DAY DREAM ~ 天満月の妖鳥、化猫の幻想 後



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 Chapter.5 『DEAD DREAM』


ジャン・ピエール・ポルナレフ
【朝】E-6 太陽の畑


攻防は十分にも及ばぬほどに僅かなもの。
しかし、ポルナレフと蓮子、剣と剣のぶつかり合いは優に千を越えるほどの斬り合いによって今なお続いていた。
その卓越した技量の剣撃は、離れた場所で戦いを見守る阿求の目には無数の火花が散っているほどの錯覚を起こす。

「ポルナレフさん……! メリー……!」

戦う力を持たない阿求には手を組んで祈ることしか出来ない。
肉の芽に支配されていたポルナレフが、今度はメリーを救うために剣を振るっている。
その相手はあろうことか、メリーの親友である宇佐見蓮子その人だ。

蓮子の額の芽を直視し、気絶してしまったメリーを後ろに下げた蓮子。
その瞬間、戦いが始まってしまった。

ああ、運命というものはどこまで残酷なのだろう。
どうして蓮子までもがDIOの支配を宿してしまったのか。
どうして蓮子がメリーを連れ去ろうとしているのか。
阿求には何も分からない。
何も分からないから、祈るしか出来ない。


「ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラアアァァァーーーーーーーーーーッッッ!!!!」


ポルナレフが高らかに咆え続け、『シルバー・チャリオッツ』の剣を目に見えぬ速度で突く! 突く! 突く! 突く!
対する蓮子は涼しい顔で『アヌビス神』の刀を以っていなし続ける。
その後ろでは気を失ったメリーの身体をヨーヨーマッが支え、観戦していた。

「さっきから全く手加減ナシですか。私、これでもメリーの親友なんですよ?」

「やかましいッ!! お前の芽を潰して、目を覚まさせてやるって言ってんだーーーッ!!」

「私に手を出せばメリーは殺すと言った筈ですが」

「お前たちは明らかにメリーを攫うために近づいてきた!
 そのお前らが簡単にメリーを傷付けるわきゃねーからな! ハッタリだろーがッ!」

「……ただのアホじゃあなさそうね」

凄まじい剣の嵐の中、2人の言葉が交わう。
しかし、徐々にポルナレフの剣が押され始めた。
ポルナレフは手加減などしているつもりは無いが、恩人であるメリーの親友を斬り付ける事にはやはり抵抗があった。
対して蓮子はポルナレフを完全に殺す気で刀を振るっている。
その意識の差が2人に優劣を付け始めた。
そして蓮子の操る刀のスタンド『アヌビス神』の特性も、蓮子優勢の一因を語っている。

(いいゼいいゼ蓮子の嬢ちゃん!! そのままクソッタレポルナレフを百枚にオロしちまおうぜェーーーッ!!!)

「……戦ってるのはあくまで私の身体よ。あまり無茶をさせすぎないで欲しいんだけど」

(おっと女の子の蓮子ちゃんにゃあやっぱキツイかい? だが安心しろォ! 俺様はことポルナレフにおいてはもう負ける気しねェーッ!)

蓮子の意識がDIOによって支配されている以上、アヌビス神がDIOの支配を上書きすることは出来なかった。
故に蓮子がアヌビス神を握っていても、彼女の意識が刀に支配されることはない。
しかしアヌビス神の能力が蓮子を剣の達人へと変貌させ、ポルナレフをも上回る剣士を誕生させた。
そしてアヌビス神の『一度受けた攻撃を憶える能力』は、長期戦になるほどポルナレフにとって絶対的不利。
蓮子の手数がポルナレフを上回り始める。



(ウーーッシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャァーーーッ!!)

「く……ッ! やはりコイツの刀! さっきからだんだん『強くなって』きてやがる……ッ!」

劣勢を悟り狼狽するポルナレフは、一度大きく間合いを取る。
既に彼の肉体の所々には刀の切り傷があった。
対する蓮子の身体には……一切の傷が無い。
剣と剣による正面からの斬り合い。
その結果、目に見えて蓮子に軍配が上がり始めている。
ポルナレフの心には焦りと屈辱がざわめきたっていた。

(クソ……ッ! あの妙な刀も恐らくスタンド……! こんな女の子にいい様にあしらわれるなんざ、俺のプライドが許さねえぜ!
 だがどうする……!? このスタンド、相当強い……!)

荒い息遣いを隠すように顔の汗を拭う。
最早単純な力や技術押しでは敵わなくなってきた。

『敗北』の二文字が頭を過ぎる。


(負け……だと!? 俺が負けりゃあ誰がメリーを救う! 女一人護れねえで何が騎士道だ!
 皆の命を護ってみせると……誓ったばかりじゃねえかッ!)


例え死んでも護り通すものがあった。
それは自尊心や自己満足などではない、彼にとってはかけがえのないモノ。
再び『シルバー・チャリオッツ』の剣を構える。
蓮子の構えは素人そのものであったが、あの妖刀から生み出される攻撃の軌道はまるで読めない。
恐らくあの刀のスタンドに『意思』のようなものがあって、それが蓮子を突き動かしているのだとポルナレフは当たりをつける。

『刀さえ破壊できれば』……そう思索していたその時。


「蓮子ちゃ~~~ん! ただいまぁ♪」


場にそぐわぬ締まりない声で青娥が戻ってきた。

「おかえりなさ……わ。どうしたんですかその右手とお腹の怪我。まさか『失敗』ですか?」

「いえいえ、ちゃあんと『仕掛けて』きたわよぉ♪ でも、ちょっと反撃されちゃってねぇ……
 蓮子ちゃんの方もメリーちゃんは確保できたみたいね。よぉお~~~しよしよしよしよしよしよし♪」

「やめてください……。目的を果たしたならさっさと行きましょう」

(青娥……ッ! じゃあジャイロと神子はやられたのか……!?)

青娥は怪我こそしていたが、彼女がここに居るということはジャイロと神子はどうなったのか。
こんなふざけた女1人にあの2人がやられたとは考えたくなかったが、この青娥という女はどうも底知れぬモノを感じる。
しかし万が一彼らが敗北したのなら、今度この2人と対峙するのはこの自分だ。
緊張と戦慄の汗がポルナレフを伝う。
その動揺を打ち払い、チャリオッツの剣を一振りして敵に向けた。



「おい、テメエらッ!! ジャイロ達をどうした!? メリーを何処へ連れて行く気だッ!?」

「悪いですがポルナレフさん。勝負はここでお開きです。
 私たちが貴方に直接手を下す必要は『無くなりました』から」

「ごめんなさいねぇポルナレフさん? 急ぐ用事が出来てしまいましたので。
 それにジャイロさん“は”まだ生きていますわ。早く会いに行ってあげた方がよろしいかと」

そう吐き捨てた後、青娥と蓮子はメリーを連れてあっさりと踵を返していく。

「待ちやがれッ! そう簡単に逃げられてたまるかッ!」

それを見逃すわけにはいかないポルナレフは追おうと駆けた。
その時、足元に小さな缶の様なものが転がっていることに気付く。
次の瞬間、辺りを覆う爆音と衝撃。
凄まじい爆音にたち眩み、膝を突かずにはいられなかった。
青娥の放った『音響爆弾』がポルナレフの視界と聴覚を奪い、暫くの間その行動を封じたのだ。


彼が何とか立ち上がれた時には、既に彼女らの姿は見えなかった。


「………クソッ!! 何やってるんだ俺はッ!!」

呆然と立ち竦んだ後、悔やむ様に足踏みするポルナレフ。
とにかく後を追わなければ……! そう思ったのも束の間。


「あ……ぁ、ポルナレフさん……!」

陰ながら戦いを見ていた阿求がよそよそと現れた。
彼女はおよそ半泣きになってポルナレフに駆け寄り、その場でくたっと腰を抜かしてしまう。

「ポルナレフさん……メリーが、メリーがぁ……!」

「阿求ちゃん、大丈夫だ。メリーは俺がすぐに助けに行く! だから泣かないでくれ!」

「グス……っ、はい……」

震える阿求の頭を撫で、笑顔を作って勇気付ける。
しかしメリーを攫われたことによる自責の念は拭えない。
とにかく、今はすぐさま敵を追わなくてはならない一刻を争う状況。
それに青娥が最後に放った言葉も気になる。


