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Cグループ第六話『城門』
今回予告
―H273年、8月。コガネ近郊で起きたブースト軍と『雷龍』シロイコ率いるハーテン教徒の戦いは、ヨハンたち砲撃部隊がハーテン教徒の切り札であったミリオンズを撃破したことで、ブースト軍の勝利に終わった。だが、ハーテン教徒たちはコガネに立てこもり、籠城の構えを見せている。
このままでは、兵力で劣るブースト軍は、コガネを前に撤退せざるを得なくなってしまう。そこでブーストは、コガネの守備隊長であったポケル・スミ・スターの助言を受け、潜入による城門の開放とシロイコの撃破を狙うこととした。
その依頼を受けるのは、ポケルとアークの他、少数精鋭のヨハンたち。果たしてヨハンたちは無事、城門を開くことができるのか。そして、城内にいるシロイコやキンバリーとの戦いの行方は―
このままでは、兵力で劣るブースト軍は、コガネを前に撤退せざるを得なくなってしまう。そこでブーストは、コガネの守備隊長であったポケル・スミ・スターの助言を受け、潜入による城門の開放とシロイコの撃破を狙うこととした。
その依頼を受けるのは、ポケルとアークの他、少数精鋭のヨハンたち。果たしてヨハンたちは無事、城門を開くことができるのか。そして、城内にいるシロイコやキンバリーとの戦いの行方は―
地図

登場人物
PC
PCの関係者
- レイク(ネヴァーフ、女性、37歳)
ハツデンショの研究員で、グレンとは大学時代からの友人。ヨハンの数少ない理解者でもある。
大学時代の友人であるシーダがキンバリーとかかわって亡くなったこともあり、第二のシーダが出てこないようグレンにキンバリーの調査を依頼していた。
とはいえ、戦いの才能がない彼女に代わって友人であるグレンを度重なる危機に巻き込んでしまっていることに後ろめたいものを覚えている。
自らに出来ることを求めて後方での支援を担当しながら、グレンたちの無事を願っている。
大学時代の友人であるシーダがキンバリーとかかわって亡くなったこともあり、第二のシーダが出てこないようグレンにキンバリーの調査を依頼していた。
とはいえ、戦いの才能がない彼女に代わって友人であるグレンを度重なる危機に巻き込んでしまっていることに後ろめたいものを覚えている。
自らに出来ることを求めて後方での支援を担当しながら、グレンたちの無事を願っている。
- ブースト・スター(ヒューリン、男性、32歳)
アサギの太守。セルモの上司であり、元部下であるサラサとの親交も深い。命令を受け、コガネにいるハーテン教徒との戦いに赴く。
ヨハンたちの活躍もあって野戦では勝利を収めるが、シロイコたちが籠城してしまったため、手詰まりとなっていた。
そこで、ポケルの提案を受けヨハンたちにコガネへの潜入を依頼する。
ヨハンたちの活躍もあって野戦では勝利を収めるが、シロイコたちが籠城してしまったため、手詰まりとなっていた。
そこで、ポケルの提案を受けヨハンたちにコガネへの潜入を依頼する。
- アーク・ポケェ(ヒューリン、男性、36歳)
ブーストの古い友人。セルモとも親交があり、彼女をブーストの下に誘った。
ブーストたちの参謀格であったが、魔術師としてもかなりの実力を持っている。
そのため、ポケルの提案を受けたブーストに頼まれ、ヨハンたちと共にコガネへと潜入する。
ブーストたちの参謀格であったが、魔術師としてもかなりの実力を持っている。
そのため、ポケルの提案を受けたブーストに頼まれ、ヨハンたちと共にコガネへと潜入する。
- ポケル・スミ・スター(ヒューリン、男性、35歳)
ブーストの親戚。コガネの守備隊長を任されていた人物。
ハーテン教徒の襲撃を受けコガネが陥落してからは、部下と共にブーストの下を頼っていた。
シロイコたちがコガネで籠城を始めるとコガネへの潜入を提案。自らもヨハンたちと共に忍び込む。
ハーテン教徒の襲撃を受けコガネが陥落してからは、部下と共にブーストの下を頼っていた。
シロイコたちがコガネで籠城を始めるとコガネへの潜入を提案。自らもヨハンたちと共に忍び込む。
- コクサイ(ヒューリン(ハーフフィルボル)、女性、26歳)
緑髪を二つに結んだ女性。サラサの姉弟子。正義感が強く真面目ではあるが、堅物ではないようで意外と融通は利く。
ゲイムに洗脳されヨハンたちの前に現れるが、サラサの一撃を受け昏倒。洗脳も解除された。
