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模擬戦授業
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dannocomachi
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デュエルの日
「思っていた体育の授業と、だいぶ違いますね……」
私はデュエル演習室を見回しながら言いました。
現実側の校舎にある大きな部屋です。
壁際には、背もたれを大きく倒せるコネクションシートが何列も並び、正面の壁には巨大な表示画面が設置されています。
画面に映っているのは、白い床に円形の境界線が引かれたバーチャル空間。
今日、私たちが戦う場所です。
「体育って聞いた時は、普通に走るのかと思ってた」
隣に立つシュトレンさんが、演習室の中を興味深そうに見ています。
「この学校で『普通の体育』を期待したのが間違いだったかも」
「基礎測定は、まだ普通に近かったと思います」
「あれも床が動いてたよ?」
「現実の学校よりは、少しだけ特殊でしたね」
「少しだけかなぁ」
その横で、フィナンシェさんは武器選択用の一覧を眺めていました。
「ねえ。これ、本当に全部使えるの?」
表示されているのは、剣タイプと銃タイプの武器です。
剣タイプは安全処理された木刀。
銃タイプは弾丸の代わりに判定光を発射するトイガン。
それぞれ形と大きさを選べるようになっていました。
「大きいものほど、一回の威力が高いみたいです」
私が説明を読むと、フィナンシェさんも表示を拡大します。
「でも、その分重くなるんだ」
「剣は振る速度が落ちて、銃は連射が遅くなるそうです」
「一番大きい銃、威力五十だって」
シュトレンさんが、長い銃を表示しました。
「ただし、撃つたびにボルト操作が必要みたいですね」
「私には無理そう」
「選ぶ前から諦めるんですか?」
「諦めたんじゃなくて、向いてないものを早めに外したの」
「前向きな言い換えですね」
「でしょ?」
シュトレンさんが笑いました。
演習室には、一年二組の生徒だけでなく、二年二組の生徒たちも集まっています。
今日の授業は二つの学年による合同授業です。
ただし、最初から一緒に戦うわけではありません。
今日は一年生のグループ分け。
二年生は観察や機器の補助を担当し、次回以降、それぞれのグループに入った一年生と組んで練習するそうです。
担当の先生が、部屋の前へ立ちました。
「それでは、今日行うデュエルについて説明します」
話し声が止まり、全員が正面を向きます。
「デュエルは、一対一または二対二を基本とするバーチャル空間競技です。スタンダードルールでは、ライフゲージは二百。相手のライフを先にゼロにした側が勝利となります」
正面画面に、二本のライフゲージが表示されました。
「武器同士の接触は防御判定になります。身体へ有効打が入った場合のみ、武器に設定された数値がライフから差し引かれます。実際に怪我をすることはありませんが、衝撃の方向や受けた感覚は軽く再現されます」
つまり、痛くはなくても、攻撃を受けたことはわかるようです。
「今日のクラス内トーナメントの結果と、試合中の動きを見て、皆さんをAからDのグループへ分けます」
その言葉に、何人かの男子生徒が急に姿勢を正しました。
先生は、その反応を見て少しだけ笑います。
「先に言っておきますが、Dグループになったからといって体育の成績が下がることはありません」
少しざわついていた空気が、落ち着きを取り戻します。
「バーチャル空間での戦闘が、将来すべての人に必要となるわけではありません。今後の授業を、それぞれの適性に合わせるためのグループ分けです。勝ち負けだけでなく、安全確認、状況判断、武器への適性も見ます」
シュトレンさんが、小さく息を吐きました。
「よかった。最初に負けたら、ずっと一番下かと思った」
「まだ負けるとは決まっていませんよ」
「勝てるとも決まってないよ」
「それは私も同じです」
「チョコちゃんは普通に勝ちそうだけどなぁ」
フィナンシェさんが、こちらを見ながら言いました。
「まだ武器も決めていません」
「FoFでいつも刀を振ってるんでしょ?」
「学校のデュエルでは、FoFのスキルは使えません」
「でも、動き方は忘れないよね」
「……少しは役に立つかもしれません」
否定しきることはできませんでした。
先生の説明は続きます。
「AからCグループの一年生は、同じグループに所属する二年生と組み、今後の授業を進めます。Dグループは担当教員を中心に、操作や武器の基礎から行います」
二年生のいる方へ目を向けます。
すぐに、みた先輩を見つけました。
少し離れた観察席で、フェタ先輩と話しています。
私の視線に気づいたのか、みた先輩がこちらを見ました。
目が合うと、小さく手を上げてくれます。
私も手を振り返しました。
「見つけるの早いね」
シュトレンさんが言います。
「みた先輩のことですか?」
「うん。人いっぱいいるのに」
「見ればわかります」
「チョコちゃん、そういうところだけ迷わないよね」
「どういう意味ですか?」
「いい意味だよ」
答えになっていない気もします。
フィナンシェさんが、みた先輩と私を交互に見ました。
「先輩、すごくこっち見てるね」
「二年生は、一年生を観察する役ですから」
「全員じゃなくて、チョコちゃんを見てるように見えるけど」
「気のせいです」
「まだ何もからかってないよ?」
「先に答えただけです」
二人が楽しそうに笑います。
今日は模擬戦です。
そちらへ集中しなければいけません。
……まだ始まってもいませんが。
私はデュエル演習室を見回しながら言いました。
現実側の校舎にある大きな部屋です。
壁際には、背もたれを大きく倒せるコネクションシートが何列も並び、正面の壁には巨大な表示画面が設置されています。
画面に映っているのは、白い床に円形の境界線が引かれたバーチャル空間。
今日、私たちが戦う場所です。
「体育って聞いた時は、普通に走るのかと思ってた」
隣に立つシュトレンさんが、演習室の中を興味深そうに見ています。
「この学校で『普通の体育』を期待したのが間違いだったかも」
「基礎測定は、まだ普通に近かったと思います」
「あれも床が動いてたよ?」
「現実の学校よりは、少しだけ特殊でしたね」
「少しだけかなぁ」
その横で、フィナンシェさんは武器選択用の一覧を眺めていました。
「ねえ。これ、本当に全部使えるの?」
表示されているのは、剣タイプと銃タイプの武器です。
剣タイプは安全処理された木刀。
銃タイプは弾丸の代わりに判定光を発射するトイガン。
それぞれ形と大きさを選べるようになっていました。
「大きいものほど、一回の威力が高いみたいです」
私が説明を読むと、フィナンシェさんも表示を拡大します。
「でも、その分重くなるんだ」
「剣は振る速度が落ちて、銃は連射が遅くなるそうです」
「一番大きい銃、威力五十だって」
シュトレンさんが、長い銃を表示しました。
「ただし、撃つたびにボルト操作が必要みたいですね」
「私には無理そう」
「選ぶ前から諦めるんですか?」
「諦めたんじゃなくて、向いてないものを早めに外したの」
「前向きな言い換えですね」
「でしょ?」
シュトレンさんが笑いました。
演習室には、一年二組の生徒だけでなく、二年二組の生徒たちも集まっています。
今日の授業は二つの学年による合同授業です。
ただし、最初から一緒に戦うわけではありません。
今日は一年生のグループ分け。
二年生は観察や機器の補助を担当し、次回以降、それぞれのグループに入った一年生と組んで練習するそうです。
担当の先生が、部屋の前へ立ちました。
「それでは、今日行うデュエルについて説明します」
話し声が止まり、全員が正面を向きます。
「デュエルは、一対一または二対二を基本とするバーチャル空間競技です。スタンダードルールでは、ライフゲージは二百。相手のライフを先にゼロにした側が勝利となります」
正面画面に、二本のライフゲージが表示されました。
「武器同士の接触は防御判定になります。身体へ有効打が入った場合のみ、武器に設定された数値がライフから差し引かれます。実際に怪我をすることはありませんが、衝撃の方向や受けた感覚は軽く再現されます」
つまり、痛くはなくても、攻撃を受けたことはわかるようです。
「今日のクラス内トーナメントの結果と、試合中の動きを見て、皆さんをAからDのグループへ分けます」
その言葉に、何人かの男子生徒が急に姿勢を正しました。
先生は、その反応を見て少しだけ笑います。
「先に言っておきますが、Dグループになったからといって体育の成績が下がることはありません」
少しざわついていた空気が、落ち着きを取り戻します。
「バーチャル空間での戦闘が、将来すべての人に必要となるわけではありません。今後の授業を、それぞれの適性に合わせるためのグループ分けです。勝ち負けだけでなく、安全確認、状況判断、武器への適性も見ます」
シュトレンさんが、小さく息を吐きました。
「よかった。最初に負けたら、ずっと一番下かと思った」
「まだ負けるとは決まっていませんよ」
「勝てるとも決まってないよ」
「それは私も同じです」
「チョコちゃんは普通に勝ちそうだけどなぁ」
フィナンシェさんが、こちらを見ながら言いました。
「まだ武器も決めていません」
「FoFでいつも刀を振ってるんでしょ?」
「学校のデュエルでは、FoFのスキルは使えません」
「でも、動き方は忘れないよね」
「……少しは役に立つかもしれません」
否定しきることはできませんでした。
先生の説明は続きます。
「AからCグループの一年生は、同じグループに所属する二年生と組み、今後の授業を進めます。Dグループは担当教員を中心に、操作や武器の基礎から行います」
二年生のいる方へ目を向けます。
すぐに、みた先輩を見つけました。
少し離れた観察席で、フェタ先輩と話しています。
私の視線に気づいたのか、みた先輩がこちらを見ました。
目が合うと、小さく手を上げてくれます。
私も手を振り返しました。
「見つけるの早いね」
シュトレンさんが言います。
「みた先輩のことですか?」
「うん。人いっぱいいるのに」
「見ればわかります」
「チョコちゃん、そういうところだけ迷わないよね」
「どういう意味ですか?」
「いい意味だよ」
答えになっていない気もします。
フィナンシェさんが、みた先輩と私を交互に見ました。
「先輩、すごくこっち見てるね」
「二年生は、一年生を観察する役ですから」
「全員じゃなくて、チョコちゃんを見てるように見えるけど」
「気のせいです」
「まだ何もからかってないよ?」
「先に答えただけです」
二人が楽しそうに笑います。
今日は模擬戦です。
そちらへ集中しなければいけません。
……まだ始まってもいませんが。
武器を選ぶ
武器選択の時間が始まりました。
私は剣タイプの一覧を開きます。
短いものは、片手で簡単に扱える代わりに威力が十。
そこから大きくなるにつれ、二十、三十、四十、最大五十と威力が上がります。
ただし、五十の木刀は剣というより、太い板に近い大きさでした。
「これは、私には振れそうにありませんね」
最大サイズを試着表示すると、木刀の先端が床へつきそうになります。
「でも、一発五十だよ」
フィナンシェさんが言いました。
「四回当てれば勝ちです」
「当てられればね」
「一回振っている間に、何度も攻撃されそうです」
「じゃあ、真ん中くらい?」
「はい」
私は、威力三十の木刀を選択しました。
長さも重さも、FoFで使っている刀と完全に同じではありません。
それでも、片手でも両手でも扱える大きさです。
振りの速さと一撃の威力の、ちょうど中間。
試しに呼び出すと、学校用アバターの手元へ木刀が現れました。
軽く構えてみます。
少し重心が前にあります。
けれど、すぐに慣れられそうです。
「構えた瞬間、雰囲気変わった」
フィナンシェさんが言いました。
