

 要するに彼もまた、見たのだろう。
 感じたのだろう。自分がいつかの星空の下で感じたものと、同じ情動を。

「……ほんと、にーとちゃんといると退屈しないわ」
「えっ。へへ、そうかなぁ……」
「褒めてないからね。これは皮肉のたぐいです」
「ひどいっ!?」

 どこへ向かうとしても。
 何を目指すとしても。
 最終的には、自分達ふたりで。
 この腐れ縁を守るためなら、何にだって手を染めよう。
 ロキのような悪魔も、イリスのような魔女も、乗りこなしてみせる。
 自分のやっていることを凡人の背伸びと自覚しながら、それでも高天小都音は、天枷仁杜に寄り添う星だった。



◇◇



 逃げ切った。
 いや、まだ油断はできないが――とりあえず、当座の危機は脱したと言っていいはずだ。
 共にその確信を抱きながら、琴峯ナシロと高乃河二は、ようやく肺の空気を吐き出すことができた。

「……悪かったな、高乃。私のせいでずいぶん綱渡りをさせた」
「いや、いい。君に付いて行くことを選んだのは僕の方だ。自分の決断を他人に転嫁するのは不誠実というものだ」

 あの時、代々木公園で戦端の口火を切ったのは他でもないナシロだ。
 イリスと仁杜に業を煮やし、感情的になってヤドリバエを動かした。
 形だけを見れば、そう。けれど実際は、彼女の暴走というだけではない。
 というのも。魔女の茶会が開かれているあの公園に向かうに当たり、ナシロは最初から"やるべきこと"を決めて臨んでいた。


『……高乃。もう一回はっきり言うが、これからやることにはとんでもない危険が伴う。
 だから、お前まで無理に付き合う必要はない。ランサーのいない今のお前が首を突っ込むには危なすぎるヤマだ』

 ヤドリバエの眷属が特定した魔女の居所に向かう最中、ナシロは河二へこう切り出した。

『楪のことは、一応少しは知ってるつもりだ。
 あいつはとにかく気分屋でな。自分の機嫌を他人に押し付けることに抵抗も、躊躇もない。
 そんな奴がサーヴァントともやり合えるような力を持ってるっていうんだから、悪い冗談みたいな状況だよ』
『危険性については、僕も認識している。
 時間もない。端的に、君がどうやって介入し、収拾を付けるつもりなのかを聞かせてくれ』
『……まずは楪と話をする。素直に頷くとは思えないが、この際妥協点でもいい。顔を突き合わせて、そこで探る』

 可能ならば、渋谷で暴れる〈蝗害〉を止めさせたい。
 その上で少しでも、建設的な話ができればいい。

 だが。

『もしも暖簾に腕押しだったら、アサシンを動かす』
『……それは、些か勇み足ではないだろうか。
 彼女を侮っているわけではないが、楪依里朱と――場合によっては他にいる複数のサーヴァントも相手取らねばならなくなるんだ。
 確かにアサシンの"威圧"は効果的だと僕も思うし、眷属の投入である程度は抗戦できるだろう。が……』
『分かってるよ。私も、勝てるとは思ってない。だからこれは逃げるための一手だ』

 夢だけ見てはいられない。
 公園の状況が魔女討伐に傾くならば、それで良し。
 しかしそうもならなかった時は、撤退に尽力する必要がある。

『アサシンの眷属を目くらましに使いつつ、隙を窺って令呪を切る。
 これなら私とアサシンのふたりだけでも、十分に遂行可能な作戦の筈だ』

 だから、お前は無理して私に付き合わなくてもいい。
 ナシロはそう言ったが、しかし、河二の答えは決まっていた。

『――なるほど、理解した。
 なら僕は僕なりに、楪依里朱を獲れる機会を窺うことにする』
『……、……いいのか?』 
『見くびらないでくれ、琴峯さん。
 僕も馬鹿じゃない。これが勝算のない作戦だったら、君の勧めに従っていたかもしれない。
 それでも参ずると決めたのは、僕なりに君のプランに可能性を見出したからだ』

