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4-1.5「承フェイズ:中央広場」

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前編:

「そもそも聖アンティヌ祭とは・・・」

 聖都ロンバルディアの中でも、有数の景観を誇る中央広場は、数多くの出店とそこに集まる人だかりで覆われていた。
 白を基調とした石材により、いつもは静粛な空気を携えている中央広場だが、今日ばかりは聖女アンティヌの恵み、と言わんばかりに、賑やかな活気に満ちている。
統一戦争時の聖女アンティヌを讃える祝事です。・・・アンティヌは、有力貴族の出身でありながら、敵味方関係なく多くの負傷者・戦災難民に前線で施しを与えたそうです。彼女の言葉から、神の教えを学んだ者も大勢いたそうですよ。
 彼女自身は、神から授かった先天的な
奇跡の力は持っていなかったのですが、新聖暦05年に当時の教皇より聖人認定を受けました。聖アンティヌ祭はそれから五十年後の新聖暦55年から開催されている聖祭です」
 初夏の日差しが降り注ぐ広場を歩きながら、キルシェは説明する。
 中央広場に多く集まった群衆の中を、掻き分けるように進みながらの作業に、キルシェの呼吸は荒くなり、夏服に衣替えしたばかりの神学生制服の内側に汗が滲む。
 元々、長身とは決して言えないキルシェには、人ごみは望ましい環境ではない。
 六歳の時の聖夜祭で、キルシェは神に英雄ダローンのような身長を願ったが、それから十年以上たった現在でも聞き届いた形跡はない。
 一方、キルシェの前方を悠然と歩く男には、そんな願いとは無縁であった。
 その広い背中を見ながらも、キルシェは説明を続ける。
「当時の記録によりますと、初期の聖アンティヌ祭には、彼女と縁が深い第二、第四、第五教区からの有力者・聖職者の参加が多かったようです。現在は、アスガルド鉄道の発達に伴って、ほぼ全ての教区から参加している状態ですね。一般の礼拝者や商人も大勢やってくるから、このように非常に賑わった一日となります。
 ・・・という訳で、アムンゼンさん。あなたが今食べているパリティスの実は、この時期では半島南部でしか食べられない果物です。それが、この中央広場の出店で、たった銅貨五枚で購入できる事の、歴史的背景や輸送販路を考察しながらゆっくり味わって欲しかったんですが・・・」

「どうせ言うならば、」
 果汁のついた指を擦りながらアムンゼンは振り返ると、キルシェと向き合った。
果物の分際で苦い。それも後味も最悪だと言う事を、食う前に教えてもらいたかったんだがな」
「ですが、僕がお二人にであったのは、食べる直前の事でしたから」
 苦りきった表情のアムンゼンにキルシェは平然と答える。
「ッチ、おい小娘!お前知っていて俺に食わせたんじゃないだろうな!?」
「ああ、知っているから食べてもらったのよ?」
 キルシェのやや後ろを歩いていたアルティアも、キルシェ同様に平然と答えた。
 いつものクセの強い黒髪をピンで押さえつけているものの、身に着けた服はいつも同様動きやすさを重視した簡素なものだ。
 広場に行きかう同じ年頃の娘たちが、着飾った衣服が多い中では、逆に目立つ。
「パリティスの実は、疲労の回復に効くわ。半島南部では、ちょっとした大きさの森では野生の群落も多いから調達も簡単よ。聖務の際、予定外の事が起こっても、パリティスを知っていれば生き延びる事が出来るでしょ。・・・もう色、形はよく覚えただろうし?」
「それに乾燥させれば、携帯食や保存食としても重宝します。・・・いや、よく知っていますねオルティアさん」
「私の田舎の近くでも捕れる事があったから、ね」
 素直な賞賛を浴びせるキルシェに、オルティアは軽く照れたように答えながらも、横目でまだも口の中の苦さが消えないアムンゼンの様子を確認している。
 どうやら、理屈で会話を返せば、キルシェを味方にできる事を覚えたようだ。
 先程から出店を回りながらも、オルティアはいくつかの品物を購入してアムンゼンに与えたが、いずれもロクなものでは無かった。
 その上肝心の酒は、まだ買う気配がない。
 どうやら最初から買う気は無かったのだろう。
 ただ、酒目当てで行動を供にせざるを得ないアムンゼンをからかって、楽しんでいる。
 先程の横目に含まれた笑みが、何よりの証拠だった。
『単純に祭りを楽しんで来るのもいいだろう。・・・日常を味わって来い』
牢から出るときに、牢番のフォアマンは丸い顎をなでながら、アムンゼンにそう言った。
何故、たった一日の恩赦で気晴らしのために出てきたのに、他人の気晴らしの標的にされなくてはならないのか。
 こんな理不尽な話は無かった。
「念のために聞いといてやる、小娘」
「一応、聞いといてあげるわよ、デカブツ」
「・・・低次元な挑発ですね」
 巨体から発せられた不機嫌極まりない声にはトゲが含まれていたが、オルティアは笑みを浮かべて受け流す。
 キルシェの呟きは二人には届かなかったようだ。
 オルティアにしてみれば、案の定の反応だ。
 子供の頃、こうして近所の生意気で、女の子たちをいじめていた男の子達をからかった。
久しぶりの感覚に、口の端がゆるむ。
「お前には貸しがあることは、ここに来る前に確認したよな。・・・酒の話はどうなった?」
「しっかりと返す予定よ。ただ・・・」
 今にも噛み付かんばかりのアムンゼンに、細い人差し指を振ってみせる。
「あたしの鼻は、特別性なのよ。特徴のある臭いなら、微量でも記憶できるわ」
「知ってるよ。以前の聖務で見せてもらったからな。・・・だが、普段は日常生活に支障が無い程度に自分でコントロール出来るんだろうが?」
「それでも、お酒の臭いを隣で巻き散らかせたらたまらないわ。あなただって、自分の隣の人間が、強い体臭の持ち主だったら嫌でしょう?」
「冗談じゃねえぞ!おいキルシェ、金は持っているか!?」
「誰に物を言ってるんですか? 僕は食費と本代以外は、可処分所得をもたない貧乏学生ですよ?・・・それは、少しくらいの持ち合わせはありますけど」
 我関せず、とばかりに広場の中央部で行なわれていた大道芸に、拍手を送っていたキルシェが振り返った。
 なぜか、胸をはっているようだ。
「十分だ!この小娘はほっといて、さっさといくぞ!」
「何処へです?」
「酒のあるところに決まっているだろうが!?」
 口でいうのも面倒くさげにアムンゼンは吼えた。
「それは無理です」
「ああ?」
聖アンティヌ祭では、かつての聖人達が残した聖遺物が法王庁大聖堂で公開されています。多くの礼拝者が訪れますが、ちょっとしたコネがありましてね。今日は、貴重な歴史的遺物を近くで見学できる絶好の機会なんです。・・・アムンゼンさん達に会わなければ、すぐにでも大聖堂へ向おうと思っていたのですけど。・・・見学を終えてからでもよければ、付き合いますけど」
「ああ、それならあたしも行くわ。今日は聖アンティヌ祭だもんね。・・・辛気くさいところが苦手な人は、ついて来る必要な無いけどね」
 キルシェに同意したオルティアの意味ありげな言葉に、アムンゼンは頭を抱える。
 どうやら、最初に少しでもオルティアの事を心配したのが間違いだったようだ。
 ‘
祭りの空気が、予想以上にオルティアの生来の明るさを輝かせているようだ。
 過去の聖務でも、オルティアとは口喧嘩はよくしたものの、ここまで一方的にやられる事はなかった。
「・・・ガラにも無い事は、するもんじゃないな。」
 既に大聖堂へと向っている二人の後を追いながら、アムンゼンは呟いた。
 その打ちひしがれた足取りからは、今夜起こる奇跡の目撃者となるだと言われても、中央広場にいる誰もが信じる事はないだろう。


