一歩を踏み出し、踵を鳴らす。
 それを以って回路を開く。
 魅了するためでなく、戦うための炎を引き出す。

 呼応するように、右手に担う剣が感光した。
 神殺しの王子のみが振るうことを許される、黄昏の剣。
 かつてひとつの神代を終わらせた一振りが、鋼の恒星(ペーパー・ムーン)の求めに応える。

 次の刹那、魔女に向けて薙ぎ払うことに躊躇はなかった。
 大気が焦げる音。焼殺の炎が、夢見るままに現実を侵蝕する。

「――――なるほどね」

 迫る火を阻んだのは、やはりと言うべきか色彩の壁だった。
 白と黒。魔女は色彩(いろ)に愛されている。
 網籠のように隙間なく組み合った黒白が、薊美の炎を阻んでいた。

「悪魔と契約したのね、あんた。
 酔狂なこと。そんなにもこっちの芝は青く見えた?」

 が……その拮抗は程なくして崩れ始める。
 鋼鉄も超高温の溶鉱炉では形を失い出すように。
 強靭な壁として立ち塞がった筈の黒白に、やがて赤色が混ざり始めたのだ。

 これには薊美の方が驚いた。
 疑っていたわけではないが、やはりこうして実際目の当たりにすると圧倒されるものがある。
 ――本物だ。ロキの言葉に嘘はなかった。この剣は、すべてを叶える力を秘めている。
 自分が望むすべての願いを。この身が描くすべての夢を。夢見る限り際限なく実現させる、破滅の枝(レーヴァテイン)。

「爆ぜて、スルト」

 躊躇はない。
 そんなものを残しておけるほど自分が月並みだったなら、そもそもこんな舞台に立ってなどいないのだから。
 主の命を受けた炎剣は、速やかにそれを果たした。
 刀身から放たれる炎が、まるでガソリンでも注がれたように爆発的に強化され、激流と化して目の前の白黒を打ち破ったのだ。

 まさに圧倒的火力。
 これを放たれて生き延びられる魔術師の方が少ないと断言できる。
 茨の王子がその心に飼う激情を形に起こしたような、破滅そのものの大火炎。

 人体など消し炭どころか、原型も残さずこの世から抹消できるだろう灼熱を揮っておきながら。
 しかし薊美は当然のように確信していた。
 まだだ。まだ終わっていない――その直感は的中し、王子の命を救う。
 焔の波を切り裂いて、視界すべてを覆うような白黒の波濤が薊美に向けて殺到したからだ。

「ッ……!」

 咄嗟にレーヴァテインを水平に構え、炎を吐かせながら波を凌ぐ。
 夢幻なれど神造兵装。薊美が薊美である限り、剣は担い手の彼女へ応え続ける。
 そうして凌ぎ切った瞬間、薊美は自分へ迫ってくるイリスの姿を認めた。

「舐めんなよ」

 その手に握られているのは、白黒の大剣だった。
 昼間、喫茶店での戦闘でも垣間見せた創造。
 宝具の域にさえ手を掛ける、色間魔術のひとつの極致である。
 何とか打ち合うことには成功したが、代償は大きかった。

(重い……!)

 そう、重い。
 腕が痺れる、骨が軋む。よもや折れたのではと杞憂したくなるほどの重量。
 イリスの細腕から出力されたとは思えない威力に、薊美は歯噛みした。

 魔術だけでなく、剣まで使えるとは想定外だ。
 だが、どこか違和感のある動きだった。
 あまりにも動作のひとつひとつが最適化され過ぎている。
 無駄がなすぎて人間味が感じられない。不気味の谷という言葉を思い出した。
 このまま相手のペースで戦い続けるのは分が悪いと判断し、力任せにレーヴァテインを叩き付けて後ろへ飛ぶ薊美。
 その判断は正しい。更に言うなら、何かおかしいと気付けたことも見事であった。

「色間魔術って言ってね。楪(ウチ)の魔術は色に親しむの。
 すべては白か黒か――つまり陰陽道の派生みたいなもんね。
 この世は白黒ふたつに分かたれた二元の世界だからこそ、その狭間にこそ神秘はあるとご先祖様は考えたみたい」
「ッ、ずいぶん前衛的な思想ですね。それ、私に言っていいんですか?」
「いいに決まってるでしょ。だって」

 イリスが迫る。
 剛剣を片手に見せるその挙動は、相変わらず常軌を逸した精度に裏打ちされていた。

「このくらいのハンデがなかったら、勝負なんて成り立たないもの」

 楪の魔術師は世界を二色で定義する。
 それは自身の体内でさえも例外ではない。
 身体を巡る神経、筋肉、細胞――そのすべてに色を与えて操作すれば。
 人体の限界を超えない範疇であれば、思い描いた理想の挙動を出力することだってできる。
 薊美に対してイリスが見せる超高精度の剣技と体術の正体は、つまるところそれだった。

 激情家のイメージそのままの、力任せの直情的な斬撃。
 本来ならば隙と陥穽に溢れているだろうそれを、イリスは色彩によるプログラミングで勢いそのままに最高精度まで高めている。
 よって薊美が防戦一方になるのは必然だったのだが。
 しかし、彼女も彼女でなんとか食らいついている。理想値で出力される魔女の剣戟を、劣勢ながらも確実にレーヴァテインで捌いていた。

「後悔しますよ」
「するかよ馬鹿」

 ――芝居には、殺陣というものがある。

 乱闘、格闘、筋書きのままに行う擬闘。
 薊美はこれを、時代劇の舞台に立つにあたって学んだ経験があった。
 彼女にそれを教えたのは現代日本で最高峰とされるその道の達人。
 彼が指南した技法を三日で修めた結果、どうか弟子になってほしいと頭すら下げられたのが二年前のこと。
 今では師の名前さえ覚えていないし、その舞台を公演したのも一年以上は前になるが、薊美は何ひとつ欠陥なく、かつて学んだ技術を引き出していた。
 それどころか。あくまで演技上の技術として教わった剣術を即興(アドリブ)で目の前の実戦に転用、最適化さえして。
 そんな離れ業をもって、迫る魔女の色彩と打ち合いを成立させているのだ。言うまでもなく人間業ではなかったが、薊美はそれを誇りもしない。

「ふ……ッ!」
「死ね」

 彼我の力量差は歴然である。
 この通り常に余裕はなく、故に死ぬ気で臨むばかりだ。悦に浸っている暇などない。
 対するイリスは常に理不尽。力の差を突きつけるように、大上段から怖じることなく君臨する。

(駄目だな。このままじゃドツボに嵌まる)

 此処まで耐え凌げただけで儲けものだ。
 薊美は打ち合いながらも後退し、距離を稼ぎつつ飛び道具代わりに炎を放つ。
 まともに当たるとは思っていない。現にイリスは全弾を撃墜しながら進んでくるが、幸いにして距離を取るという目的は果たされていた。

「意外とダサい真似すんのね。手前で喧嘩売っといて逃げんのかよ」
「ご心配なく。それより、貴女の方こそ大丈夫ですか」
「あ?」

 迫るイリスの眉間に皺が寄る。
 対して薊美は足を止めた。
 剣を構え、それ以上逃げない。

「――さっき私のこと、見違えたって言ってくれましたけど。
 具体的にどう伸びたかまでは、流石に掴んでないでしょう?」

 逃げる必要がないからだ。
 踏み込んできたイリスを見て、集中しながら魔術を行使する。
 次の瞬間、薊美の魂胆をようやく魔女は悟ったらしい。
 驚愕したように目を見開きながら、イリスはそれを見る。

 ――自身の専売特許である筈の、白黒の世界。
 それが己の意思とは関係なく地表に生まれ、槍衾のように棘を突き出して自分を挟み込んでくる光景を。

「ッ――――な……!?」

 驚くのも無理はない。
 幻かと一瞬疑ったが、違うとすぐに否定する。彼女だからこそ、それができる。
 何故なら今まさに、己を抹殺せんと襲いかかってくるこの白黒は。
 世界を二元の色彩にて定義し、操るこの魔術は――!


