あたたかい。

幾度となく死に追われ続けた頃は、肌に触れる空気について考える余裕などなかった。
それが今では、ひどく落ち着いている。
ジョセフらがいたことが、精神の安定につながったのは否定できないな。
不思議なものだ。出会い方は最悪だったのに。
あの時から過去との決別を望んではいたが……こうなるとは。

それはいいとして、ここはどこだろう?
確か俺は、ポルナレフの説得を試みて、結局のところ逃げて、道端で休んで。
なのに、今俺は海を臨んでいる。
スタンド攻撃に巻き込まれでもしたのか? いまさらレクイエムの再来か?

……それにしても暖かい。
ジョセフが託した鉄球から感じた『温かい』ではなく、『暖かい』のだ。
敵意なんか微塵も感じない心地よさ。
スタンド攻撃にしてはこちらに仕掛けて来る気配がない。あの時の俺は隙だらけだったはずなのに。
というより、こんな悠長な事をしなくてもあの場でとどめを刺せばいい。

しかし、何故だろう。
俺はこの暖かさを知っている。
何と言うべきか……経験として、記憶に刷りつけられていると言ったところか。

視界に入る緑は少ない。痩せた土地で、植物がろくに育たないのだろう。
代わりに、尖り削れた岩肌が土地の大部分を占める。
建築物は岩と同化しているように見え、自然と一体化しその静けさを体得している。
何より特徴的なのは、海。
エメラルドのように蒼い輝きや波の立たない静けさは、荒んだ心が癒される、つい見とれてしまう美しさだ。

どこだったか……以前、来たことがあるような気がしたんだが。
他者とのかかわりを拒み、積極的に動きはしなかったのに。
度重なる死と、地獄のような殺し合いしか記憶に残っていないと思ったのに。
それでもこの場所は、深い意味が合った気がしてならない。
かすかな記憶を辿っている最中、若い男女が浜辺――岩辺と言うべきか――を歩いているのが目に入る。
位置が悪く後ろ姿しか見えないが、背丈からして2人とも20代かそこらといったところか。
腕を組んで、寄り添っている。きっと恋人同士か何かなのだろう。

と思ったのもつかの間、二人は突然互いの腕を解いた。
男の方が振り払う形で。

『どうしても?』
『すまない。いいところだからな、ここは』
『謝ることないわ。無理を言ったのは、あたしなんだから』

別れ話――いや、駆け落ちの誘いを断ったと見るべきか。
これで、話しかけるタイミングを失ってしまった。そもそも彼らの視界に収まっていたかも疑わしい。
表情を見ることは未だできないが、女が肩を落としたことで落胆しているのが察せた。

『君も故郷を大切にするといい』
『でも素敵なところよ、ここだって。あなたのような人にも会えたんだから』
『持ち上げたところで何も出せないぞ』
『自信持ちなさい。せっかくのいい男が台無しよ。……あ、でもスットロいのは直した方がいいわね』

ありふれたセリフの応酬。
若いというのはそういうものなのか、どうもそのあたりは疎い。
気恥ずかしさ、歯痒さを感じる一方で、盗み聞いているようで申し訳なくも感じる。
しかし妙だ。
俺は、この二人に初めて会った気がしない。
特に男の方に関しては、普段から慣れ親しみ、気兼ねなく接していたようにさえ思う。

――俺は何か、大切な事を忘れているのか?

『写真、撮ってくれないかしら? 離れ離れになっても、思い出は留めておきたいもの』
『……ああ。いい場所を知っている』

そして、男は石碑の側に女を引き寄せた。
いい場所と豪語するのも納得がいく。海岸と建造物、両方を背にして写真を撮れるからだ。
それこそ、この光景を観光客向けのガイドブックにそのまま載せても良いくらいに。
石碑に女が寄りかかる。

顔が見えた。左右にウェーブを描く後ろ髪。丸く、ぱちりと開かれた瞳。

そして、石碑に刻まれた“COSTA SMERALDA”の文字。

思い出した。
ここは、彼女は――!