 それに。
 この先の思考を、河二は言葉にしなかったが――
 父の仇を探し、討つことを目的としている人間が、複数のマスターが一堂に会した状況を避けて通るのは不合理だと考えたのもあった。
 こうして、少年少女の大作戦は綱渡り同然に幕を開け。そして見事、ふたりとも命を拾うことに成功した。


「アサシンもよく頑張ってくれた。ありがとな、今回ばかりは心から礼を言う」
「ほんっっっとですよもぉぉ……!! 見てくださいよこれ! この傷! ハイテンションも冷めるホラー体験だったんですからねこれ!!」
「……いや、本当に助かったよ。お前、ちゃんと頼れるサーヴァントじゃないか。見直したし、今回の埋め合わせは必ずさせてもらうさ」
「む、むむむ……。そう素直に褒められるとなんかこう、羽の根っこのあたりがこそばゆく……むむむぅ……」

 ヤドリバエの脇腹には、鋭利な刃物による刀傷が一筋走っている。
 幸いにして傷は浅くて済んだが、これはナシロが逃亡のために惜しげなく令呪を切った恩恵だった。
 令呪による命令遂行のためのブーストがかかっていなければ、トバルカインの凶刃はあの一瞬だろうと彼女の肉体を両断していた筈だ。
 重ね重ね、今回のことはずっと綱渡りだった。河二の参戦も、ヤドリバエの働きも、ひとつでもピースが欠けていたなら此処に琴峯ナシロの姿はなかっただろう。

「高乃も、ありがとう。ランサーのことと言い、お前には世話になりっぱなしだな」
「気にすることはない。それに、僕は君にひとつ謝らねばならない」
「……謝る? 何をだよ」
「僕はあの時、楪依里朱を殺すつもりだった」

 しん、と空気が冷える。
 それが冗談でないことは、河二の顔が証明していた。
 いや、そもそも彼は冗談など言うような男ではない。

「君はたとえ敵対していると分かっていても、彼女の命を奪うことを良しとしない。
 そう分かった上で、それでも僕は自分の判断を優先した」
「……、……」
「殺すべきだと思った。彼女は、生かしておくには危険すぎる魔女だと考えたんだ」

 白黒の魔女を、彼女が従える〈蝗害〉を野放しにしておけば、必ずやあらゆる形で都市を惨禍が襲い続ける。
 ならばこの一撃でそれを断ち切り、そして同時に、確認しておくべきだと考えた。
 ――己は、そこに大義があるなら人を殺せると。
 そう証明するために、いずれ果たす復讐の前座として楪依里朱を用いたのだ。

 結果的にイリスは死なず、大きなダメージを負っただけで留まったが。
 それは河二が仕損じたのではなく、イリスが咄嗟に肉体強化の魔術を使用したからでしかない。
 逆に言えば彼女の反応が遅れていれば、河二の拳は楪依里朱を殺害していた。
 未だ技も肉体も発達途上なれど。弛まぬ鍛錬を積んだ武道家が殺す気でその拳を使えばどうなるかなど、自明である。

「……なあ、高乃」

 そんな河二の告白に、ナシロは少し黙ってから、口を開いた。
 彼の凶行を咎めるでなく、恐れるでもなく。
 どこか告解するような口調で、少女は言う。

「私は、間違ってるのかな」
「……琴峯さん?」
「謝らなきゃいけないのは私の方だよ。
 作戦通りなんかじゃないんだ。私はあの時――楪と、あいつを庇った女の言葉で、頭に血が上ってた」

 ――というか逆に、あんた達は本気で無辜の犠牲とやらにいちいち心痛めて戦ってんの?