「そうですか?」
「うん。さっきまで五十の木刀に困ってた人とは思えない」
「困っていたのではなく、合わないと判断したんです」
「シュトレンちゃんと同じこと言ってる」
「私の考え方、もう広まってる?」
シュトレンさんは、銃タイプを選んでいました。
片手で扱える最小サイズではなく、両手で安定して持てる中型。
威力は二十です。
「シュトレンさんは、それにするんですか?」
「うん。近くで剣を振り合うのは、少し怖いから」
「離れて戦える方が安心ですか?」
「安心というか、考える時間がありそう」
「相手が走ってきたら、すぐに距離はなくなりますよ」
「今から怖いこと言わないで」
「先に知っておいた方がいいかと思って」
「チョコちゃん、戦いのことになると急に現実的だよね」
シュトレンさんは銃を両手で構え、照準表示を確認しました。
「チョコちゃんは、やっぱり戦うの得意なの?」
「得意かどうかは、自分ではよくわかりません」
「FoFではかなり強いんでしょ?」
「始めた頃よりは、動けるようになりました」
「小さい頃、剣道もやってたんだよね?」
以前、三人で話したことを覚えていたようです。
「少しだけです。長く続けていたわけではありません」
「それでも、私は何もやったことないから格好いいなぁ」
「剣道とFoFと、学校のデュエルは全部違いますよ」
「でも、何もないより絶対いいよ」
フィナンシェさんは、最小サイズの銃を選びました。
威力は十。
その代わり、軽く、素早く連射できます。
「フィナンシェさんは、小さい銃なんですね」
「大きいのも試したけど、構えた時に動きづらかったから」
「見た目で選ばなかったんですか?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少しだけ眉を上げました。
「チョコちゃん、私が全部見た目だけで決めると思ってる?」
「FoFのクラスは、初期装備の見た目で選びましたよね」
「あれは大事だったから」
「やっぱり見た目ですね」
「でも今回は授業だから、使いやすさも見るよ」
「成長しましたね」
「始めたばかりのゲームと比べないで」
シュトレンさんが、間に入りました。
「二人とも、もう試合前から戦わないの」
「これは会話です」
「チョコちゃんの方が少し楽しんでるよね?」
「少しだけです」
三人で武器の登録を終えると、トーナメント表が表示されました。
名前が一斉に並びます。
私は自分の位置を探しました。
一回戦。
対戦相手の欄には、
<リッキー>
と表示されています。
少し離れた場所から、男子生徒たちの声が聞こえました。
「リクヤ、手加減してやれよ?」
「相手、チョコチップさんだぞ」
「わーかってるって。でも俺だって負けたくないからな!」
ユーザーIDはリッキー。
けれど、仲間からは本名のリクヤと呼ばれているようです。
少しやんちゃそうなグループの中心で、大きめの木刀を肩へ乗せています。
彼もこちらを見ました。
目が合うと、軽く手を上げます。
悪い人ではなさそうです。
私は小さく頭を下げました。
「チョコちゃん、大丈夫?」
シュトレンさんが聞きます。
「はい」
「緊張してない?」
「少ししています」
木刀を握り直します。
「でも、手加減をしてもらうつもりはありません」
「おお」
フィナンシェさんが笑いました。
「ちょっと格好いい」
「普通に戦っていただいた方が、私も動きやすいですから」
「理由は実用的なんだね」
私の番号が呼ばれました。
「行ってきます」
「頑張って、チョコちゃん!」
「勝ったらお昼、何か奢って」
「どうしてフィナンシェさんが得をするんですか?」
「景気づけ」
「では、勝ってから考えます」
二人へ手を振り、私は指定されたコネクションシートへ向かいました。
私は剣タイプの一覧を開きます。
短いものは、片手で簡単に扱える代わりに威力が十。
そこから大きくなるにつれ、二十、三十、四十、最大五十と威力が上がります。
ただし、五十の木刀は剣というより、太い板に近い大きさでした。
「これは、私には振れそうにありませんね」
最大サイズを試着表示すると、木刀の先端が床へつきそうになります。
「でも、一発五十だよ」
フィナンシェさんが言いました。
「四回当てれば勝ちです」
「当てられればね」
「一回振っている間に、何度も攻撃されそうです」
「じゃあ、真ん中くらい?」
「はい」
私は、威力三十の木刀を選択しました。
長さも重さも、FoFで使っている刀と完全に同じではありません。
それでも、片手でも両手でも扱える大きさです。
振りの速さと一撃の威力の、ちょうど中間。
試しに呼び出すと、学校用アバターの手元へ木刀が現れました。
軽く構えてみます。
少し重心が前にあります。
けれど、すぐに慣れられそうです。
「構えた瞬間、雰囲気変わった」
フィナンシェさんが言いました。
「そうですか?」
「うん。さっきまで五十の木刀に困ってた人とは思えない」
「困っていたのではなく、合わないと判断したんです」
「シュトレンちゃんと同じこと言ってる」
「私の考え方、もう広まってる?」
シュトレンさんは、銃タイプを選んでいました。
片手で扱える最小サイズではなく、両手で安定して持てる中型。
威力は二十です。
「シュトレンさんは、それにするんですか?」
「うん。近くで剣を振り合うのは、少し怖いから」
「離れて戦える方が安心ですか?」
「安心というか、考える時間がありそう」
「相手が走ってきたら、すぐに距離はなくなりますよ」
「今から怖いこと言わないで」
「先に知っておいた方がいいかと思って」
「チョコちゃん、戦いのことになると急に現実的だよね」
シュトレンさんは銃を両手で構え、照準表示を確認しました。
「チョコちゃんは、やっぱり戦うの得意なの?」
「得意かどうかは、自分ではよくわかりません」
「FoFではかなり強いんでしょ?」
「始めた頃よりは、動けるようになりました」
「小さい頃、剣道もやってたんだよね?」
以前、三人で話したことを覚えていたようです。
「少しだけです。長く続けていたわけではありません」
「それでも、私は何もやったことないから格好いいなぁ」
「剣道とFoFと、学校のデュエルは全部違いますよ」
「でも、何もないより絶対いいよ」
フィナンシェさんは、最小サイズの銃を選びました。
威力は十。
その代わり、軽く、素早く連射できます。
「フィナンシェさんは、小さい銃なんですね」
「大きいのも試したけど、構えた時に動きづらかったから」
「見た目で選ばなかったんですか?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少しだけ眉を上げました。
「チョコちゃん、私が全部見た目だけで決めると思ってる?」
「FoFのクラスは、初期装備の見た目で選びましたよね」
「あれは大事だったから」
「やっぱり見た目ですね」
「でも今回は授業だから、使いやすさも見るよ」
「成長しましたね」
「始めたばかりのゲームと比べないで」
シュトレンさんが、間に入りました。
「二人とも、もう試合前から戦わないの」
「これは会話です」
「チョコちゃんの方が少し楽しんでるよね?」
「少しだけです」
三人で武器の登録を終えると、トーナメント表が表示されました。
名前が一斉に並びます。
私は自分の位置を探しました。
一回戦。
対戦相手の欄には、
<リッキー>
と表示されています。
少し離れた場所から、男子生徒たちの声が聞こえました。
「リクヤ、手加減してやれよ?」
「相手、チョコチップさんだぞ」
「わーかってるって。でも俺だって負けたくないからな!」
ユーザーIDはリッキー。
けれど、仲間からは本名のリクヤと呼ばれているようです。
少しやんちゃそうなグループの中心で、大きめの木刀を肩へ乗せています。
彼もこちらを見ました。
目が合うと、軽く手を上げます。
悪い人ではなさそうです。
私は小さく頭を下げました。
「チョコちゃん、大丈夫?」
シュトレンさんが聞きます。
「はい」
「緊張してない?」
「少ししています」
木刀を握り直します。
「でも、手加減をしてもらうつもりはありません」
「おお」
フィナンシェさんが笑いました。
「ちょっと格好いい」
「普通に戦っていただいた方が、私も動きやすいですから」
「理由は実用的なんだね」
私の番号が呼ばれました。
「行ってきます」
「頑張って、チョコちゃん!」
「勝ったらお昼、何か奢って」
「どうしてフィナンシェさんが得をするんですか?」
「景気づけ」
「では、勝ってから考えます」
二人へ手を振り、私は指定されたコネクションシートへ向かいました。
観察する側
二年二組の生徒には、試合の観戦記録を取るための端末が配られていた。
みたらしっぽは、表示された一年生のトーナメント表を眺める。
一回戦。
チョコチップ対リッキー。
チョコが選んだ武器は、威力三十の中型木刀だった。
「思ったより普通の大きさにしたんだ」
隣から、フェタシェールが画面を覗く。
「もっと大きいのを選ぶと思った?」
「FoFで強いなら、一撃重い方に行くのかなって」
「チョコは、扱えない武器を威力だけで選ばないよ」
「詳しいね」
「何度も一緒に戦ってるから」
フェタは、試合前のチョコを見た。
学校では黒髪をお団子にまとめ、花飾りをつけた大人しそうな一年生。
木刀を持っていなければ、戦闘が得意には見えない。
「そんなに強いの?」
「FoFでは、かなり」
「学校のデュエルは?」
「初めて」
「じゃあ、わからないんだ」
「うん」
みたらしっぽは端末へ視線を戻した。
わからない。
FoFでは、クラススキルがある。
装備補正がある。
ステータスがある。
チョコはサムライの一撃と、相手の攻撃へ割り込む動きを得意としている。
だが、学校のデュエルには、それらがない。
与えられるのは木刀一本。
身体能力は学校用アバターの基準値。
純粋に、距離とタイミングを読まなければならない。
それでも。
チョコが積み重ねてきたものまで消えるわけではない。
「みた、ちょっと楽しそう」
フェタが言った。
「そう?」
「うん。口元」
みたらしっぽは自分の口元へ触れた。
「普通だけど」
「じゃあ普通に楽しそうなんだ」
「後輩の初試合だからね」
正面画面が切り替わる。
二人の学校用アバターが、円形のデュエルフィールドへ転送された。
チョコのライフは二百。
リッキーも二百。
リッキーの武器は、威力四十の大型木刀。
「相手、かなり攻めるタイプっぽいね」
フェタが言った。
「最初から来ると思う」
「チョコちゃん、受ける?」
「たぶん」
みたらしっぽは、観察記録の入力画面を開いた。
試合開始の表示が浮かぶ。
みたらしっぽは、表示された一年生のトーナメント表を眺める。
一回戦。
チョコチップ対リッキー。
チョコが選んだ武器は、威力三十の中型木刀だった。
「思ったより普通の大きさにしたんだ」
隣から、フェタシェールが画面を覗く。
「もっと大きいのを選ぶと思った?」
「FoFで強いなら、一撃重い方に行くのかなって」
「チョコは、扱えない武器を威力だけで選ばないよ」
「詳しいね」
「何度も一緒に戦ってるから」
フェタは、試合前のチョコを見た。
学校では黒髪をお団子にまとめ、花飾りをつけた大人しそうな一年生。
木刀を持っていなければ、戦闘が得意には見えない。
「そんなに強いの?」
「FoFでは、かなり」
「学校のデュエルは?」
「初めて」
「じゃあ、わからないんだ」
「うん」
みたらしっぽは端末へ視線を戻した。
わからない。
FoFでは、クラススキルがある。
装備補正がある。
ステータスがある。
チョコはサムライの一撃と、相手の攻撃へ割り込む動きを得意としている。
だが、学校のデュエルには、それらがない。
与えられるのは木刀一本。
身体能力は学校用アバターの基準値。
純粋に、距離とタイミングを読まなければならない。
それでも。
チョコが積み重ねてきたものまで消えるわけではない。
「みた、ちょっと楽しそう」
フェタが言った。
「そう?」
「うん。口元」