「再演・色間魔術(Re-Screening:Two-Tone)」


 楪家の秘奥、色間魔術――その模倣(コピー)!
 一度は性に合わないと放り捨てたが、ことこの魔術師と戦うならばこれは虚を突く奇策になり得る。
 それに、格好の学習教材が目の前にあるのに見逃すだなんてあり得ない。

 薊美の判断は正しかった。イリスは刹那、確かに思考を空白に染めた。
 魔術師とは生涯を自身の秘術と共に過ごす生き物。彼らはそれを研ぎ上げ、高め、研鑽と共に理解を深めていく。
 だからこそ、自分の相棒と呼んでもいい術理を他人が我が物顔で使ってくるという状況に無感動でいられる筈はない。

 そして、魔女が見せたわずかな隙を無駄にする茨の王子ではなかった。

「ッ、お前……!」
「――あは」

 迫る白黒の槍衾を、イリスは自身の色彩で堰き止める。
 色間魔術は万能、しかし全能には程遠い。
 想定外の事態への対応のため、魔女は大剣を消し防衛に集中を注がねばならなくなった。
 場馴れした判断力は確かに彼女を助けたが。優勢だった状況がこの瞬間、確かに崩れ出した。

「やっと焦ってくれた。その方が可愛いですよ、"いーちゃんさん"」

 あからさまな挑発も、すべては計算づくだ。
 茨の王子は喜悦の中にいる。されど、彼女は愚かを冒さない。

 付け焼き刃の色彩が、魔女の本家本元に押し流された。
 薊美は怯まず、レーヴァテインを振り翳して突撃する。
 さながらその勇猛さは、彼女が相棒とする騎兵隊の将校が如く。
 勇猛果敢、雄々しく華々しくそれでいてとびきり残酷に――我が敵死せよと望み祈る。

 イリスが虚空に呼び出したのは、無数の剣。
 先の大剣ほど武装としての質は高くないが、それだけに数を用立てることができる。
 これを用いて魔女は、迫る茨の王子を圧殺せんとした。
 薊美はやはり動じず、破滅の枝の出力に飽かして一薙ぎで剣波を打ち払う。
 ただ剣を振るったことで、そこにどうしても一瞬の隙が生じてしまうのは避けられなかった。
 薊美がイリスへそうしたように、白黒の魔女もまたそのわずかな間隙を見逃さない。

 この刹那のためにあらかじめ準備されていた、追加の一振りが。
 白と黒の軌跡を残しながら、音に迫る速度で薊美の眉間へ放たれた。
 射殺のような刺殺。此処に観客がいたのなら、薊美が脳漿を撒き散らして死ぬ光景を誰もが想像しただろう。
 しかし――先が読めぬからこそ、初見の舞台とは面白いのだ。

「再演(Re-Screening)――」
「……?!」

 薊美は、迷うことなくレーヴァテインを宙へ放った。
 それは言うまでもなく、誰が見ても分かる自殺行為。
 破滅の枝あってこそ魔人との戦闘に堪え得る身であったというのに、戦闘の柱を投げ出してしまったらどうにもならない。
 素人でも分かることだ。だが故に、その行動はイリスの度肝を抜けるだけの"意外性"を持っていた。

「――胎息合一(Co-Starring)」

 『自己核星・茨の戴冠』。
 薊美の魅了は二色。片や他者、片や自己。これは、その後者。
 己自身を精神レベルで深く魅了し、狂信的な自己愛をもって限界を超える。
 先ほど、イリスの魔術を模倣したのもこの力によるものだ。そして薊美は今、名前も得体も知らない魔術師の技を借り受けていた。

 高乃河二
 代々木公園で会敵し、不意打ちとはいえ蝗害の魔女に一撃与えた少年。
 彼が成し遂げた功績は、当時の薊美の度肝をすら抜く想定外のものだった。
 だからこそ記憶に残った。思い出そうとすれば精細に、一挙一動の流れまで反芻できるほど正確に引き出せる。
 過去は今に繋がる。役者ならば特に。積み重ねたものは決して無駄にならないと説いたいつかの講師の言葉が金言であったことを、薊美は生の実感と共に深く理解した。

 薊美は、高乃家の魔術のカタチを正確には知り得ない。
 彼女が見取れたのは彼がしていた特殊な呼吸と、その身のこなし。
 高乃の真髄は一子相伝の生体義肢にこそあり、それを手に入れないことには模倣など到底不可能だ。

 しかし――動きだけなら真似られる。
 足りない部分は他の魔術・技能を引き出して補ってやればいい。
 それができるのが茨の戴冠。己を星と信じ疑わぬ自己核星。
 薊美は河二の呼吸と体術のみを模倣し、その上で自身の肉体に白黒を貼り付けて即席のブーストとすることで、魔女が不覚を取ったあの一瞬を再現することに成功した。
 頬を白黒剣が掠める痛み。九死に一生を得た事実にさえ、躍動する少女は見向きもしない。

「この技に覚えはあるか、でしたっけ」
「――お前、ッ!」

 イリスは当然、防ぐ。
 防がないわけにはいかない。
 たとえ嘘偽り、見様見真似の猿真似だとしても、伊原薊美が魅せるそれは単なる虚仮威しではないと既に知ってしまっているから。
 既知の楔は、ともすれば未知を警戒するよりも深く、大きな障害となって人間の行動を束縛する。
 人として当たり前の心理だ。言うは易いが、命の懸かった勝負の土俵でそこを念頭に置いて立ち回ることがどれほど至難か。
 されど薊美はやってのける。イリスは応じるしかない。力の差は歴然であるというのに、天秤は緩やかに茨の王子へ傾き始める。

 ――同じ失態は繰り返さない。

 が、イリスがそう考えるのも含め薊美にとっては予想通り。
 放った拳は白黒の壁に防がれたが、そのタイミングで右手を掲げる。

「おいで」

 宙へ放ったレーヴァテインが、主の声に応じるようにそこで手中へ収まった。
 間髪入れずに繰り出すのは、激情家な魔女のお株を奪う力任せの唐竹割り。
 爆発的火力をブースターにして、先ほど打ち合っていた時とは比にならない威力を実現し粉砕に臨む。

 劇的。そう呼ぶしかない、茨の王子が奏でるドラマチック。
 もしこれが演劇ならば、悪なる魔女は王子の剣に討たれて命を落とすだろう。
 拍手喝采、カーテンコール。勧善懲悪は成され、熱狂のままに緞帳は落ちる。
 が――

「……っ。やっぱり、そう簡単には行かないか」

 勝負を決めるつもりだった乾坤一擲は、魔女の御業によって防がれる。
 再度創造した白黒の剣。それが、薊美の炎剣をしっかりと受け止めていた。
 力で押し切ることも叶わない。均衡は成立し、今度は魔女がこれを破る。
 鍔迫り合いの最中に繰り出す前蹴りが、薊美の腹を打ち抜いたからだった。

「ぐ、が……!」

 咄嗟に身を後ろに引けたことが幸いした。
 そうでなければ内臓のひとつふたつは潰されていただろう。
 生きた心地がしないとはまさにこのことだ。薊美は頭の中で独りごちる。
 やけに呑気な思考だと、一拍遅れてそう思ったが。
 命の危機が迫って脳が鈍麻しているのだと分かるから、笑う余裕は生憎なかった。
 楪依里朱は超人だ。改めてそう実感する。何故今ので倒せないのか、疑問すぎて呆れそうなくらいだ。