『さよなら、ドナテラ』
『……さよなら、ソリッド。あなたのことは忘れない』

呆然としている間に、撮影は終わっていた。

駆け寄るものの、かける言葉など思いつかない。
ただ、あの時と同じように慰めが欲しかったのかもしれない。
これがただの夢だったとしても構わないから、思い出させてほしかった。安らぎが欲しかった。
肩を掴み、引き留めようとする。

「待ってくれ! お前は、いや、君は――」



世界が紅蓮に染まった。



「なッ――」

眩いくらいの炎。あらゆる建造物を包み、焦がし、焼き払う赤。
いつの間にか、俺は炎上する村の中にいた。
強風が俺の長髪をたなびかせる。
そのせいか、火は地獄のように燃え盛り、怪物の胃袋のように生あるものを飲み込んでいく。
逃げ惑うことすら叶わないのだろう、泣き叫び、呻く声がする程度で周囲に人は見当たらない。

悠然と立ち尽くす、たった一人を除いて。

見覚えがある青年――と言うのは間違いだ。
知り合い――事実だがそれも語弊がある。

俺はあいつを知っている。この火事を俺は知っている。
知っていなきゃあおかしい。

振り向き、薄く笑いを浮かべたそいつは――


「あいつは、俺だ」


――悪魔(ディアボロ)だった。


  ★


「……夢か」

ベタリとした嫌な汗をぬぐいつつひとりごちる。
しばらくして、ただの夢ではなく逃れようのない過去だがな、と自嘲気味につぶやいた。

愛を捨て、故郷を捨てたあの日。
そんな自分の過去に目を背けてばかりもいられないらしい。
『過去はバラバラにしてやっても石の下からミミズのようにはい出てくる』、全くもってその通りだ。
あえて訂正を入れるなら、人は過去を断ち切ることなどできないのだ。
俺自身、そのためにやられたし、今だって引きずっている。

ジョセフは後悔を、未練を力に変えた。
それはきっと、大切な存在がいたから、帰る場所があったから出来たこと。
俺は、それらをすべて断ち切ってしまったんだ。ジョセフとは違うことを改めて認識する。
やはり『キング・クリムゾン』は、孤独を約束された王宮だったのか?
それこそが、俺の本質なのか?

「ドナテラ……」

かつて自分が愛した女の名を呟く。
聞くに、彼女は最期までトリッシュの身を案じていたらしい。
なのに俺は、いつだって独りよがり。

当時を、今を知ったら軽蔑するだろうか?
トリッシュのように強い正義で応えるだろうか?
或いは、罪を許してくれただろうか?

答えは出ない。だが俺は、変わりたい。
だから、どうにか覚悟するだけの勇気が欲しい。
どうしても俺は、この期に及んで誰かに縋りたかった。


  ★


「エメラルド……スプラッシュ!」

両掌を構えて言い放つ。
飛礫、と言うには大粒の、磨かれたような深緑の輝きを放つ光弾が散来。
『キング・クリムゾン』の両腕を駆使して弾き、あるいはいなしてガードする。
近くで見ると宝石のようなエネルギー波は、やつれた少年の顔色とはひどく対照的だ。

何度、この作業を繰り返しただろうか。
懲罰房に着いたは良いものの、先ほどからずっとこの調子だ。
早人の無事も気になる。まさか既に攻撃されたか?
……考えても仕方がない。これをどう対処するかが重要だ。

ポルナレフと彼が仲間なら、俺はポルナレフが言う――確かDIOと同じように敵視されているのだろう。
説得しようにも、第一印象が最悪だ。
攻撃しようにも、光弾の威力は大したことないが、絶え間なく連射され接近を許さない。
退却しようにも、時を飛ばすのには疲労が伴う。


――時を飛ばし、回り込んで始末……


……くっ! 俺は何を考えている!
彼がポルナレフの仲間だとしたら! とるべき行動など決まっているだろう!