後半:構成「法王庁礼拝堂 ~中央広場」

「承」フェイズの流れ
シーン1:法王庁内一般礼拝聖堂

・キルシェに引きづられるように、『聖アンティヌ祭』開催中のみ公開されている聖遺物『聖パトリシアの白杖・黒杖』の見学に訪れる一同。

・キルシェ、白杖・黒杖の薀蓄を語る。
「第二教区の聖女パトリシアが、癒しの旅で所持していたとされる杖」
「曰く、黒杖は全ての災いを振り払い、白杖は全ての病を癒した
アムンゼン「フーン(心の底から興味がない、という顔で)」
キルシェ「過去の偉人たちの偉業に触れ、今を生きる僕たちがそれをどのように受け止め、生かしていくかが、うんたら」

・大勢の礼拝者で賑わう一般公開聖堂。
展示されている杖を見た途端、キルシェの顔が曇る。
キルシェ「・・・模造品(イミテーション)ですね。杖の材質も塗料の塗り方も、明らかに近年のものです」(がっかり)
オルティア「これだけの人が来るし、本物を展示して盗まれでもしたら・・・」

・一般礼拝者にまぎれて、三人の動向を追う視線。やがて、人影が三人に近づき・・・。


シーン2:法王庁と一般地区の間にある人影のない裏路地
・異端審問官アズール・バール(小話「逆十字団‘No」に登場)が、盗賊風の男と戦闘中。

・設定:盗賊風の男
通り名は、砂蛇。「法王庁から盗む」ことで、自分の名を高めようとし、依頼を受ける。
潜入等の盗賊技術は高いが、個人戦闘能力は、中の上。
このシーンしか登場しない一回キャラ。
・アズール、戦闘中にモノローグ。
こんな感じ

エイバムの柱
それが異端審議会よりアズール・バールが、銀製の異端審問印と供に授かったアーティファクトの名称だ。
巨大な十字架を連想させる赤銅色の鈍い輝きを放つハルバード
騎士の正装備よりも重い重量と、成人男子の身長を上回る全長は、武器として使用するには著しく利便性を欠いていた。
『本来は武器ではないのだから当然じゃよ』
エイバムの柱の設計に関わった遺失技術管理室の老技官は、当然とばかりに行った。
黄昏の時代の遺跡から発掘された遺失物でな、』
発見された際は、ハルバードのに該当する部分のみであり、その形状から発掘された遺跡にちなんでエイバムの柱と名づけられた。
旧世紀の巨大な動力機関の一部であり、の底部に砂状金属を注入することで、先端部より膨大なエネルギーを放出することが判明したが、動力機関としての再利用は見送られる。
ヘルメス機関があるじゃろ。アスガルド鉄道にも使用されている優良な動力炉じゃ。黄昏の時代

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