「お前さあ。さっき、私になんか言ってたよな」

 勝利を狙った奇策は、素のスペックという何とも無体な壁に阻まれて不発に終わる。
 腹を蹴られた拍子に溢れた涎を拭う暇すら、薊美には与えられない。
 次の瞬間、白黒の凶器が織り成す刃の雨が容赦なくその五体へ押し寄せたから。

「好きになりそうだから抜けたとか、なんとか。ずいぶん知った口叩いてくれたじゃん」

 目が見開かれる。集中の余りに、顔には王子の称号に似合わない青筋が浮かんだ。
 見目を取り繕っている余裕もまたなかった。
 一瞬でも、迫り来る"死"への警戒を緩めれば即座に自分は死ぬと。
 確信があったからこそ、薊美は言葉を返せない。
 炎を吐く神殺剣だけを味方に、白黒の嵐を打ち払うのに全力を注ぐしかなかった。

「――確かにそうかもね。だってあの女、"あいつ"に似てるから」

 なんとか、迫る雨霰を凌ぎ切った。
 と思った瞬間に、脇腹に衝撃を感じる。
 がッ、と鈍い声を漏らしながら吹き飛ばされて地を転がった。
 喧嘩殺法めいた体術(ステゴロ)。魔術に依らない不測の一手が、魔女の王子の優劣を更に広げる。

「取るに足らないなら無視でもすればいいのに、バカ正直に付き合っちゃってさ。
 軽口叩いて、距離感縮めて。漫才みたいに関わって、我ながらみっともないことこの上ないよな」

 剣を取り落とさなかったのは僥倖。
 復帰しようと顔を上げて、そこで思わず喉が鳴る。
 日本には、古来から伝わる吊り天井という罠(トラップ)があるが。
 今まさに薊美を押し潰さんとしているのは、白黒で編まれた棘だらけの"天井"だった。

 剣を天に向け、落ちてくるそれを炎で受け止める。
 見事な対応力だったが、薊美の表情は芳しくない。
 分かっているからだ。両手を用いて剣を握り、真上の死を防いだら。
 その時胴体は無防備のまま、怒り猛る白黒の魔女の前に晒されてしまうと。

「ぎ、ぁ……!」

 先の意趣返しとばかりに、薊美の胴へイリスの拳が炸裂した。
 強烈な衝撃に肺の空気が逆流する。地面を転がり、口端から吐血が垂れていた。
 そこに追撃が迫る。魔女は靴底を振り上げ、王子の専売特許を奪わんとする。

 ――踏み潰す。道に転がる林檎のように、その存在をこの世から除去してやる。

「ああホント――反吐が出る。自分にも、あいつらにも、お前らにも」

 無論ただの足技などではない。
 色彩に愛された魔女の一撃は人体程度、文字通りの意味で踏み砕く。
 衣服が汚れるのを気にしていられる状況ではなかった。
 地を転がり、一秒前まで自分の頭があった地面が爆ぜる音を聞く。
 体勢を立て直すなりレーヴァテインを一閃。当然のように、色の壁がそれを阻む。

「私がイラついてるって、知ってて喧嘩売ってきたんだろ?
 ならせめてなるべく派手に死んでくれるかな。それくらいの役目は果たせや、出来損ない」

 虚空から槍が突き出した。
 光の英雄ルー・マク・エスリンを相手にさえ防戦を成立させた、白黒織り成す暴風雨(ガトリング)。
 至近戦で抜くには過剰な火力だが、それだけイリスは薊美を警戒していた。
 〈はじまりの六人〉の最右翼。白黒の魔女に"敵"と認識されている事実、その恐ろしさが如何程のものかは語るにも及ばないだろう。

 が、理解した上でそれでも薊美は笑っていた。
 血、泥。それらにメイクされた姿は悲惨ですらある筈なのに、役者が薊美ならこれでも映える。

「気持ち悪いな。何笑ってんだよ」

 火力を一点に集約させ、炎の壁を形成して強引に飽和射撃と競り合う。
 夢見る力とは凄いもので、薊美はまるで長年連れ添った愛剣のようにレーヴァテインを使いこなしている。

 しかし、如何に奇術王謹製の〈神殺しの剣〉と言えども、扱うことで生じる魔力消費までゼロにしてはくれない。
 相手が相手なので出し惜しみはできないが、景気よく炎をぶち撒けてきたことの代償は確実に薊美の身体へのしかかっていた。
 あまり長くは戦えない。少なくとも現状の自分では、これ以上はあるべき美麗を保てない。
 持久力ですら遅れを取っているのが浮き彫りになり、いよいよ戦況は絶望の様相を呈してくる。
 なのに何故だろう。こんな状況だってのに、煌星みたいなインスピレーションが次から次へと湧いてきて止まらないのは。

「笑いもしますよ。私を"普通"と笑ったあなたが、今こんなに私を見てくれてるんですから」

 白黒と紅炎。
 異様と荘厳の激突が不意に終わった瞬間、イリスも薊美も同じタイミングで次の手を打った。

「抜かせ、クソ女」

 イリスが打ち込んだのは全長三メートルを優に超える、白黒の大鎌だった。
 それを六つ、躱すとした場合の軌道を計算して巧みに配置し放つ。
 対処するには正面突破しかないが、そのためには再度大火力を用立てる必要がある。

 イリスはずっと怒っている。なのにとても冷静だ。
 薊美がこんな規格外の武装を有しているのは流石に想定外だったが、人間の身でこれほどの力を発揮し続けて消耗しないわけがない。
 これ以上小癪なしぶとさを発揮してくるなら、出力を上げないと防げない攻撃を繰り出し続けて削り殺してやる。
 魔女らしい悪辣を赫怒の攻勢に忍ばせて、白黒の魔女は変わらぬ理不尽さで君臨し。

 一方で、薊美は。

「戴冠(Stage Lighting)――」

 自己へ施した基本形の魅了を、更に重ねがけした。
 自信は力となり、茨の王子に限界を踏み潰させる。

 効果は明快、身体能力向上(フィジカルブースト)。
 強化された膂力と得物の強度に任せて、炎の斬撃が死の六枚羽を三枚まで粉砕。
 残る三枚は火力で焼き切らねばならなかったが、これなら消費は単純計算半分で済む。
 そうしてまたも艱難を超え、イリスの姿を視界に捉えた瞬間に。

「――跪け(Kneeling)……!」

 自己核星から他者彩明へ。
 瞬間、イリスを襲ったのは重力――そう錯覚するほどの圧力だった。
 無論、物理的なものではない。
 伊原薊美という茨の王子が放つ、敵を平伏させるための魅了魔術だ。

 攻性に関しても、薊美の魅了は非常に優れている。
 自己魅了によるバフで敵の攻勢を突破し、他者魅了によるデバフで封じ込めて決着へ持ち込む。
 彼女にだけ許される必殺の連撃が、遂に白黒の魔女を丸裸に……

「おい」

 しない。できない。
 地の底から響くような憤激の声が、見えかけた安直な終わりを否定する。

「――――そんなに死にたいかよ、格下ぁッ!」

 魅了の縛鎖を力ずくで引きちぎり、色彩の怪物が咆哮する。
 英霊にさえ効果を及ぼす薊美の色香(チャーム)。
 されど魔女に対しては、ほんの一瞬動きを縛るほどの仕事も果たせない。

