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新しいお友達
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dannocomachi
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見られている理由
入学式から二週間ほどが経ちました。
一年二組の教室までの道にも、授業で使うDPo-Xの操作にも、少しずつ慣れてきています。
朝は校門でシュトレンさんと待ち合わせをして、一緒に教室へ向かいます。
授業が終われば一緒に昼食を食べ、放課後には先輩たちの教室や中庭へ顔を出すこともあります。
まだ知らない場所はたくさんあります。
ですが、学校の中に少しずつ自分の日常ができてきました。
「チョコちゃん」
運動フィールドへ向かう途中、シュトレンさんが私の袖を軽く引きました。
「はい?」
「さっきから、あっちの子たちがチョコちゃんのこと見てるよ」
「私を、ですか?」
シュトレンさんが示した方を見ると、廊下の窓際で話していた同級生と目が合いました。
相手は少し驚いた顔をして、すぐに隣の人へ視線を戻します。
その隣にいた人とも目が合ったので、私は小さく頭を下げました。
向こうも少し戸惑いながら、会釈を返してくれます。
「お知り合いでしょうか」
「チョコちゃんが知らないなら、たぶん違うと思う」
「では、どうして見ていたのでしょう」
「そこからなんだね」
シュトレンさんが、おかしそうに笑いました。
「何かお話があるなら、声をかけてくださればいいのに」
「話しかけようか迷ってたんじゃない?」
「私たち、話しかけづらそうに見えますか?」
私は自分とシュトレンさんの姿を見比べました。
二人とも、特別に怖い表情をしていたつもりはありません。
シュトレンさんはいつも明るいですし、私も先ほどまで普通に話していました。
「話しかけづらいというより、二人で楽しそうにしてるから、入るタイミングが難しいのかも」
「なるほど……」
入学してから、休み時間も昼食も、シュトレンさんと一緒にいることが多くなりました。
私たちにとっては自然なことですが、周りから見ると、すでに二人だけの輪ができているように見えるのかもしれません。
「では、目が合ったら、こちらから挨拶してみます」
「全員に?」
「目が合った方にです」
「チョコちゃんらしいね」
「変でしょうか」
「ううん。そういうところ、いいと思う」
シュトレンさんは笑いながら、今度は私のお団子の横へ目を向けました。
「それに、その花も見られてると思うよ」
「花が?」
私は髪にある花飾りへ触れました。
「曲がっていますか?」
「曲がってないよ」
「取れかけていますか?」
「ちゃんとついてる」
「では、何か問題が……」
「かわいいから見てるんだって」
あまりにも自然に言われ、私は少しだけ返事に困りました。
「急にそういうことを言われると、反応に困ります」
「普通に『ありがとう』でいいんじゃない?」
「……ありがとうございます」
素直に答えると、シュトレンさんは満足そうに頷きました。
「うん。やっぱりかわいい」
「二回目は必要ありません」
「照れてる?」
「少しだけです」
「正直だね」
「シュトレンさんには、隠してもすぐに気づかれそうなので」
「私はチョコちゃんのこと、けっこう見てるからね」
「それでは、先ほどの方々と同じではありませんか?」
「私は友達だからいいの」
「便利な理由ですね」
二人で笑いました。
少し先まで歩いたところで、今度は別の生徒と目が合います。
私は先ほど決めたとおり、小さく会釈をしました。
相手は一瞬驚いたあと、笑顔で会釈を返してくれます。
「ほら」
シュトレンさんが言いました。
「チョコちゃんが笑ったら、向こうも嬉しそうだった」
「挨拶しただけです」
「その挨拶ができるなら、もっと友達が増えそうだね」
「そうでしょうか」
「うん。たぶん、みんな話しかけるきっかけを探してるだけだよ」
それなら、見られていることを気にしすぎる必要はなさそうです。
何か変なところがあるわけでも。
悪く思われているわけでもなく。
まだ話したことのない人が、こちらを少し気にしている。
そう考えると、先ほどまでより廊下が少しだけ近く感じられました。
「チョコちゃん」
「はい?」
「今度は前を見て。運動フィールド、通り過ぎるよ」
「……本当ですね」
話に夢中になり、曲がる場所を一つ過ぎていました。
「シュトレンさんも気づいていたなら、先に言ってください」
「チョコちゃんが楽しそうだったから、どこまで行くのかなって」
「見守らないで止めてください」
「ごめんごめん」
笑いながら、少しだけ道を戻ります。
今日は、学校用アバターの基礎測定があります。
一年二組の教室までの道にも、授業で使うDPo-Xの操作にも、少しずつ慣れてきています。
朝は校門でシュトレンさんと待ち合わせをして、一緒に教室へ向かいます。
授業が終われば一緒に昼食を食べ、放課後には先輩たちの教室や中庭へ顔を出すこともあります。
まだ知らない場所はたくさんあります。
ですが、学校の中に少しずつ自分の日常ができてきました。
「チョコちゃん」
運動フィールドへ向かう途中、シュトレンさんが私の袖を軽く引きました。
「はい?」
「さっきから、あっちの子たちがチョコちゃんのこと見てるよ」
「私を、ですか?」
シュトレンさんが示した方を見ると、廊下の窓際で話していた同級生と目が合いました。
相手は少し驚いた顔をして、すぐに隣の人へ視線を戻します。
その隣にいた人とも目が合ったので、私は小さく頭を下げました。
向こうも少し戸惑いながら、会釈を返してくれます。
「お知り合いでしょうか」
「チョコちゃんが知らないなら、たぶん違うと思う」
「では、どうして見ていたのでしょう」
「そこからなんだね」
シュトレンさんが、おかしそうに笑いました。
「何かお話があるなら、声をかけてくださればいいのに」
「話しかけようか迷ってたんじゃない?」
「私たち、話しかけづらそうに見えますか?」
私は自分とシュトレンさんの姿を見比べました。
二人とも、特別に怖い表情をしていたつもりはありません。
シュトレンさんはいつも明るいですし、私も先ほどまで普通に話していました。
「話しかけづらいというより、二人で楽しそうにしてるから、入るタイミングが難しいのかも」
「なるほど……」
入学してから、休み時間も昼食も、シュトレンさんと一緒にいることが多くなりました。
私たちにとっては自然なことですが、周りから見ると、すでに二人だけの輪ができているように見えるのかもしれません。
「では、目が合ったら、こちらから挨拶してみます」
「全員に?」
「目が合った方にです」
「チョコちゃんらしいね」
「変でしょうか」
「ううん。そういうところ、いいと思う」
シュトレンさんは笑いながら、今度は私のお団子の横へ目を向けました。
「それに、その花も見られてると思うよ」
「花が?」
私は髪にある花飾りへ触れました。
「曲がっていますか?」
「曲がってないよ」
「取れかけていますか?」
「ちゃんとついてる」
「では、何か問題が……」
「かわいいから見てるんだって」
あまりにも自然に言われ、私は少しだけ返事に困りました。
「急にそういうことを言われると、反応に困ります」
「普通に『ありがとう』でいいんじゃない?」
「……ありがとうございます」
素直に答えると、シュトレンさんは満足そうに頷きました。
「うん。やっぱりかわいい」
「二回目は必要ありません」
「照れてる?」
「少しだけです」
「正直だね」
「シュトレンさんには、隠してもすぐに気づかれそうなので」
「私はチョコちゃんのこと、けっこう見てるからね」
「それでは、先ほどの方々と同じではありませんか?」
「私は友達だからいいの」
「便利な理由ですね」
二人で笑いました。
少し先まで歩いたところで、今度は別の生徒と目が合います。
私は先ほど決めたとおり、小さく会釈をしました。
相手は一瞬驚いたあと、笑顔で会釈を返してくれます。
「ほら」
シュトレンさんが言いました。
「チョコちゃんが笑ったら、向こうも嬉しそうだった」
「挨拶しただけです」
「その挨拶ができるなら、もっと友達が増えそうだね」
「そうでしょうか」
「うん。たぶん、みんな話しかけるきっかけを探してるだけだよ」
それなら、見られていることを気にしすぎる必要はなさそうです。
何か変なところがあるわけでも。
悪く思われているわけでもなく。
まだ話したことのない人が、こちらを少し気にしている。
そう考えると、先ほどまでより廊下が少しだけ近く感じられました。
「チョコちゃん」
「はい?」
「今度は前を見て。運動フィールド、通り過ぎるよ」
「……本当ですね」
話に夢中になり、曲がる場所を一つ過ぎていました。
「シュトレンさんも気づいていたなら、先に言ってください」
「チョコちゃんが楽しそうだったから、どこまで行くのかなって」
「見守らないで止めてください」
「ごめんごめん」
笑いながら、少しだけ道を戻ります。
今日は、学校用アバターの基礎測定があります。
最初の基礎測定
運動フィールドには、いくつもの器具が並んでいました。
短距離走用のコース。
高さや角度の変わる足場。
反応速度を測る光るパネル。
小さな障害物が配置された、運動能力確認用のコース。
現実側で行う体力測定とは違い、学校用アバターをどの程度自分の体のように動かせているかも確認するそうです。
「最初に、二年生の補助員から見本を見せてもらいます」
先生が言うと、フィールドの端にいた二人の先輩が前へ出ました。
一人は、バーチャルポッドの動作試験で会ったアッサム先輩です。
その隣には、短い青色の髪をした女の子が立っていました。
白い運動着に短いパンツを合わせ、開始地点へ向かいながら軽く肩を回しています。
「補助を担当するルーシャアッサムさんと、見本を担当するネモフィラマロンさんです」
先生に紹介されると、マロン先輩は私たちへ向かって明るく手を上げました。
「ネモフィラマロンです。最初は速さより、最後まで落ち着いて進むことを意識すれば大丈夫だからね。足元だけじゃなくて、次にどこへ行くかも見ておくと動きやすいよ」
