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実効金利とRACAR(リスク調整後コスト&リターン)について


1.実効金利とは

実効金利は、銀行が貸出や預金を通じて得る実際の収益性やコストを評価するための指標です。名目金利(表面上の利率)とは異なり、実効金利は貸出や預金の運用に基づき、実際に発生する利息収益や費用を反映します。銀行員にとっては、顧客への貸出や預金商品を効率よく運用するために、実効金利の理解が不可欠です。

実効金利の計算式
実効金利は、貸出平残(貸出平均残高)と預金平残(預金平均残高)を基に以下の式で計算されます。

実効金利 =(貸出利息 - 預金利息) ÷(貸出平残 - 預金平残) × 100

さらに、歩留率を使った以下の計算式も活用されます。

実効金利 =(貸出金利 -(預金金利 × 歩留率)) ÷(1 - 歩留率)× 100

貸出利息:貸出から得られる利息総額
預金利息:預金に対して支払う利息総額
貸出平残:一定期間中の貸出平均残高
預金平残:一定期間中の預金平均残高
歩留率:預金平残 ÷ 貸出平残
実効金利の例
貸出平残が10億円、預金平残が5億円、貸出利息が5000万円、預金利息が1000万円の場合、実効金利は以下のように計算されます。

実効金利 =(5000万円 - 1000万円) ÷(10億円 - 5億円)× 100 = 8.00%

実効金利の意義
実際の収益性を評価
名目金利と異なり、実効金利は運用効率を反映するため、銀行はどれだけの利益を上げているかを正確に把握できます。

預金と貸出のバランス管理
実効金利を活用することで、貸出と預金のバランスを適切に保ちながら、効率的な運用が可能になります。

2.RACAR(リスク調整後コスト&リターン)とは

RACAR(Risk Adjusted Cost And Return)は、リスクを考慮した銀行の収益性を評価する指標です。具体的には、貸出や預金から得られる粗利益から経費や信用コストを差し引き、実際の利益を計算します。


RACARの構成要素
粗利益
銀行業務から得られる総収益で、以下の要素から構成されます。

貸出金収益
預金収益
役務収益(手数料収益など)
外国為替収益
経費
銀行運営にかかる費用(人件費、設備費など)

信用コスト
貸倒リスクや回収不能に伴うコスト

RACARの計算式
RACAR = 粗利益 - 経費 - 信用コスト

粗利益:貸出金収益 + 預金収益 + 役務収益 + 外国為替収益
RA−ROA(リスク調整後総資産利益率)
RA−ROAは、RACARを貸出残高で割ることで求められる指標で、以下の式で計算されます。

RA−ROA = RACAR ÷ 貸出残高 × 100

さらに分解すると、

RA−ROA = 粗利益率 - 経費率 - 信用コスト率

計算例
貸出金収益が1億円、預金収益が5000万円、役務収益が2000万円、外国為替収益が1000万円、経費が8000万円、信用コストが3000万円、貸出残高が50億円の場合:

粗利益の計算
粗利益 = 1億円 + 5000万円 + 2000万円 + 1000万円 = 1億8000万円

RACARの計算
RACAR = 1億8000万円 - 8000万円 - 3000万円 = 7000万円

RA−ROAの計算
RA−ROA = 7000万円 ÷ 50億円 × 100 = 1.4%

まとめ
実効金利は、貸出や預金運用の実際の収益性を測る指標であり、運用効率の評価やバランス管理に役立ちます。一方、RACARはリスク調整後の収益性を評価する指標であり、RA−ROAと組み合わせることで、銀行の全体的な収益とリスクのバランスを詳細に分析できます。

これらの指標を活用することで、銀行は持続可能で効率的な経営を実現し、顧客に最適な金融サービスを提供できます。

注記:「RACAR」は三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の登録商標です。
【出典】三菱UFJリサーチ&コンサルティング資料

最終更新:2024年11月23日 15:14
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