「阿求ちゃん! 俺はジャイロ達の様子を見てくる! ……幽々子さんを頼む!」


眠る幽々子を阿求に任せ、ポルナレフは仲間の元へと飛び出した。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「……青娥さん、その傷は大丈夫なんですか?」

「……正直、ちょっと危ないかも。早いとこ治療しないと死んじゃうわ」

「簡単に治療できるような軽い怪我には見えませんが」

「大丈夫大丈夫♪ 仙人にはキョンシーを使っての蘇生術もあるんだから!
 その辺の死体の肉体を使えば治療出来るわよ~」

「……私の身体を治療には使わないでくださいよ」

「あははバレちゃったぁ~?
 まぁ仙人ジョークは置いといて、早くここから逃げ出さないと巻き込まれちゃうわ」

「スタンドDISCを欲しがってた割には『アレ』、あっさりと使っちゃうんですね」

「だって~、流石の私でもあんなのいらないわよぉ。
 『死ななきゃ能力が発動しない』なんて全然面白くないじゃない?
 だから死ぬ直前の豊聡耳様の頭に差し込んできちゃったわ♪」

「……青娥さんって本当に容赦ナシですよね」

「豊聡耳様の欲も私に負けず劣らず巨大ですのよ。
 遍く全ての生き物は欲によってこの世に産まれ、そして最期には欲によって朽ちるのです。
 ……あの方の最期の欲は凡庸でもあり、高潔でもあり……だからこそ本当に美しかった」

「分かったような分からないような。
 まあ、とにかくその傷を治療したら早くDIO様の元へ急ぎましょう。
 ……ヨーヨーマッ。しっかりメリーを運んでね。私の友達に傷でも付けたら怒るわよ?」

『かしこまりましたァ、ご主人様』


【E-6 北の平原/午前】

霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:疲労(中)、右手欠損、右脇腹損傷、全身に唾液での溶解痕あり(傷は深くは無い)、衣装ボロボロ
[装備]:S&W M500(残弾3/5)、スタンドDISC「オアシス」@ジョジョ第5部、河童の光学迷彩スーツ(バッテリー60%)@東方風神録
[道具]:双眼鏡@現実、500S&Wマグナム弾(13発)、催涙スプレー@現実、音響爆弾(残1/3)@現実、基本支給品×5
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:DIOの王者の風格に魅了。彼の計画を手伝う。
2:死体の肉体を使って身体の治療。その後メリーを連れて紅魔館へ帰還。
3:会場内のスタンドDISCの収集。ある程度集まったらDIO様にプレゼント♪
4:八雲紫とメリーの関係に興味。
5:あの『相手を本にするスタンド使い』に会うのはもうコリゴリだわ。
6:時間があれば芳香も探してみる。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※光学迷彩スーツのバッテリーは30分前後で切れてしまいます。充電切れになった際は1時間後に再び使用可能になるようです。
※DIOに魅入ってしまいましたが、ジョルノのことは(一応)興味を持っています。


【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:疲労(中)、肉の芽の支配
[装備]:アヌビス神@ジョジョ第3部、スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]:基本支給品、食糧複数
[思考・状況]
基本行動方針:DIOの命令に従う。
1:DIOの命令通り、メリーを紅魔館まで連れて来る。
2:青娥やアヌビス神と協力し、邪魔者は排除する。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。
※ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。
※「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」は会場内でも効果を発揮します。
※アヌビス神の支配の上から、DIOの肉の芽の支配が上書きされています。
 現在アヌビス神は『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』『銀の戦車の剣術』を『憶えて』います。


マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】
[状態]:気絶中(蓮子の肉の芽の中?)
[装備]:なし
[道具]:八雲紫の傘@東方妖々夢、星熊杯@東方地霊殿、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。ツェペリさんの『勇気』と『可能性』を信じる生き方を受け継ぐ。
1:蓮子……どうして?
2:八雲紫に会いたい。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。
※『境目』が存在するものに対して不安定ながら入り込むことができます。
 その際、夢の世界で体験したことは全て現実の自分に返ってくるようです。
※ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。
※ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。
※竹林で落とした八雲紫の傘と星熊杯を回収しました。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

それは本体の『死』をトリガーとし、殺されることによって初めて発現するエネルギー。
瀕死であった神子が気付かぬ内に頭に仕込まれ、そしてその悪夢の『スタンド』はこの世に顕現してしまった。
永永無窮のエネルギー。
空空漠漠の射程距離。
電光石火の牙。

この世のあらゆる狂気と絶望を体現したかのような禍々しさは、死によってその存在を確立させた。
無我の悪魔であり、最早食べることのみを機能として動き出した不死のスタンド。

―――そのスタンドの名は、



――――――

―――



ウジュル、ウジュル。
そんな不気味な『食事』の音を、ジャイロは呆然と立ち竦みながら耳に入れていた。
喰われているのは、千切れ飛んだ自分の右腕だ。
喰っているのは、『骨』とも『肉塊』とも形容し難い『ナニカ』。

散らし尽くされた大量の向日葵の残骸。
その上を紅色で彩るように流れる鮮血。
その上でハイエナが血肉を貪るように一心に続けられる食事。

ウジュル、ウジュウジュウジュウジュウジュルルルル。

血液が逆流を開始するように、失った右腕から血のシャワーが噴き出る。
遅れてポツポツと、顔中から汗がドッと染み出してくる。
グラリと視界が揺れ、倒れそうになった足を必死に持ちこたえた。
目の前で行われている晩餐から、視線が外せない。

ふと、蠢く『ナニカ』の傍の地面に目が行った。
血文字だ。血によって何か書かれていた。



『敵スタンドの名はノトーリアス・B・I・G』

     『助けてくれ』             『お願いだ』

         『神子が死体になってしまった』

   『喰われるのは嫌だ』         『神子はカワイソーにゾウキンのように捨てられた』

             『殺されることによって初めて作動するエネルギー
                       死体だからもう殺すことはできない』

         『もう助からない』

                   『死ぬ前に』   『故郷ネアポリスの
                              ピッツァが食べたい』



            ―――『ジャイロ・ツェペリ』―――



(敵……スタンド……? 『ノトーリアス・B・I・G』……だと?)


誰が書いたモノだこれは。
誰の攻撃だこれは。
死体……? 喰われるだと……?
目の前の『コイツ』が書きやがったのか?
それとも……オレか?

コイツが美味そうに喰ってんのは、オレの『腕』か?
これは、スタンド攻撃……
殺されることによって初めて作動するエネルギー……だと。
まさか、神子のスタンド……?

違う。


「―――あ」


短く零れ落ちた呟き。
それと同時に、残った左腕で腰のホルダーから鉄球を取り出す。


「―――ッッッッの女ァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!」


怒りが爆発した。
これが誰の攻撃によるものか、考えるまでも無い。
あの邪仙・霍青娥の攻撃は終わっていなかった。
奴は逃げ去る直前、最後の最後で神子に『何か』したのだ。
死ぬことによって発現するスタンド。
そんな悪魔のようなカラクリを、奴は神子に植え付けて逃げ去った。
奴はあろうことか、神子の死を『利用』したッ!
この上ない、『生』への冒涜だッ!

絶対に、絶対に許さねェッ!!




「何喰ってんだテメエエエエェェェェェーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」


左手で鉄球を投げるモーションを取る。
未だに視界は青娥の催涙スプレーにより完調ではない。
若干の視界の滲みでも、黄金長方形のスケールの読み取りを狂わせてしまう。
そんなことは関係あるかとでも言いたげに、ジャイロは手に持つ鉄球を回転させ……


『食事中』だった敵スタンドが、突然ジャイロの振りかぶった左腕目掛けて飛んできた。


(な……にィィーーーッ!? なんだコイツ!? 目標をオレの腕にいきなり変えやがったッ!)

死ぬことで発現する能力。言うなれば『本体』のいないスタンドだ。
本体がいないのに、自分の攻撃が『見えている』?
ありえない。ならば考えられることはひとつしかない。
コイツは何かを『探知』し、それに向かって自動的に攻撃する『自動操縦型スタンド』だッ!
しかし……!

(避けるのが間に合わねえッ! 『速い』ぞコイツ!)

左腕もが敵の餌食になることを覚悟したジャイロだったが、

―――敵は何故かジャイロの『腕』ではなく、手に持った『鉄球』へと喰らいついた。

思わず鉄球を手放す。敵スタンドはそのまま回転する鉄球を覆い尽くすように隙間無く齧り付いた。
不可解ではあったが、自分が鉄球すら握れない身体になるのはとりあえず免れたらしい。
だが、今度は肝心要の鉄球が奪われてしまった。
肉と骨を混ぜ合わせた悪趣味なオブジェのようなスライム型の『ナニカ』が、ボリボリと音をたてて鉄球を喰らい尽くしていく。
身体から失われていく血液が止まってくれない。
霞みゆく思考の中、必死に考えを巡らせる。

敵本体は居ない。
鉄球も無い。
どうする。この『化物』を完全に殺害するにはどうすればいい?

「く………ッ!」

打開策が思い付かない。
こんな時、ジャイロの傍にはいつもジョニィ・ジョースターが付いていた。
ジャイロが危機に陥った時にはジョニィが。ジョニィが危機に陥った時にはジャイロが。
2人は互いに助け合い、笑い合い、そして長い長いレースの道のりを常に隣同士で走ってきた。
そのジョニィもここには居ない。今は居ない相棒を考えてもどうにもならない事態なのだ。
赤いマントも腰のサーベルも、何の装備も無い状態で暴れ牛の前に投げ出された闘牛士。
そんな闘牛士が選択し得る行動など、みっともなく無様に闘技場から逃げ出すことだけだ。



―――今ならコイツから逃げられるかもしれない。

今にして思えば青娥があっさりと逃走を選んだのは、このスタンドの攻撃に巻き込まれないからだった。
しかし仮に逃げたとして、果たしてその行為は正解なのか。
最悪、向こうにいるポルナレフやメリーたちを巻き込む形になってしまいかねない。
そもそもポルナレフたちは無事なのだろうか? 青娥には仲間もいた。そいつに襲われていないだろうか。
やはり向こうも心配だ。この化物とあの青娥は後で必ずブッ殺すとして、今はコイツから距離を置きたい。
ジャイロがそう結論付け、ゆっくりとこの場から離れようとした瞬間……


またもや敵スタンドが食事をやめ、高速で突っ込んでくる!
この敵の攻撃条件が掴めない。次に攻撃を受けたら間違いなくやられる。
防御も反撃も出来ない。万事休すか。
絶望的な死を覚悟したジャイロだったが、敵は何故か“ジャイロの横をすり抜け”見当違いの方向へと飛んでいった。
驚くジャイロの見つめる先、そこには……

「ジャイロォッ! 大丈夫かッ!?」

ポルナレフがこちらへと向かって走って来ていた。


「ポルナレフゥゥゥウウウウーーーーーッッ!!!!! こっちへ来るんじゃねェェエエエーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」


ガバリと、巨大な鮫のように大口を開いて飛び向かう敵スタンド。
ジャイロの叫びはこの状況の緊迫さを表しており、自身に危険極まりない何かが迫っていることを瞬時に悟り、
何より目の前に迫る怪物がポルナレフにかつてない危険信号を与えていた。
全身の毛が逆立つほどの『脅威』を眼前の化物から感じ取ったポルナレフは咄嗟にスタンドを展開。
『シルバー・チャリオッツ』の一閃を繰り出す!

―――が!

目で捉える事も困難なチャリオッツの剣撃を、敵スタンドは形態を変化させて容易に掴んだ。
アメーバを思わせる半固体状の敵スタンドがチャリオッツの剣先を飲み込み始め、徐々に徐々にチャリオッツ本体へと蝕んでいく。
その薄気味悪い外殻以上に、ポルナレフはこの化物の『スピード』に何より恐れを抱いた。
自分のチャリオッツの剣術、特にその攻撃のスピードには誰にも負けない自信があった彼であった。
そのチャリオッツの至近距離からの攻撃をあっさりと捕らえ、今こうしてじわじわと敵の魔の手が伸びて来ている。
自信すらへし折られそうな敵の超絶なスピードに、ポルナレフは恐怖し慄く。

「ジャ……ジャイロォッ!! 何だこの化物はッ!? とんでもねえ動きしたぞ今ッ!!」

言い終わらない内にも敵スタンドが剣を完全に飲み込み、続いてチャリオッツ本体に飛び掛った!
先程よりも化物の体積が『増えている』。肉もスタンドも飲み込み、大きく成長していっている。
そして次にこの化物はチャリオッツに喰らい付き、それはすなわち本体であるポルナレフへのどうしようもないダメージへと繋がる!

「――――ガ、ハッ!」

「ポルナレフウウウゥゥーーーーーッ!!!」

近距離での白兵戦ならばポルナレフのシルバー・チャリオッツを凌駕するスタンドなどはそうそういない。
そのポルナレフが何も出来ずに易々と懐に潜りこまれたのだ。
当人は勿論、それはジャイロにとってもかつて味わったことの無い最悪の相手だと痛感する。
化物がチャリオッツの胸部をガツガツと喰い、吸収していく。血反吐を吐くポルナレフ。
ジャイロは考えるよりも先に、地面に落ちていた鉄球を拾った!
化物に喰われ尽くされたそれはもう球体と呼ぶには些か不似合いであり、既に鉄球としての戦闘能力が失われている。
それでも強引に回転させ、絶体絶命のポルナレフを救うためにジャイロはもう一度投擲を試みるしかなかった。
ポルナレフの皮膚が見る見るうちに喰われていき、辺りにおぞましい悲鳴が轟く。

ジャイロの手から鉄球が離れる直前。
ポルナレフを喰らっていた敵スタンドが、今度はその心臓を標的と定め魔手を伸ばしたその瞬間。


―――敵スタンドは突然チャリオッツから興味を失ったように離れ、そのまま上空へと飛んでいってしまった。


あまりに不意の奇行。
何かに反応していったのか、敵の姿が暁光の空へと消えていく。
それに安心したのか、ガクリと膝を突いたポルナレフだったが幸いにして命はあった。

「……ッ!? な、何だァあの化物ヤローは? 散々暴れまわった挙句、とっとと逃げちまいやがったぞ……」

「くっ……ハァ…ハァ……! ジャ、イロ……今の奴は……? それに……」

―――神子は何処にいる……?
ジャイロは当然その質問を予想していたが、いざ聞かれるとやはり口篭る。
その様子を一目見、ポルナレフも瞬時に理解した。彼女の身に何があったかを。
2人の間には一瞬の沈黙が流れたが、時は一刻を争う事態だという事も理解していた。

神子と青娥の戦いの瑣末、現れた蓮子に拉致されたメリー、今しがた襲われた怪物スタンド……
事は既にして、抜き差しならない状況にまで追い込まれている。
それを互いに確認し合えば、最早為すべき事は理解、共鳴した。

青娥をブッ飛ばして、メリーを救出する。

つまるところ、今一番に為すべき目的はそれに間違いない。
ジャイロは己の失態で神子を失い。
ポルナレフは己の未熟でメリーを攫われ。
男はふつふつと心に闘争心を滾らせる。
互いに「すまなかった」とは言葉にしない。
ゴタゴタぬかす暇があったらとっとと追うぞと言わんばかりの鋭い瞳を燃やし。

青娥達の去っていった方向を目に定めて―――





「うおおおぉぉぉぉーーーーーーーーッッッ!?!?」

「きゃああああああああああぁぁぁぁッッッ!?!?」


ド ォ ォ オ オ ー ー ン ッ !!