明るく、はっきりとした声です。
緊張していた一年生たちの空気も、少しだけ和らいだように感じました。
「マロン、見本だから少し抑えてね」
アッサム先輩が声をかけます。
「わかってるよ。ちゃんと動きが見える速さにする」
「前も同じことを言って、かなり速かったけど」
「今回はもう少し抑えるから」
マロン先輩は笑いながら、開始位置へ立ちました。
最初は、一定間隔に並んだ足場を進む区間です。
足場は乗った瞬間に高さや角度が変わるため、その場で一つずつ対応していると、次の動作に遅れてしまいます。
開始音が鳴りました。
マロン先輩が一歩目を踏み出します。
速い。
ですが、慌ただしさはありません。
一つ目の足場へ乗った時には、すでに次の足場を見ています。
傾いた足場を無理に戻そうとせず、その動きを利用して次へ跳ぶ。
着地と同時に体の向きを変え、続く反応パネルへ手を伸ばしました。
右。
左。
上。
背後。
次々と光るパネルへ、迷いなく触れていきます。
最後の障害物を越え、安定した姿勢で着地しました。
<測定終了>
表示された記録を見て、周囲から小さなどよめきが起こります。
「こんな感じです」
マロン先輩は、呼吸を乱すこともなく振り返りました。
「足場が動いてから考えるより、先に進む場所を決めておくと楽になるよ。速さは気にしなくて大丈夫だからね」
「十分速かったと思うけど」
アッサム先輩が言いました。
「少しは抑えたよ?」
「マロンの少しは、あまり参考にならないんだよね」
「でも、動きは見やすかったでしょ?」
「それはそうだけど」
二人の会話は、普段からよく話している人同士のように自然でした。
「すごい方ですね」
私が言うと、シュトレンさんも頷きます。
「うん。でも、あの速さを見たあとに自分の番が来るの、ちょっと困るね」
「先生も、同じ記録を出す必要はないと言っていました」
「チョコちゃん、ちょっと安心した?」
「かなり安心しました」
「正直でよろしい」
測定は三人ずつ行われました。
私たちの順番が近づいた時、少し離れた列にいる女の子がこちらを見ていることに気づきます。
長い黒髪。
琥珀色の瞳。
同じクラスにいることは知っていますが、まだ話したことはありません。
目が合うと、彼女は視線を逸らさず、少しだけ笑いました。
私も軽く頭を下げます。
「今の子、同じクラスだよね」
シュトレンさんが小声で言いました。
「はい。フィリスフィナンシェさんだったと思います」
「名前、覚えてたんだ」
「自己紹介は聞いていましたから」
「チョコちゃん、クラス全員覚えてそう」
「全員は難しいです。でも、半分くらいは」
「十分すごいよ」
私の名前が呼ばれました。
「次、チョコチップさん」
「はい」
開始地点へ立ちます。
最初の足場が見えました。
難しいことを考えすぎないよう、呼吸を整えます。
FoFで敵の攻撃を避ける時と同じです。
目の前の動きだけではなく、その次に自分が立つ場所まで見る。
開始音。
一歩。
足場が傾きます。
その場で体勢を戻すのではなく、傾いた方向を使って次へ移りました。
二つ目。
三つ目。
少しだけ足が滑りましたが、止まらずに進みます。
反応パネルが光りました。
右。
左。
正面。
最後だけ少し反応が遅れます。
障害物を越え、終了地点へ着きました。
記録はマロン先輩には遠く及びません。
それでも、自分で予想していたより良い数字でした。
「チョコちゃん、きれいだった!」
先に終わっていたシュトレンさんが言いました。
「ありがとうございます。最後は少し遅れましたけど」
「一回目なんだから十分だよ」
「今の動き、よかったよ」
マロン先輩も、記録画面を確認しながら近づいてきました。
「足場が動いても慌てなかったね。何かスポーツをやってる?」
「スポーツではありませんが、FoFというゲームで刀を使っています」
「ああ、それでなんだ」
マロン先輩は納得したように頷きました。
「避けたあと、すぐ次の動きへ移るのに慣れてるんだね。学校の決闘でも刀を使うなら、相性がよさそう」
「まだ武器を選ぶ授業は受けていません」
「じゃあ、授業でいろいろ試してみるといいよ。普段使ってるものが一番動きやすいとは思うけど、別の武器が合うこともあるから」
「ありがとうございます」
「それじゃ、次の組も頑張って」
マロン先輩は私たちへ軽く手を振り、アッサム先輩のところへ戻っていきました。
「マロン先輩、明るくて話しやすい方ですね」
私が言うと、シュトレンさんも笑います。
「うん。何でも自然にできそう」
「私たちとは、かなり違いますね」
「チョコちゃんも十分できてたよ」
「では、シュトレンさんの番も期待しています」
「急に圧をかけてきた」
「応援です」
「笑ってるから、少し怪しいなぁ」
冗談を言い合っていると、先ほどの黒髪の女の子と、もう一度目が合いました。
今度は、何かを決めたような顔をしている気がします。
短距離走用のコース。
高さや角度の変わる足場。
反応速度を測る光るパネル。
小さな障害物が配置された、運動能力確認用のコース。
現実側で行う体力測定とは違い、学校用アバターをどの程度自分の体のように動かせているかも確認するそうです。
「最初に、二年生の補助員から見本を見せてもらいます」
先生が言うと、フィールドの端にいた二人の先輩が前へ出ました。
一人は、バーチャルポッドの動作試験で会ったアッサム先輩です。
その隣には、短い青色の髪をした女の子が立っていました。
白い運動着に短いパンツを合わせ、開始地点へ向かいながら軽く肩を回しています。
「補助を担当するルーシャアッサムさんと、見本を担当するネモフィラマロンさんです」
先生に紹介されると、マロン先輩は私たちへ向かって明るく手を上げました。
「ネモフィラマロンです。最初は速さより、最後まで落ち着いて進むことを意識すれば大丈夫だからね。足元だけじゃなくて、次にどこへ行くかも見ておくと動きやすいよ」
明るく、はっきりとした声です。
緊張していた一年生たちの空気も、少しだけ和らいだように感じました。
「マロン、見本だから少し抑えてね」
アッサム先輩が声をかけます。
「わかってるよ。ちゃんと動きが見える速さにする」
「前も同じことを言って、かなり速かったけど」
「今回はもう少し抑えるから」
マロン先輩は笑いながら、開始位置へ立ちました。
最初は、一定間隔に並んだ足場を進む区間です。
足場は乗った瞬間に高さや角度が変わるため、その場で一つずつ対応していると、次の動作に遅れてしまいます。
開始音が鳴りました。
マロン先輩が一歩目を踏み出します。
速い。
ですが、慌ただしさはありません。
一つ目の足場へ乗った時には、すでに次の足場を見ています。
傾いた足場を無理に戻そうとせず、その動きを利用して次へ跳ぶ。
着地と同時に体の向きを変え、続く反応パネルへ手を伸ばしました。
右。
左。
上。
背後。
次々と光るパネルへ、迷いなく触れていきます。
最後の障害物を越え、安定した姿勢で着地しました。
<測定終了>
表示された記録を見て、周囲から小さなどよめきが起こります。
「こんな感じです」
マロン先輩は、呼吸を乱すこともなく振り返りました。
「足場が動いてから考えるより、先に進む場所を決めておくと楽になるよ。速さは気にしなくて大丈夫だからね」
「十分速かったと思うけど」
アッサム先輩が言いました。
「少しは抑えたよ?」
「マロンの少しは、あまり参考にならないんだよね」
「でも、動きは見やすかったでしょ?」
「それはそうだけど」
二人の会話は、普段からよく話している人同士のように自然でした。
「すごい方ですね」
私が言うと、シュトレンさんも頷きます。
「うん。でも、あの速さを見たあとに自分の番が来るの、ちょっと困るね」
「先生も、同じ記録を出す必要はないと言っていました」
「チョコちゃん、ちょっと安心した?」
「かなり安心しました」
「正直でよろしい」
測定は三人ずつ行われました。
私たちの順番が近づいた時、少し離れた列にいる女の子がこちらを見ていることに気づきます。
長い黒髪。
琥珀色の瞳。
同じクラスにいることは知っていますが、まだ話したことはありません。
目が合うと、彼女は視線を逸らさず、少しだけ笑いました。
私も軽く頭を下げます。
「今の子、同じクラスだよね」
シュトレンさんが小声で言いました。
「はい。フィリスフィナンシェさんだったと思います」
「名前、覚えてたんだ」
「自己紹介は聞いていましたから」
「チョコちゃん、クラス全員覚えてそう」
「全員は難しいです。でも、半分くらいは」
「十分すごいよ」
私の名前が呼ばれました。
「次、チョコチップさん」
「はい」
開始地点へ立ちます。
最初の足場が見えました。
難しいことを考えすぎないよう、呼吸を整えます。
FoFで敵の攻撃を避ける時と同じです。
目の前の動きだけではなく、その次に自分が立つ場所まで見る。
開始音。
一歩。
足場が傾きます。
その場で体勢を戻すのではなく、傾いた方向を使って次へ移りました。
二つ目。
三つ目。
少しだけ足が滑りましたが、止まらずに進みます。
反応パネルが光りました。
右。
左。
正面。
最後だけ少し反応が遅れます。
障害物を越え、終了地点へ着きました。
記録はマロン先輩には遠く及びません。
それでも、自分で予想していたより良い数字でした。
「チョコちゃん、きれいだった!」
先に終わっていたシュトレンさんが言いました。
「ありがとうございます。最後は少し遅れましたけど」
「一回目なんだから十分だよ」
「今の動き、よかったよ」
マロン先輩も、記録画面を確認しながら近づいてきました。
「足場が動いても慌てなかったね。何かスポーツをやってる?」
「スポーツではありませんが、FoFというゲームで刀を使っています」
「ああ、それでなんだ」
マロン先輩は納得したように頷きました。
「避けたあと、すぐ次の動きへ移るのに慣れてるんだね。学校の決闘でも刀を使うなら、相性がよさそう」
「まだ武器を選ぶ授業は受けていません」
「じゃあ、授業でいろいろ試してみるといいよ。普段使ってるものが一番動きやすいとは思うけど、別の武器が合うこともあるから」
「ありがとうございます」