みたらしっぽは自分の口元へ触れた。
「普通だけど」
「じゃあ普通に楽しそうなんだ」
「後輩の初試合だからね」
正面画面が切り替わる。
二人の学校用アバターが、円形のデュエルフィールドへ転送された。
チョコのライフは二百。
リッキーも二百。
リッキーの武器は、威力四十の大型木刀。
「相手、かなり攻めるタイプっぽいね」
フェタが言った。
「最初から来ると思う」
「チョコちゃん、受ける?」
「たぶん」
みたらしっぽは、観察記録の入力画面を開いた。
試合開始の表示が浮かぶ。
リッキー
転送が終わると、演習室の景色が消えました。
足元には白い床。
周囲には円形の境界線。
頭上に、私とリッキーさんのライフゲージが表示されています。
<チョコチップ 200>
<リッキー 200>
実際にフィールドへ立つと、観戦していた時よりも相手との距離が近く感じました。
リッキーさんは、大型の木刀を両手で持っています。
一撃の威力は四十。
五回受ければ、私のライフはゼロになります。
「よろしくな、チョコチップさん」
「よろしくお願いします」
「先に言っとくけど、俺、普通に行くから」
「はい。その方が助かります」
「……意外と強気だな」
「私も勝ちたいので」
言葉にすると、緊張よりも少しだけ楽しみの方が大きくなりました。
正面にカウントが表示されます。
三。
二。
一。
<DUEL START>
リッキーさんが、一気に距離を詰めました。
速い。
大きな木刀を選んでいますが、振り始めまでが遅いわけではありません。
右上から、斜めに振り下ろしてきます。
私は木刀を両手で持ち、受けました。
木刀同士がぶつかります。
強い衝撃。
ライフは減りません。
ですが、腕が押し下げられました。
重い。
正面から何度も受けていたら、体勢が崩れます。
リッキーさんが、すぐに二撃目へつなげようとしました。
私は後ろへ下がらず、木刀を滑らせるように横へ外します。
大きな武器が、私の脇を通り過ぎました。
空いた右側へ踏み込みます。
木刀の先を、リッキーさんの肩へ当てました。
実際に叩く前に安全処理が働き、青い光が弾けます。
<HIT -30>
<リッキー 170>
「うおっ」
リッキーさんが一歩離れました。
演習室側から、小さなどよめきが聞こえた気がします。
「今の、うまいな」
「ありがとうございます」
「でも、次は当たらない!」
今度は、まっすぐ来ませんでした。
一度右へ動き、私の木刀を振らせようとします。
私は動かずに待ちました。
リッキーさんは、さらに半歩だけ近づきます。
来る。
そう思った瞬間、木刀が横から振られました。
私は受けようとしました。
けれど、それは途中で止まります。
フェイント。
本当の攻撃は、反対側からの突きでした。
避けきれません。
脇腹へ安全判定が入り、赤い光が広がりました。
<HIT -40>
<チョコチップ 160>
衝撃の方向だけが、軽く体へ伝わります。
痛くはありません。
それでも、攻撃を受けたことには変わりありません。
「一本!」
リッキーさんが笑いました。
「今のは、きれいに引っかかりました」
「素直に言うんだな」
「同じ攻撃は、次は受けないようにします」
「やっぱり強気だ!」
リッキーさんは、すぐに次の攻撃へ入りました。
今度は、フェイントを警戒します。
ですが、警戒しすぎると、普通の攻撃への反応が遅れます。
大きな木刀が、左から迫りました。
一歩下がり、ぎりぎりで避けます。
反撃しようとした時には、相手もすでに距離を取っていました。
FoFなら、ここで移動スキルを使えます。
相手の間合いへ一気に入り、技へつなぐこともできます。
ですが、今は木刀一本です。
足で近づかなければいけません。
私は呼吸を整えました。
相手の武器だけを見ない。
肩。
足。
腰の向き。
小さい頃の剣道で教わったことと、FoFで何度も失敗しながら覚えたこと。
両方を重ねます。
リッキーさんの右足が前へ出ました。
振り下ろし。
今度は正面から受けず、木刀の側面へ自分の木刀を当てます。
軌道だけをずらす。
そのまま相手の横へ抜け、背中へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 140>
振り返ってくる前に、距離を取ります。
「またか!」
「大型の武器は、振り終わりに少し隙があります」
「試合中に解説するなよ!」
「すみません、つい」
「いや、謝られる方が困る!」
リッキーさんは笑いながら、さらに強く踏み込みました。
今度は連続で攻撃してきます。
一撃目を外す。
二撃目を受ける。
木刀同士がぶつかり、私は体勢を崩しました。
そこへ三撃目。
避けられません。
<HIT -40>
<チョコチップ 120>
残りライフは百二十。
リッキーさんは百四十。
一撃の差ですが、このまま攻め続けられると不利です。
私は、あえて大きく後ろへ下がりました。
リッキーさんも追ってきます。
境界線が近づく。
これ以上下がれば、逃げる方向がなくなります。
ですが。
追う側は、前へ出ることに意識が向きます。
木刀が振り上げられました。
私は境界線に沿って横へ動きます。
リッキーさんの攻撃が空を切りました。
振り切った木刀を戻すより早く、手首へ一撃。
<HIT -30>
続けて、肩へ。
<HIT -30>
<リッキー 80>
二回。
連続で判定が入りました。
「一気に持ってかれた!」
リッキーさんが木刀を引き戻します。
今度は私が前へ出ました。
一歩目は速く。
二歩目で、あえて少し速度を落とします。
リッキーさんが、私の踏み込みに合わせて木刀を振りました。
私はまだ間合いへ入っていません。
攻撃が届く前に止まります。
木刀が空を切った瞬間、残りの距離を詰めました。
胴へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 50>
「そっちもフェイント使うのかよ!」
「先ほど教えていただきましたから」
「一回で覚えるなって!」
リッキーさんの次の攻撃が、私の肩へ入ります。
<HIT -40>
<チョコチップ 80>
残り八十。
もう二回受ければ負けます。
リッキーさんも、あと二回。
互いに余裕はありません。
木刀を構え直します。
リッキーさんも、先ほどまでの笑顔を少しだけ引っ込めました。
本気でこちらを見ています。
私は、その方が嬉しいと思いました。
開始前に手加減をされるかもしれないと思っていた相手が、今は私に勝つためだけに動いています。
リッキーさんが先に動きました。
右からの横薙ぎ。
私は木刀を合わせます。
ぶつかる。
押される。
それでも、離しません。
相手が力を加える方向へ、少しだけ木刀を引きました。
支えを失ったリッキーさんの体が前へ流れます。
すれ違うように横へ入り、脇へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 20>
あと一回。
リッキーさんは振り返ると同時に、木刀を大きく振り上げました。
私も踏み込みます。
木刀が落ちてくる。
間に合うかどうかは、考えませんでした。
相手の攻撃が届く前に、木刀の先を胸元へ触れさせます。
青い光。
その直後、リッキーさんの木刀が私の肩の少し手前で停止しました。
<HIT -30>
<リッキー 0>
<WINNER チョコチップ>
試合終了の表示が浮かびました。
私は、しばらく木刀を構えたまま動けませんでした。
「……勝ちました?」
「勝ったなぁ」
リッキーさんは木刀を消し、頭をかきました。
「普通に強いじゃん」
「途中で二回も攻撃を受けました」
「俺は七回くらい受けたんだけど?」
「武器の威力が違いますから」
「そういう問題かなぁ」
リッキーさんは笑い、右手を差し出しました。
「次は勝つからな」
私は、その手を握りました。
「はい。次も、よろしくお願いします」
転送が始まる直前。
観戦していたリッキーさんの友人たちの声が聞こえました。
「リクヤ、手加減されてたのそっちじゃん!」
「うるせー!」
演習室へ戻ると、周囲から笑いが起きていました。
リッキーさんも一緒に笑っています。
私も、少しだけ笑ってしまいました。
足元には白い床。
周囲には円形の境界線。
頭上に、私とリッキーさんのライフゲージが表示されています。
<チョコチップ 200>
<リッキー 200>
実際にフィールドへ立つと、観戦していた時よりも相手との距離が近く感じました。
リッキーさんは、大型の木刀を両手で持っています。
一撃の威力は四十。
五回受ければ、私のライフはゼロになります。
「よろしくな、チョコチップさん」
「よろしくお願いします」
「先に言っとくけど、俺、普通に行くから」
「はい。その方が助かります」
「……意外と強気だな」
「私も勝ちたいので」
言葉にすると、緊張よりも少しだけ楽しみの方が大きくなりました。
正面にカウントが表示されます。
三。
二。
一。
<DUEL START>
リッキーさんが、一気に距離を詰めました。
速い。
大きな木刀を選んでいますが、振り始めまでが遅いわけではありません。
右上から、斜めに振り下ろしてきます。
私は木刀を両手で持ち、受けました。
木刀同士がぶつかります。
強い衝撃。
ライフは減りません。
ですが、腕が押し下げられました。
重い。
正面から何度も受けていたら、体勢が崩れます。
リッキーさんが、すぐに二撃目へつなげようとしました。
私は後ろへ下がらず、木刀を滑らせるように横へ外します。
大きな武器が、私の脇を通り過ぎました。
空いた右側へ踏み込みます。
木刀の先を、リッキーさんの肩へ当てました。
実際に叩く前に安全処理が働き、青い光が弾けます。
<HIT -30>
<リッキー 170>
「うおっ」
リッキーさんが一歩離れました。
演習室側から、小さなどよめきが聞こえた気がします。
「今の、うまいな」
「ありがとうございます」
「でも、次は当たらない!」
今度は、まっすぐ来ませんでした。
一度右へ動き、私の木刀を振らせようとします。
私は動かずに待ちました。
リッキーさんは、さらに半歩だけ近づきます。
来る。
そう思った瞬間、木刀が横から振られました。
私は受けようとしました。
けれど、それは途中で止まります。
フェイント。
本当の攻撃は、反対側からの突きでした。
避けきれません。
脇腹へ安全判定が入り、赤い光が広がりました。
<HIT -40>
<チョコチップ 160>
衝撃の方向だけが、軽く体へ伝わります。
痛くはありません。
それでも、攻撃を受けたことには変わりありません。
「一本!」
リッキーさんが笑いました。
「今のは、きれいに引っかかりました」
「素直に言うんだな」
「同じ攻撃は、次は受けないようにします」
「やっぱり強気だ!」
リッキーさんは、すぐに次の攻撃へ入りました。
今度は、フェイントを警戒します。
ですが、警戒しすぎると、普通の攻撃への反応が遅れます。
大きな木刀が、左から迫りました。
一歩下がり、ぎりぎりで避けます。
反撃しようとした時には、相手もすでに距離を取っていました。
FoFなら、ここで移動スキルを使えます。
相手の間合いへ一気に入り、技へつなぐこともできます。
ですが、今は木刀一本です。
足で近づかなければいけません。
私は呼吸を整えました。
相手の武器だけを見ない。
肩。
足。
腰の向き。
小さい頃の剣道で教わったことと、FoFで何度も失敗しながら覚えたこと。
両方を重ねます。
リッキーさんの右足が前へ出ました。
振り下ろし。
今度は正面から受けず、木刀の側面へ自分の木刀を当てます。
軌道だけをずらす。
そのまま相手の横へ抜け、背中へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 140>
振り返ってくる前に、距離を取ります。
「またか!」
「大型の武器は、振り終わりに少し隙があります」
「試合中に解説するなよ!」
「すみません、つい」
「いや、謝られる方が困る!」