―――その方向、正確に言えば更にその上空から悲鳴と地鳴りと共に2人の男女が降ってきた。


「おわあッ!? な、なんだあ……ッ!?」

「さっきの化物スタンドかッ!?」

すぐに戦闘の姿勢をとったポルナレフとジャイロ。
目の前の土埃の向こうに先の敵スタンドの姿を仮想し、神経を集中。
落下の衝撃で発生した軽いクレーターと煙幕が、中々敵の姿を見せてくれない。
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。タラリと緊張の汗が一粒滴る。
十数秒ほど空気が硬直した中、ついに晴れた土埃から覗かせた者は……



「むきゅ~~~……。 痛ったぁ~~~……む、無茶しすぎですよぉ……!」

「東風谷、さん……重い、です……」

「あ! す、すみません……! ……って、重いってなんですか重いって!
 私はこれでも日々苦労しながら健康と食事量との戦いを続け、先日やっっっと3キロのダイエットに……」



現れた少年と少女は、静かなる情熱の緑と鮮やかなる華麗の緑。


『奇跡の少女』東風谷早苗と、



「―――花京院、典明……!」


「……ポル、ナレフ?」




▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆   ★ ★

花京院典明
【朝】E-6 太陽の畑 近隣上空


もうどれほどになるだろうか。
朝靄の冷たい風を頬に受けながら、この悠久なる大地の空を飛び続けるのは。
星と太陽が入れ替わり、この世界の朝を初めて体験する花京院典明は、目の前の少女の風に靡く後頭部を見つめながらそう思った。

たまに地上を見下ろせば自然豊富な大地の美しさを感受し、思わず感嘆の息を漏らす事もここ数度。
よくよく考えてみれば自分は滅多に出来ない体験をしているのかもしれない。
飛行機から地上を見下ろす時とはまた違った感動が心に浮かび出てくるのを、外界の人間である花京院が止める事叶うわけもなく。
すぐにその考えを不謹慎だと振り飛ばし、また目前へと視線を戻す。
自分らの真下では今も殺戮が行われているかもと考えると、楽観的な思考など邪念として捨て払わずにはいられなかった。

先程からこの『オンバシラ』は轟々と突き進み、だが緩やかに湾曲したり高度を上げ下げしたりと忙しない。
目標人物である『八坂神奈子』の姿など一向に見つからず、花京院の心には次第に焦燥心が生まれてくる。
巨大な森林上空を走ったり、気になる所では館の隣で何かが燃えている光景まで目撃した。
それでもこの高度、このスピードで豆粒ほどに小さな人物ひとりを見逃すことなく飛行を続けるのは至難だ。

上空を飛行し続けるこのオンバシラの舵取り役は目下の所、目の前の東風谷早苗なる少女が握っていた。
というよりは、オンバシラの操作など不可能である花京院には黙って乗客で在り続けることしか出来ない。
元より彼は無理を言って彼女に付いて来た身。自分がどうこう口出しできる立場では無いのだ。


だから、これまでの空路を殆どの会話もなく、飛んできた。
気まずさも当然あったが、それ以上に花京院は早苗を信用して相乗りしているのだ。
だがその信用も数分、数十分経つにつれると段々疑心が生まれてくる。

その内花京院は早苗を怪しむようになっていた。
こちらからでは彼女の顔色を窺うことは出来ないが、その後ろ姿からでも確固たる信念は知れる。
迷うことなくこの空のサーフィンを決行した彼女だ。早苗という少女はあらゆる意味で真っ直ぐな少女だった。

それでも、『もしかして』……『まさかとは思うが』……
そんな懸念が花京院の心の大部分を占めるようになった頃。

とうとう花京院は意を決して、兼ねてより口には出すまいと忍んできた『質問』をぶつけることにした。


「あの、東風谷さん」

「………何ですか、花京院くん? 喋ると舌、噛みますよ」

「僕は君を信頼してこのオンバシラへと乗り込みました。だから今まで敢えて聞かなかったのですが……」

「…………」





「―――八坂神奈子の逃げた方向、勿論知った上で追跡してるんですよね?」


「…………………………………………」





その溜め息が漏れるほどに長い長い無言は、花京院の『疑問』を『確信』へと変えるのには充分過ぎる時間だった。



「…………あのですね、東風谷さん」

「だってっ!! 仕方ないじゃないですか!!! 煙幕が晴れた時には神奈子様の姿はすでに見えなかったんですからっ!!!
 それにそれに! 勝手に付いて来たのは花京院くんであって、それはいわゆる自己責任って奴で!!
 えっとえっと………つまり~~~~~っっ!!!」

「つまり、八坂神奈子の逃げた先の見当は全く付かない、ということですね?」

「はいッッッッ!!!!!!」


今までの捜索は一体なんだったのだろう。
近年稀に見るほどに良い返事を耳に入れながら、花京院は額に手を当てて呆れる仕草をひとつ。

「あの、どうしてそれをもっと早く言ってくれなかったのですか……?」

「だ、だってだって背中の花京院くんの視線が段々プレッシャーに感じてきちゃって、言うに言い出せなかったんですよ~っ!!」

自分はそれほど眼力を発していたのだろうか。
どうやら東風谷早苗という人物は思ったよりもずっと天然だったらしい。

「……戻りましょう。もうかなりの距離を飛んで来てしまっています。このままだと会場の『外』に出かねません」

この会場に『外』などあるのだろうかと、ふと思ってしまう。
だがこのままエリア外から出てしまえば最悪、脳内爆弾が発動しかねない。
時間のロス。それだけの事だと自分に言い聞かせ、溜息を漏らすのは我慢した。




……………………?

花京院の案に、早苗がまたもや無言になる。
それを訝しげていると、早苗がゆっくりと、かつ半涙目でこちらへと振り返った。
その年相応の乙女らしい仕草に花京院は不覚にも、少しだけ鼓動が早まった気がした。



「…………戻れません」

「……………………はい?」

「このオンバシラ、スピードはありますけど小回りが殆ど効かないんです!
 このままゆったりと旋回してれば会場外へはみ出しちゃいますよぉ~~~っ!!」

どうやら鼓動が早まったのは別の意味だったようだ。

「な……なんですってッ! じゃ、じゃあ今すぐ降りてくださいッ!! 下手すれば僕達、文字通りの『自爆』ですよッ!?」

「お……降りるって、どうすればいいんでしょう……?」

目眩がした。
この両の足にしっかりとネジが張り付いていなければ、確実に自分の体はヒモ無しバンジーを体験していただろう。



「き、君は何も考えずに操縦していたのか!?」

「ご、ごめんなさわわぁ~~~ん!!! ででででも大丈夫ですっ! オンバシラに注いでいる霊力の注入をやめれば……」

「……着陸はどうするのです?」

「…………………………」

自分が目覚めた時に感じたこの少女への『女神』のようなイメージ像が、派手な音をたててバラバラと崩れてゆく。

「じょ、冗談じゃあないぞ! こんな馬鹿みたいな事故で死んでしまうなんて僕はごめんだ!」

「あーーー!!! なんか私のせいにしてる流れですけど、勝手に付いて来たのは花京院くんなんですからね!?
 どんな結果になっても責任持てませんって私言いましたからね!?」

「それにしたってこんな結果になるなんて思わないでしょう! そもそも東風谷さんが黙っているのが悪いわけで―――」


ド ガ ン ッ !!


