だんのこまち@wiki
体育祭メインイベント模擬戦(デュエル)大会
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第一部 本戦開幕
八人の本戦出場者
白い光が薄れていくと、目の前に円形の決闘場が広がりました。
模擬戦授業で使ったフィールドよりも大きく、その外側には本戦用の観客席があります。
ただし、そこに座っているのはバーチャル上の観客アバターではありません。
現実の校庭から送られてくる歓声や拍手を、会場の音響として再現するための空間です。
私たちが立っている決闘場と、学校用アバターの姿は、現実側の校庭に設置されたバーチャルポッドによって立体映像として投影されています。
こちらの空間は、普段のデュエル授業と変わりません。
違うのは。
今、この姿を学校中の人が見ていることです。
<接続完了>
<チョコチップ/一年二組>
<登録武器:中型木刀>
<威力:30>
手元へ木刀が現れました。
模擬戦授業から使い続けている、大きすぎず軽すぎない武器です。
片手でも扱えますが、しっかり受ける時には両手へ持ち替えられます。
重心も。
長さも。
今では、かなり手に馴染んでいました。
正面に、本戦出場者用の待機ロビーへ続く扉が現れます。
中へ入ると、すでに何人かの生徒が集まっていました。
大型木刀を選んだリッキーさん。
中型トイガンを腰へ下げたフロランタンさん。
コンパクトなトイガンを確認している二年一組のヴァルタードラジェさん。
そして。
壁際で静かに木刀を持っている、つきみさん。
私が入ったことに気づくと、つきみさんは小さく手を上げました。
「来たね、チョコさん」
「はい。つきみさんも、準備はできましたか?」
「一応」
答えは普段どおり淡々としています。
ですが、木刀を持つ姿勢には迷いがありませんでした。
少し遅れて、別の入口から先輩が入ってきます。
腰の横には、短い木刀。
<登録武器:軽量木刀>
<威力:20>
私の武器より一撃の威力は低い代わりに、振り終わったあとすぐに次の攻撃へ移れる武器です。
先輩らしい選択でした。
「チョコ」
「先輩」
目が合うと、互いに自然と近づきました。
「ちゃんと来たね」
「接続確認も終わっています」
「緊張してる?」
「少しだけです」
「僕も」
先輩は小さく笑いました。
その時、ロビー中央へ大会運営の表示が開きます。
<本戦出場者 八名>
<シングルエリミネーション方式>
<各試合開始時、ライフゲージは200へ再設定されます>
<武器同士の接触は防御判定>
<身体への有効打のみ、武器の設定値に応じてライフを減算します>
続いて、八人の名前がトーナメント表へ並びました。
第一試合。
<チョコチップ 対 リッキー>
第二試合。
<つきみ 対 ノアフロランタン>
第三試合。
<みたらしっぽ 対 ヴァルタードラジェ>
第四試合。
<ヴィクトルロシェ 対 オデットパヴロヴァ>
ヴィクトルロシェさんは三年二組。
昨年度のデュエル大会優勝者です。
大型トイガンによる射程管理を得意とし、今年も優勝候補の筆頭と見られていました。
オデットパヴロヴァさんは三年一組。
軽量木刀を扱う、素早い接近戦を得意とする方です。
二人とも、校内ではよく知られた選手でした。
現実側の校庭にも、同じトーナメント表が投影されます。
その瞬間。
観客席のあちこちから声が上がりました。
「チョコチップさん、一年生なのに本戦なんだ」
「模擬戦で一位だった子でしょ?」
「決勝の映像、すごかったよ」
私の名前については、模擬戦授業の記録が共有されていたため、知っている人も多いようです。
ですが。
それ以上に、別の名前へ反応する声が目立っていました。
「え、つきみさんも出るの?」
「二年二組の?」
「こういう大会に参加する人だったんだ」
「普段、体育祭でも前に出る感じじゃないよね」
「あの子、デュエルAグループだったの?」
「授業でも、あまり目立ってなかった気がするけど……」
二年二組の応援席でも、近くにいたクラスメイトが驚いたように話していました。
「つきみって、本当に出るんだ」
「推薦が来ても断ると思ってた」
「ほかの競技も、ほとんど希望してなかったよね?」
シロさんが、その声を聞いて振り返ります。
「みんな、つきみが強いの知らなかったの?」
「シロたちは知ってるだろうけどさ」
「学校だと、つきみさんって静かじゃん」
キャラメルさんが、少し笑いました。
「つきみちゃん、自分から話さないからね」
コレットさんは、トーナメント表を見たまま言います。
「参加しないことと、できないことは別だけど」
「まさにそれだよ」
フェタさんも頷きました。
当のつきみさんは、現実側の反応を詳しく知ることもなく、静かにトーナメント表を見ています。
「同じ側ですね」
私が言いました。
一回戦を勝てば。
次は、つきみさんかフロランタンさんです。
「うん」
つきみさんも、表を見上げます。
「先に負けないでね、チョコさん」
「つきみさんも」
「そのつもり」
短い返事でした。
ですが、目はすでに試合へ向いています。
リッキーさんが、大型木刀を肩へ乗せながらこちらへ来ました。
「また当たったな、チョコチップさん」
「はい。よろしくお願いします」
「前は一回戦で負けたからな。今度は、あのまま振り切らないように練習してきた」
「私も、前と同じ動きだけでは勝てないと思っています」
「手加減なしな」
「もちろんです」
リッキーさんが拳を差し出しました。
私も軽く拳を合わせます。
<第一試合の出場者は、転送位置へ移動してください>
名前が表示されました。
「行ってきます」
先輩へ言うと、先輩はいつものように笑いました。
「うん。行ってらっしゃい、チョコ」
「私が戻るまで、考えすぎないでくださいね」
「まだ僕の試合じゃないよ」
「見ている間に、相手の動きを全部覚えようとするでしょう?」
「少しだけにしておく」
「少しなら大丈夫です」
私は木刀を握り直し、一回戦のフィールドへ向かいました。