リッキーさんは笑いながら、さらに強く踏み込みました。
今度は連続で攻撃してきます。
一撃目を外す。
二撃目を受ける。
木刀同士がぶつかり、私は体勢を崩しました。
そこへ三撃目。
避けられません。
<HIT -40>
<チョコチップ 120>
残りライフは百二十。
リッキーさんは百四十。
一撃の差ですが、このまま攻め続けられると不利です。
私は、あえて大きく後ろへ下がりました。
リッキーさんも追ってきます。
境界線が近づく。
これ以上下がれば、逃げる方向がなくなります。
ですが。
追う側は、前へ出ることに意識が向きます。
木刀が振り上げられました。
私は境界線に沿って横へ動きます。
リッキーさんの攻撃が空を切りました。
振り切った木刀を戻すより早く、手首へ一撃。
<HIT -30>
続けて、肩へ。
<HIT -30>
<リッキー 80>
二回。
連続で判定が入りました。
「一気に持ってかれた!」
リッキーさんが木刀を引き戻します。
今度は私が前へ出ました。
一歩目は速く。
二歩目で、あえて少し速度を落とします。
リッキーさんが、私の踏み込みに合わせて木刀を振りました。
私はまだ間合いへ入っていません。
攻撃が届く前に止まります。
木刀が空を切った瞬間、残りの距離を詰めました。
胴へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 50>
「そっちもフェイント使うのかよ!」
「先ほど教えていただきましたから」
「一回で覚えるなって!」
リッキーさんの次の攻撃が、私の肩へ入ります。
<HIT -40>
<チョコチップ 80>
残り八十。
もう二回受ければ負けます。
リッキーさんも、あと二回。
互いに余裕はありません。
木刀を構え直します。
リッキーさんも、先ほどまでの笑顔を少しだけ引っ込めました。
本気でこちらを見ています。
私は、その方が嬉しいと思いました。
開始前に手加減をされるかもしれないと思っていた相手が、今は私に勝つためだけに動いています。
リッキーさんが先に動きました。
右からの横薙ぎ。
私は木刀を合わせます。
ぶつかる。
押される。
それでも、離しません。
相手が力を加える方向へ、少しだけ木刀を引きました。
支えを失ったリッキーさんの体が前へ流れます。
すれ違うように横へ入り、脇へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 20>
あと一回。
リッキーさんは振り返ると同時に、木刀を大きく振り上げました。
私も踏み込みます。
木刀が落ちてくる。
間に合うかどうかは、考えませんでした。
相手の攻撃が届く前に、木刀の先を胸元へ触れさせます。
青い光。
その直後、リッキーさんの木刀が私の肩の少し手前で停止しました。
<HIT -30>
<リッキー 0>
<WINNER チョコチップ>
試合終了の表示が浮かびました。
私は、しばらく木刀を構えたまま動けませんでした。
「……勝ちました?」
「勝ったなぁ」
リッキーさんは木刀を消し、頭をかきました。
「普通に強いじゃん」
「途中で二回も攻撃を受けました」
「俺は七回くらい受けたんだけど?」
「武器の威力が違いますから」
「そういう問題かなぁ」
リッキーさんは笑い、右手を差し出しました。
「次は勝つからな」
私は、その手を握りました。
「はい。次も、よろしくお願いします」
転送が始まる直前。
観戦していたリッキーさんの友人たちの声が聞こえました。
「リクヤ、手加減されてたのそっちじゃん!」
「うるせー!」
演習室へ戻ると、周囲から笑いが起きていました。
リッキーさんも一緒に笑っています。
私も、少しだけ笑ってしまいました。
思ったより、ずっと
「よし」
チョコの勝利表示が出た瞬間、みたらしっぽは小さく声を出していた。
フェタが、すぐにこちらを見る。
「今、言った?」
「何を?」
「よしって」
「言ってないと思う」
「私には聞こえたけど」
「気のせいじゃない?」
「つきみみたいなこと言うね」
みたらしっぽは観察端末へ視線を戻した。
チョコの勝利。
予想していなかったわけではない。
だが、学校のデュエルへ初めて入って、あれだけ動けるとは思っていなかった。
最初はFoFの感覚を引きずっていた。
相手の攻撃を受けてから、スキルへつなごうとするような間があった。
しかし、一撃受けたあとには切り替えている。
相手のフェイントも、二度目には見切った。
その場で相手の動きを取り入れ、自分の攻撃に使っていた。
「どう?」
フェタが聞く。
「強い」
「それは見ればわかる」
「でも、まだ視野が狭くなる」
みたらしっぽは観察記録へ入力した。
<攻撃へ移る直前、左肩が上がる>
<相手の武器へ視線が集まりやすい>
<受け流し後の判断が速い>
「細かいね」
「次から同じグループになるかもしれないから」
「同じAに入ると思ってる?」
「今のままなら」
「一回勝っただけだよ」
「先生は勝敗だけで決めないし」
フェタは、少しだけ感心したようにチョコを見た。
「大人しそうなのにね」
「大人しいよ」
「試合中、相手に『次は受けないようにします』って言ってたけど」
「丁寧だったでしょ?」
「丁寧なら何でも大人しいわけじゃないと思う」
次の試合が始まる。
みたらしっぽは、チョコの名前が次に呼ばれるまで端末を閉じなかった。
チョコの勝利表示が出た瞬間、みたらしっぽは小さく声を出していた。
フェタが、すぐにこちらを見る。
「今、言った?」
「何を?」
「よしって」
「言ってないと思う」
「私には聞こえたけど」
「気のせいじゃない?」
「つきみみたいなこと言うね」
みたらしっぽは観察端末へ視線を戻した。
チョコの勝利。
予想していなかったわけではない。
だが、学校のデュエルへ初めて入って、あれだけ動けるとは思っていなかった。
最初はFoFの感覚を引きずっていた。
相手の攻撃を受けてから、スキルへつなごうとするような間があった。
しかし、一撃受けたあとには切り替えている。
相手のフェイントも、二度目には見切った。
その場で相手の動きを取り入れ、自分の攻撃に使っていた。
「どう?」
フェタが聞く。
「強い」
「それは見ればわかる」
「でも、まだ視野が狭くなる」
みたらしっぽは観察記録へ入力した。
<攻撃へ移る直前、左肩が上がる>
<相手の武器へ視線が集まりやすい>
<受け流し後の判断が速い>
「細かいね」
「次から同じグループになるかもしれないから」
「同じAに入ると思ってる?」
「今のままなら」
「一回勝っただけだよ」
「先生は勝敗だけで決めないし」
フェタは、少しだけ感心したようにチョコを見た。
「大人しそうなのにね」
「大人しいよ」
「試合中、相手に『次は受けないようにします』って言ってたけど」
「丁寧だったでしょ?」
「丁寧なら何でも大人しいわけじゃないと思う」
次の試合が始まる。
みたらしっぽは、チョコの名前が次に呼ばれるまで端末を閉じなかった。
それぞれの試合
演習室へ戻ると、シュトレンさんとフィナンシェさんが迎えてくれました。
「チョコちゃん、すごかった!」
シュトレンさんが両手を握ってくれます。
「ありがとうございます。思っていたより緊張しました」
「緊張して、あれなんだ」
フィナンシェさんが言いました。
「途中から、全然顔が違ったよ」
「やはり、そんなに変わりますか?」
「変わる。相手の人、途中から笑わなくなってた」
「真剣に戦ってくださったので、嬉しかったです」
「その感想が、もう戦う人なんだよね」
次は、シュトレンさんの試合です。
相手は、小型の木刀を選んだ女子生徒でした。
シュトレンさんは、銃を両手で構えます。
「行ってきます」
「頑張ってください」
「近づかれたら、横へ動いてくださいね」
私が言うと、シュトレンさんが足を止めました。
「今、急に緊張してきた」
「では、言わない方がよかったでしょうか」
「ううん。知らないまま近づかれるよりはいい」
「チョコちゃん、応援の仕方が実戦的すぎる」
フィナンシェさんが笑いました。
シュトレンさんの試合が始まります。
最初の数発は外れました。
ですが、相手がまっすぐ近づいてくると、落ち着いて照準を合わせます。
一発。
二発。
ライフを削りながら、後ろへ下がる。
相手が木刀を振った瞬間には、斜めへ逃げました。
「上手です」
私が言うと、フィナンシェさんも頷きます。
「ピアノやってるから、手の操作が細かいのかな」
「関係があるのでしょうか」
「本人に聞いてみよう」
最終的に、シュトレンさんは一回戦を勝ちました。
演習室へ戻ると、本人が一番驚いています。
「勝っちゃった」
「おめでとうございます」
「チョコちゃんみたいに動けなくても、勝てるんだね」
「シュトレンさんの戦い方で勝ったんです」
「それ、ちょっと嬉しい言い方だね」
続いて、フィナンシェさんの試合。
小型の銃を使い、相手の周囲を歩くように動きながら、少しずつライフを削っていきます。
威力は十しかありません。
一度に大きく減らすことはできません。
ですが、軽い武器を選んだ分、狙いを外してもすぐに次を撃てます。
相手は大型の木刀。
一回の攻撃は重いですが、なかなかフィナンシェさんへ届きません。
「フィナンシェさん、こういう動きもできるんですね」
「普段から、買い物の時に人を避けるの上手だからかな」
シュトレンさんが言いました。
「それは関係ないと思います」
「でも、混んでる店でも全然ぶつからないよ」
「少し関係があるかもしれません」
時間はかかりましたが、フィナンシェさんも一回戦を勝ちました。
戻ってくるなり、言います。
「これ、思ってたより楽しい」
「勝ったからではありませんか?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少し考えました。
「それもある」
「正直ですね」
「チョコちゃんも、すごく楽しそうだったよ」
「私も否定はしません」
三人とも一回戦を突破しました。
そのことが嬉しくて、次の試合まで少し落ち着かなくなりました。
ですが、トーナメントは簡単ではありません。
シュトレンさんは二回戦で、大型の銃を使う相手に敗れました。
射程も一撃の威力も相手が上。
最後まで距離を取ろうとしましたが、一発ずつ確実にライフを減らされてしまいます。
試合後、シュトレンさんは少し悔しそうでした。
「負けるの、思ってたより悔しいね」
「次の授業で、また練習できます」
「うん。今度は、撃たれる前に動けるようになりたい」
最初は、戦うのが苦手だと言っていた人の言葉には聞こえません。
フィナンシェさんは二回戦も勝ちました。
しかし三回戦では、素早い小型木刀の相手に距離を詰められます。
何発か当てましたが、一度近づかれたあとに立て直せず、そこで敗れました。
「あと少しだったのに」
戻ってきたフィナンシェさんは、かなり悔しそうです。
「次は、近づかれた時の武器も必要」
「デュエルでは、一種類だけですよ」
「じゃあ、近づかれる前にもっと当てる」
「その方がいいと思います」
「チョコちゃんは、まだ残ってるんだよね?」
「はい」
「私たちの分まで勝って、とは言わないけど」
フィナンシェさんは一度言葉を切りました。
「勝ったら、やっぱり何か奢って」
「結局、そこへ戻るんですね」
「景気づけの話、まだ有効だから」
シュトレンさんも笑います。
「私は普通に応援してるよ」
「ありがとうございます」
「でも、勝ったらお菓子を作る」
「シュトレンさんまで報酬を用意しないでください」
「だめ?」
「……嬉しいですけど」
「じゃあ決まり」
次の対戦通知が届きました。
私はコネクションシートに向かいます。
「行ってきます」
「頑張って!」
「勝っても負けても、戻ってきたら三人で食べよう」
フィナンシェさんの言葉に、少しだけ肩の力が抜けました。
「はい」
「チョコちゃん、すごかった!」
シュトレンさんが両手を握ってくれます。
「ありがとうございます。思っていたより緊張しました」
「緊張して、あれなんだ」