「それじゃ、次の組も頑張って」
マロン先輩は私たちへ軽く手を振り、アッサム先輩のところへ戻っていきました。
「マロン先輩、明るくて話しやすい方ですね」
私が言うと、シュトレンさんも笑います。
「うん。何でも自然にできそう」
「私たちとは、かなり違いますね」
「チョコちゃんも十分できてたよ」
「では、シュトレンさんの番も期待しています」
「急に圧をかけてきた」
「応援です」
「笑ってるから、少し怪しいなぁ」
冗談を言い合っていると、先ほどの黒髪の女の子と、もう一度目が合いました。
今度は、何かを決めたような顔をしている気がします。
三人目の席
昼休み。
私はシュトレンさんと、教室の後ろにある小さな机で昼食を食べていました。
今日は二人とも購買です。
私は卵と野菜のサンドイッチ。
シュトレンさんは甘いパンとミルクティーを選んでいます。
「測定、楽しかったね」
シュトレンさんが言いました。
「シュトレンさんも、最後まできれいに進めていました」
「途中で一回、足場から落ちそうになったけどね」
「あの時の顔は、少し面白かったです」
「チョコちゃん、最近ちょっと意地悪になってない?」
「シュトレンさんから学びました」
「私のせいなんだ」
「良い影響です」
「それならいいかな」
二人で笑いました。
教室の中では、いくつかのグループができています。
中学校からの知り合いと食べている人。
部活動の話をしている人。
机を合わせて、大人数で話している人。
近くを通った同級生と目が合いました。
今度は向こうから、小さく頭を下げてくれます。
私も会釈を返しました。
「さっきの子たち、またこっち見てたね」
シュトレンさんが、声を少し落として言います。
「何か話しかけたいことがあるのでしょうか」
「そのうち、来てくれるかもね」
「でしたら、席を一つ空けておきましょうか」
「誰が来るかもわからないのに?」
「空いていて困ることはありませんから」
シュトレンさんは少し笑い、隣の椅子を机から引き出しました。
「じゃあ、ここは新しい友達用の席ね」
「来なかった場合は、鞄を置きましょう」
「急に現実的だね」
その時でした。
「そこ、一つ空いてる?」
声をかけられ、二人で顔を上げます。
基礎測定の時にこちらを見ていた、黒髪の女の子が立っていました。
片手には昼食。
もう片方には飲み物を持っています。
「はい。空いています」
私は椅子を少し引きました。
「どうぞ。一緒に食べましょう」
女の子は少しだけ目を丸くしたあと、すぐに笑いました。
「ありがとう。じゃあ、遠慮なく」
席へ座り、昼食を机へ置きます。
近くで見ると、制服の着方がとてもきれいです。
指定のものを使っているはずなのに、袖の折り方や小物の合わせ方で、全体の印象が少し違って見えました。
「フィリスフィナンシェ。同じ一年二組」
「チョコチップです」
「マリーシュトレンです。よろしくね」
「うん。二人とも知ってる」
「自己紹介で、ですよね?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少し楽しそうに笑いました。
「それもあるけど、クラスで何度も見てるから」
「やはり、見られていたんですね」
「気づいてたんだ」
「シュトレンさんから教えてもらいました」
「チョコちゃん一人だと、たぶん今も気にしてないよ」
「そこまでではありません」
「少しは気にしてた?」
「お知り合いなのかと思いました」
フィナンシェさんが小さく笑います。
「そういうふうに考えるんだ」
「違いましたか?」
「うん。話しかけようか迷ってただけ」
「でしたら、来てくださってよかったです」
私が答えると、フィナンシェさんは少しだけ意外そうな顔をしました。
「二人でいるところに入っても大丈夫だった?」
「席を空けて待っていました」
「私が来るってわかってたの?」
「いいえ。誰かが来るかもしれないと話していたところです」
「本当に新しい友達用の席になったね」
シュトレンさんが嬉しそうに言います。
フィナンシェさんも、空いていた椅子を見て笑いました。
「じゃあ、座ったからには友達にならないとね」
「順番が逆のような気もします」
「だめ?」
「いいえ。よろしくお願いします、フィナンシェさん」
「うん。よろしく」
自然に返事をしてくれました。
「長いから、フィナンシェでいいよ」
「では、フィナンシェさんと呼びます」
「やっぱり『さん』はつけるんだね」
「チョコちゃん、私にもずっとつけてるよ」
シュトレンさんが言います。
「そのうち外れます」
「本当?」
「可能性はあります」
「保証はしないんだ」
三人で笑いました。
「ずっと、話しかけてみようと思ってたんだ」
フィナンシェさんが言いました。
「私たちにですか?」
「うん。でも、二人ともいつも一緒にいるし、放課後はすぐ先輩のところへ行くでしょ」
「二人で話していると、入りづらいですか?」
「少しだけ。二人組として完成してる感じがする」
私はシュトレンさんを見ました。
シュトレンさんも、私を見ます。
「完成しているそうです」
「入学して二週間なのにね」
「でも、完成していても、席は増やせますよ」
私が言うと、フィナンシェさんが少し驚きました。
「それ、私に入っていいって意味?」
「もう座っていますから、今さらだめとは言いません」
「チョコちゃん、言い方がちょっと面白い」
「フィナンシェさんが、私たちを見ていた分のお返しです」
「お返しするんだ」
「少しだけです」
フィナンシェさんは一瞬黙ったあと、楽しそうに笑いました。
「思ってたより、チョコちゃんって話しやすいね」
「どのような人だと思っていたんですか?」
「真面目で、丁寧で、少しおとなしい子」
「だいたい合っています」
「でも、ちゃんと冗談も返してくる」
「それは、シュトレンさんや先輩たちに鍛えられました」
「私も貢献してるんだ」
シュトレンさんが胸を張ります。
「良い影響だけではないかもしれません」
「そこは良い影響って言ってほしいなぁ」
フィナンシェさんは、今度は私の花飾りへ目を向けました。
「その花、本物を読み込んだもの?」
「はい。大切な先輩からいただきました」
「やっぱり」
「わかるんですか?」
「学校アバター用の装飾品より、花びらの揺れ方が細かいから。それに、チョコちゃんがよく触ってる」
私は、花へ伸ばしかけていた手を止めました。
「触っていません」
「今、触ろうとしたよ」
「確認です」
「何の?」
「きちんとついているかです」
「朝から何回確認した?」
「……三回くらいです」
「絶対もっとしてる」
シュトレンさんまで笑っています。
「二人とも、私ばかり観察しすぎではありませんか?」
「じゃあ、チョコちゃんも私を観察していいよ」
フィナンシェさんが言いました。
私は彼女の制服を見ます。
袖。
襟。
髪。
前髪の横につけられた、小さな青い髪留め。
「フィナンシェさんは、先ほどから袖を三回直しています」
「え」
「それと、私の花を見ながら、ご自分の髪留めにも二回触れました」
フィナンシェさんが、少しだけ動きを止めました。
シュトレンさんが声を上げて笑います。
「チョコちゃん、ちゃんと見てたんだ」
「見られるだけでは少し不公平ですから」
「……チョコちゃん、思ったより強いね」
「FoFでは刀を使っていますので」
「そっちの強さじゃないと思う」
フィナンシェさんも、とうとう笑い出しました。
三人で話していると、昼休みの時間があっという間に過ぎていきます。
「そうだ」
フィナンシェさんがDPo-Xを開きました。
「二人とも、連絡先を交換しよう」
「はい」
今度は、私も迷わずDPo-Xを開きます。
三人で連絡先を交換すると、すぐに新しいグループが作られました。
<週末どうする?>
「グループ名まで、もう決まっているんですね」
「仮名だよ」
「週末、何かしたいことがあるんですか?」
「二人と遊びに行こうと思ってた」
「まだ誘う前から?」
「誘えた時に、予定が何もないと困るでしょ?」
フィナンシェさんの画面に、いくつかの候補が表示されました。
駅前の服屋。
期間限定の雑貨店。
新しくできたカフェ。
バーチャル世界側の商業区で行われるファッションイベント。
「かなり調べていますね」
「二人は、土曜日空いてる?」
「私は大丈夫です」
シュトレンさんが答えます。
私も予定を確認しました。
「私も空いています」
「じゃあ、午前は駅前で買い物。お昼を食べて、午後は雑貨店」
「夕方はどうしますか?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少し考えました。
「まだ元気だったら、バーチャル世界」
「それなら、三人で行ける場所を考えておきます」
「チョコちゃんも、もう乗り気だね」
シュトレンさんが言います。
「せっかく三人で出かけるなら、一日楽しみたいですから」
「決まり」
フィナンシェさんが予定を共有しました。
話しかけられてから、まだ二十分ほどです。
連絡先を交換し。
三人のグループができ。
週末の予定まで決まりました。
「フィナンシェさんは、いつもこんなに早いんですか?」
「友達になりたいと思ったら、話しかけた方が早いでしょ?」
「その考え方は、少し見習いたいです」
「じゃあ、今度はチョコちゃんから誰か誘ってみたら?」
「まずは、三人で出かけるところから始めます」
「堅実だね」
「しっかりしていると言ってください」
また、三人で笑いました。
二人だった昼食の席に。
三人目の椅子が増えました。
私はシュトレンさんと、教室の後ろにある小さな机で昼食を食べていました。
今日は二人とも購買です。
私は卵と野菜のサンドイッチ。
シュトレンさんは甘いパンとミルクティーを選んでいます。
「測定、楽しかったね」
シュトレンさんが言いました。
「シュトレンさんも、最後まできれいに進めていました」
「途中で一回、足場から落ちそうになったけどね」
「あの時の顔は、少し面白かったです」
「チョコちゃん、最近ちょっと意地悪になってない?」
「シュトレンさんから学びました」
「私のせいなんだ」
「良い影響です」
「それならいいかな」
二人で笑いました。
教室の中では、いくつかのグループができています。
中学校からの知り合いと食べている人。
