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C-4

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Cグループ第四話『破壊』


今回予告

―死闘の末、ヨハンたちはキマイラベムスターを倒すことに成功した。だが、それで全てが終わったわけではない。
レイクの指摘によりコウテツ島にハーテン教の施設があるのでは、との疑いが残っていたからだ。
リアノの船を使い、コウテツ島に向かおうと考えるヨハンたちは、ポケトピアで知り合った謎の女性、ミルから思わぬ提案を受けることとなる―

地図


ハンドアウト

  • PC⑥用ハンドアウト
君は依頼を受けて色々な場所に忍び込んできた盗賊だ。だが、ハーテン教の幹部『炎龍』クロ・ロホルムは君が苦労して盗み出したものに対し、表面的な感謝の言葉はあっても一銭たりとも謝礼を払おうとしなかった。このことは君の生活と誇りに関わる問題であり、君が友人ティボルトの提案を受けてハーテン教から独自に「謝礼」を得ようとする理由でもある。
マックス・ボンバー

  • PC⑦用ハンドアウト
君はアーク・ポケェの紹介を経てブースト・スターの元で働く優秀な密偵の一人だ。たまたまサラサと顔見知りであったため、君はポケトピアでの騒ぎを知ったブーストから詳細を調べるよう命令される。キマイラベムスターの騒動により混乱を極めたポケトピアで、どうにかサラサと出会った君は、気づけば共にコウテツ島に向かうことになっていた。
セルモクラスィア

登場人物

PC


前回までの登場人物

  • レイク(ネヴァーフ、女性、37歳)
ハツデンショの研究員で、グレンとは大学時代からの友人。
キンバリーがキマイラを作ろうとしているのではとの書類を手に入れたことがきっかけとなり、グレンに調査を依頼。
そのことが事実だと判明した後、キンバリーがコウテツ島で研究していることを突き止めた。
コウテツ島に向かうべくポケトピアにやってきたところ、キマイラベムスターの騒動に出会ってしまう。

  • スオウ・シノノメ(ヒューリン、男性)
サラサの父。それなりに名の知れた剣豪であり、かつてはアサギで剣術を教えていた。
娘と同じく強い正義感の持ち主だが、割と豪放な性格である。
4年前、技術面では敵なしとなりつつあったサラサに対し、もはや教えることはないと言い残し、何処かへと旅立つ。

アサギの太守。アサギやタンバなど、その統治下にいる人々の生活を平和で安定的なものにするべく日々奔走している。
ポケトピア太守のスッグニー・ゲルに依頼されサラサをポケトピアに派遣。
更に、キマイラベムスターの話を聞くや、ポケトピアの詳しい情報を入手すべくセルモを向かわせる。

  • ミル(ヒューリン(ハーフフィルボル)、女性、32歳)
若いお姉さんとして見られることに情熱を燃やしている女性。
戦時は鬼を模した仮面を被り、何もない空間からドラム缶を唐突に出現させる手品もできる。
本職は密偵であり、主人であるデュ=グヮの命を受けハーテン教徒に加わるふりをしながらコウテツ島についての情報を収集していた。
コウテツ島に向かおうとするヨハンたちに、ギルド『ダブルスロット』の面々との共闘を提案する。

燃える様な熱き戦いを求める乙女。特に、強者との戦いに憧れを抱いており、そのためなら立場を変えることもいとわない。
ヒロズ国の将軍たちと戦えそうだからとの理由でハーテン教徒に味方していたが、
コウテツ島でハーテン教徒の秘密兵器と戦える可能性を示唆され、ヨハンたちやギルド『ダブルスロット』の面々と共にコウテツ島に向かうことを決意する。

  • スッグニー・ゲル(ヴァーナ(アウリル)、男性)
ポケトピアの太守。太守にしては身軽なフットワーク(逃げるという面において)を持つ。
実際、彼がキマイラベムスターを見るなり逃げたことで、ブーストはその日の午後にその存在を知ることができた。

今回からの登場人物(ギルド『ダブルスロット』)

  • ティボルト(ドゥアン(セラトス)、男性、28歳)
赤く細い二本の角を頭に生やしたドレッドモヒカンの男性。優秀な盗賊であり、マックスとは何度か協力したこともある。
ホイップからの依頼を受けて、ミルと協力しながらハーテン教徒の下に潜入調査を試みていた。
マックスがハーテン教の『炎竜』クロ・ロホルムに騙されたことを知り、ハーテン教徒にひと泡吹かせるよう誘いをかける。