フィナンシェさんが言いました。
「途中から、全然顔が違ったよ」
「やはり、そんなに変わりますか?」
「変わる。相手の人、途中から笑わなくなってた」
「真剣に戦ってくださったので、嬉しかったです」
「その感想が、もう戦う人なんだよね」
次は、シュトレンさんの試合です。
相手は、小型の木刀を選んだ女子生徒でした。
シュトレンさんは、銃を両手で構えます。
「行ってきます」
「頑張ってください」
「近づかれたら、横へ動いてくださいね」
私が言うと、シュトレンさんが足を止めました。
「今、急に緊張してきた」
「では、言わない方がよかったでしょうか」
「ううん。知らないまま近づかれるよりはいい」
「チョコちゃん、応援の仕方が実戦的すぎる」
フィナンシェさんが笑いました。
シュトレンさんの試合が始まります。
最初の数発は外れました。
ですが、相手がまっすぐ近づいてくると、落ち着いて照準を合わせます。
一発。
二発。
ライフを削りながら、後ろへ下がる。
相手が木刀を振った瞬間には、斜めへ逃げました。
「上手です」
私が言うと、フィナンシェさんも頷きます。
「ピアノやってるから、手の操作が細かいのかな」
「関係があるのでしょうか」
「本人に聞いてみよう」
最終的に、シュトレンさんは一回戦を勝ちました。
演習室へ戻ると、本人が一番驚いています。
「勝っちゃった」
「おめでとうございます」
「チョコちゃんみたいに動けなくても、勝てるんだね」
「シュトレンさんの戦い方で勝ったんです」
「それ、ちょっと嬉しい言い方だね」
続いて、フィナンシェさんの試合。
小型の銃を使い、相手の周囲を歩くように動きながら、少しずつライフを削っていきます。
威力は十しかありません。
一度に大きく減らすことはできません。
ですが、軽い武器を選んだ分、狙いを外してもすぐに次を撃てます。
相手は大型の木刀。
一回の攻撃は重いですが、なかなかフィナンシェさんへ届きません。
「フィナンシェさん、こういう動きもできるんですね」
「普段から、買い物の時に人を避けるの上手だからかな」
シュトレンさんが言いました。
「それは関係ないと思います」
「でも、混んでる店でも全然ぶつからないよ」
「少し関係があるかもしれません」
時間はかかりましたが、フィナンシェさんも一回戦を勝ちました。
戻ってくるなり、言います。
「これ、思ってたより楽しい」
「勝ったからではありませんか?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少し考えました。
「それもある」
「正直ですね」
「チョコちゃんも、すごく楽しそうだったよ」
「私も否定はしません」
三人とも一回戦を突破しました。
そのことが嬉しくて、次の試合まで少し落ち着かなくなりました。
ですが、トーナメントは簡単ではありません。
シュトレンさんは二回戦で、大型の銃を使う相手に敗れました。
射程も一撃の威力も相手が上。
最後まで距離を取ろうとしましたが、一発ずつ確実にライフを減らされてしまいます。
試合後、シュトレンさんは少し悔しそうでした。
「負けるの、思ってたより悔しいね」
「次の授業で、また練習できます」
「うん。今度は、撃たれる前に動けるようになりたい」
最初は、戦うのが苦手だと言っていた人の言葉には聞こえません。
フィナンシェさんは二回戦も勝ちました。
しかし三回戦では、素早い小型木刀の相手に距離を詰められます。
何発か当てましたが、一度近づかれたあとに立て直せず、そこで敗れました。
「あと少しだったのに」
戻ってきたフィナンシェさんは、かなり悔しそうです。
「次は、近づかれた時の武器も必要」
「デュエルでは、一種類だけですよ」
「じゃあ、近づかれる前にもっと当てる」
「その方がいいと思います」
「チョコちゃんは、まだ残ってるんだよね?」
「はい」
「私たちの分まで勝って、とは言わないけど」
フィナンシェさんは一度言葉を切りました。
「勝ったら、やっぱり何か奢って」
「結局、そこへ戻るんですね」
「景気づけの話、まだ有効だから」
シュトレンさんも笑います。
「私は普通に応援してるよ」
「ありがとうございます」
「でも、勝ったらお菓子を作る」
「シュトレンさんまで報酬を用意しないでください」
「だめ?」
「……嬉しいですけど」
「じゃあ決まり」
次の対戦通知が届きました。
私はコネクションシートに向かいます。
「行ってきます」
「頑張って!」
「勝っても負けても、戻ってきたら三人で食べよう」
フィナンシェさんの言葉に、少しだけ肩の力が抜けました。
「はい」
勝つたびに
二回戦の相手は、銃タイプでした。
中型。
一発の威力は二十。
開始直後から、こちらへ向けて連続で撃ってきます。
私は木刀で弾丸を防ぐことはできません。
射線から外れるしかありません。
右へ。
左へ。
相手は、私が動く方向を予測して撃ってきます。
一発、肩へ入ります。
<チョコチップ 180>
もう一発。
<チョコチップ 160>
このまま離れていても、少しずつ削られます。
私は相手の銃だけを見ず、発射する時の指と肩の動きを見ました。
撃つ直前、銃口がわずかに上がる。
発射。
避ける。
次の弾まで、ほんの短い間。
そこへ一歩ずつ入ります。
距離が半分になったところで、相手も下がり始めました。
ですが、後ろへ動きながら撃つと、照準が少しずれます。
私は一気に距離を詰めました。
木刀の間合いへ入る。
一撃。
相手が離れる前に、もう一撃。
銃を構え直す方向へ回り込みながら、さらに一撃。
接近してからは、こちらが有利でした。
相手も最後まで逃げながら撃ち続けましたが、そのままライフを削り切ります。
二回戦、勝利。
三回戦の相手は、威力五十の木刀を選んでいました。
一発受ければ、ライフの四分の一が消えます。
その代わり、振りは明らかに遅い。
避けられる。
そう思って踏み込みました。
相手の木刀が横から来ます。
振り始めは遅い。
ですが、振り始めてからの勢いは想像より強い。
避けたつもりでした。
木刀の先が、私の背中へ触れます。
<HIT -50>
<チョコチップ 150>
一撃で、大きくライフを減らされました。
「思っていたより、長いですね……」
相手の武器は、見た目以上に間合いがあります。
近づく時も。
離れる時も。
先端の位置まで考えなければいけません。
私は、踏み込む距離を一歩短くしました。
相手が振る。
届かない位置で待つ。
木刀の先が目の前を通り過ぎたあとで、近づく。
一撃。
すぐに離れる。
何度か繰り返すと、相手も振り切らず、途中で止めるようになりました。
今度はこちらが、先に動かされます。
攻めるふりをして、止まる。
相手も動かない。
お互いに、相手が先に振るのを待っていました。
その時。
観察席から、みた先輩の姿が見えました。
端末を持ちながら、こちらを見ています。
何か言っているようですが、試合中なので声は届きません。
口の動きだけ。
肩。
そう言ったように見えました。
自分の左肩を意識します。
踏み込む前。
木刀を振ろうとする前。
無意識に力が入っている。
それを見て、相手も私の攻撃を読んでいたのかもしれません。
私は一度、木刀を下げました。
肩の力を抜きます。
普段の構えとは違う姿勢に、相手が少し戸惑いました。
そのまま、ゆっくり近づきます。
一歩。
もう一歩。
相手が待ちきれず、木刀を振りました。
私は横へ外れます。
振り終わりに、一撃。
その後も同じように、相手を先に動かしました。
大きな一撃を受けないように。
一回ずつ。
確実に。
最後までライフを削ります。
三回戦、勝利。
演習室へ戻った時、みた先輩が近くまで来ていました。
「チョコ」
「みた先輩」
「左肩」
「やはり、上がっていましたか?」
「攻撃する前にね。途中から直ってた」
「先輩が言っているように見えたので」
「試合中に読めたの?」
「たぶん、肩と」
「すごいな」
みた先輩が少し笑いました。
「でも、直すところはまだいっぱいあるよ」
「今、三回勝ったところなんですが」
「勝ったことと、動きが完成してることは別だから」
「少しくらい褒めてくださってもいいのに」
「すごくよかったよ」
返事が早すぎました。
「今、後から付け足しましたよね?」
「本当に思ってる」
横にいたフェタ先輩が笑います。
「チョコちゃん、みたにちゃんと言うんだね」
「みた先輩が、素直に褒めてくださらないので」
「褒めたって」
「要求されたあとにね」
「フェタまで」
私は、少しだけ笑いました。
「でも、ありがとうございます。次も頑張ります」
「うん。ただ、勝ち急がなくていいからね」
その言葉に、以前バーチャルポッドで見た、去年のみた先輩の試合を思い出しました。
途中から前へ出なくなり、自分で試合を終わらせた映像。
「私は、みた先輩のように途中で勝つのをやめるつもりはありません」
みた先輩が、少しだけ動きを止めました。
フェタ先輩が、とうとう声を上げて笑います。
「言われてるよ」
「その話、まだ覚えてたんだ」
「今年は最後まで戦ってほしいと、お願いしましたから」
「チョコも、最後までやるんだね」
「はい」
「じゃあ、僕もちゃんと見るよ」
次の試合通知が届きました。
準決勝。
「行ってきます」
「頑張って、チョコ」
みた先輩が、今度は最初からはっきり言いました。
「はい!」
中型。
一発の威力は二十。
開始直後から、こちらへ向けて連続で撃ってきます。
私は木刀で弾丸を防ぐことはできません。
射線から外れるしかありません。
右へ。
左へ。
相手は、私が動く方向を予測して撃ってきます。
一発、肩へ入ります。
<チョコチップ 180>
もう一発。
<チョコチップ 160>
このまま離れていても、少しずつ削られます。
私は相手の銃だけを見ず、発射する時の指と肩の動きを見ました。
撃つ直前、銃口がわずかに上がる。
発射。
避ける。
次の弾まで、ほんの短い間。
そこへ一歩ずつ入ります。
距離が半分になったところで、相手も下がり始めました。
ですが、後ろへ動きながら撃つと、照準が少しずれます。
私は一気に距離を詰めました。
木刀の間合いへ入る。
一撃。
相手が離れる前に、もう一撃。
銃を構え直す方向へ回り込みながら、さらに一撃。
接近してからは、こちらが有利でした。
相手も最後まで逃げながら撃ち続けましたが、そのままライフを削り切ります。
二回戦、勝利。
三回戦の相手は、威力五十の木刀を選んでいました。
一発受ければ、ライフの四分の一が消えます。
その代わり、振りは明らかに遅い。
避けられる。
そう思って踏み込みました。
相手の木刀が横から来ます。
振り始めは遅い。
ですが、振り始めてからの勢いは想像より強い。
避けたつもりでした。
木刀の先が、私の背中へ触れます。
<HIT -50>
<チョコチップ 150>
一撃で、大きくライフを減らされました。
「思っていたより、長いですね……」
相手の武器は、見た目以上に間合いがあります。
近づく時も。
離れる時も。
先端の位置まで考えなければいけません。
私は、踏み込む距離を一歩短くしました。
相手が振る。
届かない位置で待つ。
木刀の先が目の前を通り過ぎたあとで、近づく。
一撃。
すぐに離れる。
何度か繰り返すと、相手も振り切らず、途中で止めるようになりました。
今度はこちらが、先に動かされます。
攻めるふりをして、止まる。
相手も動かない。
お互いに、相手が先に振るのを待っていました。
その時。
観察席から、みた先輩の姿が見えました。
端末を持ちながら、こちらを見ています。
何か言っているようですが、試合中なので声は届きません。
口の動きだけ。
肩。
そう言ったように見えました。
自分の左肩を意識します。
踏み込む前。
木刀を振ろうとする前。
無意識に力が入っている。
それを見て、相手も私の攻撃を読んでいたのかもしれません。
私は一度、木刀を下げました。
肩の力を抜きます。
普段の構えとは違う姿勢に、相手が少し戸惑いました。
そのまま、ゆっくり近づきます。
一歩。