部活動の話をしている人。
机を合わせて、大人数で話している人。
近くを通った同級生と目が合いました。
今度は向こうから、小さく頭を下げてくれます。
私も会釈を返しました。
「さっきの子たち、またこっち見てたね」
シュトレンさんが、声を少し落として言います。
「何か話しかけたいことがあるのでしょうか」
「そのうち、来てくれるかもね」
「でしたら、席を一つ空けておきましょうか」
「誰が来るかもわからないのに?」
「空いていて困ることはありませんから」
シュトレンさんは少し笑い、隣の椅子を机から引き出しました。
「じゃあ、ここは新しい友達用の席ね」
「来なかった場合は、鞄を置きましょう」
「急に現実的だね」
その時でした。
「そこ、一つ空いてる?」
声をかけられ、二人で顔を上げます。
基礎測定の時にこちらを見ていた、黒髪の女の子が立っていました。
片手には昼食。
もう片方には飲み物を持っています。
「はい。空いています」
私は椅子を少し引きました。
「どうぞ。一緒に食べましょう」
女の子は少しだけ目を丸くしたあと、すぐに笑いました。
「ありがとう。じゃあ、遠慮なく」
席へ座り、昼食を机へ置きます。
近くで見ると、制服の着方がとてもきれいです。
指定のものを使っているはずなのに、袖の折り方や小物の合わせ方で、全体の印象が少し違って見えました。
「フィリスフィナンシェ。同じ一年二組」
「チョコチップです」
「マリーシュトレンです。よろしくね」
「うん。二人とも知ってる」
「自己紹介で、ですよね?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少し楽しそうに笑いました。
「それもあるけど、クラスで何度も見てるから」
「やはり、見られていたんですね」
「気づいてたんだ」
「シュトレンさんから教えてもらいました」
「チョコちゃん一人だと、たぶん今も気にしてないよ」
「そこまでではありません」
「少しは気にしてた?」
「お知り合いなのかと思いました」
フィナンシェさんが小さく笑います。
「そういうふうに考えるんだ」
「違いましたか?」
「うん。話しかけようか迷ってただけ」
「でしたら、来てくださってよかったです」
私が答えると、フィナンシェさんは少しだけ意外そうな顔をしました。
「二人でいるところに入っても大丈夫だった?」
「席を空けて待っていました」
「私が来るってわかってたの?」
「いいえ。誰かが来るかもしれないと話していたところです」
「本当に新しい友達用の席になったね」
シュトレンさんが嬉しそうに言います。
フィナンシェさんも、空いていた椅子を見て笑いました。
「じゃあ、座ったからには友達にならないとね」
「順番が逆のような気もします」
「だめ?」
「いいえ。よろしくお願いします、フィナンシェさん」
「うん。よろしく」
自然に返事をしてくれました。
「長いから、フィナンシェでいいよ」
「では、フィナンシェさんと呼びます」
「やっぱり『さん』はつけるんだね」
「チョコちゃん、私にもずっとつけてるよ」
シュトレンさんが言います。
「そのうち外れます」
「本当?」
「可能性はあります」
「保証はしないんだ」
三人で笑いました。
「ずっと、話しかけてみようと思ってたんだ」
フィナンシェさんが言いました。
「私たちにですか?」
「うん。でも、二人ともいつも一緒にいるし、放課後はすぐ先輩のところへ行くでしょ」
「二人で話していると、入りづらいですか?」
「少しだけ。二人組として完成してる感じがする」
私はシュトレンさんを見ました。
シュトレンさんも、私を見ます。
「完成しているそうです」
「入学して二週間なのにね」
「でも、完成していても、席は増やせますよ」
私が言うと、フィナンシェさんが少し驚きました。
「それ、私に入っていいって意味?」
「もう座っていますから、今さらだめとは言いません」
「チョコちゃん、言い方がちょっと面白い」
「フィナンシェさんが、私たちを見ていた分のお返しです」
「お返しするんだ」
「少しだけです」
フィナンシェさんは一瞬黙ったあと、楽しそうに笑いました。
「思ってたより、チョコちゃんって話しやすいね」
「どのような人だと思っていたんですか?」
「真面目で、丁寧で、少しおとなしい子」
「だいたい合っています」
「でも、ちゃんと冗談も返してくる」
「それは、シュトレンさんや先輩たちに鍛えられました」
「私も貢献してるんだ」
シュトレンさんが胸を張ります。
「良い影響だけではないかもしれません」
「そこは良い影響って言ってほしいなぁ」
フィナンシェさんは、今度は私の花飾りへ目を向けました。
「その花、本物を読み込んだもの?」
「はい。大切な先輩からいただきました」
「やっぱり」
「わかるんですか?」
「学校アバター用の装飾品より、花びらの揺れ方が細かいから。それに、チョコちゃんがよく触ってる」
私は、花へ伸ばしかけていた手を止めました。
「触っていません」
「今、触ろうとしたよ」
「確認です」
「何の?」
「きちんとついているかです」
「朝から何回確認した?」
「……三回くらいです」
「絶対もっとしてる」
シュトレンさんまで笑っています。
「二人とも、私ばかり観察しすぎではありませんか?」
「じゃあ、チョコちゃんも私を観察していいよ」
フィナンシェさんが言いました。
私は彼女の制服を見ます。
袖。
襟。
髪。
前髪の横につけられた、小さな青い髪留め。
「フィナンシェさんは、先ほどから袖を三回直しています」
「え」
「それと、私の花を見ながら、ご自分の髪留めにも二回触れました」
フィナンシェさんが、少しだけ動きを止めました。
シュトレンさんが声を上げて笑います。
「チョコちゃん、ちゃんと見てたんだ」
「見られるだけでは少し不公平ですから」
「……チョコちゃん、思ったより強いね」
「FoFでは刀を使っていますので」
「そっちの強さじゃないと思う」
フィナンシェさんも、とうとう笑い出しました。
三人で話していると、昼休みの時間があっという間に過ぎていきます。
「そうだ」
フィナンシェさんがDPo-Xを開きました。
「二人とも、連絡先を交換しよう」
「はい」
今度は、私も迷わずDPo-Xを開きます。
三人で連絡先を交換すると、すぐに新しいグループが作られました。
<週末どうする?>
「グループ名まで、もう決まっているんですね」
「仮名だよ」
「週末、何かしたいことがあるんですか?」
「二人と遊びに行こうと思ってた」
「まだ誘う前から?」
「誘えた時に、予定が何もないと困るでしょ?」
フィナンシェさんの画面に、いくつかの候補が表示されました。
駅前の服屋。
期間限定の雑貨店。
新しくできたカフェ。
バーチャル世界側の商業区で行われるファッションイベント。
「かなり調べていますね」
「二人は、土曜日空いてる?」
「私は大丈夫です」
シュトレンさんが答えます。
私も予定を確認しました。
「私も空いています」
「じゃあ、午前は駅前で買い物。お昼を食べて、午後は雑貨店」
「夕方はどうしますか?」
私が聞くと、フィナンシェさんは少し考えました。
「まだ元気だったら、バーチャル世界」
「それなら、三人で行ける場所を考えておきます」
「チョコちゃんも、もう乗り気だね」
シュトレンさんが言います。
「せっかく三人で出かけるなら、一日楽しみたいですから」
「決まり」
フィナンシェさんが予定を共有しました。
話しかけられてから、まだ二十分ほどです。
連絡先を交換し。
三人のグループができ。
週末の予定まで決まりました。
「フィナンシェさんは、いつもこんなに早いんですか?」
「友達になりたいと思ったら、話しかけた方が早いでしょ?」
「その考え方は、少し見習いたいです」
「じゃあ、今度はチョコちゃんから誰か誘ってみたら?」
「まずは、三人で出かけるところから始めます」
「堅実だね」
「しっかりしていると言ってください」
また、三人で笑いました。
二人だった昼食の席に。
三人目の椅子が増えました。
授業で会う先輩
放課後。
私とシュトレンさんは、いつものように二年生エリアへ向かう準備をしていました。
フィナンシェさんは、自分の机でDPo-Xを操作しています。
「二人とも、今日も先輩のところへ行くの?」
「はい」
「バーチャルポッドの調整を見る予定です」
シュトレンさんが答えました。
「チョコちゃんの花をくれた先輩?」
「みた先輩のことです」
「少し会ってみたいけど、今日はやめておく」
「一緒に来ないんですか?」
「行きつけにしたい書店を探したいから」
「書店ですか?」
「ファッション誌を置いてる店。都会に来たら、実物を見て選びたかったんだ」
フィナンシェさんは、高校入学と同時に一人暮らしを始めたそうです。
育った場所には、欲しい服や雑誌を扱う店が少なく、ずっと都会の店に憧れていたと話してくれました。
「見つかったら、今度教えてください」
「もちろん。二人にも見せたい雑誌があるし」
「一人で迷わない?」
シュトレンさんが聞きます。
「道は調べたから大丈夫」
「もし迷ったら、三人のグループへ送ってくださいね」
私が言うと、フィナンシェさんが少し笑いました。
「心配性だね」
「友達ですから」
言ってから、少しだけ照れました。
ですが、フィナンシェさんはからかいませんでした。
「うん。ありがとう」
短く、素直に答えてくれます。
「じゃあ、また明日。土曜日は遅れないでね」
「まだ数日先ですよ」
「先に言っておけば忘れないでしょ?」
「チョコちゃんは忘れないと思うよ」
「シュトレンちゃんは?」
「私も忘れないよ」
「では、フィナンシェさんが忘れないように、前日に私が連絡します」
「二人とも、私の信用が低くない?」
「念のためです」
三人で笑いました。
フィナンシェさんは、私たちとは別の出口へ向かいます。
教室を出ると、廊下の向こうからアッサム先輩とマロン先輩が歩いてきました。
二人で、先ほどの授業に使った測定器具を運んでいるようです。
「さっきはお疲れさま」
アッサム先輩が声をかけてくれました。
「ありがとうございました」
私たちも頭を下げます。
「チョコチップさん、測定よかったね」
マロン先輩が明るく言いました。
「ありがとうございます」