模擬戦授業で使ったフィールドよりも大きく、その外側には本戦用の観客席があります。
ただし、そこに座っているのはバーチャル上の観客アバターではありません。
現実の校庭から送られてくる歓声や拍手を、会場の音響として再現するための空間です。
私たちが立っている決闘場と、学校用アバターの姿は、現実側の校庭に設置されたバーチャルポッドによって立体映像として投影されています。
こちらの空間は、普段のデュエル授業と変わりません。
違うのは。
今、この姿を学校中の人が見ていることです。
<接続完了>
<チョコチップ/一年二組>
<登録武器:中型木刀>
<威力:30>
手元へ木刀が現れました。
模擬戦授業から使い続けている、大きすぎず軽すぎない武器です。
片手でも扱えますが、しっかり受ける時には両手へ持ち替えられます。
重心も。
長さも。
今では、かなり手に馴染んでいました。
正面に、本戦出場者用の待機ロビーへ続く扉が現れます。
中へ入ると、すでに何人かの生徒が集まっていました。
大型木刀を選んだリッキーさん。
中型トイガンを腰へ下げたフロランタンさん。
コンパクトなトイガンを確認している二年一組のヴァルタードラジェさん。
そして。
壁際で静かに木刀を持っている、つきみさん。
私が入ったことに気づくと、つきみさんは小さく手を上げました。
「来たね、チョコさん」
「はい。つきみさんも、準備はできましたか?」
「一応」
答えは普段どおり淡々としています。
ですが、木刀を持つ姿勢には迷いがありませんでした。
少し遅れて、別の入口から先輩が入ってきます。
腰の横には、短い木刀。
<登録武器:軽量木刀>
<威力:20>
私の武器より一撃の威力は低い代わりに、振り終わったあとすぐに次の攻撃へ移れる武器です。
先輩らしい選択でした。
「チョコ」
「先輩」
目が合うと、互いに自然と近づきました。
「ちゃんと来たね」
「接続確認も終わっています」
「緊張してる?」
「少しだけです」
「僕も」
先輩は小さく笑いました。
その時、ロビー中央へ大会運営の表示が開きます。
<本戦出場者 八名>
<シングルエリミネーション方式>
<各試合開始時、ライフゲージは200へ再設定されます>
<武器同士の接触は防御判定>
<身体への有効打のみ、武器の設定値に応じてライフを減算します>
続いて、八人の名前がトーナメント表へ並びました。
第一試合。
<チョコチップ 対 リッキー>
第二試合。
<つきみ 対 ノアフロランタン>
第三試合。
<みたらしっぽ 対 ヴァルタードラジェ>
第四試合。
<ヴィクトルロシェ 対 オデットパヴロヴァ>
ヴィクトルロシェさんは三年二組。
昨年度のデュエル大会優勝者です。
大型トイガンによる射程管理を得意とし、今年も優勝候補の筆頭と見られていました。
オデットパヴロヴァさんは三年一組。
軽量木刀を扱う、素早い接近戦を得意とする方です。
二人とも、校内ではよく知られた選手でした。
現実側の校庭にも、同じトーナメント表が投影されます。
その瞬間。
観客席のあちこちから声が上がりました。
「チョコチップさん、一年生なのに本戦なんだ」
「模擬戦で一位だった子でしょ?」
「決勝の映像、すごかったよ」
私の名前については、模擬戦授業の記録が共有されていたため、知っている人も多いようです。
ですが。
それ以上に、別の名前へ反応する声が目立っていました。
「え、つきみさんも出るの?」
「二年二組の?」
「こういう大会に参加する人だったんだ」
「普段、体育祭でも前に出る感じじゃないよね」
「あの子、デュエルAグループだったの?」
「授業でも、あまり目立ってなかった気がするけど……」
二年二組の応援席でも、近くにいたクラスメイトが驚いたように話していました。
「つきみって、本当に出るんだ」
「推薦が来ても断ると思ってた」
「ほかの競技も、ほとんど希望してなかったよね?」
シロさんが、その声を聞いて振り返ります。
「みんな、つきみが強いの知らなかったの?」
「シロたちは知ってるだろうけどさ」
「学校だと、つきみさんって静かじゃん」
キャラメルさんが、少し笑いました。
「つきみちゃん、自分から話さないからね」
コレットさんは、トーナメント表を見たまま言います。
「参加しないことと、できないことは別だけど」
「まさにそれだよ」
フェタさんも頷きました。
当のつきみさんは、現実側の反応を詳しく知ることもなく、静かにトーナメント表を見ています。
「同じ側ですね」
私が言いました。
一回戦を勝てば。
次は、つきみさんかフロランタンさんです。
「うん」
つきみさんも、表を見上げます。
「先に負けないでね、チョコさん」
「つきみさんも」
「そのつもり」
短い返事でした。
ですが、目はすでに試合へ向いています。
リッキーさんが、大型木刀を肩へ乗せながらこちらへ来ました。
「また当たったな、チョコチップさん」
「はい。よろしくお願いします」
「前は一回戦で負けたからな。今度は、あのまま振り切らないように練習してきた」
「私も、前と同じ動きだけでは勝てないと思っています」
「手加減なしな」
「もちろんです」
リッキーさんが拳を差し出しました。
私も軽く拳を合わせます。
<第一試合の出場者は、転送位置へ移動してください>
名前が表示されました。
「行ってきます」
先輩へ言うと、先輩はいつものように笑いました。
「うん。行ってらっしゃい、チョコ」
「私が戻るまで、考えすぎないでくださいね」
「まだ僕の試合じゃないよ」
「見ている間に、相手の動きを全部覚えようとするでしょう?」
「少しだけにしておく」
「少しなら大丈夫です」
私は木刀を握り直し、一回戦のフィールドへ向かいました。
リッキーとの再戦
転送が終わると、円形のフィールド中央へ出ました。
向かい側にはリッキーさん。
頭上へ、二本のライフゲージが表示されます。
<チョコチップ 200>
<リッキー 200>
現実側から、大きな拍手が届きました。
一年二組の応援席からは、