もう一歩。
相手が待ちきれず、木刀を振りました。
私は横へ外れます。
振り終わりに、一撃。
その後も同じように、相手を先に動かしました。
大きな一撃を受けないように。
一回ずつ。
確実に。
最後までライフを削ります。
三回戦、勝利。
演習室へ戻った時、みた先輩が近くまで来ていました。
「チョコ」
「みた先輩」
「左肩」
「やはり、上がっていましたか?」
「攻撃する前にね。途中から直ってた」
「先輩が言っているように見えたので」
「試合中に読めたの?」
「たぶん、肩と」
「すごいな」
みた先輩が少し笑いました。
「でも、直すところはまだいっぱいあるよ」
「今、三回勝ったところなんですが」
「勝ったことと、動きが完成してることは別だから」
「少しくらい褒めてくださってもいいのに」
「すごくよかったよ」
返事が早すぎました。
「今、後から付け足しましたよね?」
「本当に思ってる」
横にいたフェタ先輩が笑います。
「チョコちゃん、みたにちゃんと言うんだね」
「みた先輩が、素直に褒めてくださらないので」
「褒めたって」
「要求されたあとにね」
「フェタまで」
私は、少しだけ笑いました。
「でも、ありがとうございます。次も頑張ります」
「うん。ただ、勝ち急がなくていいからね」
その言葉に、以前バーチャルポッドで見た、去年のみた先輩の試合を思い出しました。
途中から前へ出なくなり、自分で試合を終わらせた映像。
「私は、みた先輩のように途中で勝つのをやめるつもりはありません」
みた先輩が、少しだけ動きを止めました。
フェタ先輩が、とうとう声を上げて笑います。
「言われてるよ」
「その話、まだ覚えてたんだ」
「今年は最後まで戦ってほしいと、お願いしましたから」
「チョコも、最後までやるんだね」
「はい」
「じゃあ、僕もちゃんと見るよ」
次の試合通知が届きました。
準決勝。
「行ってきます」
「頑張って、チョコ」
みた先輩が、今度は最初からはっきり言いました。
「はい!」
決勝まで
準決勝のチョコは、明らかに一回戦より落ち着いていた。
みたらしっぽは、観察席からその動きを追う。
相手は小型木刀。
威力は二十だが、とにかく攻撃が速い。
細かい連撃でチョコの防御を崩そうとしている。
チョコは最初の数発を受け、ライフを削られた。
だが、慌てない。
相手の連撃すべてを防ごうとせず、一撃だけ受け流して、連続攻撃の外へ出る。
攻撃が途切れた瞬間に、威力三十の木刀を一度だけ当てる。
連撃の数では相手が上。
一撃の重さと、攻撃を置く位置ではチョコが上。
互いのライフが、少しずつ減っていく。
「本当に、その場で直すんだ」
フェタが言った。
「何を?」
「肩。さっきまでより全然わかりにくい」
「チョコは、一回言ったことをちゃんと試すから」
「教えがいありそうだね」
「僕と組むって決まったわけじゃないよ」
「でも、そうなってほしい顔してる」
「どんな顔?」
「さっきからチョコちゃんが攻撃受けるたび、少し眉が動く顔」
みたらしっぽは無意識に眉へ触れた。
「普通だけど」
「今日、それ何回目?」
準決勝。
チョコは残りライフ三十で勝利した。
あと二撃受けていれば、結果は逆だった。
余裕のある勝ちではない。
それでも、最後まで判断を急がず、相手の連撃が切れる瞬間を待った。
決勝進出。
演習室の空気が大きく変わる。
一回戦では、チョコを見た目の印象だけで応援していた生徒もいた。
今は違う。
次にどう動くのか。
どうやって相手の攻撃を外すのか。
純粋に、試合の内容を見ている。
チョコの名前を呼ぶ声も増えていた。
「本人、気づいてるかな」
フェタが聞く。
「たぶん気づいてない」
「試合が終わったら、びっくりするやつだ」
決勝の相手は、同じ一年二組の女子生徒だった。
軽い木刀を選び、ここまで一度もライフを半分以下へ減らされていない。
動きに無駄がない。
攻撃を無理につながず、相手が崩れた時だけ入る。
チョコに近い戦い方だった。
「相性、あまりよくないね」
フェタが言う。
「うん。お互い待てるから、動かした方が不利になる」
「どっちが先に動くと思う?」
みたらしっぽは、フィールドに立つチョコを見た。
「チョコ」
「待てないの?」
「勝ちたいから」
決勝が始まった。
みたらしっぽは、観察席からその動きを追う。
相手は小型木刀。
威力は二十だが、とにかく攻撃が速い。
細かい連撃でチョコの防御を崩そうとしている。
チョコは最初の数発を受け、ライフを削られた。
だが、慌てない。
相手の連撃すべてを防ごうとせず、一撃だけ受け流して、連続攻撃の外へ出る。
攻撃が途切れた瞬間に、威力三十の木刀を一度だけ当てる。
連撃の数では相手が上。
一撃の重さと、攻撃を置く位置ではチョコが上。
互いのライフが、少しずつ減っていく。
「本当に、その場で直すんだ」
フェタが言った。
「何を?」
「肩。さっきまでより全然わかりにくい」
「チョコは、一回言ったことをちゃんと試すから」
「教えがいありそうだね」
「僕と組むって決まったわけじゃないよ」
「でも、そうなってほしい顔してる」
「どんな顔?」
「さっきからチョコちゃんが攻撃受けるたび、少し眉が動く顔」
みたらしっぽは無意識に眉へ触れた。
「普通だけど」
「今日、それ何回目?」
準決勝。
チョコは残りライフ三十で勝利した。
あと二撃受けていれば、結果は逆だった。
余裕のある勝ちではない。
それでも、最後まで判断を急がず、相手の連撃が切れる瞬間を待った。
決勝進出。
演習室の空気が大きく変わる。
一回戦では、チョコを見た目の印象だけで応援していた生徒もいた。
今は違う。
次にどう動くのか。
どうやって相手の攻撃を外すのか。
純粋に、試合の内容を見ている。
チョコの名前を呼ぶ声も増えていた。
「本人、気づいてるかな」
フェタが聞く。
「たぶん気づいてない」
「試合が終わったら、びっくりするやつだ」
決勝の相手は、同じ一年二組の女子生徒だった。
軽い木刀を選び、ここまで一度もライフを半分以下へ減らされていない。
動きに無駄がない。
攻撃を無理につながず、相手が崩れた時だけ入る。
チョコに近い戦い方だった。
「相性、あまりよくないね」
フェタが言う。
「うん。お互い待てるから、動かした方が不利になる」
「どっちが先に動くと思う?」
みたらしっぽは、フィールドに立つチョコを見た。
「チョコ」
「待てないの?」
「勝ちたいから」
決勝が始まった。
最後の一撃
決勝戦。
向かいに立つ相手は、小型の木刀を片手で持っていました。
威力は二十。
私の木刀より軽く、攻撃の速度は上です。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
カウントが始まります。
三。
二。
一。
開始。
私は、すぐには動きませんでした。
相手も動きません。
互いに、木刀の届かない距離を保っています。
先に動いた方が、反撃を受ける。
それがわかっているからです。
それでも、待ち続けるわけにはいきません。
時間が過ぎれば、どこかで戦わなければいけない。
私は一歩だけ踏み出しました。
相手の木刀が、わずかに動きます。
まだ届かない。
さらに半歩。
相手が前へ出ました。
速い突き。
横へ避けます。
そのまま反撃しようとした瞬間、相手の木刀がすぐに戻ってきました。
手首へ判定。
<HIT -20>
<チョコチップ 180>
一撃で終わりではありません。
すぐに二撃目。
<HIT -20>
<チョコチップ 160>
私は大きく後ろへ下がりました。
相手は追ってきません。
元の距離へ戻り、また待っています。
「反撃を待っていたんですね」
「いつも受け流したあとに打ってくるから」
これまでの試合を見られていました。
私が相手の攻撃を外し、その直後に反撃すること。
そこへ、さらに攻撃を重ねてきたのです。
同じ動きは使えません。
今度は相手から来ました。
一撃目。
受ける。
ですが、反撃はしません。
そのまま横へ動き、距離を取ります。
相手も、少しだけ意外そうな顔をしました。
私は、木刀の構えを変えました。
両手から、右手だけへ。
小さい頃に習った剣道の形からは外れます。
ですが、FoFでは片手で刀を扱うこともあります。
「構え、変えるんだ」
「同じままだと、また読まれますから」
右手だけなら、攻撃の威力は変わらなくても、制御は難しくなります。
代わりに、左側へも動きやすい。
相手が踏み込みました。
今度は受けず、下がりながら木刀を横へ振ります。
相手は止まる。
攻撃は当たりません。
ですが、近づく勢いも止まりました。
その隙に、こちらから一歩。
肩へ一撃。
<HIT -30>
<相手 170>
一度当てて、すぐに離れます。
相手も構え直しました。
そこからは、少しずつライフを削り合いました。
相手の速い連撃。
私の一撃。
私が一回当てるまでに、相手は二回当ててくる。
その代わり、一回の減少量はこちらの方が大きい。
<チョコチップ 120>
<相手 110>
<チョコチップ 80>
<相手 80>
ほとんど同じです。
演習室の声が、少しずつ遠くなっていきます。
聞こえるのは、自分の呼吸と。
相手の足音。
木刀が空気を切る音だけ。
相手が前へ来ました。
私は受け流し、反撃します。
相手もそれを読んでいました。
私の攻撃を避けながら、一撃。
<チョコチップ 60>
さらに、もう一撃。
<チョコチップ 40>
あと二回。
私は木刀を戻し、相手の肩へ当てます。
<相手 50>
もう一度入れば、相手のライフは二十。
ですが。
勝ちを急げば、先に二回受けます。
先ほど、みた先輩に言われた言葉を思い出しました。
勝ち急がなくていい。
途中で勝つのをやめることと。
勝つために待つことは違います。
私は、木刀を正面へ構えました。
相手は私の残りライフを見ています。
あと二回。
だから、次も連続で攻めれば勝てると思うはずです。
相手が来ました。
一撃目。
私は、あえて避けません。
木刀を体の前へ置き、攻撃を受けます。
武器同士の接触。
防御判定。
押し込まれます。
相手はすぐに木刀を引き、二撃目へ移ろうとしました。
ですが、一撃目を受けたまま、私は前へ出ています。
相手の木刀が戻りきる前。
胸元へ一撃。
<HIT -30>
<相手 20>
同時に、相手の木刀も私の肩へ触れました。
<HIT -20>
<チョコチップ 20>
互いに、残り二十。
私の木刀なら、一撃。
相手も一撃。
演習室から、大きな声が聞こえます。
けれど、誰の名前を呼んでいるのかまではわかりません。
相手が、木刀を両手へ持ち替えました。
私も、両手で構えます。
次で終わります。
互いに踏み込んだのは、ほとんど同時でした。
相手の木刀が、私の左肩を狙う。
私は胸元を狙います。
避ければ、間に合わない。
止まれば、負ける。
私は、最後まで前へ出ました。
木刀の先が、相手へ触れます。
同時に、肩の近くで赤い光が弾けました。
どちらが先だったのか、自分ではわかりません。
二本の木刀が安全停止したまま、私たちは動きを止めました。
数秒。
判定中の表示。
そして。
<HIT -30>
<相手 0>
<チョコチップ 20>
<WINNER チョコチップ>
演習室から、大きな歓声が聞こえました。
私は、しばらく表示を見つめていました。
「……私ですか?」
相手が、先に木刀を下ろしました。
「〇・〇四秒差だって」
判定結果が、横へ表示されています。
本当に、わずかな差でした。
「危なかったです」
「こっちの台詞」
相手は悔しそうにしながらも、笑いました。
「次は勝つから」
「はい。次も、全力でお願いします」
手を差し出すと、相手も握り返してくれました。
転送が始まります。
今度は、演習室の声がはっきり聞こえました。
「チョコちゃん!」
シュトレンさん。
「一位だよ!」
フィナンシェさん。
ほかにも、多くの声。
演習室へ戻ると、思っていたよりたくさんの人がこちらを見ています。
「……本当に、一位になったんですね」
「もう少し喜んだら?」