「最初の測定であれだけ動けるなら、次の授業も大丈夫だと思うよ」
「次は、もう少し最後の反応を速くしたいです」
「いいね。でも、最初から全部完璧にしなくても大丈夫。次に一つ良くなれば十分だよ」
「はい」
マロン先輩は、少し先を歩いているフィナンシェさんへ目を向けました。
「同じクラスの子?」
「はい。フィリスフィナンシェさんです。今日、一緒に昼食を食べました」
「そうなんだ。友達が増えたならよかったね」
「はい」
「入学したばかりは、話しかけるきっかけが難しいからね」
アッサム先輩も頷きます。
「マロンは初日から、隣の席の子に普通に話しかけてたけど」
「私だって、少しは緊張してたよ」
「少しだけ?」
「少しは少し」
マロン先輩は笑いました。
「でも、一緒に話してみたいと思ったら、声をかけた方が早いから」
フィナンシェさんも、同じようなことを言っていました。
「三人になると、できることも増えるね。これから楽しみでしょ?」
「はい。週末に出かける予定です」
「もう予定まで決まったんだ。いいね」
「マロン、そろそろ器具を戻さないと」
アッサム先輩が言いました。
「あ、そうだった」
マロン先輩は、抱えていた器具を持ち直します。
「それじゃ、また授業でね」
「はい。ありがとうございました」
二人は軽く手を振り、そのまま廊下を歩いていきました。
アッサム先輩とマロン先輩は仲が良いようですが、私たちとは授業や校内活動で会えば話す程度です。
それでも、自然に声をかけてもらえることは少し嬉しく感じました。
「マロン先輩、元気ですが話しやすい方ですね」
私が言うと、シュトレンさんも頷きます。
「うん。何でもできるのに、偉そうじゃないよね」
二人の後ろ姿を見送ってから、私たちも二年生エリアへ向かいました。
私とシュトレンさんは、いつものように二年生エリアへ向かう準備をしていました。
フィナンシェさんは、自分の机でDPo-Xを操作しています。
「二人とも、今日も先輩のところへ行くの?」
「はい」
「バーチャルポッドの調整を見る予定です」
シュトレンさんが答えました。
「チョコちゃんの花をくれた先輩?」
「みた先輩のことです」
「少し会ってみたいけど、今日はやめておく」
「一緒に来ないんですか?」
「行きつけにしたい書店を探したいから」
「書店ですか?」
「ファッション誌を置いてる店。都会に来たら、実物を見て選びたかったんだ」
フィナンシェさんは、高校入学と同時に一人暮らしを始めたそうです。
育った場所には、欲しい服や雑誌を扱う店が少なく、ずっと都会の店に憧れていたと話してくれました。
「見つかったら、今度教えてください」
「もちろん。二人にも見せたい雑誌があるし」
「一人で迷わない?」
シュトレンさんが聞きます。
「道は調べたから大丈夫」
「もし迷ったら、三人のグループへ送ってくださいね」
私が言うと、フィナンシェさんが少し笑いました。
「心配性だね」
「友達ですから」
言ってから、少しだけ照れました。
ですが、フィナンシェさんはからかいませんでした。
「うん。ありがとう」
短く、素直に答えてくれます。
「じゃあ、また明日。土曜日は遅れないでね」
「まだ数日先ですよ」
「先に言っておけば忘れないでしょ?」
「チョコちゃんは忘れないと思うよ」
「シュトレンちゃんは?」
「私も忘れないよ」
「では、フィナンシェさんが忘れないように、前日に私が連絡します」
「二人とも、私の信用が低くない?」
「念のためです」
三人で笑いました。
フィナンシェさんは、私たちとは別の出口へ向かいます。
教室を出ると、廊下の向こうからアッサム先輩とマロン先輩が歩いてきました。
二人で、先ほどの授業に使った測定器具を運んでいるようです。
「さっきはお疲れさま」
アッサム先輩が声をかけてくれました。
「ありがとうございました」
私たちも頭を下げます。
「チョコチップさん、測定よかったね」
マロン先輩が明るく言いました。
「ありがとうございます」
「最初の測定であれだけ動けるなら、次の授業も大丈夫だと思うよ」
「次は、もう少し最後の反応を速くしたいです」
「いいね。でも、最初から全部完璧にしなくても大丈夫。次に一つ良くなれば十分だよ」
「はい」
マロン先輩は、少し先を歩いているフィナンシェさんへ目を向けました。
「同じクラスの子?」
「はい。フィリスフィナンシェさんです。今日、一緒に昼食を食べました」
「そうなんだ。友達が増えたならよかったね」
「はい」
「入学したばかりは、話しかけるきっかけが難しいからね」
アッサム先輩も頷きます。
「マロンは初日から、隣の席の子に普通に話しかけてたけど」
「私だって、少しは緊張してたよ」
「少しだけ?」
「少しは少し」
マロン先輩は笑いました。
「でも、一緒に話してみたいと思ったら、声をかけた方が早いから」
フィナンシェさんも、同じようなことを言っていました。
「三人になると、できることも増えるね。これから楽しみでしょ?」
「はい。週末に出かける予定です」
「もう予定まで決まったんだ。いいね」
「マロン、そろそろ器具を戻さないと」
アッサム先輩が言いました。
「あ、そうだった」
マロン先輩は、抱えていた器具を持ち直します。
「それじゃ、また授業でね」
「はい。ありがとうございました」
二人は軽く手を振り、そのまま廊下を歩いていきました。
アッサム先輩とマロン先輩は仲が良いようですが、私たちとは授業や校内活動で会えば話す程度です。
それでも、自然に声をかけてもらえることは少し嬉しく感じました。
「マロン先輩、元気ですが話しやすい方ですね」
私が言うと、シュトレンさんも頷きます。
「うん。何でもできるのに、偉そうじゃないよね」
二人の後ろ姿を見送ってから、私たちも二年生エリアへ向かいました。
土曜日の三人
土曜日。
待ち合わせ場所へ着くと、シュトレンさんはすでに来ていました。
「おはよう、チョコちゃん」
「おはようございます」
「今日は学校じゃないから、少し雰囲気が違うね」
「髪を下ろしているからでしょうか」
学校ではお団子にしている髪を、今日はそのまま下ろしています。
花飾りだけは、いつもと同じ場所です。
「それもあるけど、少し楽しそう」
「実際、楽しみにしていましたから」
「私も!」
少し遅れて、フィナンシェさんが現れました。
「二人とも早いね」
「フィナンシェさんが、遅れないようにと言うので」
「一回しか言ってないよ」
「グループの固定メッセージになっています」
「見やすいでしょ?」
今日のフィナンシェさんは、制服ではありません。
形のきれいな上着に、短めのスカート。
小物まで色が揃っています。
「二人とも、まず服を見よう」
「最初から決まっていたんですね」
「予定表に書いたよ?」
「では、案内をお願いします」
「チョコちゃん、今日は素直だね」
「詳しい方に任せるのが一番ですから」
「そういう理由なんだ」
最初に入った店で、フィナンシェさんは迷いなく服を選んでいきました。
自分のものだけではありません。
「シュトレンちゃん、これ」
「私?」
「髪色に合うと思う。襟も柔らかいから、普段着やすそう」
「かわいい!」
「チョコちゃんは、こっち」
渡されたのは、淡い青色のカーディガンでした。
「花と色が合うから、たぶん似合うよ」
「少し明るくありませんか?」
「試着してから決めればいいよ」
「では、試してから反論します」
「最初から反論するつもりなんだ」
試着室へ入り、鏡を見ます。
思っていたほど明るすぎません。
黒い髪にも、花飾りにもよく合っていました。
外へ出ると、シュトレンさんがすぐに笑顔になります。
「すごく似合ってるよ」
「ありがとうございます」
フィナンシェさんも、満足そうに頷きました。
「ほら」
「フィナンシェさんの勝ちですね」
「勝負だったの?」
「先ほど、反論すると言いましたから」
「じゃあ今回は私の勝ち」
「次は負けません」
「チョコちゃん、服選びで何と戦ってるの?」
シュトレンさんが笑っています。
私はカーディガンの袖を整えながら、フィナンシェさんを見ました。
「フィナンシェさんには、こちらが似合いそうです」
近くにあった細い青色の髪留めを手に取ります。
「私に?」
「今の服の色と合います。学校の制服にも使えそうです」
フィナンシェさんは少し驚いたあと、鏡の前で髪へ合わせました。
「……悪くないね」
「似合っています」
「チョコちゃんも、ちゃんと選べるじゃん」
「料理の盛り付けでも、色の組み合わせは考えますから」
「そういうところから来てるんだ」
結局、フィナンシェさんもその髪留めを買いました。
シュトレンさんには、三人で相談しながら淡い色のカーディガンを選びます。
自分の服だけを見るより、誰かに似合うものを探す方が、思った以上に楽しく感じました。
お昼は、駅前のカフェへ入りました。
シュトレンさんは、店頭の焼き菓子を見ながら材料や焼き方を楽しそうに話しています。
フィナンシェさんは、店内の内装や店員さんの制服を見ています。
私は料理の盛り付けと、メニューの組み合わせを見ていました。
「三人とも、見るところが違いますね」
私が言うと、シュトレンさんが聞き返します。
「チョコちゃんは、やっぱり料理?」
「はい。でも、店員さんの動きも少し気になります」
「どうして?」
「配膳の順番がとても効率的です。席を回る時に、同じ通路を戻っていません」
フィナンシェさんが少し笑いました。
「チョコちゃん、意外と見るところが実用的だね」
「生活では大事です」
「じゃあ私は見た目、シュトレンちゃんは味、チョコちゃんは使いやすさ」
「三人いれば、お店を全部見られますね」
「それ、いいね」
食事のあと、三人で写真を撮りました。
最初はシュトレンさんが端末を構えましたが、全員を画面に入れるのが難しそうです。
「私が固定台を借ります」
私は店員さんへ確認し、撮影用の小さなスタンドを借りました。
「チョコちゃん、手際いいね」
「三人で出かけたのですから、三人で写りたいでしょう?」
「うん!」
「それでは、撮りますよ」
一枚目は、少し固い表情になりました。
二枚目は、フィナンシェさんが直前に、
「チョコちゃん、カーディガンを買う時、少し嬉しそうだったよね」
と言ったせいで、私が反論している途中に撮影されました。