「チョコちゃん、頑張って!」
というレンちゃんたちの声。
来場者席からは、
「お姉ちゃーん!」
というミントちゃんの声も聞こえます。
遠くても、すぐにわかりました。
「前と同じ武器だな」
リッキーさんが言います。
「はい。リッキーさんも」
「でも、使い方は変えたぞ」
大型木刀の威力は四十。
五回受ければ、私のライフはゼロです。
前回の模擬戦では、大きく振ったあとの隙を狙い、連続で攻撃を入れました。
リッキーさんも、そこを直してきたのでしょう。
「楽しみにしています」
「余裕そうに言うなぁ」
「緊張していますよ」
「全然見えない」
「木刀を持つと、少し落ち着くんです」
カウントが始まりました。
三。
二。
一。
<DUEL START>
前回と同じように。
リッキーさんが、一気に距離を詰めてくる。
そう思っていました。
ですが、動きません。
大型木刀を両手で構え、私が間合いへ入るのを待っています。
私も、すぐには踏み込みませんでした。
一歩。
リッキーさんの肩が動きます。
もう半歩。
大型木刀が横から迫りました。
速い。
ですが、最後まで振り切りません。
私が後ろへ避けた瞬間、木刀を途中で止めました。
そのまま短く引き戻し、今度は先端を使った突き。
避けきれません。
脇腹へ判定光が弾けました。
<HIT -40>
<チョコチップ 160>
「一本!」
「前と違いますね」
「言っただろ?」
大きな武器を、短く扱っています。
一撃の威力はそのまま。
以前ほど、振り終わりの隙もありません。
正面から押し合えば、こちらが負けます。
大きな隙を待っていても、簡単には見せてもらえません。
リッキーさんが、もう一度前へ出ました。
右上からの斜め振り。
私は木刀を合わせます。
武器同士がぶつかり、防御判定。
強い圧力が腕へ伝わりました。
押し返そうとはせず、片足を後ろへ引きます。
リッキーさんが、さらに押し込んできました。
その瞬間。
私は木刀を少しだけ下げました。
支えを失った大型木刀が前へ流れます。
前回なら、そこが反撃の機会でした。
ですが。
リッキーさんは右足を強く踏み込み、途中で姿勢を戻します。
「同じのは受けない!」
「はい」
私の狙いも読まれていました。
一度、距離を取ります。
焦らず。
新しい動きを見ます。
リッキーさんは木刀を途中で止める時、右腕へ強く力を入れています。
振り切らない代わりに。
引き戻す方向が、いつもわずかに右側へ偏っていました。
私は正面へ踏み込みます。
大型木刀が横から来ました。
ぎりぎりまで待つ。
左へ避ける。
リッキーさんの木刀が途中で止まります。
右側へ引き戻そうとした瞬間。
私は、その内側へ入りました。
肩へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 170>
すぐに離れます。
「そこか!」
「止める動きは速くなっています。でも、戻す方向は同じでした」
「試合中に説明されると、すげえ悔しい!」
「すみません」
「謝るなって!」
現実側の一年生たちから、笑い声が起こりました。
「リッキー、また解説されてる!」
「リクヤ、頑張れ!」
「チョコチップさん、落ち着きすぎだろ!」
リッキーさんは観客の声にも笑いながら、大型木刀を構え直しました。
その後の試合は、前回よりも長く続きました。
途中で止める攻撃。
本当に振り切る攻撃。
短い突き。
わざと大きく動かし、私を近づけないための牽制。
判断を誤り、もう一撃を受けます。
<チョコチップ 120>
ですが。
大型木刀を何度も途中で止めるほど、リッキーさんの足元へ少しずつ疲れが見え始めました。
大きな武器を急停止させるには、振り切る時以上に力が必要です。
私は間合いの端へ入り。
すぐに離れ。
また近づきます。
振らせる。
戻させる。
もう一度。
三回目。
リッキーさんが、本当に木刀を振り切りました。
私は軌道から外れ、その横へ踏み込みます。
胴へ一撃。
<リッキー 140>
肩。
<リッキー 110>
反撃の木刀を受け流し、背中側へ回ります。
<リッキー 80>
「また連続か!」
「今回は、振り切るまで待ちました」
「わかってる!」
リッキーさんは、それでも止まりません。
大型木刀を構え直し、最後まで前へ出てきました。
私の木刀を押し切ろうとする一撃。
後ろへは下がりません。
大型木刀の先端ではなく、根元に近い位置へ自分の木刀を合わせました。
力が乗り切る前に、軌道を横へ外す。
そのまま胸元へ。
<リッキー 50>
木刀が戻る前に手首へ。
<リッキー 20>
最後。
大型木刀の外側へ抜け、肩へ木刀の先を触れさせます。
<HIT -30>
<リッキー 0>
<WINNER チョコチップ>
大きな歓声が広がりました。
木刀の安全停止が解除されます。
私はゆっくり息を吐きました。
リッキーさんは大型木刀を消し、悔しそうにしながらも笑っています。
「また負けた」
「前回より、ずっと近づくのが難しかったです」
「本当に?」
「はい。最初の二回は、完全に読まれました」
「じゃあ、少しは追いついたな」
「私も、次までにまた練習します」
「次も勝つ気かよ」
「もちろんです」
リッキーさんは声を上げて笑いました。
「やっぱり強気だなぁ!」
差し出された手を握ります。
「次こそ勝つからな」
「はい。楽しみにしています」
現実側からも、二人へ大きな拍手が送られました。
「リッキー、前より全然強かったじゃん!」
「チョコチップさんも、途中からちゃんと合わせてきたな」
「一年の模擬戦、思ったよりレベル高いぞ」
二人で一礼し、フィールドを出ました。
向かい側にはリッキーさん。
頭上へ、二本のライフゲージが表示されます。
<チョコチップ 200>
<リッキー 200>
現実側から、大きな拍手が届きました。
一年二組の応援席からは、
「チョコちゃん、頑張って!」
というレンちゃんたちの声。
来場者席からは、
「お姉ちゃーん!」
というミントちゃんの声も聞こえます。
遠くても、すぐにわかりました。