フィナンシェさんが言いました。
「嬉しいです」
「顔が、まだ試合中みたいだよ」
「急に終わったので、少し追いついていません」
シュトレンさんが、私の両手を取りました。
「おめでとう、チョコちゃん!」
「ありがとうございます」
「すごかったよ。本当に!」
「最後は、ほとんど同時でした」
「それでも勝ちは勝ちだよ」
ようやく実感が追いついてきました。
胸の奥が、少しずつ熱くなります。
「……はい」
私は二人へ笑いました。
「勝てて、嬉しいです」
「やっと言った」
フィナンシェさんが笑います。
少し離れたところでは、リッキーさんが友人たちと一緒に手を上げていました。
「一位おめでとう!」
「ありがとうございます」
「次は俺が止めるからな!」
「楽しみにしています」
「やっぱり強気だなぁ!」
演習室のあちこちで、次の対戦について話す声が聞こえます。
負けた人も。
勝った人も。
最初より、少しだけデュエルを楽しみにしているようでした。
私も、その一人です。
向かいに立つ相手は、小型の木刀を片手で持っていました。
威力は二十。
私の木刀より軽く、攻撃の速度は上です。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
カウントが始まります。
三。
二。
一。
開始。
私は、すぐには動きませんでした。
相手も動きません。
互いに、木刀の届かない距離を保っています。
先に動いた方が、反撃を受ける。
それがわかっているからです。
それでも、待ち続けるわけにはいきません。
時間が過ぎれば、どこかで戦わなければいけない。
私は一歩だけ踏み出しました。
相手の木刀が、わずかに動きます。
まだ届かない。
さらに半歩。
相手が前へ出ました。
速い突き。
横へ避けます。
そのまま反撃しようとした瞬間、相手の木刀がすぐに戻ってきました。
手首へ判定。
<HIT -20>
<チョコチップ 180>
一撃で終わりではありません。
すぐに二撃目。
<HIT -20>
<チョコチップ 160>
私は大きく後ろへ下がりました。
相手は追ってきません。
元の距離へ戻り、また待っています。
「反撃を待っていたんですね」
「いつも受け流したあとに打ってくるから」
これまでの試合を見られていました。
私が相手の攻撃を外し、その直後に反撃すること。
そこへ、さらに攻撃を重ねてきたのです。
同じ動きは使えません。
今度は相手から来ました。
一撃目。
受ける。
ですが、反撃はしません。
そのまま横へ動き、距離を取ります。
相手も、少しだけ意外そうな顔をしました。
私は、木刀の構えを変えました。
両手から、右手だけへ。
小さい頃に習った剣道の形からは外れます。
ですが、FoFでは片手で刀を扱うこともあります。
「構え、変えるんだ」
「同じままだと、また読まれますから」
右手だけなら、攻撃の威力は変わらなくても、制御は難しくなります。
代わりに、左側へも動きやすい。
相手が踏み込みました。
今度は受けず、下がりながら木刀を横へ振ります。
相手は止まる。
攻撃は当たりません。
ですが、近づく勢いも止まりました。
その隙に、こちらから一歩。
肩へ一撃。
<HIT -30>
<相手 170>
一度当てて、すぐに離れます。
相手も構え直しました。
そこからは、少しずつライフを削り合いました。
相手の速い連撃。
私の一撃。
私が一回当てるまでに、相手は二回当ててくる。
その代わり、一回の減少量はこちらの方が大きい。
<チョコチップ 120>
<相手 110>
<チョコチップ 80>
<相手 80>
ほとんど同じです。
演習室の声が、少しずつ遠くなっていきます。
聞こえるのは、自分の呼吸と。
相手の足音。
木刀が空気を切る音だけ。
相手が前へ来ました。
私は受け流し、反撃します。
相手もそれを読んでいました。
私の攻撃を避けながら、一撃。
<チョコチップ 60>
さらに、もう一撃。
<チョコチップ 40>
あと二回。
私は木刀を戻し、相手の肩へ当てます。
<相手 50>
もう一度入れば、相手のライフは二十。
ですが。
勝ちを急げば、先に二回受けます。
先ほど、みた先輩に言われた言葉を思い出しました。
勝ち急がなくていい。
途中で勝つのをやめることと。
勝つために待つことは違います。
私は、木刀を正面へ構えました。
相手は私の残りライフを見ています。
あと二回。
だから、次も連続で攻めれば勝てると思うはずです。
相手が来ました。
一撃目。
私は、あえて避けません。
木刀を体の前へ置き、攻撃を受けます。
武器同士の接触。
防御判定。
押し込まれます。
相手はすぐに木刀を引き、二撃目へ移ろうとしました。
ですが、一撃目を受けたまま、私は前へ出ています。
相手の木刀が戻りきる前。
胸元へ一撃。
<HIT -30>
<相手 20>
同時に、相手の木刀も私の肩へ触れました。
<HIT -20>
<チョコチップ 20>
互いに、残り二十。
私の木刀なら、一撃。
相手も一撃。
演習室から、大きな声が聞こえます。
けれど、誰の名前を呼んでいるのかまではわかりません。
相手が、木刀を両手へ持ち替えました。
私も、両手で構えます。
次で終わります。
互いに踏み込んだのは、ほとんど同時でした。
相手の木刀が、私の左肩を狙う。
私は胸元を狙います。
避ければ、間に合わない。
止まれば、負ける。
私は、最後まで前へ出ました。
木刀の先が、相手へ触れます。
同時に、肩の近くで赤い光が弾けました。
どちらが先だったのか、自分ではわかりません。
二本の木刀が安全停止したまま、私たちは動きを止めました。
数秒。
判定中の表示。
そして。
<HIT -30>
<相手 0>
<チョコチップ 20>
<WINNER チョコチップ>
演習室から、大きな歓声が聞こえました。
私は、しばらく表示を見つめていました。
「……私ですか?」
相手が、先に木刀を下ろしました。
「〇・〇四秒差だって」
判定結果が、横へ表示されています。
本当に、わずかな差でした。
「危なかったです」
「こっちの台詞」
相手は悔しそうにしながらも、笑いました。
「次は勝つから」
「はい。次も、全力でお願いします」
手を差し出すと、相手も握り返してくれました。
転送が始まります。
今度は、演習室の声がはっきり聞こえました。
「チョコちゃん!」
シュトレンさん。
「一位だよ!」
フィナンシェさん。
ほかにも、多くの声。
演習室へ戻ると、思っていたよりたくさんの人がこちらを見ています。
「……本当に、一位になったんですね」
「もう少し喜んだら?」
フィナンシェさんが言いました。
「嬉しいです」
「顔が、まだ試合中みたいだよ」
「急に終わったので、少し追いついていません」
シュトレンさんが、私の両手を取りました。
「おめでとう、チョコちゃん!」
「ありがとうございます」
「すごかったよ。本当に!」
「最後は、ほとんど同時でした」
「それでも勝ちは勝ちだよ」
ようやく実感が追いついてきました。
胸の奥が、少しずつ熱くなります。
「……はい」
私は二人へ笑いました。
「勝てて、嬉しいです」
「やっと言った」
フィナンシェさんが笑います。
少し離れたところでは、リッキーさんが友人たちと一緒に手を上げていました。
「一位おめでとう!」
「ありがとうございます」
「次は俺が止めるからな!」
「楽しみにしています」
「やっぱり強気だなぁ!」
演習室のあちこちで、次の対戦について話す声が聞こえます。
負けた人も。
勝った人も。
最初より、少しだけデュエルを楽しみにしているようでした。
私も、その一人です。
うっかりトップ
全試合が終わると、先生による動きの確認が行われました。
勝敗だけでなく。
武器の選び方。
安全確認。
相手の攻撃への対応。
試合中にどれだけ動きを変えられたか。
それらを合わせて、グループが決められます。
正面画面へ、名前が表示されました。
Aグループ。
一番上。
<チョコチップ>
見間違いではありません。
「一位だから、当然だよ」
シュトレンさんが言いました。
「名前が一番上にあると、少し落ち着きません」
「勝った人の席なんだから、座ってればいいの」
フィナンシェさんは、自分の名前を探しました。
Bグループ。
そこに、フィリスフィナンシェ。
「Bだ」
「おめでとうございます」
「三回戦で負けたからCかと思った」
先生が、こちらへ聞こえるように説明します。
「フィリスフィナンシェさんは、軽い武器の特性を理解し、相手へ接近されるまでの判断も良好でした。接近後の対処を覚えれば、さらに伸びるでしょう」
「ちゃんと見られてたんだ」
フィナンシェさんが、少しだけ嬉しそうに笑いました。
Cグループには、マリーシュトレン。
「私、Cだ」
「一回戦での距離の取り方が評価されたのだと思います」
「次は、もう少し上へ行けるかな」
「一緒に練習しましょう」
「うん!」
リッキーさんはBグループでした。
一回戦で敗れていますが、大型武器を問題なく扱えていたことと、途中で戦い方を変えていたことが評価されたそうです。
先生は、最後にもう一度言いました。
「このグループは、皆さんの優劣を決めるものではありません。今後、授業の内容を合わせるためのものです。得意な人は、より複雑なデュエルへ。苦手な人は、まず安全に操作するところから始めます」
Dグループに入った生徒たちも、少し安心したようでした。
DPo-Xへ、正式なグループタグが登録されます。
<デュエル授業:A>
自分の名前の横に表示された文字を、もう一度見ました。
私は、最初から一位を目指していたわけではありません。
木刀を選び。
目の前の相手と戦い。
教えてもらったことを試して。
気づいたら、最後まで残っていました。
「うっかり、一位になってしまいました」
私が言うと、フィナンシェさんがすぐに反応しました。
「一位って、うっかりなるもの?」
「なるつもりではありませんでしたので」
「次から、その言い方はやめた方がいいよ。負けた人が困るから」
「それは、確かにそうですね」
私は少し考え、言い直しました。
「一位になれました」
「うん。そっちの方がいい」
「改めて、おめでとう」
シュトレンさんが笑います。
「ありがとうございます」
今度は、素直に受け取りました。
勝敗だけでなく。
武器の選び方。
安全確認。
相手の攻撃への対応。
試合中にどれだけ動きを変えられたか。
それらを合わせて、グループが決められます。
正面画面へ、名前が表示されました。
Aグループ。
一番上。
<チョコチップ>
見間違いではありません。
「一位だから、当然だよ」
シュトレンさんが言いました。
「名前が一番上にあると、少し落ち着きません」
「勝った人の席なんだから、座ってればいいの」
フィナンシェさんは、自分の名前を探しました。
Bグループ。
そこに、フィリスフィナンシェ。
「Bだ」
「おめでとうございます」
「三回戦で負けたからCかと思った」
先生が、こちらへ聞こえるように説明します。
「フィリスフィナンシェさんは、軽い武器の特性を理解し、相手へ接近されるまでの判断も良好でした。接近後の対処を覚えれば、さらに伸びるでしょう」
「ちゃんと見られてたんだ」
フィナンシェさんが、少しだけ嬉しそうに笑いました。
Cグループには、マリーシュトレン。
「私、Cだ」
「一回戦での距離の取り方が評価されたのだと思います」
「次は、もう少し上へ行けるかな」
「一緒に練習しましょう」
「うん!」
リッキーさんはBグループでした。
一回戦で敗れていますが、大型武器を問題なく扱えていたことと、途中で戦い方を変えていたことが評価されたそうです。
先生は、最後にもう一度言いました。
「このグループは、皆さんの優劣を決めるものではありません。今後、授業の内容を合わせるためのものです。得意な人は、より複雑なデュエルへ。苦手な人は、まず安全に操作するところから始めます」
Dグループに入った生徒たちも、少し安心したようでした。
DPo-Xへ、正式なグループタグが登録されます。