  • コクサイ(ヒューリン(ハーフフィルボル)、女性、26歳)
緑髪を二つに結んだ女性。正義感が強く真面目ではあるが、融通は利く。
刀の使い手であり、高名な剣豪であったスオウ・シノノメの元で長期に渡り修行をしていた。
スオウに昔、足りないと言われたものについては、自分なりの回答を見つけだしている。
本名はテンジージョ。響きが格好悪いとの理由で現在はコクサイと自称している。

  • ホイップ・クリーム(ドラゴネット(アンスロック)、女性、33歳)
赤髪を長く伸ばした背の高いの女性。少々乱暴だが強い義侠心を持った性格であり、対ハーテン教に組織されたギルド『ダブルスロット』の実質的なリーダー。
元々はパルパークに古くからいる一族の出だが、ホイップ自身の乱暴な面を敬遠され閑職に追いやられていた。
ハーテン教の拠点となっていたコトブキ奪還をもくろむも、マルコーからキマイラの危険性を知らされるや方針を転換。
デュ=グヮ、イングラムと共にキマイラを破壊するべくコウテツ島強襲を計画していた。

  • ヴァニラ=アイス・クリーム(ドラゴネット(アンスロック)、女性)
ホイップの妹。赤髪を二つ結びにした活発そうな女性。
乱暴さから問題を起こしがちであった姉と異なり、勤勉で学識もある官吏として頼りにされていた……ようだが、たまにいくらかずれた発言をすることがある。
コトブキに派遣されていた時にハーテン教に襲撃に遭遇し、偶然からエスポワールを助け出す。
マルコーからの情報を受け、コウテツ島強襲を提案したのは彼女。

  • エスポワール・ド・メイソン(エルダナーン、男性、15歳)
銀髪で、固い意志を秘めた瞳を持つひたむきな少年。コトブキの良家出身であったが、ハーテン教のコトブキ占領に際して他の家族は全滅。
たった一人さまよっていたところをヴァニラに保護され、その身を案じた彼女の提案からクリーム家に客分として招かれていた。
ホイップ家で過ごすうちにハーテン教との戦いを決意し、その出自から『ダブルスロット』のギルドマスターとなる。

  • デュ=グヮ・ドゥ・モン(エルダナーン、女性、66歳)
長い茶髪の女性。寝食を忘れるほどの読書好きで、より多くの本が読めそうだからとの理由で官吏になったが、本を読む時間がなくなったため引退。
ヒワダに居を構え、大量の本と共に悠々自適の生活を送っていた。だが、ハーテン教の乱により家や家族を失ってしまう。
その後は本で得た知識を下にハーテン教徒に奇襲をかけ続けるも良い成果が出ず、密偵であるミルを雇い、ハーテン教に一撃を与える機会をうかがっていた。
マルコーから得たキマイラの情報こそ、その機会だと判断しホイップに協力を申し出る。知識量は抜群であり、具体的な作戦立案はほぼ彼女が行っていた。

  • マルコー(ヒューリン、男性、51歳)
苦労を重ねてきたような深い皺を持つ、柄な中年男性。高い技量を持つ錬金術師でもある。かつてはハツデンショで働いていたが、キンバリーの研究を知った際に、好奇心からそれに協力して大量の資材提供を行っていた。その事実に目を付けたハーテン教から、キマイラ開発への協力を強要されるも、良心が勝りこれを拒否。暗殺されかかったところを運良く通りかかったヨキに助けられる。以後は、ハーテン教の目をかいくぐりながらキマイラの撲滅方法を模索していた。
パルパークで出会ったホイップ、ヴァニラと話を重ねるうちに彼女たちに信頼を抱くようになり、『ダブルスロット』に協力するようになる。

  • ヨキ(エルダナーン、男性)
ちょび髭を生やした、弱気そうな男性。実際、逃げるのが得意なだけの小心者のこそ泥であったが、たまたま盗みに入ったマルコーの自室で、マルコーが暗殺者に殺されかかっていたところを助けてしまう。その後も続けざまに暗殺者に教われかけるがヨキの臆病さが幸いし、全て未然に防ぐ。更に、このままでは危険だと考えたヨキは二人の死を偽装することを提案し、実行。これら一連のことからマルコーに頼られるようになる。
ヨキ自身も他者に頼られていることが嬉しいようで、気づけばキマイラ討伐の一員となってしまった。