「前と同じ武器だな」
リッキーさんが言います。
「はい。リッキーさんも」
「でも、使い方は変えたぞ」
大型木刀の威力は四十。
五回受ければ、私のライフはゼロです。
前回の模擬戦では、大きく振ったあとの隙を狙い、連続で攻撃を入れました。
リッキーさんも、そこを直してきたのでしょう。
「楽しみにしています」
「余裕そうに言うなぁ」
「緊張していますよ」
「全然見えない」
「木刀を持つと、少し落ち着くんです」
カウントが始まりました。
三。
二。
一。
<DUEL START>
前回と同じように。
リッキーさんが、一気に距離を詰めてくる。
そう思っていました。
ですが、動きません。
大型木刀を両手で構え、私が間合いへ入るのを待っています。
私も、すぐには踏み込みませんでした。
一歩。
リッキーさんの肩が動きます。
もう半歩。
大型木刀が横から迫りました。
速い。
ですが、最後まで振り切りません。
私が後ろへ避けた瞬間、木刀を途中で止めました。
そのまま短く引き戻し、今度は先端を使った突き。
避けきれません。
脇腹へ判定光が弾けました。
<HIT -40>
<チョコチップ 160>
「一本!」
「前と違いますね」
「言っただろ?」
大きな武器を、短く扱っています。
一撃の威力はそのまま。
以前ほど、振り終わりの隙もありません。
正面から押し合えば、こちらが負けます。
大きな隙を待っていても、簡単には見せてもらえません。
リッキーさんが、もう一度前へ出ました。
右上からの斜め振り。
私は木刀を合わせます。
武器同士がぶつかり、防御判定。
強い圧力が腕へ伝わりました。
押し返そうとはせず、片足を後ろへ引きます。
リッキーさんが、さらに押し込んできました。
その瞬間。
私は木刀を少しだけ下げました。
支えを失った大型木刀が前へ流れます。
前回なら、そこが反撃の機会でした。
ですが。
リッキーさんは右足を強く踏み込み、途中で姿勢を戻します。
「同じのは受けない!」
「はい」
私の狙いも読まれていました。
一度、距離を取ります。
焦らず。
新しい動きを見ます。
リッキーさんは木刀を途中で止める時、右腕へ強く力を入れています。
振り切らない代わりに。
引き戻す方向が、いつもわずかに右側へ偏っていました。
私は正面へ踏み込みます。
大型木刀が横から来ました。
ぎりぎりまで待つ。
左へ避ける。
リッキーさんの木刀が途中で止まります。
右側へ引き戻そうとした瞬間。
私は、その内側へ入りました。
肩へ一撃。
<HIT -30>
<リッキー 170>
すぐに離れます。
「そこか!」
「止める動きは速くなっています。でも、戻す方向は同じでした」
「試合中に説明されると、すげえ悔しい!」
「すみません」
「謝るなって!」
現実側の一年生たちから、笑い声が起こりました。
「リッキー、また解説されてる!」
「リクヤ、頑張れ!」
「チョコチップさん、落ち着きすぎだろ!」
リッキーさんは観客の声にも笑いながら、大型木刀を構え直しました。
その後の試合は、前回よりも長く続きました。
途中で止める攻撃。
本当に振り切る攻撃。
短い突き。
わざと大きく動かし、私を近づけないための牽制。
判断を誤り、もう一撃を受けます。
<チョコチップ 120>
ですが。
大型木刀を何度も途中で止めるほど、リッキーさんの足元へ少しずつ疲れが見え始めました。
大きな武器を急停止させるには、振り切る時以上に力が必要です。
私は間合いの端へ入り。
すぐに離れ。
また近づきます。
振らせる。
戻させる。
もう一度。
三回目。
リッキーさんが、本当に木刀を振り切りました。
私は軌道から外れ、その横へ踏み込みます。
胴へ一撃。
<リッキー 140>
肩。
<リッキー 110>
反撃の木刀を受け流し、背中側へ回ります。
<リッキー 80>
「また連続か!」
「今回は、振り切るまで待ちました」
「わかってる!」
リッキーさんは、それでも止まりません。
大型木刀を構え直し、最後まで前へ出てきました。
私の木刀を押し切ろうとする一撃。
後ろへは下がりません。
大型木刀の先端ではなく、根元に近い位置へ自分の木刀を合わせました。
力が乗り切る前に、軌道を横へ外す。
そのまま胸元へ。
<リッキー 50>
木刀が戻る前に手首へ。
<リッキー 20>
最後。
大型木刀の外側へ抜け、肩へ木刀の先を触れさせます。
<HIT -30>
<リッキー 0>
<WINNER チョコチップ>
大きな歓声が広がりました。
木刀の安全停止が解除されます。
私はゆっくり息を吐きました。
リッキーさんは大型木刀を消し、悔しそうにしながらも笑っています。
「また負けた」
「前回より、ずっと近づくのが難しかったです」
「本当に?」
「はい。最初の二回は、完全に読まれました」
「じゃあ、少しは追いついたな」
「私も、次までにまた練習します」
「次も勝つ気かよ」
「もちろんです」
リッキーさんは声を上げて笑いました。
「やっぱり強気だなぁ!」
差し出された手を握ります。
「次こそ勝つからな」
「はい。楽しみにしています」
現実側からも、二人へ大きな拍手が送られました。
「リッキー、前より全然強かったじゃん!」
「チョコチップさんも、途中からちゃんと合わせてきたな」
「一年の模擬戦、思ったよりレベル高いぞ」
二人で一礼し、フィールドを出ました。
意外な出場者
第一試合が終わると、つきみさんとフロランタンさんの名前が表示されました。
現実側の校庭では、再びざわめきが起こります。
「つきみさん、本当に出るんだ」
「まだ信じてなかったの?」
「だって、去年の体育祭でも応援席にずっといた子でしょ?」
「競技希望も、ほとんど出してなかったよね」
「先生から推薦されたらしいよ」
「でも、断らなかったんだ」
二年二組のクラスメイトも、決闘場を見上げていました。
「つきみ、授業でそんなに強かったの?」
「Aグループなのは知ってたけど、本戦まで来るとは思わなかった」
「武器持ってるところ、初めて見るかも」