互いにいがみ合う中、突如響く轟音。
続いて足元を大きく揺らすほどの振動が2人を正気にさせた。

「……ッ!? なんだ今の揺れは……!?」

「わ、わかりません……。それに気のせいか、スピードも高度も『落ちて』いるような……」

言われてみれば段々とオンバシラの速度が落ちてきている。
花京院の額に嫌な汗が流れた。乗った乗り物が墜落するジンクスが、まさかあの血統から自分にも移ったんじゃないだろうか。

「東風谷さん、態勢を立て直してください! どんどん落ちているぞッ!」

「やってますが……駄目ですッ! 調整が出来な―――」

不意に早苗の声が止まった。
見れば、彼女はこちらを振り向きながら固まっている。

「……東風谷さん?」

「……花京院くん。 ……う、後ろ」

後方を指差しながら彼女は引き攣っている。
その指の指す方向を花京院はおそるおそる……振り返った。


爆進するオンバシラの最後尾。
ピタリと張り付くように―――『ソレ』は居た。


ウネウネと蠢き合う皮膚。腐ったスライム状の形態。
丸い目の中には光も焦点も無く、不気味な唸り声が歯の揃った口腔から響いてくる。
バスケットボールほどの大きさはあるだろうか。いや、僅かにだが成長している様子が見られた。
『喰って』いるのだ。このオンバシラから湧き出るエネルギーを。
このエイリアンのようにグロテスクな風貌を見て、花京院は直感する。

「スタンド……!? 地上から乗り込んできたのかッ!」

だとすれば本体はどこから操っている? 飛行するオンバシラに飛びついてくるなど相当なスピードと射程距離のスタンドだ。



(僕達を攻撃するつもりか!? しかしコイツ……何か『ヤバイ』ぞッ! 嫌な禍々しさだ……!)

オンバシラの速度が落ちているのは間違いなくコイツの仕業だ。
すぐにコイツを倒さないとこのままでは墜落してしまう!
思うが否や、花京院は即座に攻撃に移った!


「エメラルド・スプラーーーーッシュ!!!!」


散弾銃のように発射された煌びやかな弾幕は、後尾にしがみつく敵目掛けて光を放ちながら飛んでいく。
この至近距離でこれだけの数の攻撃を躱すことなど到底不可能。花京院はそう思った。

しかし攻撃が命中する前に敵スタンドは形態を変化し、数本の触手のような物でなんとエメラルド・スプラッシュの弾幕を全て掴み取ったのだ。

「GYYYYAAHHHHHHHHHHHHーーーーーーーーーッ!!!!!」

猛獣のような咆哮。花京院は背筋を凍らせる。
今のありえぬ動き。1つ2つ弾くならともかく、コイツは放った弾幕全てを『掴んだ』のだ。
とても遠隔操作のスタンドとは思えない正確な動きと超スピード。まともに戦えば負傷必須だ。

(……おかしい、理屈に合わないぞ。これほどのスピードと正確性、本体がどこか近くに潜んでないと納得出来ない……!)

空を飛んでいるのにどこか『近く』?
やはり妙だ。この速度と高度を飛ぶオンバシラの上まで地上から遠隔操作する者など……
それにさっきのコイツの動き、どこかで本体が見ていないと反応できるようなスピードではない……!
いや、『探知』か……? コイツは僕達の『何か』を探知して、『自動的』に攻撃してるんじゃあ?

『自動操縦』! だから遠隔操作でもあんなスピーディな動きが出来るッ!


「か…花京院くんッ! もう無理です! 墜落しますッ!」

「東風谷さんッ! 足に固定させた『ネジ』を外すんです! 早くッ!」

今はこの敵よりもまずは無事に着地出来ることが重要だ。
早苗は言われたとおりに『ナット・キング・コール』でオンバシラと足を固定させたネジを外し、2人の足を自由にさせた。

「それで、この後はどうするんですか!? 花京院くん!」

「今すぐオンバシラの飛行を止めて下さい! 着地は僕が何とかします!」

「………ッ!」

焦りつつも言われた通り、オンバシラへの霊力の注入をストップする。
一瞬だけ重力から解放された感覚を味わい、次の瞬間2人の体はオンバシラと共に地上へと真っ逆さまに落ち始める。
だがこの敵はその程度では追跡をやめない。
張り付いていたオンバシラから離れ、空中を落ちながら花京院へとその邪悪な牙を向けて飛びかかった!

「き、来ましたよーッ!? こんな空中でどうやって追い払うんですかッ!?」

「エメラルド・スプラッシュで駄目なら粉々にするしかありませんッ! 東風谷さん、オンバシラを持ってください!」

花京院の意図が分かったのか、すぐに早苗は共に落下するオンバシラを脇で抱え込み、再び最大の霊力を込め始めた。

「メ…『メテオリックオンバシラァァーーーーッ!!!』」

軍艦の大砲を思わせる強力無比な巨大光弾が花京院に飛びかかる敵スタンドを丸々飲み込んだ。

「GYAHHHHHHHHHッッッ!!!!!!」

白光のレーザーに焼き尽くされ、その悪魔のスタンドは粉々に消滅する。
喜ぶ間も無く、撃ち込んだ反動で吹き飛ばされる早苗。

「きゃあああああぁぁぁーーーーーーーッ!?!?!?」

「東風谷さんッ!! 掴まって下さいッ!」

絶叫する早苗をスタンドで掴んで抱き寄せ、花京院は更にハイエロファント・グリーンを展開させた。
スタンドをヒモ状に細く分け、何重にも薄く重ね合わせる。
やがて出来たそれをマットの代わりとし、自分たちの下に敷く。
多少の空気抵抗も生まれ、落下の速度を減少させてくれる。
すぐ真下の地上では、黄色い草原が広がっていた。地図によれば確かここは『太陽の畑』と書かれた向日葵畑。
花を潰してしまうのは心痛いが、土も柔らかいだろう。死ぬことはないはずだ。

花京院は広げたスタンドのマットを今度は何重にも網のように重ね、『ネット』を生成。
落下の衝撃に備え、早苗を抱きしめる腕に一層力を込めた。

そして―――


「うおおおぉぉぉぉーーーーーーーーッッッ!?!?」

「きゃああああああああああぁぁぁぁッッッ!?!?」


ド ォ ォ オ オ ー ー ン ッ !!



早苗の奇跡を操る力かは定かではないが、2人は無事に怪我なく『着陸』した。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


「―――花京院、典明……!」


「……ポル、ナレフ?」


2人の男が向き合っていた。
それは遥か遠いエジプトへの路を共に旅してきたかけがえのない仲間。
花京院の感覚ではつい数時間別れていただけに過ぎないが、実に数年ぶりの再会のようにも思えた。
思いがけない『友』との出会いに、花京院の心もすぐに喜びで満ちる。

「ポルナレフ! 心配したぞ! だが…あぁ、無事で本当に良かった……!」

落下の衝撃で多少ふらついたが、花京院はすぐにポルナレフへと駆け寄った。
しかし、


「それ以上近づくなッ! 俺の許可なく足を動かせば瞬間、細切れにしてやるからな。まず色々質問させてもらうぜ」


2人の間には、致命的な『ズレ』があった。
花京院の足が止まる。

「ポルナレフ……!? 何を突然言い出す?」

「貴様はジョースター一行の花京院典明だったか? 悪いが俺はよく知りもしねー奴をそう易々と近づけるほどアホじゃねーぜ。
 まず、何だっていきなり空から降ってきやがる? 人間大砲の練習でもしていたか?」

ポルナレフはそう制し、『シルバー・チャリオッツ』の剣を向けてきた。それは間違いなく花京院もよく知るスタンドの姿だ。
だからこそ花京院は余計に混乱する。ポルナレフが今放った言葉の意味がよく分からなかった。