  • イングラム(ヒューリン、男性、26歳)
遺跡の探索を主とするギルド『ブリティッシュ』のギルドマスターであり、歴史に名を残すことを目標とする青年。
遺跡探索において様々な魔獣と戦った経験を持ち、かなりの自信家。
ハーテン教の乱が深刻さを増すにつれ、遺跡での発見よりも戦での功績の方が歴史に名が残ると考え、コトブキでの戦いに加わる。
そこでの活躍を間近に見たホイップからの勧誘を受け、キマイラ討伐に向かう。

  • スコット(ヒューリン、男性)
どっしりとした体格を持つ、寡黙で冷静な男性。元々は傭兵で、護衛などをしながら各地を転々としていた。
キッサキで妖魔と戦っていた際に、その働きぶりを見たイングラムから誘いを受け、『ブリティッシュ』に加入。
以後はギルドの守りの要として、幾度もギルドの危機を救ってきた。

  • ウェールズ(ドラゴネット(メディオン)、女性)
金髪長身の美人で、まだ若いながら知性溢れる女性…なのだが、風変わりな喋り方と性格から話す度に何かを失っている。
実際、ノースに誘われ『ブリティッシュ』に入るまでは仲間と呼べる人物もおらず、人形のロンドンだけが友人と呼べるような状態であった。
意外にも博識であり、『ブリティッシュ』においてはその魔術や宝物の鑑定を担当、その口調と性格もむしろ個性として受け入れられている。

  • ノース・アイルー(ヴァーナ(猫)、女性、21歳)
特徴的な語尾で話す陽気でやや楽天的な女性。タル型の爆弾をこよなく愛しており、暇さえあればタル型爆弾の研究に勤しんでいる。
その器用さ、身軽さからギルド『ブリティッシュ』においては罠の探知、解除を担当。
だが、面倒な罠を爆破しようとする癖があり、その度に周囲に止められていた。
コウテツ島強襲作戦においてもその爆弾の製造技術は如何なく発揮されることとなり、錬金術師のマルコーと共に潜入時に用いるタル型爆弾を作成している。

ハーテン教徒

  • キンバリー・キンブリー(ドラゴネット(アンスロック)、男性、39歳)
グレンやレイクと同じ時期にタマムシ大学に在学していた男性。総髪で釣り目。
大学では錬金学部に所属する傍ら、キマイラに関する研究をこっそり行っており、それが明るみに出たことで放校処分を受けた。
現在はハーテン教の協力の下、巨大なキマイラを量産化に取り組んでおり、百体以上のキマイラの幼体を研究施設に保管している。

  • ゲイム・ウォッチ(ヒューリン、男性)
二年前にヨハンのもとに現れた老人。吹き飛ばされても首が取れても平然と話すなど、謎が多い。
ヨハンたちのコウテツ島襲撃を受け、部下である仮面の女をコウテツ島に派遣する。

  • 仮面の女(???、女性)
二年前にヨハンたちとキンバリーの隠れ家で出会った不気味な仮面をつけた女性。
ヨハンの師匠、マリアンナと似た声の持ち主であり、ゲイムが彼女を呼んだ名前もマリアンナであった。
ヨハンたちがコウテツ島襲撃を行った際、対テレポート結界が切れるやどこからともなく現れた。

  • ホワイト(ドゥアン(セラトス)、女性、21歳)
『雷龍』シロイコの勧めを受け、キンバリーの下に配属された若手の錬金術師。
類稀な美貌と腕力の持ち主であり、キンバリーの護衛も兼ねていたようだ。

  • キャシー(フィルボル、女性)
『雷龍』の部下である密偵。天性の危険察知力を持ち、コウテツ島に研究所を設けた際に奇襲を警戒した『雷龍』によって配属される。
研究所に着任してからは鼠一匹逃さない態度から『鼠狩り』との異名をつけられていた。

  • シロイコ・イビト(???、女性)
ハーテン教徒の六龍将軍の一人で、『雷龍』。キンバリーの実験に興味を持ち、協力を申し出る。
慎重な性格の持ち主であり、研究所に数名の護衛を送り込んでいた。