シロさんが、少し不思議そうに周囲を見ます。
「つきみ、FoFだと前でずっと戦ってるよ」
「それ、ゲームの話だろ?」
「でも動かすのはつきみだよ」
キャラメルさんが、穏やかに続けました。
「つきみちゃんは、やらないことをわざわざできるって言わないからね」
「学校では目立つ必要もないと思ってるんでしょう」
コレットさんも、試合開始を待ちながら言います。
「今日、見ればわかるよ」
決闘場へ、つきみさんとフロランタンさんが転送されました。
<つきみ 200>
<中型木刀/威力30>
<ノアフロランタン 200>
<中型トイガン/威力20>
フロランタンさんは、つきみさんへ一礼しました。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
カウント。
三。
二。
一。
<DUEL START>
フロランタンさんは、最初から距離を取りました。
トイガンの銃口をつきみさんへ向け、横へ動きながら撃ちます。
一発目。
つきみさんは避けました。
二発目。
肩へ命中。
<つきみ 180>
三発目。
<つきみ 160>
観客席から声が上がります。
「つきみさん、全然近づけてないじゃん」
「やっぱり射撃相手は厳しいか」
「というか、あまり動いてなくない?」
つきみさんは、銃弾から逃げ回っているわけではありません。
フロランタンさんを追いかけてもいません。
決闘場の中央付近を保ち。
相手が動く方向へ、同じ分だけ位置を変えています。
「何してるんだ?」
「中心から動いてないだけに見える」
その時。
別の生徒が気づいたように言いました。
「いや、フロランタン先輩の逃げる場所、少しずつ減ってない?」
フロランタンさんが右へ動けば。
つきみさんも右へ。
左へ動けば。
同じだけ左へ。
直接追わず。
相手が使える広さだけを狭めています。
四発目。
フロランタンさんが撃つ瞬間。
移動が、ほんのわずかに止まりました。
つきみさんが、一気に正面へ踏み込みます。
判定光が肩の横を通り過ぎました。
二歩。
木刀の間合いへ入ります。
肩へ一撃。
<フロランタン 170>
すぐにフロランタンさんが離れます。
ですが。
つきみさんは追いません。
再び中央へ戻ります。
「また真ん中へ戻った」
「追わないのか?」
「違う。追わなくても、向こうから端へ行くんだ」
フロランタンさんが左右へ移動するたび。
逃げられる方向が絞られていきます。
撃つ。
避ける。
もう一発。
つきみさんのライフが削られます。
<つきみ 140>
それでも、位置は崩しません。
フロランタンさんが境界線へ近づきました。
右へ逃げる。
その場所には、すでにつきみさんがいます。
木刀。
<フロランタン 140>
続けて、胴。
<フロランタン 110>
フロランタンさんがトイガンを構え直す前に、距離を取ります。
「つきみさんって、あんな戦い方するんだ」
「速くないのに、ずっと先にいる」
「相手を追ってないのに、逃げ道がなくなってる……」
先ほどまで意外がっていた生徒たちの声が、少しずつ変わっていきました。
「これ、普通に強くない?」
「Aグループなの、納得した」
「目立たなかったんじゃなくて、目立つことをしてなかっただけか」
試合は、互いにライフを削りながら進みます。
<つきみ 100>
<フロランタン 80>
フロランタンさんは境界線の近くで、あえて動きを止めました。
つきみさんが踏み込めば、近距離から射撃を当てられる位置です。
ですが。
つきみさんも止まります。
銃口だけを見ず。
腕。
足。
視線。
フロランタンさんの銃口が、わずかに下がった瞬間。
先に射撃が放たれます。
つきみさんは横へ避けました。
判定光が外れる。
二歩で間合いへ入り。
胴へ一撃。
<フロランタン 50>
トイガンを構え直す腕の内側へ、木刀を滑り込ませます。
<フロランタン 20>
最後。
肩へ。
<HIT -30>
<フロランタン 0>
<WINNER つきみ>
一瞬の静けさ。
続いて、大きな拍手と歓声が起こりました。
「つきみさん、勝った!」
「いや、強っ!」
「本当に一回も慌てなかったな」
「普段の体育でも、あれくらいやってたの?」
「たぶん、必要がなかっただけなんじゃない?」
二年二組の応援席では、普段あまり話したことのないクラスメイトまで声を上げていました。
「つきみ、すごい!」
「そんなに強いなら、もっと早く言ってよ!」
「聞かれてないから言わなかっただけだと思う」
フェタさんが笑います。
シロさんは、両手を上げました。
「だから強いって言っただろー!」
キャラメルさんも拍手を送り。
コレットさんは、つきみさんの位置取りを何度も再生していました。
フィールドでは、フロランタンさんがトイガンを消し、一礼します。
「完敗です」
「途中までは、かなり削られたよ」
「でも最後には、動ける場所がなくなっていました」
「追いかけると、ずっとフロランタンさんの速さで動くことになるから」
「勉強になりました」
二人は軽く手を合わせ、フィールドを出ました。
トーナメント表が更新されます。
<準決勝第一試合>
<チョコチップ 対 つきみ>
本当に。
次の相手は、つきみさんです。
現実側の校庭では、再びざわめきが起こります。
「つきみさん、本当に出るんだ」
「まだ信じてなかったの?」
「だって、去年の体育祭でも応援席にずっといた子でしょ?」
「競技希望も、ほとんど出してなかったよね」
「先生から推薦されたらしいよ」
「でも、断らなかったんだ」
二年二組のクラスメイトも、決闘場を見上げていました。
「つきみ、授業でそんなに強かったの?」
「Aグループなのは知ってたけど、本戦まで来るとは思わなかった」
「武器持ってるところ、初めて見るかも」
シロさんが、少し不思議そうに周囲を見ます。
「つきみ、FoFだと前でずっと戦ってるよ」
「それ、ゲームの話だろ?」
「でも動かすのはつきみだよ」
キャラメルさんが、穏やかに続けました。