 何故ならその魂は、星の輝きでとっくに丸焦げだ。
 星の眷属と狂人どもには、あらゆる魅了は意味を成さない。
 ましてや相手は本家本元、はじまりの太陽に灼かれた六衛星のひとつ。
 薊美の算段は失敗するどころか、未練の狂人を更に荒れ狂わせる最悪の結果を生み出した。

 イリスが地面を蹴り、薊美へ失敗の代償を払わせるべく迫る。
 右手には白黒の剣。レーヴァテインとさえ打ち合う宝具類似現象。
 更に大地は波打ち始め、針山地獄のように白黒二色の剣山を生成し、薊美から逃げ場を奪う。
 そうでなくとも――既に駆け出した足を止めるには、どうしても一瞬の停止が必要になる。
 そしてその一瞬は、伊原薊美を破滅に追いやるには十分すぎる須臾であった。

 茨の王子は読みを違えた。
 自慢の威風は空を切り、信じた己を否定されて無様に散る。
 そんな結末が確定するまでせいぜい数秒。
 少なくとも白黒の魔女は、そう信じた。

 しかし、死地に立たされた薊美の顔に浮かぶ表情(いろ)は――やはり笑みで。

「やっぱり。怒ってくれると信じてました」
「……?!」

 次の瞬間。
 楪依里朱の顔面に、何度目かの驚愕が浮かぶ。

 薊美は、足を止めていた。
 迫るイリスと失われていく安全圏。
 そんな破滅の只中にて、怖じることなく停止したのだ。

「"怒って"」

 アスファルトを砕き、楔のようにレーヴァテインを突き立てる。
 命令は端的。一見するとイリスへの皮肉のようにも聞こえる。
 されどそれは、この終末剣が最も得意とする命題だ。

 故に生じた結果は劇的だった。突き刺した地点を中心に、大地が極大の熱に溶かされて、炎の海に変わっていく。
 地を這い押し寄せる白黒の侵掠さえ焼き切りながら、逆に迫る魔女の安全圏を奪ってのけた。

 驚くべきは、魔女が同じ手を使った時よりも格段に速く大地の簒奪に成功している点だ。
 神殺しの剣(レーヴァテイン)は、茨の王子を愛している。
 それもその筈。鍛えたのがウートガルザ・ロキである以上、彼に生み出された幻想は夢見る心に何より強く共鳴する。

(ちっ、不味い……! このままじゃ、呑まれる――!)

 焦燥と共に、咄嗟にイリスは空中へと跳んだ。
 そうでもしなければ炎の海に巻かれ、重篤な手傷を負うと悟ったからだ。
 レーヴァテインの熱量は優れた魔術師であるイリスをしても脅威。
 まともには食らえないと考えての行動だったが、薊美はそうして逃げた魔女を満足げに見上げる。

 ――薊美は、星に狂わされた者に自身の美点が通じないことを既に知っている。
 ウートガルザ・ロキとの会話が活きた。あの男に助けられた形になるのは癪だったが、結果としていい空気を吸えているので良しとする。

 その上で、楪依里朱のパーソナリティにも着目した。
 イリスは祓葉に強く強く懸想している。かの太陽に〈未練〉を抱き続けている狂人が、自分の認めない輝きをこれ見よがしに浴びせかけられて激高しない道理はないと踏んだのだ。

 彼女の発想は正しく、実際こうして実を結んだ。
 イリスをあえて怒らせることで、短慮な攻撃に走るよう誘導できた。
 〈はじまりの六人〉は強大だが、それ故に彼らは神寂祓葉から逃れられない。
 白い太陽に魂を灼かれた怪物達には、こうした単純な挑発が存外よく効くらしい。

「再演・色間魔術(Re-Screening:Two-Tone)」
「――――ッ!?」

 空に足場はない。
 色彩を司る魔女が如何に万能でも、空間そのものにまで色を定義することは不可能。

 薊美は悠々と、詰めの一手を開帳した。
 再度の模倣(コピー)。地面に広げた炎の海を、イリスのお株を奪って白黒二色に染め上げる。
 さすればこれ即ち、茨の王子の随意に動く鏖殺の大瀑布!
 逃れる先のない空中の魔女に照準を合わせ、薊美は躊躇なく命令を下す。


「蹂躙命令・一斉射撃(Glorious Garry Owen)…………!!」


 銃眼のように、あるいは蓮の種のように。
 白黒の波に無数の孔が穿たれ、魔女は標的となる。

 放つ弾丸の数も妥協しない。
 数百を用立てて、この場で魔女狩りを成すと薊美は決めていた。
 いざ滅べ、未練の狂人。
 その強さを踏み越えて、私は先に行く――!

 狂喜にも似た高揚を抱いて、女将軍は号令を下す。
 斯くして彼女の詰めは発動され、いざ超越を成し遂げんとして……


「――――――――――――――――」


 ぷつん。

 薊美は、火花が散るような音を聞いた。
 自分の頭の中で響いたその音は、続いて強烈な頭痛を運んできた。

 目を見開いて硬直した薊美の鼻から、どろりと鼻血が垂れ落ちる。
 同時に、辺りに広げた色彩の波がボロボロのスポンジ状に崩壊していく。
 何が起こったのかを理解できず、薊美は血を滴らせながら呆然と立ち尽くす。
 高熱を出した時のように頭が重く、思考が鈍い。
 それは茨の王子らしからぬ愚鈍で、魔女はそんな薊美を冷ややかに見下ろしていた。

「言ったでしょ。舐めんなよ、って」

 イリスが何かしたのか。
 いや、たぶん違う。これはおそらく――、

 疑問符を浮かべながら立ち尽くす薊美の胸板を、地上へ復帰したイリスの蹴撃が打ち抜く。
 人形のように力なく転がるその姿を見送りながら、白黒の魔女は呆れたように嘆息する。

「……ま、付け焼き刃にしては大したもんだけどね。
 真似するもんじゃないよ、こんな縛りばっかりのクソみたいな力」

 色間魔術。
 空間に存在する生命体と物質を白黒いずれかに定義し、操る術式。
 ただしその性能はピーキーの一言。何より、要求してくる処理の数が尋常でなく多いのだ。

 例えば地面に小規模な陣地を展開するにも、座標と配置する色彩、生じさせる現象の指定。
 機能を付け足すならその都度計算と再配置。動かして武器にするなら、リアルタイムで途切れることなく演算をし続けなければならない。
 なので普通は扱えないし、それだけの才覚がある人間はわざわざこの魔術を選択しない。
 そうまで頑張って習得しても、他の魔術で容易に代用が利く程度の現象しか起こせないのだから。
 武器を作りたいなら物質操作の魔術を覚えればいいし、回復など基礎技能の範疇であるし、せいぜい見どころは空間置換くらいのもの。
 初志貫徹に固執して外界を見ない楪家の老人達は狂ったように色間の秘術を極め続けているが、彼らの現状が極東の辺境でお山の大将を気取り続けるどまりなのを見ればそれが誤った選択だったのは明らかだろう。

 ――――しかし。
 イリスが扱う場合に限っては、話がまったく変わってくる。

 長い迷走と緩やかな没落の果てに生まれ落ちた色彩の申し子。
 女である以外に欠点がないと称された、不世出の輝き。
 伊原薊美は天才だが、色彩を遣うことに関して、彼女は楪依里朱に大きく劣る。