セッション内容

アサギにある、剣道場。二人の少女が剣を打ち合わせ、稽古をつけていた。赤髪の少女、サラサが鋭い攻撃を続けるも、緑髪の少女、コクサイはそれを見事にさばき、逆に一本を取る。その繰り返しであった。その様子を遠目に見ていた師匠、スオウに対し二人が更なる助言を求めるも、彼は技術面ではもう教えることはほとんどないが、まだ足りないものは多いと答える。その答えを求める二人に対し、スオウは自分で考えることだと述べ、他の弟子たちを見回りに向かうのであった。その数ヵ月後、コクサイはスオウから技術的には教えることはないと言い渡され、剣道場を去る。更に、サラサが16歳になってしばらくの後、今度はスオウ本人がサラサに教えるものはないと述べ、何処かへと去っていったのであった。10年も昔に言われた足りないもの、それは精神的なものではないかとサラサは考えていた。その弱さを克服するために、サラサはお面をつけている。しかし、本当にこれが解答なのだろうか。サラサはキマイラベムスターの残骸を見ながら考えていた。
キマイラベムスターがポケトピアに現れる数日前、マックスはハーテン教徒に依頼された地図を完成させ、相棒のデストラクションと喜びを分かち合っていた。俺ってすげーぜ、なぁ、デストラクション。マックスが空中に向かって手を差し伸べると、見えない何かとハイタッチを繰り広げる。その様子を依頼主『炎龍』クロ・ロホルムが困惑しながら見つめていた。やがて、興奮しすぎたデストラクションがうっかり正体を現してしまい、はじけ飛ぶ。マックスはその様子を見て大きくうなずくと、『炎龍』クロに地図を渡す。クロはその地図を満足げに眺めると、マックスに礼を言い、去ろうとした。マックスは慌ててクロを引き留めると、報酬を渡すようクロに訴えた。クロはそうだったと述べると、バルトが払ってくれると告げる。ならよかった、と安堵するマックスの前に現れたのは、二本の長剣を抜刀した、ネヴァーフの少女であった。彼女に勝てたら報酬を考えよう。そうクロは言い残すとその場から立ち去り、後には理不尽さを訴えるマックスの叫び声と謎の破裂音が残された。数日後、報酬が得られず気落ちしていたマックスの下に、特徴的な髪形をしたドゥアンのティボルトが現れる。彼はマックスに対し、ハーテン教徒から報酬がもらえなかったのなら、その十倍取ればいいと述べ、コウテツ島襲撃に参加するよう要請する。マックスはティボルトの手を取り(デストラクションは失敗してはじけた)、同意するのであった。
セルモはその日、ちょうど仕事が入っていなかったこともあり、愛トカゲ、アアアアとの優雅なひと時を過ごしていた。そのひと時は、セルモの主君、ブーストからの呼び出しによって終わりを告げる。ブーストの下に向かったセルモは、そこでポケトピア太守スッグニー・ゲルからポケトピアに巨大な人造生物が現れたことを聞かされる。スッグニーは一目散に逃げたためポケトピアの現状は分からないが、巨大生物からの被害を最小限に抑えるため、対策を練る必要がある。幸い、ブーストの部下でセルモと顔見知りであったサラサがポケトピアで警護役を任されていた。ブーストは、サラサと連絡を取り合い、巨大な人造生物の様子や与えた被害を調べるようセルモに告げる。セルモは頷くと、ポケトピアへと向かうのであった。
キマイラベムスターを倒したヨハンたちは、ミルからの提案を受けていた。なんでも、ミルやその仲間たちもコウテツ島に向かおうと考えているところであったらしい。どうせ行くなら一緒に向かった方が良いだろうとの考えを受け、ヨハンたちはミルの意見に同意、ミルの雇い主との合流地点へと向かう。
転送石の力を使い、ポケトピアへと向かったセルモは、荒廃した市場を北へと歩いていた。サラサのような外見をした人物が猫を連れ街の北に向かっていったとの情報を手に入れたためである。巨大な人造生物が街を破壊した様子は見てとれるが、その姿が見えないことに疑問を覚えていたセルモは、そこでひと組の男女と出会う。彼らはデュ=グヮ、スコットとそれぞれ名乗り、この辺りは危ないからいるべきではないとセルモに助言する。セルモはかわりに巨大な人造生物の居場所を尋ねるが要領を得られず、お互いにお互いに対する警戒心を高めるような会話が続いていた。転機となったのは、その最中にミルに連れられたヨハンたちが現れたことだろう。ヨハンたちの中にいたサラサがセルモのことを覚えていたこともあり、一行の誤解は無事解けたのである。