「つきみちゃんは、やらないことをわざわざできるって言わないからね」
「学校では目立つ必要もないと思ってるんでしょう」
コレットさんも、試合開始を待ちながら言います。
「今日、見ればわかるよ」
決闘場へ、つきみさんとフロランタンさんが転送されました。
<つきみ 200>
<中型木刀/威力30>
<ノアフロランタン 200>
<中型トイガン/威力20>
フロランタンさんは、つきみさんへ一礼しました。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
カウント。
三。
二。
一。
<DUEL START>
フロランタンさんは、最初から距離を取りました。
トイガンの銃口をつきみさんへ向け、横へ動きながら撃ちます。
一発目。
つきみさんは避けました。
二発目。
肩へ命中。
<つきみ 180>
三発目。
<つきみ 160>
観客席から声が上がります。
「つきみさん、全然近づけてないじゃん」
「やっぱり射撃相手は厳しいか」
「というか、あまり動いてなくない?」
つきみさんは、銃弾から逃げ回っているわけではありません。
フロランタンさんを追いかけてもいません。
決闘場の中央付近を保ち。
相手が動く方向へ、同じ分だけ位置を変えています。
「何してるんだ?」
「中心から動いてないだけに見える」
その時。
別の生徒が気づいたように言いました。
「いや、フロランタン先輩の逃げる場所、少しずつ減ってない?」
フロランタンさんが右へ動けば。
つきみさんも右へ。
左へ動けば。
同じだけ左へ。
直接追わず。
相手が使える広さだけを狭めています。
四発目。
フロランタンさんが撃つ瞬間。
移動が、ほんのわずかに止まりました。
つきみさんが、一気に正面へ踏み込みます。
判定光が肩の横を通り過ぎました。
二歩。
木刀の間合いへ入ります。
肩へ一撃。
<フロランタン 170>
すぐにフロランタンさんが離れます。
ですが。
つきみさんは追いません。
再び中央へ戻ります。
「また真ん中へ戻った」
「追わないのか?」
「違う。追わなくても、向こうから端へ行くんだ」
フロランタンさんが左右へ移動するたび。
逃げられる方向が絞られていきます。
撃つ。
避ける。
もう一発。
つきみさんのライフが削られます。
<つきみ 140>
それでも、位置は崩しません。
フロランタンさんが境界線へ近づきました。
右へ逃げる。
その場所には、すでにつきみさんがいます。
木刀。
<フロランタン 140>
続けて、胴。
<フロランタン 110>
フロランタンさんがトイガンを構え直す前に、距離を取ります。
「つきみさんって、あんな戦い方するんだ」
「速くないのに、ずっと先にいる」
「相手を追ってないのに、逃げ道がなくなってる……」
先ほどまで意外がっていた生徒たちの声が、少しずつ変わっていきました。
「これ、普通に強くない?」
「Aグループなの、納得した」
「目立たなかったんじゃなくて、目立つことをしてなかっただけか」
試合は、互いにライフを削りながら進みます。
<つきみ 100>
<フロランタン 80>
フロランタンさんは境界線の近くで、あえて動きを止めました。
つきみさんが踏み込めば、近距離から射撃を当てられる位置です。
ですが。
つきみさんも止まります。
銃口だけを見ず。
腕。
足。
視線。
フロランタンさんの銃口が、わずかに下がった瞬間。
先に射撃が放たれます。
つきみさんは横へ避けました。
判定光が外れる。
二歩で間合いへ入り。
胴へ一撃。
<フロランタン 50>
トイガンを構え直す腕の内側へ、木刀を滑り込ませます。
<フロランタン 20>
最後。
肩へ。
<HIT -30>
<フロランタン 0>
<WINNER つきみ>
一瞬の静けさ。
続いて、大きな拍手と歓声が起こりました。
「つきみさん、勝った!」
「いや、強っ!」
「本当に一回も慌てなかったな」
「普段の体育でも、あれくらいやってたの?」
「たぶん、必要がなかっただけなんじゃない?」
二年二組の応援席では、普段あまり話したことのないクラスメイトまで声を上げていました。
「つきみ、すごい!」
「そんなに強いなら、もっと早く言ってよ!」
「聞かれてないから言わなかっただけだと思う」
フェタさんが笑います。
シロさんは、両手を上げました。
「だから強いって言っただろー!」
キャラメルさんも拍手を送り。
コレットさんは、つきみさんの位置取りを何度も再生していました。
フィールドでは、フロランタンさんがトイガンを消し、一礼します。
「完敗です」
「途中までは、かなり削られたよ」
「でも最後には、動ける場所がなくなっていました」
「追いかけると、ずっとフロランタンさんの速さで動くことになるから」
「勉強になりました」
二人は軽く手を合わせ、フィールドを出ました。
トーナメント表が更新されます。
<準決勝第一試合>
<チョコチップ 対 つきみ>
本当に。
次の相手は、つきみさんです。
連射を止める人
第三試合。
先輩の対戦相手は、二年一組のヴァルタードラジェさんでした。
登録武器は、小型トイガン。
一発の威力は十。
その代わり、軽く。
構え直しも速く。
短い間隔で何度も判定光を撃てる武器です。
Aグループの授業では、相手を近づけない連射型として知られていました。
現実側の生徒たちからも声が上がります。
「ドラジェ、Aグループで一番弾数多い人だよ」
「相手、剣で近づけるのか?」
「みたらしっぽって、去年途中で攻めなくなった人だろ?」
「今年はAグループで勝ち上がったらしいよ」
「でも、射撃相手だぞ」
先輩は短い木刀を軽く握り、ドラジェさんと向かい合いました。
<みたらしっぽ 200>
<軽量木刀/威力20>
<ヴァルタードラジェ 200>
<小型トイガン/威力10>
開始。
判定光が連続で飛びます。
一発。
二発。
先輩は右へ避けました。
三発目。
肩へ命中。
<みたらしっぽ 190>
もう一発。
<みたらしっぽ 180>
一撃の威力は小さい。