 上記した、狂った数の演算工程。
 それを呼吸のようにこなし、スーパーコンピューター並みの処理数にも表情ひとつ動かさない。
 コマ打ちにも似た独特の処理を膨大な回数行い、その毎回で最適解を叩き出せる抜群の配色センス。
 神寂祓葉という特異点との接触で更に底上げされた能力値(パラメータ)は、とうに人間の領域に非ず。
 薊美の失敗とは、そんな超越者を教材に使おうと考えてしまったこと。真似られると、思ってしまったこと。
 凡人が天才の真似をすればどうなるかなど、彼女が誰より知っているだろうに――気付かぬまま茨の王子は愚を犯してしまった。

 薊美を襲った急な失調の正体は、なんてことない"処理落ち"である。
 魔女の無法が感覚を狂わせた。"自分にもできる"と考えてしまった。
 そうして身の程を超えた色彩操作に踏み切った結果、閾値を超えた処理数は過負荷をもたらし、迎えた結末は過重駆動(オーバーヒート)による自壊。

「――さよなら、凡人崩れ。最後にちょっと認めてあげるわ、思ったより手こずった」

 決着は順当に、年季の差。
 手本のように大地を白黒に染めて隆起させ、そこから無数の剣槍矢を生成しての集中砲火。
 薊美に避ける術はない。
 唯一の星になることを夢見た少女は呆けた顔のまま、その全身を色彩に蹂躙されて蜂の巣と化した。


 ……べちゃり。
 薊美が崩れ落ちて、命の終わった音がする。
 イリスは汗ばんだ額を拭い、ようやく力を抜いた。

「はぁ。なんで今日はこう妙な奴にばっかり絡まれ――」

 苦労人めいた独り言を漏らそうとして。
 そこで、違和感。


 薊美は言った筈だ。
 これは殺し合いではなく、あくまで"勝負"であると。
 想像以上の猛攻で途中から忘れていたが、最初はそういう建前で始まった戦いだった筈。

 "遊びの範疇を超えると彼らが判断したその時だけは、止めに入ってもいいものとする"。

 ならば何故、あの騎兵隊どもは介入してこなかった?
 事前にこんな取り決めが成されていたにも関わらず、何故自分のマスターをむざむざ目の前で死なせた?

 おかしい。
 考えれば考えるほど不可解だ。
 イリスは、薊美の死体の傍に転がる剣に注目する。

 破滅の枝、レーヴァテイン。
 この剣は間違いなく、あの忌まわしいロキに授けられたものだ。
 彼は〈蝗害〉の物量とさえ真っ向から打ち合える規格外の奇術師。
 蝗どもを死滅させるニブルヘイムすら再現できるあの男ならば、神話の兵装を創り出して授けることなど至って容易い芸当だろう。



 ――――伊原薊美の魔術は、"模倣(コピー)"である。



(幻、術――――!)



 戦慄。
 瞬時に脳を回す、色を構える。
 が、さしものイリスでさえ間に合わない。
 その両目は、既に懐まで潜り込んだ王子の姿を捉えていた。

「バレちゃった。やっぱり付け焼き刃じゃ駄目ですね」
「ッ、ぐぁ……!?」

 見舞われた拳が、イリスの顔面を殴り付けて瞼の裏に花を咲かせる。
 ぐわんと脳が揺れる感覚。溢れ出す鼻血の熱。痛みと屈辱が込み上げるが、それ以上に焦りがあった。
 薊美の死体が消えている。転がっていたレーヴァテインもだ。
 であれば。あの〈神殺しの剣〉は、今――!

「私の勝ちです、蝗害の魔女」

 伊原薊美の、手の中にある!
 尻餅をつかされたイリスに向け、薊美は迷わずそれを振り下ろした。
 迫る刀身、炎熱の極み。
 此処までの戦いで最も濃厚な"死"の気配に、魔女は歯を軋らせ。

「――伊原、薊美ッ!!」
「あは。やっと名前で呼んでくれた」

 叫んだ。
 白と黒が決まろうとしている。
 魔女の扱う理としてではない、勝利と敗北を定義する色分けが。


全色解放(セット)獣化術式起動(フルパレットオープン)…………!」

 イリスの顔に、髪と同じ白黒のブロックノイズが走る。
 勝利を確信した薊美の眼が見開かれる。
 来る。魔女の真髄が。
 背筋の凍る悪寒と本能レベルの警鐘、さりとて薊美ももはや不退転。
 最後の一瞬に魔女と王子の戦いはもう一段深い領域に潜行しようとして、そして――


「「そこまでだ」」


 まったく同じタイミングで。
 英霊の声が響き、羽音と銃火がそれに続いた。

 真横から、軍馬を駆る軍人が薊美を掻っ攫い。
 羽音を背にしたツナギ姿の怪人が、イリスをひょいと抱き起こす。

「無粋とは思ったが、この先は"戦争"になる。そうなれば後戻りは出来ないぞ」
「熱くなりすぎだぜ、イリス。ま、俺はそれでもいいんだけどよ」

 ジョージ・アームストロング・カスター。
 シストセルカ・グレガリア
 双方の"保護者"が、遂に女達の激突へ介入したのだ。



◇◇



「身体中痛くて死にそうなんですけど」
「自業自得だろ」

 ホテルの裏手。時刻はちょうど、天枷仁杜がロキの腕の中で寝息を立て始めたのと同じ頃。
 縁石に腰を下ろして、少女たちは並んで座っていた。
 さっきまで殺し合い同然の勝負に興じていたとは思えない、どこか青春らしさすら感じさせる光景。

「改めて思ったんですが、イリスさんのあれズルすぎませんか。
 色間魔術とか呼んでるけど、"なんでもできます魔術"に改名した方がいいと思う」
「私に言わせればあんたのコピーの方がよっぽどズルだわ。
 私がアレだけ使えるようになるまで何年かかったと思ってんのよ」

 無論、ふたりの間に友情なんてものは微塵もない。
 いつか殺す/踏み潰す相手であり、ともすればこの後会うことは二度とないかもしれない。
 そんな関係。だがだからこそ、この会話には意味があると、少なくとも薊美はそう思っていた。

「ねえ、イリスさん」
「……何」
「聞いてもいいですか。
 私って、〈はじまり〉の人達と比べるとどのくらいなんです」

 答える義理はない。
 ないのだが、それを言うとまたしつこそうな気がした。
 仁杜のようにぴーぴー駄々をこねるタイプも面倒だが、こいつはあの手この手で絡み付いてくる。
 言うなれば貪欲。自分の欲するモノを手に入れるためならば、どれだけだって手を尽くせてしまうタイプの人種。
 魔術師に向いているとも、向いていないとも言える。
 向上心の塊なのはいいことだが、恐らく薊美がそうだったなら、根源到達のジレンマに耐えられないだろう。
 そう考えるとやはり後者かもしれない。イリスはそんなことを思いながら、やや間を空けて答えた。

「厳しいんじゃない」
「やっぱりですか」
「私だって、今からもう一回戦ったら簡単に勝てる。
 あんたが私に食い下がれたのは、私があんたの手の内を知らなかったから。
 あと他の連中は、私みたいに直情型じゃない。妖怪みたいな曲者どもの集まりよ」

 薊美としては、予想通りの答えだった。
 茨の王子は己への自信を常に切らさないが、現実問題、まだ手の届かない境地というものはある。
 魔術を覚醒させ、力を手に入れはした。それでも、経験というステータスだけは埋め合わせが利かない。
 楪依里朱は激情家。常に感情のままに戦うし、精神的にも幼さを多分に残していた。だからそこに付け込めば、判断を狂わせることができた。
 もしイリスに冷静に戦われていたなら、カスターの介入はもっと早く行われていただろう。