デュ=グヮはヨハンたちに対し、同士たちが待つパルパークへと移動することを説明。準備ができ次第ポケパークに向かうことを告げる。サラサがポケトピアの兵士たちに警備を任せたり、キャプテン・リアノが船員たちとの合流地点を決めたり、セルモがブーストへの報告を済ませたいと発言したこともあって、実際にパルパークへと向かったのは夜になってのことであった。
シンオウ地方の中では南に位置するパルパークではあったが、降り積もる雪の多さはヨハンたちの身長よりも高く、寒い。その中をデュ=グヮに案内された場所は、パルパークの中でもいくらか大きめの屋敷であった。デュ=グヮが呼び鈴を鳴らすと、しばらくして若い女性が門を空けた。ヨハン、サラサ、グレン、リアノ、セルモ、ミル、バルト、スコットとかなりの大所帯になった面々をデュ=グヮが申し訳なさそうに紹介すると、女性からは分身なのかとの質問が飛んできた。ヨハンたちの努力により即座に誤解は解け、一行は屋敷の一室へと案内されることへとなった。
その場所には、数名ほど先客がいた。赤い髪をした女性と、銀髪の少年、謎の髪形をしたドゥアンと自信あふれる表情をした青年、そして、虚空に向かって同意を求める怪しげな少年だ。
それぞれの自己紹介を済ませた後、リーダー格である赤髪の女性、ホイップから作戦に関する話を聞くこととなった。ミルとティボルトの調査によると、ハーテン教徒はコウテツ島に研究所を作り、巨大な人造生物―キマイラに関する研究を進めているらしい。そして、現在はおよそ100体ものキマイラがそこで製造され、ハーテン教の『兵器』としての役割を果たす準備が進められている。間もなく個体ごとに別々の場所への輸送が始まるらしく、その前に、このキマイラを製造している施設ごと破壊しようとするのがホイップたちのギルド『ダブルスロット』の作戦であった。とはいえ、コウテツ島は島一体に対テレポート用の結界が張られている上、船で近づこうにも備え付けの大砲で撃ち落とされる可能性が高い。おまけに内部には『鼠狩』という二つ名の女性がおり、その名の通り鼠一匹通さぬ彼女の実力もあって、少数での潜入が困難になっていたのだ。ハーテン教徒の振りをしていたころのティボルトが一度向かったことがあり、見取り図があることが唯一の幸運であった。潜入は二日後の夜になる。それまでにはどう潜入するか、考え直しておこう。ホイップがそう告げると、その場はお開きとなった。
コウテツ島の研究室では、キンバリーが机に向かって一心不乱にメモを書いていた。そんな彼に話しかけるものがある。ゲイムだ。ゲイムは最初の五体のキマイラが全て破壊されたことを告げる。キンバリーはその通りだと答え、この百体の修正ができるのは楽しいと述べる。ゲイムは、ヨハンたちがそのうちの一体を破壊したことと、この研究所の存在が彼らに気づかれていることを告げる。キンバリーが何かを答えようとすると、扉が開き、一人の女性が部屋の中に入ってきた。キンバリーとゲイムに『雷龍』と呼ばれたこの女性は、キンバリーに対し、研究の成果を聞き出す。最初の五体が全て破壊されたとの答えに女性は苦笑すると、そろそろ結果を残してくれと述べる。キンバリーは頷くと、『ミリオンズ』が働き始めてからが本番だ、と述べる。『雷龍』はそれで私の作戦もデータ取りに使うのかとぼやくと、万一研究所が破壊されてはたまらないからと、護衛を新たに一人配備することを告げ、去って行った。ゲイムもそれに続き、後にはキンバリーが筆を走らせる音が残るのみとなった。