「おいポルナレフ! お前はジャン・ピエール・ポルナレフだろう!? 僕のことを忘れたとでも言うのか!?」

「あぁ? だから花京院典明だろう? 随分馴れ馴れしい奴だな」

「ポルナレフ……? 何だ、コイツらお前の知っている奴か?」

「あの……花京院くん? どうしましたか? ポルナレフさんって、確か花京院くんのお仲間でしたよね……?」

相方の様子にジャイロと早苗も疑問を投げてきた。
花京院は動揺する。まるで自分の事を殆ど知らないかのようなポルナレフの口ぶり。
これでは自分の気が違っているみたいではないか。
だが事実、彼は僕をよくは知らないと言い、僕だけが彼を仲間として見ている。
これはどういうことだ? この一方通行の理解はどう解釈すればいい?
まさかコイツ、足を滑らせて頭でも打って……いやいや、彼は確かにマヌケな所はあるがそこまでマヌケでもない、と思う。
目の前のポルナレフの瞳には、嘘や演技の色は見えない。それは確かに『警戒』しているような目をしていた。


花京院は混乱を極める頭をどうにかして冷静に考え、ひとつずつ順序立てて考えることにした。
もし考えを誤れば最悪、花京院は仲間の手によって斬り裂かれることになりかねない。
落ち着いて、ロジックを組み立てるように思考する。

そもそも不可解なのはあの『名簿』と支給品の『記憶DISC』だ。
死んだ者の名が載る参加者名簿。未来の承太郎の記憶。
荒木と太田が『時間を操る』能力を有している可能性は最初に考察したばかりだが、しかしそんなことが本当にありえるのか?
いや、これを確かめる簡単な方法があった。

「ポルナレフ……。ひとつ聞きたいが、君はこの会場に連れて来られる前、『何処』に居た?」

「……おい、質問してるのはこっちだぜ。次ナメた口きくと八つ裂きにして―――」

「―――頼む。答えて欲しい。 ……ポルナレフ」

深く頭を下げる花京院を見て、ポルナレフは何故だか答えなくてはいけない。そんな気持ちになった。

「……中国のタイガーバームガーデン。そこで『魔術師の赤』のアヴドゥルや貴様たちと戦おうとしていた。
 次の瞬間、俺は気付いたらここに連れてこられていた。これがお気に召す回答か?」

バラバラだったピースがカチリと組み合った。

それと同時に花京院は途方も無い脱力感に覆われ、目の前が真っ暗になった。
ここにいるポルナレフは確かに花京院の知る男であり、そして花京院の知らない男だった。
50日間に渡るエジプトへの旅は花京院にとって、そしてその仲間達にとって何にも代えがたい物となった。
しかしこのポルナレフはその思い出も、絆も、一切を持ち合わせていないポルナレフ。
友情を何よりも大切に想う花京院にとってその事実は、この上なく辛い衝撃を与えた。

「そう、か……そうか……。君は……僕の知っているポルナレフでは、なかったのか……」

「……花京院典明、アンタ…俺のことを知っているのか……?」

項垂れる花京院を見て、流石にポルナレフも違和感を覚えてきた。
何か会話が噛み合わない。まるで自分と花京院が友人同士だと言わんばかりだ。
重苦しい雰囲気が漂う中、ポルナレフの後ろに立つジャイロが口を開く。

「おいお前さん、あんたこのポルナレフをよく知っているみたいだな?
 ……オレにも何となく察しがついてきたぜ。神子やメリーが話していたな。
 このゲームの参加者はどうも『違う時間軸から連れてこられた』と……。
 オレの言いたいこと分かるかポルナレフ?」

「………!」

ジャイロの言葉を受け、ポルナレフにもようやく察してきた。
DIOの支配から解かれたとはいえ、この花京院はポルナレフの最後の記憶の上では敵ではあった。
今のポルナレフの居場所は、幽々子やメリーらの隣であることは間違いない。花京院は自分からすれば赤の他人も同然。
だがこの花京院の表情は、何か自分達の間にどうしようもない『ズレ』が存在するのではと思わせるには充分だった。

こんな時、どうすればいいのか分からない。
だがこのままでは『納得』することも出来ない。
ポルナレフという男は、花京院と同じ様に友情を何よりも大切に想う人間だったからだ。

「……花京院典明。次は俺の質問だ。 ……俺はあんたにとって『何だ』?」

答えを聞くのが少し恐ろしくもあった。
もしもポルナレフの想像している通りの答えだったならば、2人の中で決定的な『何か』が壊れてしまう気がする。
それでも聞かないわけにはいかない。それがポルナレフにとっての『納得』であった。
伏せていた顔を上げた花京院の表情はとても辛そうであり、それがポルナレフには泣いて見えた。




「―――このDISCを頭に挿してください。それで全てが……理解出来るはずです」


しかし花京院が次に言った言葉は、ポルナレフの予想にしない内容だった。
そう言って差し出された彼の手には1枚の『DISC』。円盤だ。
わけがわからなかったが、花京院の目は至って真面目である。
怪しみながらもポルナレフはそのDISCを受け取り、躊躇しながらそれを頭に挿して―――


―――そして、一瞬で全て理解出来た。


未来の空条承太郎の記憶。その中に眠る50日の旅が鮮明にポルナレフの中に蘇る。
いや、それはここにいるポルナレフ自身体験したことの無い、いわば偽りの記憶。
未来のポルナレフが体験するはずだった数々の出来事が、まるで走馬灯のように頭に流れ込んでくる。


―――『いっておくがジョースターさんッ! 俺はこのままおめおめと逃げ出すことはしねーからなッ!』
―――『僕もポルナレフと同じ気持ちです』
―――『いやだッ! 俺は逃げることだけはできねえッ! アヴドゥルとイギーは俺のために死んだッ!』
―――『承太郎……この旅行は…実に楽しかったなあ……色んなことがあった…』
―――『まったく、フフフフフ…。本当に…楽しかった…50日間じゃったよ』
―――『花京院! イギー! アヴドゥル! 終わったよ……』
―――『つらいことがたくさんあったが…でも楽しかったよ。みんながいたからこの旅は楽しかった』
―――『そうだな……楽しかった…心からそう思う…』
―――『それじゃあな!! しみったれたじいさん! 長生きしろよ! そしてそのケチな孫よ! 俺のこと忘れるなよ!』
―――『また会おうッ! わしのことが嫌いじゃあなけりゃあな! …マヌケ面ァ!』
―――『忘れたくてもそんなキャラクターしてねえぜ…てめーはよ。元気でな……』



―――『あばよ……』



映像はそこで途切れた。
否。堪らなくなってポルナレフが自ら取り出した。

所詮は他人の記憶。自分が体験したものではない。
だが空条承太郎というかけがえのない仲間の記憶は、DISCによってポルナレフの脳にリアルな感情と情景をもたらした。

ポルナレフには気の知れた友人などは居ない。
復讐に身を委ね、孤独に生きてきたといっても良いだろう。

だが確かに……確かに自分には仲間が居た。友人が居た。想い出があった。
孤独だった自分の人生には、何よりも大切な『居場所』があったのだ。
それを知れただけで、失った幸せを取り戻せた感覚になれた。

彼は同時に恥じた。
仕方の無いこととはいえ、目の前の花京院との友情を侮辱したも同然だったのだから。
しかしこんな自分が許されるのなら、もう一度。

「すまねえ……! す、まなかった……『花京院』……っ! 俺は……おれは……っ」

もう一度だけ、『友』でいて欲しい。
涙を流しながら懇願するポルナレフの姿に、花京院は。

「……これは、『仲直りの握手』だ。 ……ポルナレフ」

涙を溜めた笑みを浮かべながら、腕を差し出す。
その言葉の意味はかつての花京院とポルナレフの2人しか知らない、深い意味となるもの。
故にDISCにも存在しなかったその記憶が無い今のポルナレフでは、その言葉の真の意味は計れない。
しかし不思議なことにポルナレフには、その『仲直りの握手』が2人にとって大きな意味となることが何となく分かった。