 ――どうでもよくない?
 ――どうせ全部作り物なんだから。わたしたちしか、生きてなんかないんだから。

「赦せない、と思ったんだ。
 こいつらだけは赦せない、赦しちゃいけないと、そう思った。
 あの瞬間私は、お前の命を背負ってることも忘れて、暴走してた」

 作戦はうまくいった。それでも……ナシロがあの時暴走していたのは、事実だ。
 命を冒涜し、その営みさえ否定して、価値はないと断ずる目の前の女達が赦せなかった。
 それは倫理的にも道徳的にも正しい、至極まっとうな怒りだ。
 この世にどうでもいい命などひとつも存在しない。隣人を尊重できない人間は、悪だ。

 ただ。この世界が造り物で、そこに生きる人々もただの人形でしかないという指摘は――事実なのである。

「違う。私はあの時、この世界の人々のために怒ったんじゃない」

 ナシロは言う。
 目を伏せて、自分の罪を噛みしめるように。

「私は――――自分のために、怒ってたんだ」

 正しいことは痛い。
 正論は、心を無造作に抉る。
 だからそれをされた人間は怒るのだ。まさに、あの時のナシロのように。
 自己を防衛するために感情を爆発させ、拳を握るのだ。

「私は……たとえ造り物だろうが何だろうが、この都市に生きる人達のことを蔑ろにはしたくない。
 背景だ人形だと蔑んで見下して、その笑顔と日常を軽んじるようなことだけはしたくないと思ってる」
「……、……」
「でも――私だって、そこまで馬鹿じゃない。
 分かってるんだ、頭じゃな。正しいことを言ってるのはむしろ、あいつらの方なんだって。
 挙句子どもじみた意地でお前まで危険に曝した。何やってんだ、って感じだよな」

 は、と、自傷するように笑った。
 理想と現実の矛盾と、雪村鉄志の話を聞いた時からどうにか抑え込んでいた胸中の動揺。
 そのふたつが、あの時、爆発した。そしてその傷口は今も、敬虔な少女をこうして苛み続けている。

「けど、それでも…………守りたい、って思っちゃうんだよ」

 造り物の世界を愛でること。
 どれほど無意味と謗られても、その綺麗事に背を向けたくない。

「そう思うのは、間違ってることなのかな」

 告解を終えたナシロに、河二はすぐには声をかけられなかった。

「僕は、君が間違っているとは思わない。しかし――」

 心の中でよく言葉を纏めて、咀嚼して、その上でようやく声にする。

「――彼女達の言うこともまた、間違ってはいない。そういうことなんだろうと、僕は思う」
「……はは。そっか」

 河二の答えを聞いて、ナシロは静かに天を仰いだ。
 河二も、それに倣うように、一緒に空を見上げた。
 もはやすっかり空は黒みがかって、夜といった風体になりつつある。
 この空の下で、一体どれほどの数の。願いや理想が、喰らい合っているのだろうか。

「難しいな、戦うってのは」
「ああ。僕も、そう思うよ」

 少年少女は、共に未だ道半ば。
 迷いながら、傷つきながら、彼らはそれでも戦っていく。


 神寂れたる、この都市の中で。



◇◇



【渋谷区・代々木公園近辺/一日目・日没】

【高乃河二】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)
[令呪]:残り三画
[装備]:『胎息木腕』
[道具]:なし
[所持金]:それなり(故郷からの仕送りという形でそれなりの軍資金がある)
[思考・状況]
基本方針:父の仇を探す。
0:……僕はきっと、大義のために人を殺せる。
1:ランサー(エパメイノンダス)と合流する。
2:同盟を利用し、状況の変化に介入する。
3:琴峯さんは善い人だ。善い報いがあって欲しいと思う。
4:ニシキヘビなる存在に強い関心。もしもそれが、我が父の仇ならば――
[備考]
※ロールとして『山梨からやってきた転校生』を与えられており、少なくとも琴峯ナシロとは同級生のようです。
※雪村鉄志から『赤坂亜切』、『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報と推論を共有されています。
※レミュリンから『イリス』に関する情報を得ました。
※レミュリンと“蛇杖堂絵里”の連絡先を得ました。