写真の中では、三人とも笑っています。
「こっちの方がいいね」
シュトレンさんが言います。
「私は話している途中です」
「自然でかわいいよ」
「フィナンシェさん、わざとですね?」
「少しだけ」
「では、次は私が何か言います」
「何を?」
「それは撮る時まで秘密です」
「チョコちゃん、すっかり乗ってきたね」
三枚目では、私が直前にフィナンシェさんの髪留めを褒めました。
今度は、フィナンシェさんが少し照れた顔で写っています。
「お互い様ですね」
私が言うと、フィナンシェさんは写真を見ながら笑いました。
「うん。お互い様」
待ち合わせ場所へ着くと、シュトレンさんはすでに来ていました。
「おはよう、チョコちゃん」
「おはようございます」
「今日は学校じゃないから、少し雰囲気が違うね」
「髪を下ろしているからでしょうか」
学校ではお団子にしている髪を、今日はそのまま下ろしています。
花飾りだけは、いつもと同じ場所です。
「それもあるけど、少し楽しそう」
「実際、楽しみにしていましたから」
「私も!」
少し遅れて、フィナンシェさんが現れました。
「二人とも早いね」
「フィナンシェさんが、遅れないようにと言うので」
「一回しか言ってないよ」
「グループの固定メッセージになっています」
「見やすいでしょ?」
今日のフィナンシェさんは、制服ではありません。
形のきれいな上着に、短めのスカート。
小物まで色が揃っています。
「二人とも、まず服を見よう」
「最初から決まっていたんですね」
「予定表に書いたよ?」
「では、案内をお願いします」
「チョコちゃん、今日は素直だね」
「詳しい方に任せるのが一番ですから」
「そういう理由なんだ」
最初に入った店で、フィナンシェさんは迷いなく服を選んでいきました。
自分のものだけではありません。
「シュトレンちゃん、これ」
「私?」
「髪色に合うと思う。襟も柔らかいから、普段着やすそう」
「かわいい!」
「チョコちゃんは、こっち」
渡されたのは、淡い青色のカーディガンでした。
「花と色が合うから、たぶん似合うよ」
「少し明るくありませんか?」
「試着してから決めればいいよ」
「では、試してから反論します」
「最初から反論するつもりなんだ」
試着室へ入り、鏡を見ます。
思っていたほど明るすぎません。
黒い髪にも、花飾りにもよく合っていました。
外へ出ると、シュトレンさんがすぐに笑顔になります。
「すごく似合ってるよ」
「ありがとうございます」
フィナンシェさんも、満足そうに頷きました。
「ほら」
「フィナンシェさんの勝ちですね」
「勝負だったの?」
「先ほど、反論すると言いましたから」
「じゃあ今回は私の勝ち」
「次は負けません」
「チョコちゃん、服選びで何と戦ってるの?」
シュトレンさんが笑っています。
私はカーディガンの袖を整えながら、フィナンシェさんを見ました。
「フィナンシェさんには、こちらが似合いそうです」
近くにあった細い青色の髪留めを手に取ります。
「私に?」
「今の服の色と合います。学校の制服にも使えそうです」
フィナンシェさんは少し驚いたあと、鏡の前で髪へ合わせました。
「……悪くないね」
「似合っています」
「チョコちゃんも、ちゃんと選べるじゃん」
「料理の盛り付けでも、色の組み合わせは考えますから」
「そういうところから来てるんだ」
結局、フィナンシェさんもその髪留めを買いました。
シュトレンさんには、三人で相談しながら淡い色のカーディガンを選びます。
自分の服だけを見るより、誰かに似合うものを探す方が、思った以上に楽しく感じました。
お昼は、駅前のカフェへ入りました。
シュトレンさんは、店頭の焼き菓子を見ながら材料や焼き方を楽しそうに話しています。
フィナンシェさんは、店内の内装や店員さんの制服を見ています。
私は料理の盛り付けと、メニューの組み合わせを見ていました。
「三人とも、見るところが違いますね」
私が言うと、シュトレンさんが聞き返します。
「チョコちゃんは、やっぱり料理?」
「はい。でも、店員さんの動きも少し気になります」
「どうして?」
「配膳の順番がとても効率的です。席を回る時に、同じ通路を戻っていません」
フィナンシェさんが少し笑いました。
「チョコちゃん、意外と見るところが実用的だね」
「生活では大事です」
「じゃあ私は見た目、シュトレンちゃんは味、チョコちゃんは使いやすさ」
「三人いれば、お店を全部見られますね」
「それ、いいね」
食事のあと、三人で写真を撮りました。
最初はシュトレンさんが端末を構えましたが、全員を画面に入れるのが難しそうです。
「私が固定台を借ります」
私は店員さんへ確認し、撮影用の小さなスタンドを借りました。
「チョコちゃん、手際いいね」
「三人で出かけたのですから、三人で写りたいでしょう?」
「うん!」
「それでは、撮りますよ」
一枚目は、少し固い表情になりました。
二枚目は、フィナンシェさんが直前に、
「チョコちゃん、カーディガンを買う時、少し嬉しそうだったよね」
と言ったせいで、私が反論している途中に撮影されました。
写真の中では、三人とも笑っています。
「こっちの方がいいね」
シュトレンさんが言います。
「私は話している途中です」
「自然でかわいいよ」
「フィナンシェさん、わざとですね?」
「少しだけ」
「では、次は私が何か言います」
「何を?」
「それは撮る時まで秘密です」
「チョコちゃん、すっかり乗ってきたね」
三枚目では、私が直前にフィナンシェさんの髪留めを褒めました。
今度は、フィナンシェさんが少し照れた顔で写っています。
「お互い様ですね」
私が言うと、フィナンシェさんは写真を見ながら笑いました。
「うん。お互い様」
金髪のツインテール
現実側での買い物を終え、いったん家へ戻ったあと。
夕方に、三人でバーチャル世界へ接続することになりました。
待ち合わせ場所は、だんのこまち商業区の駅前です。
私が到着すると、シュトレンさんはすでに広場にいました。
学校用アバターとは少し服装が違いますが、赤みを帯びた長い髪は同じです。
「チョコちゃん」
「お待たせしました」
「まだフィナンシェちゃんは来てないよ」
その直後、近くの接続ポイントが光りました。
一人の女の子が現れます。
金色のツインテール。
黒と黄色を基調にした服。
学校で見ている黒髪のフィナンシェさんとは、かなり印象が違いました。
「フィナンシェさん?」
私が聞くと、彼女はツインテールを軽く揺らしました。
「別人だと思った?」
「少しだけ驚きました。でも、とても似合っています」
「本当?」
「はい。ずっとこの姿にしたかったんですか?」
「うん。現実ではできないことを、こっちでやりたかったから」
フィナンシェさんは、その場で一度くるりと回りました。
ツインテールと、上着の飾りが軽く揺れます。
「その気持ちは、よくわかります」
FoFでは水色の髪にしている私が言うと、フィナンシェさんは納得したように笑いました。
「チョコちゃんに言われると、説得力あるね」
シュトレンさんも、フィナンシェさんの周りを一周するように見ます。
「ツインテール、すごくかわいい!」
「ありがとう。シュトレンちゃんも、アバターを作る時は相談して」
「お願いする!」
「お二人とも、もう次の話をしていますね」
「チョコちゃんも手伝ってね」
「もちろんです」
私たちは、そのまま商業区で行われていた小さなファッションイベントを見て回りました。
アバター用の服。
靴。
アクセサリー。
髪型の調整データ。
フィナンシェさんは現実側のお店にいた時以上に、楽しそうに一つずつ見ています。
「これ、学校用のアバターにも使える?」
「学校側の規定に合えば、読み込めると思います」
「じゃあ保存しておこう」
「フィナンシェさん、先ほどから候補がかなり増えていますよ」
「選ぶのはあとでいいでしょ?」
「全部欲しくなりませんか?」
「もう、少しなってる」
「正直ですね」
シュトレンさんは、近くに展示されていた帽子を試着していました。
「二人とも、これどう?」
「かわいいです」
「髪色にも合ってる」
フィナンシェさんがすぐに答えます。
「じゃあ候補に入れておくね」
三人であちこちを見て回り、休憩スペースへ入った頃には、予定していた時間をかなり過ぎていました。
「バーチャル世界も、服が多すぎる」
フィナンシェさんが椅子へ座りながら言います。
「まだ商業区の一部しか見ていませんよ」
「もっとあるの?」
「かなりあります」
「全部見たい」
「一日では無理です」
「じゃあ、また来ればいいよ」
シュトレンさんが言いました。
「次の予定、もう一つ増えたね」
「増えましたね」
フィナンシェさんが、私の姿を改めて見ます。
「そういえば、チョコちゃんが言ってたFoFの姿って、今とは違うんだよね?」
「はい。髪が水色です」
「見たい」
即答でした。
「ゲーム自体も気になる。さっきの測定で、チョコちゃんが動けた理由になってるんでしょ?」
「少しは関係していると思います」
シュトレンさんも興味を持ったようです。
「私も見てみたいな」
「でしたら、少しだけ接続してみますか?」
「今からできるの?」
「新規登録に少し時間はかかります」
「それでもやる」
フィナンシェさんの返事に迷いはありませんでした。
私たちは商業区の休憩スペースから、FoFの新規登録画面を開きました。
シュトレンさんは、自分のアバターをゆっくり考えたいということで、今日は私たちの共有画面を見ることになりました。
「適当に作ると、あとで絶対後悔しそうだから」
「その判断は正しいと思います」
「チョコちゃんは、最初は黒髪だったんだよね?」
「はい。あとから水色へ変えました」
「じゃあ、変えられるとしても、最初からちゃんと考える」
フィナンシェさんは、FoF用のアバター作成を始めました。
髪は、先ほどの普段用アバターと同じ金色のツインテールを再現します。
目の形。
服の色。
装飾品。
初期装備の組み合わせ。
クラスや能力を決める前に、見た目だけでかなり時間がかかりました。
「初期装備、もう少し色を変えられないの?」
「最初は選択肢が少ないです。あとで装備を集めれば増えます」
「じゃあ、早く集めたい」
「ゲームを始める理由が服なんですね」