デュ=グヮとミルの勧めもあって『ダブルスロット』に急遽加わることになったヨハンたちと、ティボルトの推薦で加わることとなったマックスは、『ダブルスロット』の面々と互いの理解を深めるべく、様々な話を進めていた……が、一人グレンは困っていた。目の前にいる少女、ウェールズが原因だ。彼女はグレンのことを天使テラテュスヴァルドゥスだと話し、人形のロンドンと共にグレンを崇め始めたのだ。事前にイングラムから彼女と話す時は注意した方がいいと言われていたグレンは、色々な気持ちを抑えながら、無事天使テラテュスヴァルドゥスとしての役目を果たしていた。この他にもスコットとの鍛錬に向かったヨハンが、十八番であるエアリアルスラッシュを放とうとして失敗し、それを新調した全身鎧のせいにしたり、キャプテン・リアノがノースの下で爆弾製造を手伝わされたり、マックスの相棒、デストラクションがはじけまくったり、セルモとデュ=グヮがどこから潜入すべきかを話し合ったりしていた。そんな中、サラサは姉弟子であるコクサイと数年ぶりの再会を果たしていた。スオウは元気かと尋ねるコクサイに対し、サラサはスオウがもう教えることはないとして四年前にアサギの剣道場から出て行ったことを説明する。コクサイはそんなサラサの様子を眺めた後、昔の質問に関する答えは得られたのか、と尋ねる。その質問をされたまさにその時、サラサはその質問の答えを見つけ出したのであった。何でも一人でこなそうとするのではなく、仲間を信じる強さを持つこと、サラサの回答はこれであった。コクサイはなるほど、と頷いた。今回のコウテツ島強行では仲間を信じる場面も確実に増えるであろう。では、仲間が失敗した時は? コクサイは軽く尋ねたが、サラサの目に宿る意志から、即座に回答を読みとった。本当に、サラサちゃんは強くなったんだね。
そして、二日後の夜。セルモの考えを中心に侵入方法を決めたヨハンたちは、マルコーとデュ=グヮのテレポートを駆使して、コウテツ島から船で四半日ほどの無人島へとやってきた。マルコーとデュ=グヮ、スコットが主導となり、この無人島で船を建設していたのである。ハーテン教の連中は、直接テレポートでやって来る連中は警戒しても、近くの島にテレポートで来る人間のことは考慮していないからな。イングラムがそう言うとにやっと笑った。だが、船で近くまで行ったところで、大砲が待ち構えているのではなかろうか。その疑問に対する答えが、ホイップの口から告げられた。間もなく、吹雪がこのあたりを襲う。それまでは、船で可能な限り接近するぞ。
コウテツ島の研究所。窓の外で吹きすさぶ雪を、キンバリーは眺めていた。と、後ろから黒い角を生やした、妖艶な美女が話しかけて来た。キンバリーの助手兼護衛として、『雷龍』から使わされたドゥアンの女性、ホワイトだ。どうやら、ミリオンズが入っている容器から異常が見られるらしい。キンバリーがホワイトと共に、研究室に向かおうとすると、反対側から片手に板が入ったバケツ、片手に小型の槌を持ったフィルボルの女性が走って来るのが見えた。彼女、『鼠狩』のキャシーはこの研究所に自分の許可なく入ろうとする雪が許せないらしく、屋根の壁に板を打ちつけようとしているらしい。キンバリーがいなくなることで管理室に誰もいなくなることを危惧した若い青年が、カエル型の人造人間とハリネズミ型の人造人間と共に管理室に残ることを聞き、キンバリーたちは研究室へと向かった。
一方、吹雪がひどくなった時点で船をあきらめ、飛翔符を利用して空を移動しているヨハンたちではあったが、ここでついに脱落者が出てしまう。レイクだ。ハツデンショ内での勤務を主としている彼女にとって、真冬のそれも吹雪の中動くことには限界があった。いくら、決死の覚悟でコウテツ島に向かう『ダブルスロット』の面々も向かう前に死なれては意味がないと、レイクと、付き添いとしてミルを送り返す。
どこだかわからない深い闇、老人が仮面を付けた人物に向けて、話をしていた。老人、ゲイムはヨハンたちがコウテツ島に奇襲をかけたことに気が付いたが、キンバリーが連絡に応じないことと、対テレポート結界のせいで自らが向かえないことを困った口ぶりで仮面の人物に話している。仮面の人物は特に反応を示さないが、気にした様子もない。色々話した後、ゲイムは仮面の人物に告げる。テレポート結界が外れた時は頼むぞ、マリアンナ。