「まずジャックは厳しいな。ノクトは不意さえ突けたらもしかするかもね。
 アギリは――比較的ちゃんと戦ってくれるだろうけど、火が点くと私よりヤバいから微妙。
 あとのふたりはまあ、考えなくていい。ノクト以上に直接戦ったりするタイプじゃないから」
「……、……」
「答えてやったんだから、お礼のひとつでもしろよ」
「いや。なんか思ったよりちゃんと教えてくれたのでびっくりして……イリスさんって、意外と真面目ですよね」
「そういうあんたは本当いい性格してるわ。ぶっ殺したいくらい」

 要するに、足を止めてはならないということだ。
 星を落とすと豪語する者が、その衛星風情に苦戦していては話にもならない。
 もっと場数を踏み、才を吸収し、輝きを鍛える必要がある。
 それこそ――あの"妖星"のように。立ちはだかった壁を強引にでもぶち破る歩みが必要だと薊美は理解した。

「お前さあ」

 イリスが言う。
 薊美は無言のまま、夜空を見上げた。
 続けていいですよ、の合図だ。

「祓葉に会いたいんだって?」
「ええ、まあ。理由は言わなくても分かりますよね」
「ま、でしょうね。そこまで灼かれたら、大源に向かわずにはいられないか」

 灼かれた、という表現には不服があったが、それを言うほど子どもでもない。
 幼気は捨てた。現実を生きる人ではなく、舞台にて生きるヒトとなる道を選んだ。

「――別に、あんたがどうなろうが私はどうでもいいけど。
 確かに、あんたはあいつに会うべきかもしれない」

 それを理解したならば、一番の助言はこれだった。

 地に足つけて歩く人間をやめ、絵空にこそ我ありと決めたなら。
 誰も、あの太陽と無関係ではいられない。
 この都市、この世界における最大の絵空事。
 絶対的主役にして造物主の片割れ。
 勝利するべくして生まれ、救われてしまった白き御子。

「あんたの一番の正念場はたぶんその瞬間。
 所詮ただの木偶なのか、本当にそういう生き方を貫ける人間なのか」

 太陽の光はすべてを詳らかに暴き出す。
 眩しすぎる彼女の振る舞い、その言葉には、良くも悪くも一切の嘘がない。
 神寂祓葉への挑戦は伊原薊美にとって究極の試練。
 薊美自身そう認識していたが、誰より祓葉を知るこの魔女にそれを肯定された事実は大きかった。

「――あんたさ、人にあんなこと言っといて、自分ももう結構あのニート女のこと好きでしょ?」
「……、……」
「ロキに魂胆を明かしたのなら、もう演技をする必要はない。 
 なのに軽口叩いて(・・・・・・・・)漫才みたいなやり取りして(・・・・・・・・・・・・)
 それってまるで"友達みたい"だって気付いてる?」

 イリスにしては珍しく。
 そこに、嘲笑の色はない。
 どちらかと言えばそれは、共感。
 自分自身に語りかけているようでも、あった。

「月光は生きている。私達が拒もうとも、あの星は常にこちらを照らしてくる。
 常に自覚しておきなさい。あの日私達は、誰もそれに気付けなかった」

 太陽の重力を拒む。
 月の重力も同じこと。
 私は、誰のものにもならない。
 木星にはならない――そう誓い、踏み出したこの足。

 されど。

 重力に抗おうとも、光は常に照らされ続けている。
 そのことを忘れればどうなるか。モデルケースは目の前にあった。
 太陽網膜症。魂にまでこびり付いた恒星の輪郭。

「私は、あなた達にはなりませんよ。
 私は私、伊原薊美。私が何かに狂うとしたら、それは私自身を除いて他にない」
「そ。さっきも言ったけど、私はあんたがどうなろうと一向に構わないから。
 だってあいつを、祓葉を殺すのはこの私。
 その権利だけは、誰にだろうと渡さない。もちろん、あんた達にだってね」

 イリスが立ち上がった。
 薊美は、もう引き止めない。

 聞くべきことは聞けた。
 話すべきことは話せた。
 そして、予期せぬ収穫もあった。

 だから、去る背中に声をかける必要もないのだ。

(ねえ、イリスさん)

 友人でもない。
 仲間でもない。
 薊美はそれを必要としていない。

(あなたに、殺せるんですか?)

 故にその問いを、薊美は胸に留めておくことにした。


(そんな、好きな人の話するみたいな顔して――――本当にあなたは、神寂祓葉を殺せるの?)



◇◇



 伏魔殿を出て、車の後部座席で揺られながら。
 煌星満天は、先ほどの出来事を回想していた。
 その顔色はやはり浮かない。
 あんなことがあったのだ。曇りきった気分は、まだ当分晴れてはくれそうになかった。

(煌星さん。少しお話があります)

 頭の中に響いた声に、ぐっと息を呑む。
 反射的に身が縮んだ。返事の代わりに漏らした言葉は、我ながら非常に情けない。

(ごめん、なさい。
 私、わたし、あんなことして――)

 自分が感情のままに取った行動は、彼やロミオのことまで危険に晒した。
 ファウストと、あちら側の高天という女性。そしてそのサーヴァントが場を収めてくれたからよかったが、そうでなければどうなっていたか。
 馬鹿なことをしたと心から悔いていたし、見放されてもおかしくない行動だったと思う。
 が、叱責を覚悟していた満天の予想に反して、ファウストの言葉は。

(怒ってはいません。
 軽率な行動だったことは事実ですが、元を辿ればプロデューサーである私の監督責任だ。
 むしろ私の方こそ申し訳ありませんでした。輪堂天梨がああいう人間だったこともあって、少し油断していたようです)

 輪堂天梨。
 その名前が何故、此処で出てくるのか。
 そんな当然の疑問はしかし、不思議と湧いてこなかった。

 わかるのだ。
 ライブ後に満天が対話し、あわや殴りつけるところだったあの女性。
 "にーとちゃん"と呼ばれていた小動物じみた彼女が、天梨と同類の存在であることが。
 理屈でなく魂で理解できた。もっとも内面は、〈天使〉とは大違いだったが。

(ですから、恐縮する必要はありません。
 心も体もリラックスして、今からする質問に答えてください)

 一拍遅れて、こく、と頷く満天。
 それを確認してから、ファウストは言った。

(あなたは、あの天枷という女性についてどう思いましたか?)

 息が詰まる。
 嫌でも思い出してしまうからだ、さっきあったことを。

 いっそ、剥き出しの悪意だけだったなら手までは出なかったかもしれない。
 でも違った。天枷仁杜の言葉は、不可思議な矛盾を孕んでいた。
 天梨という他人のことは聞くに堪えない言葉で扱き下ろすのに、目の前の自分に対しては嘘偽りのない百パーセントの好意を向けてくる。
 その親愛を。浮かべる微笑みを。それを見て抱いてしまった己自身の血迷った感想を、煌星満天は許せなかった。


(きれい、だった…………すごく)


 ――――きれいだと、思ってしまったのだ。

 死ぬほど腹が立って仕方なくて、怒りを堪えるだけで手一杯になるくらいだったのに。
 目の前で光を侮辱する女の姿に、あの日向の天使の微笑みを重ねてしまった。
 だからこそ吐き気を覚えた。この女を許してはいけないと、強い衝動が噴き出した。

 満天の答えを聞いて、ファウストは一度こめかみを叩く。
 困った、というよりも、面倒なことになった、という顔だった。

(キャスターは、どう思った……?)
(私ですか。私は)

 そうであろうと思っていたが、やはりアレも資格者。
 だが何より面倒なのは、自分が彼女に対して抱いた所感だ。
 どういうわけか知らないが、己は、天枷仁杜を――

(自分でも驚くほど、魅力を感じませんでした)