「大事でしょ?」
「否定はしません。私も、髪色を変えてから楽しくなりましたから」
「じゃあ同じだね」
最終的に、フィナンシェさんは弓を扱う初期クラスを選びました。
「この装備が、一番今の姿に合ってたから」
「武器との相性ではないんですか?」
「使ってみて、合わなかったら変える」
「迷いませんね」
「チョコちゃんが迷いすぎなんだよ」
「私は慎重なんです」
「今日はちゃんと反論するね」
「友達になりましたから」
フィナンシェさんが、少し嬉しそうに笑いました。
登録が終わり、FoFへ接続します。
初心者用の村へ現れたフィナンシェさんの背中には、ここで初めて初期装備の弓が表示されました。
商業区で見ていた普段用アバターと似た金髪のツインテールですが、服装はFoFの初期装備に変わっています。
「これが弓かぁ」
フィナンシェさんは背中から弓を外し、何度か角度を変えて眺めました。
「使う前に見た目を確認するんですね」
「大事でしょ?」
「先ほども聞きました」
「答えも同じ」
通話越しに、シュトレンさんが笑っています。
私もFoFへ接続し、水色の髪のサムライ姿になりました。
「本当に水色なんだ」
フィナンシェさんが私を上から下まで見ます。
「学校にいる時と、かなり違うね」
「はい。こちらでは、この姿です」
「似合ってる。花は同じなんだね」
「これは、どちらでも使っています」
「やっぱり大切なんだ」
「はい」
私たちは、初心者用の小さな森へ向かいました。
依頼内容は、若葉スライムを三体倒し、近くに生えている染料用の草を集めることです。
大きな戦闘ではありません。
私がFoFを始めた頃にも、似たような依頼を受けました。
「来た」
フィナンシェさんが弓を構えます。
若葉スライムが跳ねました。
矢が放たれます。
矢はスライムの横を通り過ぎ、木へ刺さりました。
「動くんだけど」
「敵ですから」
「少しくらい止まってくれてもいいのに」
「では、お願いしてみますか?」
「それは負けた気がする」
「でしたら、着地する場所を狙ってください。跳んでいる途中より、次にどこへ落ちるかを見る方が簡単です」
「さっきの測定と同じ?」
「似ています」
二本目。
今度は、スライムが着地する場所へ先に矢を向けました。
命中。
小さなダメージ表示が浮かびます。
「当たった!」
「はい。今のはきれいでした」
「もう一回」
フィナンシェさんは、すぐに次の矢を構えます。
覚えるのが早いです。
二体目を倒した頃には、スライムの動きを見て、先回りして狙うようになっていました。
三体目が近づきすぎると、私は刀を抜きます。
「一閃!」
水色の髪が揺れ、刀がスライムを斬り抜きました。
戦闘終了。
フィナンシェさんが、私をじっと見ています。
「どうしましたか?」
「学校にいる時と、全然雰囲気が違うね」
「そうでしょうか」
「うん。刀を抜いた瞬間、顔が変わった」
「戦っている最中ですから」
「普段はあんなに丁寧なのに、戦うと迷わないんだね」
「迷っている時間が長いと、攻撃されますので」
「その切り替え、面白い」
フィナンシェさんは楽しそうに笑いました。
その後、染料用の草を集めます。
フィナンシェさんは、戦闘よりも素材の色へ興味を持っていました。
「これ、服に使える?」
「染色素材の一部になります」
「何色?」
「緑系です」
「もっと集めよう」
「依頼数は、もう足りています」
「自分の分」
「始めたばかりで、染色できる装備はありませんよ」
「先に集めておけば、あとで使えるでしょ?」
「では、私も手伝います」
「止めないんだ」
「目的があるなら、少し多めに集めるのも悪くありません」
「チョコちゃん、ゲームだと話が早いね」
「慣れている場所ですから」
結局、予定より少し多く集めました。
初心者の村へ戻る頃には、フィナンシェさんのレベルが一つ上がっています。
「ゲーム、悪くないかも」
「よかったです」
「次は、服が売ってる町へ行きたい」
「少し先です」
「じゃあ、そこまで進める」
目的がはっきりしています。
共有画面を見ていたシュトレンさんから、グループへメッセージが届きました。
<二人とも楽しそう!>
<私も明日、登録してみるね>
私はすぐに返事を送りました。
<次は三人で行きましょう>
フィナンシェさんも続けます。
<アバターを作る時は呼んで>
シュトレンさんから、
<二人ともお願いします!>
と返ってきました。
三人でFoFへ行く日も、すぐに来そうです。
夕方に、三人でバーチャル世界へ接続することになりました。
待ち合わせ場所は、だんのこまち商業区の駅前です。
私が到着すると、シュトレンさんはすでに広場にいました。
学校用アバターとは少し服装が違いますが、赤みを帯びた長い髪は同じです。
「チョコちゃん」
「お待たせしました」
「まだフィナンシェちゃんは来てないよ」
その直後、近くの接続ポイントが光りました。
一人の女の子が現れます。
金色のツインテール。
黒と黄色を基調にした服。
学校で見ている黒髪のフィナンシェさんとは、かなり印象が違いました。
「フィナンシェさん?」
私が聞くと、彼女はツインテールを軽く揺らしました。
「別人だと思った?」
「少しだけ驚きました。でも、とても似合っています」
「本当?」
「はい。ずっとこの姿にしたかったんですか?」
「うん。現実ではできないことを、こっちでやりたかったから」
フィナンシェさんは、その場で一度くるりと回りました。
ツインテールと、上着の飾りが軽く揺れます。
「その気持ちは、よくわかります」
FoFでは水色の髪にしている私が言うと、フィナンシェさんは納得したように笑いました。
「チョコちゃんに言われると、説得力あるね」
シュトレンさんも、フィナンシェさんの周りを一周するように見ます。
「ツインテール、すごくかわいい!」
「ありがとう。シュトレンちゃんも、アバターを作る時は相談して」
「お願いする!」
「お二人とも、もう次の話をしていますね」
「チョコちゃんも手伝ってね」
「もちろんです」
私たちは、そのまま商業区で行われていた小さなファッションイベントを見て回りました。
アバター用の服。
靴。
アクセサリー。
髪型の調整データ。
フィナンシェさんは現実側のお店にいた時以上に、楽しそうに一つずつ見ています。
「これ、学校用のアバターにも使える?」
「学校側の規定に合えば、読み込めると思います」
「じゃあ保存しておこう」
「フィナンシェさん、先ほどから候補がかなり増えていますよ」
「選ぶのはあとでいいでしょ?」
「全部欲しくなりませんか?」
「もう、少しなってる」
「正直ですね」
シュトレンさんは、近くに展示されていた帽子を試着していました。
「二人とも、これどう?」
「かわいいです」
「髪色にも合ってる」
フィナンシェさんがすぐに答えます。
「じゃあ候補に入れておくね」
三人であちこちを見て回り、休憩スペースへ入った頃には、予定していた時間をかなり過ぎていました。
「バーチャル世界も、服が多すぎる」
フィナンシェさんが椅子へ座りながら言います。
「まだ商業区の一部しか見ていませんよ」
「もっとあるの?」
「かなりあります」
「全部見たい」
「一日では無理です」
「じゃあ、また来ればいいよ」
シュトレンさんが言いました。
「次の予定、もう一つ増えたね」
「増えましたね」
フィナンシェさんが、私の姿を改めて見ます。
「そういえば、チョコちゃんが言ってたFoFの姿って、今とは違うんだよね?」
「はい。髪が水色です」
「見たい」
即答でした。
「ゲーム自体も気になる。さっきの測定で、チョコちゃんが動けた理由になってるんでしょ?」
「少しは関係していると思います」
シュトレンさんも興味を持ったようです。
「私も見てみたいな」
「でしたら、少しだけ接続してみますか?」
「今からできるの?」
「新規登録に少し時間はかかります」
「それでもやる」
フィナンシェさんの返事に迷いはありませんでした。
私たちは商業区の休憩スペースから、FoFの新規登録画面を開きました。
シュトレンさんは、自分のアバターをゆっくり考えたいということで、今日は私たちの共有画面を見ることになりました。
「適当に作ると、あとで絶対後悔しそうだから」
「その判断は正しいと思います」
「チョコちゃんは、最初は黒髪だったんだよね?」
「はい。あとから水色へ変えました」
「じゃあ、変えられるとしても、最初からちゃんと考える」
フィナンシェさんは、FoF用のアバター作成を始めました。
髪は、先ほどの普段用アバターと同じ金色のツインテールを再現します。
目の形。
服の色。
装飾品。
初期装備の組み合わせ。
クラスや能力を決める前に、見た目だけでかなり時間がかかりました。
「初期装備、もう少し色を変えられないの?」
「最初は選択肢が少ないです。あとで装備を集めれば増えます」
「じゃあ、早く集めたい」
「ゲームを始める理由が服なんですね」
「大事でしょ?」
「否定はしません。私も、髪色を変えてから楽しくなりましたから」
「じゃあ同じだね」
最終的に、フィナンシェさんは弓を扱う初期クラスを選びました。
「この装備が、一番今の姿に合ってたから」
「武器との相性ではないんですか?」
「使ってみて、合わなかったら変える」
「迷いませんね」
「チョコちゃんが迷いすぎなんだよ」
「私は慎重なんです」
「今日はちゃんと反論するね」
「友達になりましたから」
フィナンシェさんが、少し嬉しそうに笑いました。
登録が終わり、FoFへ接続します。
初心者用の村へ現れたフィナンシェさんの背中には、ここで初めて初期装備の弓が表示されました。
商業区で見ていた普段用アバターと似た金髪のツインテールですが、服装はFoFの初期装備に変わっています。
「これが弓かぁ」
フィナンシェさんは背中から弓を外し、何度か角度を変えて眺めました。
「使う前に見た目を確認するんですね」
「大事でしょ?」
「先ほども聞きました」
「答えも同じ」
通話越しに、シュトレンさんが笑っています。
私もFoFへ接続し、水色の髪のサムライ姿になりました。
「本当に水色なんだ」
フィナンシェさんが私を上から下まで見ます。
「学校にいる時と、かなり違うね」
「はい。こちらでは、この姿です」