ポルナレフは間を置かず、その握手に応えた。
嗚咽を流し震える友の肩を、花京院は優しく叩く。



はぐれた銀屑の星は、いま再びかつての煌きを取り戻した。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「そうか……、じゃあ君はこのままメリーさんを助けに行くのだな」

「ああ! お前の事も心配だが、彼女達も俺の『居場所』に違いねえ! そこだけは曲げられねえぜ!」

「フフ……。やはりポルナレフはポルナレフのままだな。いつもの真っ直ぐな君だ」

「あー? なにワケのわからねえこと言ってんだよ花京院」

あれからすぐにお互いの状況を簡潔に話し、4人は状況を再確認した。
青娥急襲のこと。神子の死。攫われたメリー。
八坂神奈子を探してこの地まで来たこと。途中謎のスタンドに襲われたこと。
ポルナレフとジャイロはすぐにメリーの救出に向かうという。
花京院は仲間として彼らに同行したい気持ちもあったが……

チラリとジャイロの傷の手当をしている早苗の方を振り向く。
ジャイロの千切れた右腕は、早苗の『ナット・キング・コール』によって応急の接合処置は施されている。
所々喰われた肉片の欠損は目立つがこれで以前のように鉄球を投げられるはずだ。
手持ちの止血剤でジャイロの手当てをしながら早苗は花京院の視線に気付き、申し訳なさそうな顔をした。

「私も出来ればメリーさんの救出をお手伝いしたい所ですが……私にはやるべきことがあるんです。
 すみません。でも花京院くんが御友人を協力したいのであれば私は止めたりなんかしません」

花京院と早苗の方も、やるべき使命はあった。
逃げた神奈子を追い、その凶行を止める。
花京院の天秤は多少揺らいだが、それでもポルナレフの事を信頼して、こう言った。

「ポルナレフ。僕たちの方も優先すべきことがあります。ですから残念ですが、君の方を手伝うことは難しいようです」

「ああ。お前ならそう言うと思ったよ。 ……早苗ちゃん、しっかり守れよ」

「君こそ、メリーさんを絶対救ってくださいね」

まるで昔からの親友同士のような会話。
そんな台詞にポルナレフは心の中が温かくなる。


「さあ、オレの方も治療は終わったぜ。そうと決まったらさっさと行くぞ、ポルナレフ
 ……神子の仇は絶対に取らなくちゃならねえからな」

ジャイロが繋ぎ終えた右腕をグルングルン回しながら歩き始める。
ポルナレフもすぐにそれに倣い、覚悟を固めた。
神子を失った事実は、ポルナレフにも大きな衝撃を与えたのだ。
これ以上、誰も失わせない。そんな覚悟で2人は歩き出す。

「花京院くん。 ……私達もそろそろ」

「……ええ」

こんな狂ったゲームの中でも、彼らには彼らの道がある。
願わくばもう一度、彼らの道と僕らの道が交差することを願って……

ポルナレフたちを見送りながら、すぐに自分達もここを発つため落ちたオンバシラを拾うために振り返った

―――時だった。



「―――東風谷さん。振り返らないで下さい。 ……ゆっくりです。ゆっくりこっちへ、歩いて来て下さい……!」



花京院の顔色が激変した。
早苗の、いや早苗の『後方』を凝視しながらゆっくりと手を差し出している。
その様子に早苗はただならぬ予感を感じ、冷や汗を流しながら―――後ろを振り返った。





「GYYYYYAAHHHHHHHHHHーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」



そこには再び悪魔が居た。
さっきよりも更なる巨大な姿で、その獰猛な牙を早苗に光らせて。

「ひ………っ!!」

「東風谷さんそこを決して動くなッ!!! こいつは何かを『探知』してそれに向かって動いているッ!
 ポルナレフゥーーーッ!! ジャイロォーーーッ!! さっきのスタンドだァーーーッ!!」

すぐさまポルナレフとジャイロを呼び戻し、花京院は思考を開始する。
この怪物はバラバラになってなどいなかった。
その不死なるスタンドの僅かな破片がオンバシラへと取り憑いたまま、再生と構成を繰り返しながら巨大化していたのだ。
オンバシラに溜まった膨大な霊力を取り込み、自分の物にして再び復活した。
全く不死身なスタンドだ。こんな敵をどうやって倒せばいいのか。
ジャイロ曰く、このスタンドは本体が既に死亡しているという今までの常識を覆すスタンド。
ならばやはり『自動的』! コイツは何を探知して動いているッ!?

ジャイロは最初、コイツは回転する鉄球に向かって攻撃してきたと言う。
そして次に走り寄って来たポルナレフを襲い。
窮地の所を今度は空に向かって飛んでいった。
恐らく飛行する僕たちを感知して!
最後に飛び降りた僕たちに反応し、オンバシラを離れて攻撃してきた。
もう確実だ……! コイツの探知している物が分かった!

「おい、花京院……このバケモン、さっきよりデカくなってねーか?」

「おい……おいおいおいおいおいこんな奴どーやって倒すんだ?」

「ポルナレフ、ジャイロ。よく聞いてください。コイツは恐らく『動いているもの』を最優先で攻撃してきます。
 それもその速度が速ければ速いほど、より速いスピードで追いついて来るのでしょう。
 至近距離でのエメラルド・スプラッシュも全て受け止められたんだ。絶対に素早く動いてはいけませんよ……!」

花京院、ポルナレフ、ジャイロが3人並ぶように戦闘態勢をとった。
花京院たちと敵との間に挟まれるような形で、固まって動けない早苗が膝を振るわせる。

「東風谷さん、ゆっくりです……! そこからナメクジのようにゆっくりとこちらへ戻って来てください……!」

「なななナメクジって、この状況でそんな悠長な……!」

「早苗ちゃん早く! いや、遅く! 中国人のする太極拳のようにゆっくりとだぞ……!」

「…ポルナレフ、君たちはすぐにメリーさんの元へ向かってください。コイツは僕と東風谷さんで何とか……」

「バーーーカ! 俺を舐めてんじゃねえぞ、お前達だけで戦わせるわけにはいかねえだろーが!
 みんなでコイツを『秒殺』してすぐにメリーを追うぜ!」

今やこの怪物は人間大ほどの大きさにまで巨大化している。オンバシラの無尽蔵なエネルギーを取り込んで成長したのだろう。
果たしてこんな敵が倒せるのか……? だが花京院らが旅した中で、無理だ無謀だのなんて言葉は無かった。


コイツはこの世から消さなければならないッ!


『法皇』と、『銀の戦車』と、『鉄球』を構え、不死の化物との戦いが始まった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


【E-6 太陽の畑/午前】

【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:体力消費(中)、右脇腹に大きな負傷(止血済み)
[装備]:なし
[道具]:空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部、不明支給品0~1(現実のもの、本人確認済み)、基本支給品×2(本人の物とプロシュートの物)
[思考・状況]
基本行動方針:承太郎らと合流し、荒木・太田に反抗する
1:目の前のスタンドを倒す。
2:東風谷さんに協力し、八坂神奈子を止める。
3:承太郎、ジョセフたちと合流したい。
4:このDISCの記憶は真実?嘘だとは思えないが……
5:4に確信を持ちたいため、できればDISCの記憶にある人物たちとも会ってみたい(ただし危険人物には要注意)
6:青娥、蓮子らを警戒。
[備考]
※参戦時期はDIOの館に乗り込む直前です。
※空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部を使用しました。
 これにより第6部でホワイトスネイクに記憶を奪われるまでの承太郎の記憶を読み取りました。が、DISCの内容すべてが真実かどうかについて確信は持ってません。
※荒木、もしくは太田に「時間に干渉する能力」があるかもしれないと推測していますが、あくまで推測止まりです。
※「ハイエロファントグリーン」の射程距離は半径100メートル程です。
※ポルナレフらと軽く情報交換をしました。