「やめろ、俺は君に攻撃するつもりはない!」

下手にこちらから仕掛けられない以上、このままではジリ貧だ。
その一言でわずかに攻勢が緩み、その隙に俺はデイパックを手放す。矛を収めず話し合う気になどなれないだろうしな。
『キング・クリムゾン』のヴィジョンも収める。
こうまでして、流石に分かってくれたのだろう、少年は構えを解き両手をだらりと下ろした。

「ようやくやめてくれたか」
「やめた? 違いますよ。まあ確かに撃つのはやめましたが」

予想に反した返事。
言葉を零した少年の面相、そこから読み取れたのはわずか。
俺の対人関係の狭さに起因するものではない。
むしろ、ギャングとしての経験がかすかにだが俺に味方した。

少年の表情――「事」を終えるだけ、そう言っているかのような。

「攻撃は既に終わっているんです」

――冷や汗が出た。

マンホールの隙間から触手が湧き出す。
気を配る間もなく、手足喉元に至るまで、絡め取られて縛られた。

「『法皇の緑』を既に張り巡らせておきました。
 エメラルド・スプラッシュで視界を狭めましたが、集中がこちらに向いていて助かりましたよ」

少年の足下から、根っこのように伸びたヴィジョン。
地下道越しに這わせてこちらに届かせたようだ。
いまさらスタンドも出せないし、出したところで微塵も動かせまい。

「DIOについて聞きたいのはやまやまですが……今までのように手遅れになってはまずい」

ここで、終わってしまうのか。

後悔がないわけではないが、それも良いのかもしれない。
元来俺は、夢のように裁かれるべき存在だったのだ。
生まれ故郷を焼き尽くしてからは、裏社会を暗躍し、強大な組織を支配するド悪党として君臨し続け。
鎮魂歌でさえ鎮まることのなかった魂は、こんな悪夢で散らすのがふさわしい。
ジョセフに何と詫びようかと考えたが、そもそも同じ場所に行けるはずもないな、と意味を為さない思考を遮断した。

そして、俺の目前に石が――


  ★


「そちらが襲われているように見えた」

呆気にとられる男に近寄る。
謝罪は頼まれてもしないつもりだ。こいつは手を抜いていた、傍目に見て決闘の類ではない。

止めを刺そうとしていた少年の耳元に音を張り付けた石をぶつけ、気絶してもらった。
男の背後からの投擲ゆえ死角となり、実に簡単に済んだが、集中がこちらに向いていなかったのが大きい。
よほど夢中、というより執着していたんだろう。
あるいは、狂気なのかもしれない。

「情報は一人でも多く広めなければ意味がない。俺の目的のためにも」

とにかく、伝達相手は誰でもいいというわけではない。
一人でも多く、が理想だが聞く耳持たないようならば時間の無駄。

例の言葉を伝えようとしたところで、羽散らすように翼を上下動させる鳩が向かってきた。
慌ただしく右肩に停まり、俺は備え付けられた手紙を取り出す。
……思ったより早かったな。次の目的地も決めかねていたから、ちょうどよかったが。

「時間がない、簡潔に済ませる。
 『ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている』、『民族衣装をまとった身長2メートルほどの怪物に気をつけろ』」

二つ目はもっと事細かに伝えるべきか。
だが、それも時間に余裕があればの話。伝えるだけなら他所でも出来る。

「頼まれた言伝はそれだけだ」
「待ってくれ」

こちらに待つ事情などないのだが。
しかし、引き留めたからには『利』を期待する。
ひどくまっすぐにこちらを見つめてくる。

「……目的とは何だ?」
「一秒でも早く、再び故郷の地をこの足で踏みしめること」

こいつは、どうにも掴めない。腹に一物抱える曲者と言うわけではなく。

億泰と同種の『意志』も感じるが、警戒心を飛躍させたかのような怯えも見受けられる。
灰色、ではない。形容するなら透明。これから先、何物にも染まりうるだろう。
進むべき道を見出すか、あるいは恐怖に駆られて暴徒となるか。
それを決めるのは俺ではなくこいつ自身。だが、脱出の可能性は少しでも高い方がいい。
質問したげに口をまごつかせている様を見ると、億泰の時のように助言を呈したくなる。