<デュエル授業:A>
自分の名前の横に表示された文字を、もう一度見ました。
私は、最初から一位を目指していたわけではありません。
木刀を選び。
目の前の相手と戦い。
教えてもらったことを試して。
気づいたら、最後まで残っていました。
「うっかり、一位になってしまいました」
私が言うと、フィナンシェさんがすぐに反応しました。
「一位って、うっかりなるもの?」
「なるつもりではありませんでしたので」
「次から、その言い方はやめた方がいいよ。負けた人が困るから」
「それは、確かにそうですね」
私は少し考え、言い直しました。
「一位になれました」
「うん。そっちの方がいい」
「改めて、おめでとう」
シュトレンさんが笑います。
「ありがとうございます」
今度は、素直に受け取りました。
Aグループの相手
一年生のグループ分けが終わると、二年生たちが観察席から降りてきました。
次回以降の授業で組む相手が、DPo-Xへ表示されます。
AからCグループの一年生一人につき、同じグループの二年生が一人。
技術や武器の相性を見ながら、先生が組み合わせたそうです。
シュトレンさんの隣には、Cグループの二年生の名前が表示されています。
フィナンシェさんにも、Bグループの先輩。
そして、私の画面。
<Aグループ指導ペア>
<みたらしっぽ/チョコチップ>
「みた先輩……」
名前を確認した直後、本人がこちらへ歩いてきました。
「チョコ」
「はい」
「次から、僕と組むみたい」
「表示されました」
「よろしく」
「よろしくお願いします、みた先輩」
みた先輩は、私の画面に表示されたAグループの文字を見ます。
「一位、おめでとう」
「ありがとうございます」
「初めてで一位になるとは思わなかった」
「みた先輩は、私が負けると思っていたんですか?」
「そこまでは言ってないよ」
「でも、驚いています」
「驚いた。普通に」
「では、良い驚きということで受け取ります」
「うん。すごくよかった」
今度は、要求する前に褒めてくれました。
「ただし」
「ただし?」
「直すところはいっぱいある」
「やはり、そこへ戻るんですね」
「一位だからこそ。今の癖をそのままにすると、次は簡単に読まれるよ」
「みた先輩には、読めますか?」
「今日のままなら」
即答でした。
少しだけ悔しくなります。
「では、全部教えてください」
「全部?」
「はい」
私は、みた先輩をまっすぐ見ました。
「みた先輩にも、きちんと攻撃を当てられるくらいまで」
みた先輩が、少しだけ目を丸くします。
隣にいたフェタ先輩が笑いました。
「もう先輩へ勝つ気なんだ」
「練習するなら、目標があった方がいいでしょう?」
「目標高くない?」
みた先輩が言います。
「体育祭では、対戦する可能性もあります」
「あるけど」
「その時、何もできずに負けるのは悔しいです」
「じゃあ、手加減しないよ」
「最初から、そのつもりでお願いします」
みた先輩は、少しだけ笑いました。
「チョコもね」
「もちろんです」
先生から、次回授業の案内が届きます。
<次回:グループ別基礎訓練>
<Aグループ:一対一応用/二対二連携>
今日の試合は、グループを分けるためのものです。
体育祭の大会は、まだ先。
それでも。
今日、木刀を構えたことで。
その舞台へ向かう最初の一歩を踏み出したのだと思いました。
次回以降の授業で組む相手が、DPo-Xへ表示されます。
AからCグループの一年生一人につき、同じグループの二年生が一人。
技術や武器の相性を見ながら、先生が組み合わせたそうです。
シュトレンさんの隣には、Cグループの二年生の名前が表示されています。
フィナンシェさんにも、Bグループの先輩。
そして、私の画面。
<Aグループ指導ペア>
<みたらしっぽ/チョコチップ>
「みた先輩……」
名前を確認した直後、本人がこちらへ歩いてきました。
「チョコ」
「はい」
「次から、僕と組むみたい」
「表示されました」
「よろしく」
「よろしくお願いします、みた先輩」
みた先輩は、私の画面に表示されたAグループの文字を見ます。
「一位、おめでとう」
「ありがとうございます」
「初めてで一位になるとは思わなかった」
「みた先輩は、私が負けると思っていたんですか?」
「そこまでは言ってないよ」
「でも、驚いています」
「驚いた。普通に」
「では、良い驚きということで受け取ります」
「うん。すごくよかった」
今度は、要求する前に褒めてくれました。
「ただし」
「ただし?」
「直すところはいっぱいある」
「やはり、そこへ戻るんですね」
「一位だからこそ。今の癖をそのままにすると、次は簡単に読まれるよ」
「みた先輩には、読めますか?」
「今日のままなら」
即答でした。
少しだけ悔しくなります。
「では、全部教えてください」
「全部?」
「はい」
私は、みた先輩をまっすぐ見ました。
「みた先輩にも、きちんと攻撃を当てられるくらいまで」
みた先輩が、少しだけ目を丸くします。
隣にいたフェタ先輩が笑いました。
「もう先輩へ勝つ気なんだ」
「練習するなら、目標があった方がいいでしょう?」
「目標高くない?」
みた先輩が言います。
「体育祭では、対戦する可能性もあります」
「あるけど」
「その時、何もできずに負けるのは悔しいです」
「じゃあ、手加減しないよ」
「最初から、そのつもりでお願いします」
みた先輩は、少しだけ笑いました。
「チョコもね」
「もちろんです」
先生から、次回授業の案内が届きます。
<次回:グループ別基礎訓練>
<Aグループ:一対一応用/二対二連携>
今日の試合は、グループを分けるためのものです。
体育祭の大会は、まだ先。
それでも。
今日、木刀を構えたことで。
その舞台へ向かう最初の一歩を踏み出したのだと思いました。
家に帰れば
「お姉ちゃん、おかえり」
家へ戻ると、ミントちゃんが玄関まで来てくれました。
「ただいま戻りました」
「今日、模擬戦だったんでしょ?」
「はい」
「どうだった?」
靴を揃えながら、少しだけ迷います。
「一位になりました」
「そっか、一位――」
ミントちゃんの動きが止まりました。
「一位?」
「はい」
「クラスで?」
「はい」
「初めての授業で?」
「はい」
「お姉ちゃん、またやったの?」
「また、とは何ですか?」
「本人はそんなつもりないのに、気づいたら強くなってるやつ」
「今回は、きちんと一試合ずつ戦いました」
「うっかりじゃないんだ」
「最初は、うっかり一位になったと言ってしまいました」
「やっぱりうっかりじゃん」
ミントちゃんは笑いながら、私へ抱きつきました。
「おめでとう、お姉ちゃん!」
「ありがとうございます、ミントちゃん」
「怪我してない?」
「バーチャル空間なので、怪我はしません」
「でも、疲れた?」
「少しだけ」
「じゃあ、今日は私がご飯作る」
「一人で大丈夫ですか?」
「何歳だと思ってるの?」
「信用と年齢は別です」
「それ、前にも言われた」
「では、一緒に作りましょう」
「一位のお祝いなのに?」
「一緒に作った方が楽しいですから」
ミントちゃんは、嬉しそうに頷きました。
居間へ入ると、DPo-Xが振動します。
三人のグループです。
<チョコちゃん、一位おめでとう!>
シュトレンさん。
続いて。
<次の授業までに、私も接近された時の対策考える>
フィナンシェさん。
私は返事を送りました。
<ありがとうございます。次は三人とも今日より上手くなりましょう>
すぐにフィナンシェさんから、
<一位の人に言われると圧がある>
と返ってきます。
<応援です>
そう送ると、シュトレンさんから笑っているスタンプが届きました。
もう一件。
みた先輩からの個別メッセージです。
<次の授業、よろしく>
短い一言。
私は、少し考えてから返しました。
<こちらこそ、よろしくお願いします>
それだけでは、少し足りない気がします。
もう一文。
<手加減はしないでくださいね>
すぐに既読がつきました。
<チョコもね>
私は、その返事を見て少し笑いました。
「みた先輩?」
ミントちゃんが、横から画面を覗き込みます。
「はい。次の授業では、みた先輩と組むことになりました」
「もう対決するの?」
「最初は練習です」
「でも、勝ちたい?」
「もちろんです」
迷わず答えると、ミントちゃんが楽しそうに笑いました。
「お姉ちゃん、学校楽しんでるね」
「はい」
入学したばかりの頃。
知らない教室で、うまく話せるか心配していました。
今は、友達と一緒に授業を受け。
勝てば喜び。
負ければ次のことを考え。
先輩へも、いつか勝ちたいと言えるようになっています。
今日の模擬戦は、一度きりの勝負ではありません。
ここから、次の授業へ。
体育祭へ。
そして、まだ想像もできない試合へつながっていきます。
私はDPo-Xを閉じ、ミントちゃんと一緒に台所へ向かいました。
まずは、一位のお祝いより先に。
今夜の夕食を、二人で作ることにしました。
家へ戻ると、ミントちゃんが玄関まで来てくれました。
「ただいま戻りました」
「今日、模擬戦だったんでしょ?」
「はい」
「どうだった?」
靴を揃えながら、少しだけ迷います。
「一位になりました」
「そっか、一位――」
ミントちゃんの動きが止まりました。
「一位?」
「はい」
「クラスで?」
「はい」
「初めての授業で?」
「はい」
「お姉ちゃん、またやったの?」
「また、とは何ですか?」
「本人はそんなつもりないのに、気づいたら強くなってるやつ」
「今回は、きちんと一試合ずつ戦いました」
「うっかりじゃないんだ」
「最初は、うっかり一位になったと言ってしまいました」
「やっぱりうっかりじゃん」
ミントちゃんは笑いながら、私へ抱きつきました。
「おめでとう、お姉ちゃん!」
「ありがとうございます、ミントちゃん」
「怪我してない?」
「バーチャル空間なので、怪我はしません」
「でも、疲れた?」
「少しだけ」
「じゃあ、今日は私がご飯作る」
「一人で大丈夫ですか?」
「何歳だと思ってるの?」
「信用と年齢は別です」
「それ、前にも言われた」
「では、一緒に作りましょう」
「一位のお祝いなのに?」
「一緒に作った方が楽しいですから」
ミントちゃんは、嬉しそうに頷きました。
居間へ入ると、DPo-Xが振動します。
三人のグループです。
<チョコちゃん、一位おめでとう!>
シュトレンさん。
続いて。
<次の授業までに、私も接近された時の対策考える>
フィナンシェさん。
私は返事を送りました。
<ありがとうございます。次は三人とも今日より上手くなりましょう>
すぐにフィナンシェさんから、
<一位の人に言われると圧がある>
と返ってきます。
<応援です>
そう送ると、シュトレンさんから笑っているスタンプが届きました。
もう一件。
みた先輩からの個別メッセージです。
<次の授業、よろしく>
短い一言。
私は、少し考えてから返しました。
<こちらこそ、よろしくお願いします>
それだけでは、少し足りない気がします。
もう一文。
<手加減はしないでくださいね>
すぐに既読がつきました。
<チョコもね>
私は、その返事を見て少し笑いました。
「みた先輩?」
ミントちゃんが、横から画面を覗き込みます。
「はい。次の授業では、みた先輩と組むことになりました」
「もう対決するの?」
「最初は練習です」
「でも、勝ちたい?」
「もちろんです」
迷わず答えると、ミントちゃんが楽しそうに笑いました。
「お姉ちゃん、学校楽しんでるね」
「はい」
入学したばかりの頃。
知らない教室で、うまく話せるか心配していました。
今は、友達と一緒に授業を受け。
勝てば喜び。
負ければ次のことを考え。
先輩へも、いつか勝ちたいと言えるようになっています。
今日の模擬戦は、一度きりの勝負ではありません。
ここから、次の授業へ。
体育祭へ。
そして、まだ想像もできない試合へつながっていきます。
私はDPo-Xを閉じ、ミントちゃんと一緒に台所へ向かいました。
まずは、一位のお祝いより先に。
今夜の夕食を、二人で作ることにしました。