ですが、動きを止めれば、すぐに次が来ます。
ドラジェさんは後ろへ下がりながら撃つだけではありません。
先輩が動く方向を見て。
一発目で避けさせ。
二発目を、その先へ置いています。
先輩は、すぐに距離を詰めようとはしませんでした。
右へ。
左へ。
一歩だけ前へ。
すぐに止まる。
一定の速度で走れば、その先を狙われます。
なら。
動く速さを一定にしない。
一歩目は速く。
二歩目は遅く。
止まり。
戻り。
また前へ。
ドラジェさんの判定光が、少しずつ外れ始めます。
「変な動きだな」
「撃つ方、狙いづらそう」
「走ってるというより、相手が撃つたびに速さを変えてる」
先輩が、間合いへ近づきました。
ドラジェさんが連射します。
一発目。
避ける。
二発目。
木刀を持つ腕へ命中。
<みたらしっぽ 150>
三発目。
先輩は避けません。
撃たれる前。
ドラジェさんの肩が上がった瞬間に前へ出ました。
銃口の横へ。
木刀。
<ドラジェ 180>
手首。
<ドラジェ 160>
肩。
<ドラジェ 140>
軽量木刀の戻りの速さを使い、一気に三回。
ドラジェさんはトイガンの本体で木刀を外し、距離を取ります。
「近づかれると速いな」
「ドラジェも離れるの速いぞ」
「まだ全然決まってない」
そこからは。
射撃による細かな減算と。
接近した先輩の連続攻撃が、何度も入れ替わりました。
<みたらしっぽ 120>
<ドラジェ 100>
<みたらしっぽ 90>
<ドラジェ 60>
ドラジェさんは、これまで一定だった連射の間隔を変えます。
三発続け。
一度だけ止める。
先輩が前へ出たところへ、遅らせた四発目。
<みたらしっぽ 80>
「今のは上手い」
先輩が言いました。
「褒めてる場合か?」
「ちゃんと引っかかったので」
ドラジェさんが、もう一度同じ間を作ります。
三発。
一度止まる。
ですが。
今度は先輩も前へ出ません。
四発目が、何もない場所を通り過ぎました。
そのあと。
トイガンを構え直す短い時間。
先輩が、一気に距離を詰めます。
木刀。
<ドラジェ 40>
もう一撃。
<ドラジェ 20>
ドラジェさんが離れようとします。
先輩は追いかけず。
逃げる方向へ、木刀の先を置きました。
肩が自分から判定範囲へ入ります。
<HIT -20>
<ドラジェ 0>
<WINNER みたらしっぽ>
二年二組から、大きな歓声が上がりました。
「みた、勝ったー!」
シロさんの声。
「最後、追ってなかったよな?」
一般生徒からも驚きの声が聞こえます。
「相手が戻る場所に先に置いてた」
「去年の人、こんなに動くんだ」
「というか、最後まで普通に攻めてたぞ」
ドラジェさんはトイガンを消し、先輩へ手を差し出しました。
「最後、完全に撃つ間を読まれた」
「一回目は引っかかりました」
「二回目には待たれたな」
「何度も使われたら、覚えます」
「次は間をもっと変える」
「楽しみにしています」
二人で握手を交わしました。
待機ロビーへ戻った先輩と目が合います。
私は嬉しくなり、小さく頷きました。
先輩も、片手を上げます。
約束した場所へ。
また一つ近づきました。
先輩の対戦相手は、二年一組のヴァルタードラジェさんでした。
登録武器は、小型トイガン。
一発の威力は十。
その代わり、軽く。
構え直しも速く。
短い間隔で何度も判定光を撃てる武器です。
Aグループの授業では、相手を近づけない連射型として知られていました。
現実側の生徒たちからも声が上がります。
「ドラジェ、Aグループで一番弾数多い人だよ」
「相手、剣で近づけるのか?」
「みたらしっぽって、去年途中で攻めなくなった人だろ?」
「今年はAグループで勝ち上がったらしいよ」
「でも、射撃相手だぞ」
先輩は短い木刀を軽く握り、ドラジェさんと向かい合いました。
<みたらしっぽ 200>
<軽量木刀/威力20>
<ヴァルタードラジェ 200>
<小型トイガン/威力10>
開始。
判定光が連続で飛びます。
一発。
二発。
先輩は右へ避けました。
三発目。
肩へ命中。
<みたらしっぽ 190>
もう一発。
<みたらしっぽ 180>
一撃の威力は小さい。
ですが、動きを止めれば、すぐに次が来ます。
ドラジェさんは後ろへ下がりながら撃つだけではありません。
先輩が動く方向を見て。
一発目で避けさせ。
二発目を、その先へ置いています。
先輩は、すぐに距離を詰めようとはしませんでした。
右へ。
左へ。
一歩だけ前へ。
すぐに止まる。
一定の速度で走れば、その先を狙われます。
なら。
動く速さを一定にしない。
一歩目は速く。
二歩目は遅く。
止まり。
戻り。
また前へ。
ドラジェさんの判定光が、少しずつ外れ始めます。
「変な動きだな」
「撃つ方、狙いづらそう」
「走ってるというより、相手が撃つたびに速さを変えてる」
先輩が、間合いへ近づきました。
ドラジェさんが連射します。
一発目。
避ける。
二発目。
木刀を持つ腕へ命中。
<みたらしっぽ 150>
三発目。
先輩は避けません。
撃たれる前。
ドラジェさんの肩が上がった瞬間に前へ出ました。
銃口の横へ。
木刀。
<ドラジェ 180>
手首。
<ドラジェ 160>
肩。
<ドラジェ 140>
軽量木刀の戻りの速さを使い、一気に三回。
ドラジェさんはトイガンの本体で木刀を外し、距離を取ります。
「近づかれると速いな」
「ドラジェも離れるの速いぞ」
「まだ全然決まってない」
そこからは。
射撃による細かな減算と。
接近した先輩の連続攻撃が、何度も入れ替わりました。
<みたらしっぽ 120>
<ドラジェ 100>
<みたらしっぽ 90>
<ドラジェ 60>
ドラジェさんは、これまで一定だった連射の間隔を変えます。
三発続け。
一度だけ止める。
先輩が前へ出たところへ、遅らせた四発目。
<みたらしっぽ 80>
「今のは上手い」
先輩が言いました。
「褒めてる場合か?」
「ちゃんと引っかかったので」
ドラジェさんが、もう一度同じ間を作ります。
三発。
一度止まる。
ですが。