【琴峯ナシロ】
[状態]:疲労(大)、複数箇所に切り傷、魔力消費(中)、精神的疲労
[令呪]:残り二画
[装備]:『杖』(3本)、『杖(信号弾)』(1本)
[道具]:修道服、ロザリオ
[所持金]:あまり余裕はない
[思考・状況]
基本方針:教会と信者と自分を守る。
0:私は、間違ってるのかな?
1:信者たちを、無辜の民を守る。そのために戦う。
2:楪及び〈蝗害〉に対して、もう一度話をする必要がある。
3:ダヴィドフ神父が危ない。
4:ニシキヘビ……。そんなモノが、本当にいるのか……?
[備考]
※少なくとも高乃河二とは同級生のようです。
※琴峯教会は現在、白鷺教会から派遣されたシスターに代理を任せています。
※雪村鉄志から『赤坂亜切』、『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報と推論を共有されています。
※ナシロの両親は聖堂教会の代行者です。雪村鉄志との会話によってそれを知りました。
※レミュリンから『イリス』に関する情報を得ました。
※レミュリンと“蛇杖堂絵里”の連絡先を得ました。

【アサシン(ベルゼブブ/Tachinidae)】
[状態]:疲労(中)、脇腹に刀傷、高揚と気まずさと
[装備]:眷属(一体だけ)
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:聖杯を手に入れ本物の蝿王様になる!
0:へへ~~んどんなもんだい! これが次期蝿王候補筆頭、ヤドリバエ様の力ですよ!! ……あれ、何かおセンチな雰囲気……
1:ナシロさんが聖杯戦争にちょっと積極的になってくれて割とうれしい。
2:あんなチビっこ神霊には負けませんけど!眷属を手に入れた今の私にとってもはや相手にもなりませんけど!!
3:ウワーッ!!! せっかく作った眷属がほぼ死んだ!!!!!
4:ナシロさん、らしくないなぁ……?
[備考]
※渋谷区の公園に残された飛蝗の死骸にスキル(産卵行動)及び宝具(Lord of the Flies)を行使しました。
 少数ですが眷属を作り出すことに成功しています。 
※代々木公園での戦闘で眷属はほぼ全滅しました。今残っているのは離脱用に残しておいた一体だけです。


【渋谷区・市街地(代々木公園近く)/一日目・日没】

【ランサー(エパメイノンダス)】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージや傷
[装備]:槍と盾
[道具]:革ジャン
[所持金]:なし(彼が好んだピタゴラス教団の教義では財産を私有せず共有する)
[思考・状況]
基本方針:マスターを導く。
0:ハードすぎんだろ、聖杯戦争。
1:コージ達と合流する。伝えなければいけないこともある。
2:同盟を利用し、状況の変化に介入する。
3:〈蝗害〉とキャスター(ウートガルザ・ロキ)に最大級の警戒。キャスター(吉備真備)については、今度は直接会ってみたい。
4:琴峯ナシロは中々度胸があって面白い。気に入った。
5:カドモスと会ってみたいなぁ!
[備考]
※カドモスの存在をなんとなく察しているようです。

【キャスター(ウートガルザ・ロキ)】
[状態]:右半身にダメージ(大/回復中。幻術で見てくれは元通りに修復済み)
[装備]:
[道具]:
[所持金]:なし(幻術を使えば、実質無限だから)
[思考・状況]
基本方針:享楽。にーとちゃんと好き勝手やろう
0:もっと圧勝したかったな~。
1:にーとちゃん最高! 運命の出会いにマジ感謝
2:小都音に対しては認識厳しめ。にーとちゃんのパートナーはオレみたいな超人じゃなきゃ釣り合わなくねー?
3:薊美に対しては憐憫寄りの感情。普通の女の子に戻ればいいのに。
4:ランサー(エパメイノンダス)と陰陽師のキャスター(吉備真備)については覚えた。次は殺す。
[備考]
※“特異点”である神寂祓葉との接触によって、天枷仁杜に何らかの進化が齎される可能性を視野に入れています。