ヨハンたちは、レイクとミルが離脱した後も身が凍るような吹雪の中を進み続けていた。ようやく、目の前にコウテツ島が見えたとき、更なる事件が発生する。バルトが雪の中迷子になったのだ。流石にこの雪の中戻ってバルトを探す方が難しい。バルトになるべくコウテツ島に向かうようホイップが告げると、ヨハンたちはコウテツ島に上陸した。『ダブルスロット』の一員であり、爆弾の専門家であるノースが作った爆弾を利用して壁に穴を空け、そこから侵入して対テレポート用の結界と三つある研究室にあるキマイラたちを爆破することが、作戦の目標である。マックスがノースからもらった爆弾を壁に設置しようと歩き出した時、ヨハンたちは突然殺気を感じた。見れば、虎が6体ほどヨハンたちを囲んでいる。だが、数の利はこちらにある。先手を取って一行が動き出そうとした時、リアノを刃が襲う。もう一人、フィルボルが隠れていたのだ。こいつが『鼠狩』か? そうおもいながらも、どうにか攻撃を耐えたリアノがお返しとばかりに鞭を唸らせる。フィルボルは避けようとするも、グレンの的確な指示によりからめとられ、そのままサラサの攻撃を受け沈黙。残りの虎たちもあっという間に倒すことに成功した。そして、改めて、マックスが爆弾を置き、総勢18名によるコウテツ島強襲作戦が始まったのである。
予定通り、マックスが破壊した壁の先は、住居が広がっており、ちょうどライオンと合体したような人間と、ゴリラと合体したような人間が茫然とした体でたっていた。が、流石は半分獣と言うべきか、即座に体勢を立て直す。その横を、ゴリラがファミリアであるマックスはゴリラ人間に多少愛着を覚えつつもエスポワールを引っ張り、先陣を切る。爆弾を設置していくことが彼らの役目であるからだ。そのすぐ後ろを補佐としてリアノがノース、ヨキと共に走る。更に、補助役であるゼンマイガーを連れたグレン、ヴァニラ、ウェールズ、セルモ、ティボルト、デュ=グヮが続き、サラサ、コクサイ、イングラム、マルコー、ヨハン、ホイップ、スコットの7人がライオン人間とゴリラ人間の相手をすべく部屋に残る。最初はライオン人間の相手をしようとしていたサラサとコクサイであったが、ゴリラ人間の挙動を見て、放置する危険性に気が付いたヨハンはまずゴリラ人間を狙うよう指示、自らも全力のエアリアルスラッシュを放つ。ゴリ人間は更にサラサとコクサイの攻撃を受け、身構えただけで倒れることとなった。ライオン人間も一矢報いようとするが、ヨハン、スコットの鉄壁に阻まれた後、セルモ、ヴァニラの支援を受けたサラサたちの攻撃を受け、あえなく撃沈。ヨハンたちは早々に後方の憂いを断つことに成功した。
一方、前方からは別の敵が向かってきていた。鎖鎌を持った若い男と、カエル人間である。若い男はハリネズミ人間に管理室に残るよう告げると、カエル人間を連れヨハンたちの迎撃に向かったのである。残されたハリネズミ人間はキンバリーの指示を受け、管理室の装置をいじくり始める。と、マックス、リアノ、セルモらが立っている通路の周りでシャッターが閉まりだし、更に謎のガスが通路を充満し始めたのである。
これを不味いと感じたサラサ、コクサイが見事は刀捌きでシャッターを破壊。更に、ヨハンが鎖鎌を持った男に魔法を打ちこむも、男は平然としている。どうやら、かなり頑丈な青年らしい。ヨハンは舌打ちすると、後ろにいるカエル人間めがけて魔法を再度放つ。カエル人間が相当痛そうな表情をしていることを読み取ったヨハンはカエル人間を狙うようマックス、リアノに進言する。だが、鎖鎌の若い男が上手くカエル人間を守り切り、逆に分銅を使った反撃を受けそうになるも、セルモの的確な指示により回避に成功する。そのまま、サラサ、コクサイ、イングラム、ヨハンらの猛攻を受けた鎖鎌の若い男とカエル人間は倒されるのであった。マックスとエスポワールはこの機に対テレポート結界の下に行き、爆弾を設置し始める。直後にシャッターが開き、外から黒い角を生やした若い女性、ホワイトと、ハリネズミ人間がヨハンたちのいる通路へと入ってきた。