今度は先輩も前へ出ません。
四発目が、何もない場所を通り過ぎました。
そのあと。
トイガンを構え直す短い時間。
先輩が、一気に距離を詰めます。
木刀。
<ドラジェ 40>
もう一撃。
<ドラジェ 20>
ドラジェさんが離れようとします。
先輩は追いかけず。
逃げる方向へ、木刀の先を置きました。
肩が自分から判定範囲へ入ります。
<HIT -20>
<ドラジェ 0>
<WINNER みたらしっぽ>
二年二組から、大きな歓声が上がりました。
「みた、勝ったー!」
シロさんの声。
「最後、追ってなかったよな?」
一般生徒からも驚きの声が聞こえます。
「相手が戻る場所に先に置いてた」
「去年の人、こんなに動くんだ」
「というか、最後まで普通に攻めてたぞ」
ドラジェさんはトイガンを消し、先輩へ手を差し出しました。
「最後、完全に撃つ間を読まれた」
「一回目は引っかかりました」
「二回目には待たれたな」
「何度も使われたら、覚えます」
「次は間をもっと変える」
「楽しみにしています」
二人で握手を交わしました。
待機ロビーへ戻った先輩と目が合います。
私は嬉しくなり、小さく頷きました。
先輩も、片手を上げます。
約束した場所へ。
また一つ近づきました。
三年生の壁
第四試合。
昨年度優勝者のヴィクトルロシェさんと、オデットパヴロヴァさんが決闘場へ現れました。
ロシェさんは大型トイガン。
威力四十。
パヴロヴァさんは軽量木刀。
威力二十。
開始直後から、パヴロヴァさんは迷わず前へ出ました。
大型トイガンは、一発の威力が高い代わりに。
撃ったあと、次の判定光を出すまで短い操作が必要です。
そこへ入るつもりなのでしょう。
一発目。
パヴロヴァさんは避けました。
二発目。
肩へ命中。
<オデットパヴロヴァ 160>
それでも速度を落としません。
三発目を避け。
木刀の間合いへ入ります。
一撃。
<ヴィクトルロシェ 180>
もう一撃。
<ヴィクトルロシェ 160>
観客席から声が上がります。
「パヴロヴァ先輩、入った!」
「このまま接近なら勝てるか?」
ですが。
ロシェさんは、トイガンを撃つだけの選手ではありませんでした。
大型の銃身を横へ振り。
パヴロヴァさんの木刀を外します。
武器同士の接触による防御判定。
そのまま身体を入れ替え、距離を作りました。
次の射撃。
<オデットパヴロヴァ 120>
もう一発。
<オデットパヴロヴァ 80>
パヴロヴァさんも最後まで近づこうとしました。
ですが、ロシェさんは同じ方向へ逃げ続けません。
中央を保ち。
相手が踏み込む距離を見て。
一発ごとに進路を変えさせています。
最後。
正面へ入ろうとしたパヴロヴァさんへ、四発目。
<オデットパヴロヴァ 40>
それでも止まりません。
木刀を振り。
ロシェさんの肩へ当てます。
<ヴィクトルロシェ 140>
ですが。
その直後。
近距離から銃口が胸元へ向けられました。
<HIT -40>
<オデットパヴロヴァ 0>
<WINNER ヴィクトルロシェ>
昨年度優勝者の勝利です。
「やっぱりロシェ先輩か」
「今年も優勝するんじゃない?」
「近づかれても、銃身で守れるのが強いんだよな」
「次の相手、みたらしっぽだろ?」
「さすがに厳しくないか?」
観客席の多くが、ロシェさんの決勝進出を予想しているようでした。
トーナメント表が更新されます。
<準決勝第一試合>
<チョコチップ 対 つきみ>
<準決勝第二試合>
<みたらしっぽ 対 ヴィクトルロシェ>
先輩も。
つきみさんも。
私も。
準決勝まで残っています。
ですが。
ここからは。
三人全員が勝つことはできません。
昨年度優勝者のヴィクトルロシェさんと、オデットパヴロヴァさんが決闘場へ現れました。
ロシェさんは大型トイガン。
威力四十。
パヴロヴァさんは軽量木刀。
威力二十。
開始直後から、パヴロヴァさんは迷わず前へ出ました。
大型トイガンは、一発の威力が高い代わりに。
撃ったあと、次の判定光を出すまで短い操作が必要です。
そこへ入るつもりなのでしょう。
一発目。
パヴロヴァさんは避けました。
二発目。
肩へ命中。
<オデットパヴロヴァ 160>
それでも速度を落としません。
三発目を避け。
木刀の間合いへ入ります。
一撃。
<ヴィクトルロシェ 180>
もう一撃。
<ヴィクトルロシェ 160>
観客席から声が上がります。
「パヴロヴァ先輩、入った!」
「このまま接近なら勝てるか?」
ですが。
ロシェさんは、トイガンを撃つだけの選手ではありませんでした。
大型の銃身を横へ振り。
パヴロヴァさんの木刀を外します。
武器同士の接触による防御判定。
そのまま身体を入れ替え、距離を作りました。
次の射撃。
<オデットパヴロヴァ 120>
もう一発。
<オデットパヴロヴァ 80>
パヴロヴァさんも最後まで近づこうとしました。
ですが、ロシェさんは同じ方向へ逃げ続けません。
中央を保ち。
相手が踏み込む距離を見て。
一発ごとに進路を変えさせています。
最後。
正面へ入ろうとしたパヴロヴァさんへ、四発目。
<オデットパヴロヴァ 40>
それでも止まりません。
木刀を振り。
ロシェさんの肩へ当てます。
<ヴィクトルロシェ 140>
ですが。
その直後。
近距離から銃口が胸元へ向けられました。
<HIT -40>
<オデットパヴロヴァ 0>
<WINNER ヴィクトルロシェ>
昨年度優勝者の勝利です。
「やっぱりロシェ先輩か」
「今年も優勝するんじゃない?」
「近づかれても、銃身で守れるのが強いんだよな」
「次の相手、みたらしっぽだろ?」
「さすがに厳しくないか?」
観客席の多くが、ロシェさんの決勝進出を予想しているようでした。
トーナメント表が更新されます。
<準決勝第一試合>
<チョコチップ 対 つきみ>
<準決勝第二試合>
<みたらしっぽ 対 ヴィクトルロシェ>
先輩も。
つきみさんも。
私も。
準決勝まで残っています。
ですが。
ここからは。
三人全員が勝つことはできません。