【ライダー(シストセルカ・グレガリア)】
[状態]:規模復元
[装備]:バット(バッタ製)
[道具]:
[所持金]:百万円くらい。遊び人なので、結構持ってる。
[思考・状況]
基本方針:好き放題。金に食事に女に暴力!
0:面白くなってきたな、聖杯戦争。
1:相変わらずヘラってんな、イリス。
2:祓葉にはいずれ借りを返したいが、まあ今は無理だわな。
[備考]
※祓葉戦前の個体数に回復しました。
※イリスに令呪で命令させ、寒さに耐性を持った個体を大量生産することに成功しました。
 今後誕生するサバクトビバッタは、高確率で同様の耐性を有して生まれてきます。


【渋谷区・代々木公園/一日目・日没】

【楪依里朱】
[状態]:魔力消費(極大/色間魔術により回復中)、腹部にダメージ(大)、メチャクチャイライラしている、未練
[令呪]:残り二画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:数十万円
[思考・状況]
基本方針:優勝する。そして……?
0:〈NEETY GIRL〉改め天枷仁杜の一団とは渋々協定。魔力がある程度戻るまでは同行する。
1:祓葉を殺す。
2:誰がいーちゃんさんだ殺すぞ(薊美に対して)
3:あのクソ虫本当にいい加減にしろせめて相談してからやれって何で令呪よこせしか言わないんだよ馬鹿ふざけんなクソクソクソ
[備考]
※天枷仁杜(〈NEETY GIRL〉)とネットゲームを介して繋がっています。
 必要があればトークアプリを通じて連絡を取ることが出来るでしょう。
※蛇杖堂記念病院での一連の戦闘についてライダー(シストセルカ)から聞きました。
※今の〈脱出王〉が女性であることを把握しました。

【高天 小都音】
[状態]:健康、とっても気疲れ
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:トバルカイン謹製のナイフ
[所持金]:数万円。口座の中身は年齢不相応に潤沢。がんばって働いたからね。
[思考・状況]
基本方針:生き残る。……にーとちゃんと二人で。
0:はああああああああああ(心からのため息)
1:伊原薊美たちと共闘。とりあえず穏便に収まってよかった。
2:ロキに対してはとても複雑。いつか悪い男に引っかかるかもとは思ってたけどさあ……
3:アレ(祓葉)はマジでヤバかった……けど、神様には見えなかった。
4:脱出手段が見つかった時のことを考えて、穏健派の主従は不用意に殺さず残しておきたい。なるべく、ね。
[備考]
※“特異点の卵”である天枷仁杜に長年触れ続けてきたことで、他の“特異点”に対する極めて強い耐性を持っています。

【セイバー(トバルカイン)】
[状態]:健康
[装備]:トバルカイン謹製の刃物(総数不明)
[道具]:
[所持金]:数千円(おこづかい)
[思考・状況]
基本方針:まあ、適当に。
1:めんどくせェけど、やるしかねえんだろ。
2:ヤバそうな奴、気に入らん奴は雑に殺す。ロキ野郎はかなり警戒。
3:あの祓葉は、私が得られなかったものを持っていた。
[備考]

【伊原薊美】
[状態]:魔力消費(中)、静かな激情と殺意、ロキへの嫌悪、仁杜への違和感
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:騎兵隊の六連装拳銃
[所持金]:学生としてはかなりの余裕がある
[思考・状況]
基本方針:全てを踏み潰してでも、生き残る。
0:神寂祓葉――"太陽"について、聞く。
1:殺す。絶対に。どんな手を使ってでも。
2:高天小都音たちと共闘。仁杜さん、ホントにおかしな人だ。
3:孤高が嫌いなんだろうか。だとしたら、よくわからない。
4:――"月"、か。
5:同盟からの離脱は当分考えていない。でも、備えだけはしておく。
[備考]
※マンションで一人暮らしをしています。裕福な実家からの仕送りもあり、金銭的には相応の余裕があります。
※〈太陽〉を知りました。
※自らの異能を活かすヒントをカスターから授かりました。