 ――その非凡を理解した上で、"それほどか?"と思っている。

 これは由々しき事態だった。
 目が曇っている。正常な判断を下せていない。

(え。……じゃ、じゃあキャスターの方が正しいのかも。ごめんね、ヘンなこと言って)
(いや。煌星さんはその視点と感性を持ち続けていてください。灯台があってくれるとありがたいので)
(……??? よくわかんないけど、わかった……)

 まったくもって認めたくないことではあるが。
 やはり己にも、影響は生まれ始めているらしい。
 ルームミラー越しに見える、げっそりした顔で膝を抱く少女。
 自分で見初めた人間の輝きに、少なからず干渉されていると気付いた。

 この段階で自覚できたからまだいいが、やはり由々しき問題である。
 星はこうまで価値観を喰むのか。灼かれずとも、関わるだけで悪影響を及ぼす存在なのか。

 既にゲオルク・ファウスト/悪魔メフィストフェレスは、星に灼かれた者の末路を見ている。
 ああなってしまえばもはやプロデュースだの契約だの、そんなどころの騒ぎではなくなる。

高天小都音は間違いなく天枷仁杜の眷属だが、付き合いの長さに反して灼かれている様子がなかった。
 恐らくあの女は俺と同じ……このタイミングで関係を結べたのはある意味幸運だったな。奴からは情報以外にも得られるものがあるかもしれない)

 ひとまず、何とかなった。
 〈蝗害〉レポの仕事は完遂。
 情報を得つつ、アクシデントじみたライブは満天の成長材料に活用できた。
 その上で意味のある人脈も作れたのだから、結果だけ見れば非常に有意義な時間だったと言える。

 ……もちろん良いことばかりではなかったので、そこのところの始末を付ける必要はあるが。


 がたん、ごとんと。
 車は、ふたりの悪魔を乗せて進んでいく。
 大きな戦いの気配をにわかに漂わせ始めた針音都市。
 都市はいまだ、星の輝きに囚われている。



◇◇



【渋谷区 高層ホテル・エントランス/一日目・夜間】

【天枷 仁杜】
[状態]:健康、寝ちゃった
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:数万円。口座の中にはまだそれなりにある。
[思考・状況]
基本方針:優勝して一生涯不労所得! ……のつもりだったんだけど……。
0:Zzzz……。
1:ことちゃんには死んでほしくないなあ……。
2:薊美ちゃん、イケ女か?
3:ロキくんやっぱり最強無敵! これからも心配なんてなーんにもないよね~。
4:この世界の人達のことは、うーん……そんなに重く考えるようなことかなぁ……?
5:アイドル怖い……。急にキレる若者……
[備考]
※楪依里朱(〈Iris〉)とネットゲームを介して繋がっています。
 必要があればトークアプリを通じて連絡を取ることが出来ます。

【キャスター(ウートガルザ・ロキ)】
[状態]:右半身にダメージ(中/回復中。幻術で見てくれは元通りに修復済み)
[装備]:
[道具]:
[所持金]:なし(幻術を使えば、実質無限だから)
[思考・状況]
基本方針:享楽。にーとちゃんと好き勝手やろう
0:ま、そろそろ本気でやりますか。
1:にーとちゃん最高! 運命の出会いにマジ感謝
2:小都音に対しては認識厳しめ。にーとちゃんのパートナーはオレみたいな超人じゃなきゃ釣り合わなくねー? ……でも見る目はあるなぁ。
3:薊美に対しては憐憫寄りの感情……だったが、面白いことになっているので高評価。ただし、見世物として。
4:ランサー(エパメイノンダス)と陰陽師のキャスター(吉備真備)については覚えた。次は殺す。
5:煌星満天は"妖星"。アレは恐らく、もっともオリジナルに近い。
[備考]
※“特異点”である神寂祓葉との接触によって、天枷仁杜に何らかの進化が齎される可能性を視野に入れています。


【高天 小都音】
[状態]:健康、とっても気疲れ
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:トバルカイン謹製のナイフ
[所持金]:数万円。口座の中身は年齢不相応に潤沢。がんばって働いたからね。
[思考・状況]
基本方針:生き残る。……にーとちゃんと二人で。
0:それでも、私は。
1:伊原薊美たちと共闘。とりあえず穏便に収まってよかった。
2:ロキに対してはとても複雑。いつか悪い男に引っかかるかもとは思ってたけどさあ……
3:アレ(祓葉)はマジでヤバかった……けど、神様には見えなかった。
4:脱出手段が見つかった時のことを考えて、穏健派の主従は不用意に殺さず残しておきたい。なるべく、ね。
5:楪依里朱については自分たちの脅威になら排除も検討するけど、にーとちゃんの友達である間は……。
6:満天ちゃん達とはできるだけ穏便にやりたい。何やらかしてくれてんだこのバカニートは?
7:キャスター(ファウスト)に機を見て情報を送りつつ、あっちからも受け取りたい。
[備考]
※“特異点の卵”である天枷仁杜に長年触れ続けてきたことで、他の“特異点”に対する極めて強い耐性を持っています。

【セイバー(トバルカイン)】
[状態]:健康
[装備]:トバルカイン謹製の刃物(総数不明)
[道具]:
[所持金]:数千円(おこづかい)
[思考・状況]
基本方針:まあ、適当に。
1:めんどくせェけど、やるしかねえんだろ。
2:ヤバそうな奴、気に入らん奴は雑に殺す。ロキ野郎はかなり警戒。
3:あの祓葉は、私が得られなかったものを持っていた。
4:このカスどものお守りいい加減面倒臭いんだけどどうにかならん?
[備考]



【渋谷区 高層ホテル・裏手/一日目・夜間】

【伊原薊美】
[状態]:魔力消費(大)、頭痛と疲労(大)、胴体にダメージ、静かな激情と殺意、魅了(自己核星)
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:騎兵隊の六連装拳銃、『災禍なる太陽が如き剣(レーヴァテイン)』
[所持金]:学生としてはかなりの余裕がある
[思考・状況]
基本方針:全てを踏み潰してでも、生き残る。
0:いい勉強になりました。色んな意味で、ね。
1:私は何にだって成れる、成ってやる、たとえカミサマにだって。
2:殺す。絶対に。どんな手を使ってでも。
3:高天小都音たちと共闘。
4:仁杜さんについては認識を修正する。太陽に迫る、敵視に相応しい月。
5:太陽は孤高が嫌いなんだろうか。だとしたら、よくわからない。
6:同盟からの離脱は当分考えていない。でも、備えだけはしておく。
[備考]
※マンションで一人暮らしをしています。裕福な実家からの仕送りもあり、金銭的には相応の余裕があります。
※〈太陽〉と〈月〉を知りました。
※自らの異能を活かすヒントをカスターから授かりました。

→上記ヒントに加え、神寂祓葉と天枷仁杜、二種の光の影響によって、魅了魔術が進化しました。

『魅了魔術:他者彩明・碧の行軍』
 周囲に強烈な攻勢魅了を施し、敵対者には拘束等のデバフ、同盟者には士気高揚等のバフを振りまく。

『魅了魔術:自己核星・茨の戴冠』
 己自身に深い魅了を施し、記憶した魔術や身体技術の模倣を実行する。
 降ろした魔術、身体技術の再現度は薊美の魔術回路との相性や身体的限界によって大きく異なる。
 ただし、この自己魅了の本質は単なる模倣・劣化コピーではなく。
 取得した無数の『演技』が、薊美の独自解釈や組み合わせによって、彼女だけの武器に変質する点にある。