【東風谷早苗@東方風神録】
[状態]:体力消費(中)、霊力消費(中)、精神疲労(小)、右掌に裂傷(止血済み)、全身に多少の打撲と擦り傷(止血済み)
[装備]:御柱@東方風神録、スタンドDISC「ナット・キング・コール」@ジョジョ第8部
[道具]:止血剤@現実、十六夜咲夜のナイフセット@東方紅魔郷、基本支給品×2(本人の物と美鈴の物)
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。この殺し合いを、そして神奈子を止める。
1:後ろのスタンドをどうにかする。取り込まれたオンバシラも取り返したい。
2:『愛する家族』として、神奈子様を絶対に止める。…私がやらなければ、殺してでも。無関係の人はなるべく巻き込みたくない。
3:殺し合いを打破する為の手段を捜す。仲間を集める。
4:諏訪子様に会って神奈子様の事を伝えたい。
5:3の為に異変解決を生業とする霊夢さんや魔理沙さんに共闘を持ちかける?
6:自分の弱さを乗り越える…こんな私に、出来るだろうか。
7:青娥、蓮子らを警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくとも星蓮船の後です。
※ポルナレフらと軽く情報交換をしました。


【ジャン・ピエール・ポルナレフ@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(中)、身体数箇所に切り傷、胸部へのダメージ(止血済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:メリーや幽々子らを護り通し、協力していく。
1:メリー救出。
2:花京院たちと協力してこの敵を秒殺する!
3:仲間を護る。
4:DIOやその一派は必ずブッ潰す!
5:八坂神奈子は警戒。
[備考]
※参戦時期は香港でジョースター一行と遭遇し、アヴドゥルと決闘する直前です。
※空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部を使用しました。3部ラストの承太郎の記憶まで読み取りました。
※はたての新聞を読みました。


【ジャイロ・ツェペリ@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:疲労(中)、身体の数箇所に酸による火傷、涙と洟水(現在ほぼ沈静)、右腕欠損(ネジで固定)
[装備]:ナズーリンのペンデュラム@東方星蓮船 、ジャイロの鉄球@ジョジョ第7部(欠損多し)
[道具]:ヴァルキリー@ジョジョ第7部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョニィと合流し、主催者を倒す
1:目の前のスタンドを倒す。
2:メリーを救出。
3:青娥をブッ飛ばし神子の仇はとる。バックにDioか大統領?
4:ジョニィや博麗の巫女らを探し出す。
5:リンゴォ、ディエゴ、ヴァレンタイン、八坂神奈子は警戒。
[備考]
※参戦時期はSBR19巻、ジョニィと秘密を共有した直後です。
豊聡耳神子博麗霊夢、八坂神奈子、聖白蓮、霍青娥の情報を共有しました。
※はたての新聞を読みました。

※E-6 太陽の畑に豊聡耳神子の死体が置かれています。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽





「ポ……ポルナレフさんッ! ジャイロさぁーんッ!!」

「……っ!? 阿求!? 来るなッ!! 危険だッ!!」


動けば殺られる膠着状態が少し続いた中、遠くから阿求が駆け寄ってきた。
その様子は周章狼狽といった感じで、躓きそうになりながら慌てて向かって来ている。
ポルナレフは阿求を近づかせまいと大声で叫んだが、彼女はそれどころではないほどに取り乱していた。

「ごめんなさいッ!! わ、私のせいで…私が止めるべきだったのに……ッ!」

要領無く、なんとも的を射ない言葉だったが、ポルナレフは直感的に嫌な予感がした。





「―――幽々子さんが……っ! 幽々子、さんが……っ!」


「―――な、に……? 幽々子さんが、どうしたって……!?」







▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽







ひた、ひた、ひた。

行き処を見失った亡霊のように。
死してなお動き続ける亡者のように。
空虚を宿した瞳で、取り留めの無い足取りで、目覚めた女は歩く。

力無くだらんとぶら下げた右腕には従者の愛刀。
この刀で誰を斬らんとするのか。
何も、何も分からない。
彼女には、何を信じて良いのか分からない。

ただひとつ。
『彼女』に会わなければ。
その想いひとつで、泳ぐように進む。




「ゆかり…………あなた、いま………どこに…いるの………? ねえ、……ゆかり………どうして……」




Chapter.5 『DEAD DREAM』 END


【E-6 北の平原/午前】


西行寺幽々子@東方妖々夢】
[状態]:茫然自失、霊力消費(小)、疲労(小)、左腕を縦に両断(完治)
[装備]:白楼剣@東方妖々夢
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。しかし…
1:紫に会って真偽を問う。
※参戦時期は神霊廟以降です。
※『死を操る程度の能力』について彼女なりに調べていました。
※波紋の力が継承されたかどうかは後の書き手の方に任せます。
※左腕に負った傷は治りましたが、何らかの後遺症が残るかもしれません。


稗田阿求@東方求聞史紀】
[状態]:疲労(中)、自身の在り方への不安
[装備]:なし
[道具]:スマートフォン@現実、生命探知機@現実、エイジャの赤石@ジョジョ第2部、稗田阿求の手記@現地調達、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いはしたくない。自身の在り方を模索する。
1:私なりの生き方を見つける。
2:メリーを助けたい。
3:幽々子さんも追わなきゃ…!
4:主催に抗えるかは解らないが、それでも自分が出来る限りやれることを頑張りたい。
5:荒木飛呂彦、太田順也は一体何者?
6:手記に名前を付けたい。
[備考]
※参戦時期は『東方求聞口授』の三者会談以降です。
※神子が死んだことはまだ知りません。
※はたての新聞を読みました。


○支給品紹介

<催涙スプレー@現実>
魂魄妖夢に支給。
相手の顔面に向けて噴射する小型スプレーの防犯・護身グッズ。
カプサイシンを主成分としたOCガス(トウガラシスプレー)がスプレー缶より勢いよく噴射される。
これを顔面にスプレーされると皮膚や粘膜にヒリヒリとした痛みが走り、咳き込んだり涙が止まらなくなるなどといった症状が現れる。

<音響爆弾@現実>
星熊 勇儀に支給。
3個セットの非破壊・非致死性手榴弾。安全ピンを抜いて数秒後に爆発する。
爆発時の爆音・閃光により、付近の者に一時的な眩暈、難聴、耳鳴りなどの症状を起こす。

<スタンドDISC「ノトーリアス・B・I・G」@ジョジョ第5部>
破壊力:A スピード:∞ 射程距離:∞ 持続力:∞ 精密動作性:E 成長性:A
魂魄妖夢に支給。
自動操縦型のスタンド。本体が死亡することによって初めて発現する。
本体がいないため射程距離がなく、肉体やスタンドなどのエネルギーを取り込んでいくので持続力も無限大である。
またエネルギーを取り込む度に巨大化していく。
近くにあるものの中で『最も速く』動くものをそれと同じスピードで最優先に追跡し攻撃するが、逆に速く動きさえしなければ攻撃されることもない。
細切れになっても破壊されても永遠に再生を繰り返し、実質的には不死のスタンド。完全殺害不可能。

105:人妖彼岸之想塚 投下順 107:大脱走
105:人妖彼岸之想塚 時系列順 107:大脱走
073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ 稗田阿求 109:母なる坤神よ、友と共に
073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ 西行寺幽々子 135:亡我郷 -自尽-
073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ マエリベリー・ハーン 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
096:カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲 宇佐見蓮子 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
096:カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲 霍青娥 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
094:Green,Green 東風谷早苗 109:母なる坤神よ、友と共に
094:Green,Green 花京院典明 109:母なる坤神よ、友と共に
073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ ジャン・ピエール・ポルナレフ 109:母なる坤神よ、友と共に
073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ ジャイロ・ツェペリ 109:母なる坤神よ、友と共に
073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ 豊聡耳神子 死亡

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最終更新:2016年03月08日 01:25