「そうやっているうちに、何者にも変えられぬ時間は過ぎ、戻らなくなる」

ふさわしい言葉もあるわけだからな。
そして、これは俺自身に対しての言葉でもある。

「その少年。始末するならそれもいいだろう。お前が選べ」

奴との約束は、所詮口約束。だが、ここで向かわないという選択肢はない。
館にいるのが殺戮に身をやつす危険人物だろうと、荒木を倒すため確固たる覚悟が出来ている人物だろうと。
そこに風が吹かない道理はない。
ツンツンと、急かすように鳩が頬を突っついてくる。
正確に手紙を送り届けたことから、この鳥は相当な訓練をされているのだろう。
このまま肩に乗せて走っても問題あるまい。

彼方目指して走り去る。風は流れて止まらない。


  ★


房の一つのベッドを拝借し、長身の少年を寝かせる。
少年と言っても体格は大の男と比べて遜色ない、運ぶのはそれなりに苦労した。
ベッドは年季が入っていて綺麗とはいえないが、床よりマシだろう。
教えられた二つのメッセージを書きとめて枕元に置く。
俺の口からは伝えない。しばらくここには帰らないつもりだ。

「俺にも目的が出来た」

過ぎた時間は、変えられないし戻らない。
過去にこだわり続けた頃の俺が、不毛な戦いをしてきたことでそれを証明している。
俺は過去と決別し、今度こそ内なる恐怖を乗り越えたい。

「ポルナレフの説得は、必ずやり遂げる」

もう、過去に目を向けてウダウダやっている場合ではない。一秒だって惜しい。こうなったら殴ってでもついて行かせる。
俺の知るポルナレフは、戦士としての精神力、とりわけ冷静さがあった。
いくら強くても本調子でない男一人、放っておけるはずがない。
ジョセフの遺志ではなく、俺の意志がそうさせる。

有無を言わさず俺に攻撃を仕掛けた少年の心情を考えると、むしろこれが得策なのかもしれない。
唯一、早人が気がかりだが……距離が距離だ、問題なく着くことが出来るだろう。
建物の広さも大したものだから、既に着いているが、見過ごしているだけというのもありうる。
どちらにせよ、彼はいくらなんでも子供相手に襲いかかることはないだろう。

「故郷――俺も絶対に帰らなければな。花の一つも供えてやらないままでは、死んでも死にきれない」

初めて、痛み以外の理由で死を恐れた。
彼女にはせる思いは、愛とは違う気がした。いまさらそんな感情を持ちだす気にもなれない。
あの夢は度重なる死によって、風化したはずの過去。
だが、彼女のことは忘れない。
王の宮殿が、孤独を約束されたものではないと証明するためにも。

今度こそ、俺は帝王になる。なってみせる。
王宮下の人々とともに未来を選ぶことができる、真の帝王に。



【F-5とE-5の境目/1日目 夕方】
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:右手に負傷(小)。肋骨二本骨折。身体疲労(中)。精神疲労(中)。鼻にダメージ(中)。強い決意。強い恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(水は全消費)、ジャイロの鉄球
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフの遺志を継ぎ、恐怖を乗り越え荒木を倒す。
1.ポルナレフを見つけ出し、協力するよう説得する。とりあえず北へ
2.ジョルノには絶対殺されたくない。来るなら立ち向かう。
3.恐怖を自分のものとしたい。
4.自分の顔と過去の二つを知っている人物は立ち向かってくるだろうから始末する。
5.電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)、早人怖いよ。だが乗り越えたい
6.駅にあるデイパックを回収したい
[備考]
音石明の本名とスタンドを知りました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
※『恐怖を自分のものとして乗り越える』ために生きるのが自分の生きる意味だと確信しました。
アレッシーとの戦闘により、『エピタフ』への信頼感が下がっています。
※キング・クリムゾンになんらかの制限がかかってます。内容は次の書き手さんにお任せします。
サンドマンのメッセージを聞きました。