※ウートガルザ・ロキから幻術による再現宝具を授かりました。
 ・『災禍なる太陽が如き剣(レーヴァテイン)』
 対神、対生命特攻。巨人の武具であり、神の武具であり、破滅の招来そのものである神造兵装――の、再現品。
 ロキの幻術で生み出された武器であるため、薊美が夢を見ている限り彼女のための神殺剣として機能を果たす。
 逆に薊美が現実を見れば見るほど弱体化し、夢見ることを忘れた瞬間にカタチを失い霧散する午睡の夢。
 セキュリティとして術者であるロキ、そして彼の愛しの月である天枷仁杜に対して使おうとすると内蔵された魔術と呪いが担い手を速やかに殺害する仕組みが誂われている。
 サイズや重量は薊美の体躯でも扱える程度に調整されている様子。


【ライダー(ジョージ・アームストロング・カスター)】
[状態]:疲労(小)、複数の裂傷、魅了
[装備]:華美な六連装拳銃、業物のサーベル(トバルカインからもらった。とっても気に入っている)
[道具]:派手なサーベル、ライフル、軍馬(呼べばすぐに来る)
[所持金]:マスターから幾らか貰っている(淑女に金銭面で依存するのは恥ずべきことだが、文化的生活のためには仕方のないことだと開き直っている)
[思考・状況]
基本方針:勝利の栄光を我が手に。
0:―――おお、共に征こう。My Fair Lady(いと気高き淑女よ)。
1:神へ挑まねば、我々の道は拓かれない。
2:やはり、“奴ら”も居るなあ。
3:“先住民”か。この国にもいたとはな。
4:やるなあ! 堕落者(ニート)のお嬢さん!!
[備考]
※魔力さえあれば予備の武器や軍馬は呼び出せるようです。
シッティング・ブルの存在を確信しました。

※エパメイノンダスから以下の情報を得ました。
 ①『赤坂亜切』『蛇杖堂寂句』『ホムンクルス36号』『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報。
 ②神寂祓葉のサーヴァントの真名『オルフィレウス』。
 ③キャスター(ウートガルザ・ロキ)の宝具が幻術であること、及びその対処法。
※神寂祓葉、オルフィレウスが聖杯戦争の果てに“何らかの進化/変革”を起こす可能性に思い至りました。
※“この世界の神”が未完成である可能性を推測しました。


【楪依里朱】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中/色間魔術により回復中)、顔面にダメージ、未練
[令呪]:残り二画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:数十万円
[思考・状況]
基本方針:優勝する。そして……?
0:この場を去る。じゃないと、戻れなくなりそうだから。
1:祓葉を殺す。
2:薊美に対しては微妙な気持ち。間違いなく敵なのだが、なんというか――。
[備考]
※天枷仁杜(〈NEETY GIRL〉)とネットゲームを介して繋がっています。
 必要があればトークアプリを通じて連絡を取ることが出来るでしょう。
※蛇杖堂記念病院での一連の戦闘についてライダー(シストセルカ)から聞きました。
※今の〈脱出王〉が女性であることを把握しました。

【ライダー(シストセルカ・グレガリア)】
[状態]:規模復元、ごきげん
[装備]:バット(バッタ製)
[道具]:
[所持金]:百万円くらい。遊び人なので、結構持ってる。
[思考・状況]
基本方針:好き放題。金に食事に女に暴力!
0:もうちょいゆっくりしてもよかったんじゃねえかァ~?
1:相変わらずヘラってんな、イリス。
2:祓葉にはいずれ借りを返したいが、まあ今は無理だわな。
3:煌星満天、いいなァ~。
[備考]
※イリスに令呪で命令させ、寒さに耐性を持った個体を大量生産することに成功しました。
 今後誕生するサバクトビバッタは、高確率で同様の耐性を有して生まれてきます。


【渋谷区・路上(移動中)/一日目・夜間】

【煌星満天】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中/『メフィストの靴』の効果で回復中)、落ち込みモード
[令呪]:残り三画
[装備]:『微笑む爆弾』
[道具]:なし
[所持金]:数千円(貯金もカツカツ)
[思考・状況]
基本方針:トップアイドルになる
0:はぁ。やっちゃったなぁ……
1:魅了するしかない。ファウストも、ロミオも、ノクトも、この世界の全員も。
2:輪堂天梨を救う。
3:……絶対、負けないから、天梨。
4:天枷仁杜には苦手意識。でも、きれいだった。
5:私、なんで忘れてたんだろ?
[備考]
 聖杯戦争が二回目であることを知りました。
 ノクトの見立てでは、例のオーディション大暴れ動画の時に比べてだいぶ能力の向上が見られるようです。
※輪堂天梨との対決を通じて能力が向上しています(程度は後続に委ねます)。
 ・『微笑む爆弾・星の花(キラキラ・ボシ・スターマイン)』
 拡散と誘爆を繰り返し、地上に満天の星空を咲かせる対軍宝具。
 性質上、群体からなる敵に対してはきわめて凶悪な効果を発揮する。
 現在の満天では魔力の関係上、一発撃つのが限度。ただし今後の成長次第では……?
 ・現状でも他の能力が芽生えているか、それともこれから芽生えていくかは後続に委ねます。 
※輪堂天梨と個人間の同盟を結びました。対談イベントについては後続に委ねます。
※過去について少し気付きを得ました。詳細は後続に委ねます。

【プリテンダー(ゲオルク・ファウスト/メフィストフェレス)】
[状態]:疲労(中)、肩口に傷(解毒・処置済)
[装備]:名刺
[道具]:眼鏡、スキル『エレメンタル』で製造した元素塊
[所持金]:莫大。運営資金は潤沢
[思考・状況]
基本方針:煌星満天をトップアイドルにする
0:俺は灼かれねえぞ――人間めが。
1:輪堂天梨との同盟を維持しつつ、満天の"ラスボス"のままで居させたい。
2:ノクトとの協力関係を利用する。とりあえずノクトの持ってきた仕事で手早く煌星満天の知名度を稼ぐ。
3:時間が無い。満天のプロデュース計画を早めなければならない。
4:天梨に纏わり付いている復讐者は……厄介だな。
5:高天小都音とは個人的にパイプを持っておく。
[備考]
 ロミオと契約を結んでいます。
 ノクト・サムスタンプと協力体制を結び、ロミオを借り受けました。
 聖杯戦争が二回目であること、また"カムサビフツハ"の存在を知りました。

【バーサーカー(ロミオ )】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)、恋
[装備]:無銘・レイピア
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:ジュリエット! 嗚呼、ジュリエット!!
0:ジュリエットの敵は僕の敵だ。次は許さない。
1:ジュリエット!! また会えたねジュリエット!! もう離しはしないよジュリエット!!!
2:キミの夢は僕の夢さジュリエット!! 僕はキミの騎士となってキミを影から守ろうじゃないか!!!
3:ノクト、やっぱり君はいい奴だ!!ジュリエットと一緒にいられるようにしてくれるなんて!!
4:虫螻の王には要注意。ボディーガードとしての仕事は果たすとも、抜かりなくね。
[備考]
 現在、煌星満天を『ジュリエット』として認識しています。
 ファウストと契約を結んでいます。

[満天組備考]
※取材中に〈蝗害〉の襲撃を受けたことで撮影機材が破壊されました。
 ファウストはノクトなら映像をリアルタイムでバックアップする備えをしていると踏んでいますが、正確なところは後続に委ねます。
※同伴しているスタッフ達はNPCですが、ノクトによって『自身の常識の閾値を超えた事態に遭遇した瞬間に思考回路がシャットダウンされ、事前に設定された命令を遂行し続ける』魔術が施されています。
※今のところ死人や、命に関わるほど重大な怪我を負った者はいないようです。



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最終更新:2025年05月22日 01:00