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第一話『いただきもの』  ⑥エンディングフェイズ

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匿名ユーザー

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【エンディングフェイズ】

 フェルメノが、書類から顔を上げる。

「で」

 たった一言。
 それだけで、空気が少し変わる。

「報告内容はこれだけ?」

「はい。箱の扱いについて、協会と確認する間は、十一課で保管が必要ですので――この書類に課長のサインを」

「そういう事じゃなくて」

 ぴたり、と言葉を止められる。

「“報告する事はこれだけ”って聞いているのよ」

 一瞬、沈黙が落ちた。

 クエイルの視線が、わずかに揺れる。
 箱の処理の際に、破れた上着を彼女に縫ってもらった、というのは報告事項だろうか?

 だが。
 ここで貫くのが、クエイルだ。
 フェルメノを相手に‘弱み’を見せてはいけない。

「……以上です」

 短く、言い切る。
 フェルメノは数秒だけ――じっとクエイルを見て、
 ふっと、口元を緩めた。

「ふーん」

 今度は、わかりやすくニヤける。

「ほんとに?」

「……はい」

「へえ」

 さらり、と書類にサインを走らせながら――
 視線だけは、逃がさない。

「で?」

「……で、とは」

「“その後”よ」

 完全にスイッチが入っている。

「誰と、どこまで、何をしたのか」

「してません」

「ほんとに?」

「本当にです」

「嘘くさいわねぇ」

 くすくす笑いながら、ペンを置く。

「まあいいわ」

 ひらひらと手を振った。

「面白そうだから」

「は?」

「しばらく置いときなさいよ、それ」

 書類ではなく、“箱の話”に戻っているのがまた性質が悪い。

「何か起きた方が楽しいでしょ」

 完全に“遊ぶ気”の顔だった。

 クエイルは小さく息をつく。

(……やっぱり、そうなるか)

 書類を受け取りながら、ふと考える。
 
 さっきまでの出来事。
 あの箱。
 そして――妙に残る違和感。

 だが。
 今はまだ、それを言葉にはしない。

 フェルメノがそれ以上踏み込まないのと同じように。

 ――その箱が、
 思った以上に“厄介なもの”になるのは、
 
 まだ少し先の話だった。

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