【天枷 仁杜】
[状態]:健康、魔力消費(超極小)
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:数万円。口座の中にはまだそれなりにある。
[思考・状況]
基本方針:優勝して一生涯不労所得! ……のつもりだったんだけど……。
0:いぇーいいーちゃん仲間入り~! なんかゲームみたいで楽しくなってきたねぇ!!
1:ことちゃんには死んでほしくないなあ……
2:薊美ちゃん、イケ女か?
3:ロキくんの戦勝会かなこの後は? わくわく。
4:この世界の人達のことは、うーん……そんなに重く考えるようなことかなぁ……?
[備考]
※楪依里朱(〈Iris〉)とネットゲームを介して繋がっています。
 必要があればトークアプリを通じて連絡を取ることが出来ます。


【渋谷区・代々木公園→移動開始/一日目・日没】

【ライダー(ジョージ・アームストロング・カスター)】
[状態]:疲労(中)
[装備]:華美な六連装拳銃、業物のサーベル(トバルカインからもらった。とっても気に入っている)
[道具]:派手なサーベル、ライフル、軍馬(呼べばすぐに来る)
[所持金]:マスターから幾らか貰っている(淑女に金銭面で依存するのは恥ずべきことだが、文化的生活のためには仕方のないことだと開き直っている)
[思考・状況]
基本方針:勝利の栄光を我が手に。
0:少年少女(ナシロ・河二達)を追う。多少話して、見込みがなければ鏖殺。
1:神へ挑まねば、我々の道は拓かれない。
2:やはり、“奴ら”も居るなあ。
3:“先住民”か。この国にもいたとはな。
4:やるなあ! 堕落者(ニート)のお嬢さん!!
[備考]
※魔力さえあれば予備の武器や軍馬は呼び出せるようです。
シッティング・ブルの存在を確信しました。


【渋谷区・ビルの上(ロキ戦の舞台からはかなり離れている)/一日目・日没】

【香篤井希彦】
[状態]:魔力消費(中)、〈恋慕〉、動揺
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:式神、符、など戦闘可能な一通りの備え
[所持金]:現金で数十万円。潤沢。
[思考・状況]
基本方針:神寂祓葉の選択を待って、それ次第で自分の優勝or神寂祓葉の優勝を目指す。
0:赤坂亜切の言う通り、〈脱出王〉を捜す。
1:……少し格好は付かないけれど、もう一度神寂祓葉と会いたい。
2:神寂祓葉の返答を待つ。返答を聞くまでは死ねない。
3:――これが、聖杯戦争……?
[備考]
二日目の朝、神寂祓葉と再び会う約束をしました。

【キャスター(吉備真備)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:『真・刃辛内伝金烏玉兎集』
[所持金]:希彦に任せている。必要だったらお使いに出すか金をせびるのでOK。
[思考・状況]
基本方針:知識を蓄えつつ、優勝目指してのらりくらり。
0:これだから可愛げがあるのよな、こいつは。
1:希彦については思うところあり。ただ、何をやるにも時期ってもんがあらぁな。
2:と、なると……とりあえずは明日の朝まで、何としても生き延びんとな。
3:かーっ化け物揃いで嫌になるわ。二度と会いたくないわあんな連中。儂の知らんところで野垂れ死んでくれ。
[備考]



[全体備考]
※渋谷区の代々木公園近郊の街が戦場になりました。
 犠牲者は最低でも2000~3000人以上ですが、詳細な人数は特定できないでしょう。
 現在は気候も元に戻り、立ち入っても問題はありません。



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最終更新:2025年01月18日 23:33