【E-5 北側/1日目 夕方】
【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康、満腹、暗殺チーム仮入隊(メッセンジャー)
【装備】:サヴェジ・ガーデン
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1~3(本人確認済み)、紫外線照射装置、音を張り付けた小石や葉っぱ、スーパーエイジャ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
0.DIOの館へ。
1.「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」「モンスターが暴れている」というメッセージを、脱出を目指す人物へ伝えて回る。
2.荒木の言葉の信憑性に疑問。
3.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
4.もう一度会ったなら億泰と行動を共にする。
【備考】
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※億泰と情報交換をしました。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※早人がニセモノだと気づきましたがラバーソールの顔・本名は知っていません。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)。ホルマジオの容姿を知りました。
※盗聴の可能性に気付きました。
※ティムからはエシディシについては体格しか教わっていません


  ★


「……ハッ!」

起き上がって、脇を抑える。
そう言えば、あれから傷の手当てをしていなかった――のに、いつの間にやら処置が施されている。
一体何があったんだ?
あのDIOに関係があるらしい男に止めを刺そうとして、そこから記憶がない。
不意を打たれたんだとしても、こうして僕が無事なのはなぜ?

「気がついたか」

僕はまだ、相当落ち着けていないらしい。
ベットの傍らに座る、顔に大きな傷跡残したカウボーイ風の男性、その存在をたった今認識したのだから。
取り繕っても結局こうだ、猛省ものだなこれは……。

「あなたが、手当てしてくれたんですか」
「いや、君をここまで運んだのはディアボロと言う男らしい。ここに書置きがあった」

ディアボロ……あまり響きのいい名前じゃあないな。
恩人、なのかどうか知らないけど、運んでくれた相手にそんなこと思ってはまずいか。
ちらと、メモ用紙に目をやる。

『ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている』
『民族衣装をまとった身長2メートルほどの怪物に気をつけろ』

走り書きで記された、断片的な情報。後回しにしてもいいだろう。
そこまでしてようやく、目の前の男性に対しまだ名乗っていないことに気がついた。
ちょっと前までいろいろな事がありすぎたからな……。

「僕は、花京院典明です」
マウンテン・ティムだ。ろくな挨拶もなしに失礼かもしれないが花京院君、協力を願いたい」

確かに失礼かもしれない。
僕個人の事情だが、レストラン内で情報交換が出来なかった悔いもある。
もっと言えば、ティムさんが信頼に値するか深慮すべきだし、ティムさんとしてもそうしたいはずだ。

そんなこと、指摘できるわけがない。

「書置きにもある、規格外のモンスター。そいつを倒すために……!」

ティムさんの真に迫る瞳が訴えかけていたから。
文字通り、最悪の存在を。



【F-5 特別懲罰房内/1日目 夕方】
【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(大)、右肩、脇腹に銃創(応急処置済み)、全身に切り傷、身体ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式。
[思考・状況] 基本行動方針:打倒荒木!
1.ティムと情報交換
2.自分の得た情報を信頼できる人物に話すため仲間と合流したい
3.甘さを捨てるべきなのか……?
4.巻き込まれた参加者の保護
5.荒木の能力を推測する
[備考]
※ハンカチに書いてあるジョナサンの名前に気づきました。
※荒木から直接情報を得ました
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました(納得済み)。


【マウンテン・ティム】
[時間軸]:SBR9巻、ブラックモアに銃を突き付けられた瞬間
[状態]:左肩と腹部に巨大な裂傷痕(完治)。左足に切り傷(小、処置済み)、服に血の染み。全身ずぶ濡れ。右足が裸足。
    肋骨骨折、右肩切断(スタンドにより縫合)、極度の貧血、体力消耗(大)
[装備]:物干しロープ、トランシーバー(スイッチOFF)、アナスイの右足(膝から下)
[道具]:支給品一式×2、オレっちのコート、ラング・ラングラーの不明支給品(0~3)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
1.花京院と情報交換
2.特別懲罰房を拠点にしたい(そこでアナスイを待つ)
3.もしアナスイが再び殺人鬼になるようなら止める。生死を問わず
[備考]
第二回放送の内容はティッツァーノから聞きました。
※アナスイ、ティッツァーノと情報交換しました。アナスイの仲間の能力、容姿を把握しました。
 (空条徐倫エルメェス・コステロ、F.F、ウェザー・リポート、エンポリオ・アルニーニョ
  ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、ジョルノ、チョコラータ
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。