「似合ってる。花は同じなんだね」
「これは、どちらでも使っています」
「やっぱり大切なんだ」
「はい」
私たちは、初心者用の小さな森へ向かいました。
依頼内容は、若葉スライムを三体倒し、近くに生えている染料用の草を集めることです。
大きな戦闘ではありません。
私がFoFを始めた頃にも、似たような依頼を受けました。
「来た」
フィナンシェさんが弓を構えます。
若葉スライムが跳ねました。
矢が放たれます。
矢はスライムの横を通り過ぎ、木へ刺さりました。
「動くんだけど」
「敵ですから」
「少しくらい止まってくれてもいいのに」
「では、お願いしてみますか?」
「それは負けた気がする」
「でしたら、着地する場所を狙ってください。跳んでいる途中より、次にどこへ落ちるかを見る方が簡単です」
「さっきの測定と同じ?」
「似ています」
二本目。
今度は、スライムが着地する場所へ先に矢を向けました。
命中。
小さなダメージ表示が浮かびます。
「当たった!」
「はい。今のはきれいでした」
「もう一回」
フィナンシェさんは、すぐに次の矢を構えます。
覚えるのが早いです。
二体目を倒した頃には、スライムの動きを見て、先回りして狙うようになっていました。
三体目が近づきすぎると、私は刀を抜きます。
「一閃!」
水色の髪が揺れ、刀がスライムを斬り抜きました。
戦闘終了。
フィナンシェさんが、私をじっと見ています。
「どうしましたか?」
「学校にいる時と、全然雰囲気が違うね」
「そうでしょうか」
「うん。刀を抜いた瞬間、顔が変わった」
「戦っている最中ですから」
「普段はあんなに丁寧なのに、戦うと迷わないんだね」
「迷っている時間が長いと、攻撃されますので」
「その切り替え、面白い」
フィナンシェさんは楽しそうに笑いました。
その後、染料用の草を集めます。
フィナンシェさんは、戦闘よりも素材の色へ興味を持っていました。
「これ、服に使える?」
「染色素材の一部になります」
「何色?」
「緑系です」
「もっと集めよう」
「依頼数は、もう足りています」
「自分の分」
「始めたばかりで、染色できる装備はありませんよ」
「先に集めておけば、あとで使えるでしょ?」
「では、私も手伝います」
「止めないんだ」
「目的があるなら、少し多めに集めるのも悪くありません」
「チョコちゃん、ゲームだと話が早いね」
「慣れている場所ですから」
結局、予定より少し多く集めました。
初心者の村へ戻る頃には、フィナンシェさんのレベルが一つ上がっています。
「ゲーム、悪くないかも」
「よかったです」
「次は、服が売ってる町へ行きたい」
「少し先です」
「じゃあ、そこまで進める」
目的がはっきりしています。
共有画面を見ていたシュトレンさんから、グループへメッセージが届きました。
<二人とも楽しそう!>
<私も明日、登録してみるね>
私はすぐに返事を送りました。
<次は三人で行きましょう>
フィナンシェさんも続けます。
<アバターを作る時は呼んで>
シュトレンさんから、
<二人ともお願いします!>
と返ってきました。
三人でFoFへ行く日も、すぐに来そうです。
三人で次はどこへ行く?
ログアウトすると、ミントちゃんが居間で待っていました。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいま戻りました」
「今日は一日、友達と遊んでたね」
「はい。とても楽しかったです」
私は、買ったカーディガンと、三人で撮った写真を見せました。
「これ、フィナンシェさんが選んでくれました」
「かわいい。お姉ちゃん、こういう色も似合うね」
「私も、今日知りました」
「こっちの写真、三人とも笑ってる」
「フィナンシェさんが、撮影の直前に余計なことを言うので」
「でも楽しそう」
「……はい」
否定する理由はありませんでした。
次に、だんのこまち商業区で撮った写真を開きます。
黒髪の私と、赤みを帯びた髪のシュトレンさん。
その隣には、金色のツインテールで黒と黄色の服を着たフィナンシェさんが立っています。
「学校の時と全然違う子だね」
ミントちゃんが言いました。
「フィナンシェさんは、バーチャル世界ではこの姿です」
「お姉ちゃんもFoFだと水色だし、二人とも思い切ってるね」
続いて、FoFの森で撮った写真を表示します。
水色の髪で刀を持つ私。
金色のツインテールにFoFの初期装備をまとい、弓を構えたフィナンシェさん。
「こっちでは弓なんだ」
「今日、弓を使うクラスを選びました」
「上手だった?」
「最初の一発は、木に当たりました」
「難しかった?」
「二発目からは、きちんと敵へ当てていました。覚えるのが早いです」
「すごいね」
「シュトレンさんも、次はFoFを始めるそうです」
「じゃあ、三人で遊べるね」
「はい」
DPo-Xが振動しました。
三人のグループに、新しいメッセージが届きます。
<次の日曜日は、三人でFoF>
フィナンシェさんからです。
続けて、シュトレンさんから、
<楽しみ!>
と返ってきました。
そして、グループ名が変更されます。
<週末どうする?>
から、
<三人で次はどこ行く?>
へ。
「もう、次の予定が始まっていますね」
「フィナンシェさん、早いね」
「とても早いです」
「嫌?」
「いいえ」
私はすぐに返事を送りました。
<よろしくお願いします。次は三人分の準備をしておきます>
「お姉ちゃんも、かなり乗り気じゃん」
「友達と遊ぶ予定ですから」
「友達」
ミントちゃんは、その言葉を嬉しそうに繰り返しました。
「よかったね、お姉ちゃん」
「はい」
私はミントちゃんの肩へ、少しだけ頭を寄せました。
「ミントちゃんは、今日は何をしていたんですか?」
「やっと聞いてくれた」
「帰ってきてから、私の話ばかりしてしまいました」
「お姉ちゃんが楽しそうだったから、先に聞きたかったの」
ミントちゃんは今日学校であったことを、私にも話してくれました。
授業中に友達が小さな失敗をしたこと。
帰りに寄った店で、新しいお菓子を見つけたこと。
今度、私とも一緒に行きたいこと。
私たちは、いつものように一日の出来事を交換しました。
入学した時。
私の隣にいたのは、シュトレンさんでした。
そこへ、フィナンシェさんが迷いなく椅子を持ってきました。
二人で歩いていた学校。
二人で食べていた昼食。
二人で考えていた週末。
その全部が、今日から三人になりました。
私は、誰かに見つけてもらうのを待っていただけではありません。
空いている席へ招き。
一緒に出かける予定を考え。
似合うものを選び。
次は三人で遊ぼうと、自分から言うことができました。
二人組から、三人のグループへ。
私の高校生活に、また一人。
新しいお友達が増えました。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいま戻りました」
「今日は一日、友達と遊んでたね」
「はい。とても楽しかったです」
私は、買ったカーディガンと、三人で撮った写真を見せました。
「これ、フィナンシェさんが選んでくれました」
「かわいい。お姉ちゃん、こういう色も似合うね」
「私も、今日知りました」
「こっちの写真、三人とも笑ってる」
「フィナンシェさんが、撮影の直前に余計なことを言うので」
「でも楽しそう」
「……はい」
否定する理由はありませんでした。
次に、だんのこまち商業区で撮った写真を開きます。
黒髪の私と、赤みを帯びた髪のシュトレンさん。
その隣には、金色のツインテールで黒と黄色の服を着たフィナンシェさんが立っています。
「学校の時と全然違う子だね」
ミントちゃんが言いました。
「フィナンシェさんは、バーチャル世界ではこの姿です」
「お姉ちゃんもFoFだと水色だし、二人とも思い切ってるね」
続いて、FoFの森で撮った写真を表示します。
水色の髪で刀を持つ私。
金色のツインテールにFoFの初期装備をまとい、弓を構えたフィナンシェさん。
「こっちでは弓なんだ」
「今日、弓を使うクラスを選びました」
「上手だった?」
「最初の一発は、木に当たりました」
「難しかった?」
「二発目からは、きちんと敵へ当てていました。覚えるのが早いです」
「すごいね」
「シュトレンさんも、次はFoFを始めるそうです」
「じゃあ、三人で遊べるね」
「はい」
DPo-Xが振動しました。
三人のグループに、新しいメッセージが届きます。
<次の日曜日は、三人でFoF>
フィナンシェさんからです。
続けて、シュトレンさんから、
<楽しみ!>
と返ってきました。
そして、グループ名が変更されます。
<週末どうする?>
から、
<三人で次はどこ行く?>
へ。
「もう、次の予定が始まっていますね」
「フィナンシェさん、早いね」
「とても早いです」
「嫌?」
「いいえ」
私はすぐに返事を送りました。
<よろしくお願いします。次は三人分の準備をしておきます>
「お姉ちゃんも、かなり乗り気じゃん」
「友達と遊ぶ予定ですから」
「友達」
ミントちゃんは、その言葉を嬉しそうに繰り返しました。
「よかったね、お姉ちゃん」
「はい」
私はミントちゃんの肩へ、少しだけ頭を寄せました。
「ミントちゃんは、今日は何をしていたんですか?」
「やっと聞いてくれた」
「帰ってきてから、私の話ばかりしてしまいました」
「お姉ちゃんが楽しそうだったから、先に聞きたかったの」
ミントちゃんは今日学校であったことを、私にも話してくれました。
授業中に友達が小さな失敗をしたこと。
帰りに寄った店で、新しいお菓子を見つけたこと。
今度、私とも一緒に行きたいこと。
私たちは、いつものように一日の出来事を交換しました。
入学した時。
私の隣にいたのは、シュトレンさんでした。
そこへ、フィナンシェさんが迷いなく椅子を持ってきました。
二人で歩いていた学校。
二人で食べていた昼食。
二人で考えていた週末。
その全部が、今日から三人になりました。
私は、誰かに見つけてもらうのを待っていただけではありません。
空いている席へ招き。
一緒に出かける予定を考え。
似合うものを選び。
次は三人で遊ぼうと、自分から言うことができました。
二人組から、三人のグループへ。
私の高校生活に、また一人。
新しいお友達が増えました。