ホワイトの拳をリアノが鞭で上手くいなすと、天使テラ……グレンの指示を受けたウェールズの支援がリアノに飛んでいく。ホワイト再度の攻撃はサラサがまともに食らうこととなったものの、お返しと言わんばかりに放った渾身の一撃が、ホワイトを壁に叩きつける。だが、これが不味かった。壁に吹き飛ばされたホワイトは起き上がると、よくもやってくれた、と言わんばかりの殺気を撒き散らしながら、ホワイトの倍はあろうかとの二本の長剣を虚空から取り出す。この殺気は、決死の覚悟でコウテツ島にやってきた『ダブルスロット』の面々ですら撤退を思わせるようなものであった。マックスがまさにその時、対テレポート結界を爆破したこともその願いを加速させる。そう、それはまさに、前回キマイラベムスター戦は皆を鼓舞したヨハンが瞬時に撤退を訴えるほどであった。だが、サラサやマックスの気合と決意、セルモの冷静な分析もあってどうにか持ち直した一行は、ホワイトをくぐりぬけキマイラたちの爆破へと向かう。
ホワイトとキンバリーの攻撃をリアノの鞭さばきやデストラクションの身を呈した行動(もちろんはじけた)、セルモの指示でいなしつつ、グレンのアーケンラーヴへの祈りを受けたリアノの鞭による一撃がホワイトを絡め、動きを止める。そして、この機を逃すかと言わんばかりにグレン、ヴァニラ、ウェールズの三人が三差路を右手に。マックス、エスポワールの二人が左手に。残された中央には鞭による一撃を放ったリアノ、ノース、ヨキが駆けだす。
一方、ホワイトとまだ生き残っているハリネズミ人間の脚止めに残ったヨハン、ホイップ、スコットではあったが、サラサによって壁に打ち付けられた挙句、リアノに足を止められたホワイトの殺気はすさまじく、ホイップ、スコットは一刀のもとに切り捨てられてしまう。残されたヨハンはホワイトと戦うことの無謀さを思い知り、ゼンマイガーを抱きかかえると、一足先に離脱する。だが、この時間稼ぎは重要であった。セルモはハリネズミ人間がシャッターを下ろすのを確認しており、彼女の指示を受けたサラサとマルコーが機械をいじり、ホワイトが通路を出るより先にあらゆる通路のシャッターを下ろしたのだった。ホワイトが怒りにまかせ、キンバリーが冷静にシャッターを破壊すると、サラサやコクサイたちも時間稼ぎのための的になるべく、一歩踏み出そうとする、だが、キンバリーもホワイトも、ハリネズミ人間ですらサラサたちを無視した。研究室にいる、キマイラたちを守ろうとしているのだろう。今から追いかけて行っても間に合うことはない。仲間を信じることこそが、大切なこと。サラサは父や隣にいるコクサイの話を受け、コクサイ、イングラム、マルコーと共に仲間を信じて撤退したのであった。
 破壊された通路の先には、セルモとデュ=グヮ、そしてティボルトが待ち構えていた。陽動のためだ。だが、通路を突き破ったホワイトはセルモたちを見向きもせず、真ん中の通路の先にあるシャッターを壊しにかかる。サラサたちへの反応から、ホワイトが一目散にシャッターを破壊しに行くことを大まかに予想していたセルモは、真ん中の通路の先にいるリアノたちに警告を流すと、セルモたち自身も陽動は不可能だとして転送石での脱出を図る。セルモたちが脱出しようとした瞬間、彼女たちの目の前を先程まではいなかった仮面を付けた人物が飛んでいくのが目に映った。
仮面が、セルモの声がそこで途切れた。何事かとリアノが振り返ると、二本の大剣を持つホワイトのすぐ後ろから、仮面を付けた人物が迫って来る。その瞬間にリアノは自らの運命を察した。今頑張れば爆弾を設置できるかもしれない。だが、確実に死ぬだろう。そこまで考えたリアノの脳裏に、走馬灯のように過去が思い返された。生まれ故郷での退屈な日々、初めてサラサと出会った日、初めて船に乗った日、そこで船長に気に入られ、船乗りになるための特訓をした日々、自らの力で手に入れた帆船プリンシプル。そして、自分を慕う部下たち。そこまで思い返したリアノは、直感的に生きなければならないと考えた。このキマイラたちは、後で何とかする。リアノはそう決意し、転送石を使った。
 リアノが先に帰った。グレンとマックス、更にヴァニラ、ウェールズ、エスポワールはノースの悲鳴のような声を聞いた。愕然としたグレンが聞き返すも、悲鳴が聞こえたきり返事はない。グレンはマックスと連絡を取りながら、せめてもと目の前のキマイラたちが貯蔵されている場所に爆弾を設置し、起爆。その後も、マックスと共に様子をうかがうが、真ん中の部屋から爆発音は聞こえることはなかったのであった。
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