  ★


僕は誰に対しても強く信頼を寄せるつもりはない。
あくまでも、花京院かグェスの信頼を得ようとしたっていうのは生き残るための一手段として。
汚いとか卑怯とか、それは分かってるんだけど仕方ないだろう?
でも、そんなことはどうでもいいんだ、重要な事じゃない。

さっきまで僕はノリアキを探していた。
僕は正しいことをしてる、何も間違っちゃいないって自分に言い聞かせながら。
君を撃ったってのは誤解だ、君を狙うグェスを撃とうとしたって弁解を、脳内で何度もデモンストレーションしながらね。
そうじゃなければどうにかなってしまいそうだった。
一人でじっとしているよりは死から遠ざかれるのは当然だから。

結論から言うと、すぐ見つかった。
突風のような音がして、でもやっぱりすぐ行くのは怖くて。
しばらくしてから、遠目に現場の様子を窺ったんだ。


絞られるように、全身から汗が噴き出した。


ノリアキはそこにいたさ。けど会うわけにはいかなかった。

顔型の男に背負われていたから。

あの時の光景、思い出しただけでもゾッとする。
血液が逆流するような、凄まじい吐き気を催したよ。
体は反射的に、それこそ無意識にその場を駆けて離れた。
今思えば、最悪のコンディションでよく体が反応してくれたと思う。

ノリアキは奴に背負われていた。
つまり彼らは仲間で。
ノリアキを撃ったと分かれば僕は――

「死にたく……ない……」

考える脳が、ご親切に推測してくれる頭なんかなければいいと、どれほど思ったろう。
嫌でも働く。言い訳を考えるのも、生き残る策を練ると思えば一時的にだけど苦にならない。
そうやって考えて、自分で自分を誤魔化し続けたけど。

顔型の男が僕を睨んだ気がする。背筋の怖気が取れない。
顔型の男が僕を追いかけてくる気がする。とてもじゃないけど振り向けない。
顔型の男が僕をつけ狙う気がする。来るな、もうやめてくれ。
顔型の男が僕に拳を向けた気がする。やめろ、やめろやめろやめろ。
顔型の男が――

「もういいだろう、やめてくれよ……!」

誰もが僕の逃げ道を塞いでいく。

もう嫌だ。

これ以上僕をどうするつもりだ。

どうしろっていうんだ。

もう、疲れたんだよ。

「うっ……うう」

このまま時間が過ぎ去ることを願って、僕は路傍に倒れ伏した。



【F-4/1日目 夕方】
パンナコッタ・フーゴ
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:苦悩と不安、傷心、重度の鬱状態、極度の人間不信、精神消耗(極大)、額に瘤、右腕に中程度のダメージ、服が血まみれ
[装備]:吉良吉廣の写真、ミスタの拳銃【リボルバー式】(4/6)、ミスタがパくった銃【オートマチック式】(14/15)
[道具]:支給品一式、ディアボロのデスマスク、予備弾薬42発(リボルバー弾12発、オートマチック30発)閃光弾×?、不明支給品×?
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.死にたくない
1.吉廣に説明された内容についてきちんとした真実を知る(時間があれば、程度に考えている)。
[備考]
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディージョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました
吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
 また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※吉良吉廣のことを鋼田一吉廣だと思い込んでいます。
※荒木がほかになにか支給品をフーゴに与えたかは次の書き手さんにお任せします。また閃光弾が残りいくつか残ってるかもお任せします。
※花京院とその仲間(ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフイギー、空条承太郎)の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました(納得済み)。



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キャラを追って読む

169:アイ・コール・ユア・ネーム ディアボロ 186:霏々として
169:アイ・コール・ユア・ネーム 花京院典明 188:三年寝太郎
163:Revolution 9 ― 変わりゆく九人の運命(前編) パンナコッタ・フーゴ 178:ひとりぼっちのあいつ - Nowhere Man
169:アイ・コール・ユア・ネーム サンドマン 193:不帰ノ道
169:アイ・コール・ユア・ネーム マウンテン・ティム 188:三年寝太郎

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最終更新:2010年11月24日 20:25