だが、半年にわたる洗脳のためか大きく体力が消耗してしまっており、現在は静養中。
洗脳される前にゲイムたちの会話を聞いており、ヨハンの師匠が仮面の女と同一人物であることを知る。
ゲイムに洗脳されヨハンたちの前に現れるが、サラサの一撃を受け昏倒。洗脳も解除された。
だが、半年にわたる洗脳のためか大きく体力が消耗してしまっており、現在は静養中。
洗脳される前にゲイムたちの会話を聞いており、ヨハンの師匠が仮面の女と同一人物であることを知る。
- モルガン・クヌート(フィルボル)、女性)
リアノの鞭の師匠。リアノの両親の古い友人だが、少女の様な見た目をしている。ベアーとの名の熊が相棒。
自分の個性を生かして鞭を使うべきとの考えの持ち主でもある。
リアノの活躍を聞きつけ、ベアーと共に帆船『プリンシプル』へと乗り込む。
そこで再会したリアノに自らが愛用していた手袋を譲り渡した。
自分の個性を生かして鞭を使うべきとの考えの持ち主でもある。
リアノの活躍を聞きつけ、ベアーと共に帆船『プリンシプル』へと乗り込む。
そこで再会したリアノに自らが愛用していた手袋を譲り渡した。
- ティボルト(ドゥアン(セラトス)、男性、28歳)
マックスの友人。威勢のいい喋り方とドレッドモヒカンが特徴。
(髪型が)印象的だったとセルモに称される出会いを果たしてから、セルモと共に行動することが多くなっている。
更に、前回身を挺して攻撃をかばわれたこともあって、セルモとの間に運命の赤い糸が結ばれると勘違いしてしまう。
そのため、戦いが終わってからセルモと共に行動するための口実を必死に探すが、出した結論はなぜか修行だった。
(髪型が)印象的だったとセルモに称される出会いを果たしてから、セルモと共に行動することが多くなっている。
更に、前回身を挺して攻撃をかばわれたこともあって、セルモとの間に運命の赤い糸が結ばれると勘違いしてしまう。
そのため、戦いが終わってからセルモと共に行動するための口実を必死に探すが、出した結論はなぜか修行だった。
- ゴン・ゴンゾー(ネヴァーフ、男性、26歳)
フライングバッファローを操る騎乗部隊『いてまえ』の司令官。巨大な斧を扱う猛将でもある。
当初、城内へと侵入する手段としてフライングバッファローの利用を提案したが、目立つうえに夜目が利き辛いとの理由で退けられた。
とはいえ、空を飛べるフライングバッファローの機動力は城門が開いた後に大きく活かされることとなる。
当初、城内へと侵入する手段としてフライングバッファローの利用を提案したが、目立つうえに夜目が利き辛いとの理由で退けられた。
とはいえ、空を飛べるフライングバッファローの機動力は城門が開いた後に大きく活かされることとなる。
- マンジュ・ゴッド(ドラゴネット(メディオン)、男性、29歳)
ブースト配下の錬金術師で、武芸にも秀でる。ブースト軍がコガネ近郊でシロイコ軍本隊と戦っている間にコガネを攻め落とそうとするも、失敗。
今回は潜入するヨハンたちに代わり、砲撃部隊を指揮することになる。
今回は潜入するヨハンたちに代わり、砲撃部隊を指揮することになる。
ハーテン教徒
- キンバリー・キンブリー(ドラゴネット(アンスロック)、男性、39歳)
グレンやレイクと同じ時期にタマムシ大学に在学していた男性。総髪で釣り目。
大学では錬金学部に所属する傍ら、キマイラに関する研究をこっそり行っており、それが明るみに出たことで放校処分を受けた。
作成していたキマイラの大半をコウテツ島への奇襲で失ったものの、最高傑作と評するミリオンズと共にシロイコ軍のコガネ攻撃に参加する。
だが、ブースト軍との戦いにおいてはグレンたちが作成した対ミリオンズ用兵器によってミリオンズは爆破されてしまった。
大学では錬金学部に所属する傍ら、キマイラに関する研究をこっそり行っており、それが明るみに出たことで放校処分を受けた。
作成していたキマイラの大半をコウテツ島への奇襲で失ったものの、最高傑作と評するミリオンズと共にシロイコ軍のコガネ攻撃に参加する。
だが、ブースト軍との戦いにおいてはグレンたちが作成した対ミリオンズ用兵器によってミリオンズは爆破されてしまった。
- シロイコ・イビト(エルダナーン、女性)
ハーテン教徒の六龍将軍の一人で、『雷龍』。キンバリーの実験に興味を持ち、協力を申し出る。
ヨハンたちによるコウテツ島襲撃でキマイラのほとんどを失うこととなったが、ミリオンズを守り抜くことに成功。
そのうち四体を引き連れてコガネを陥落させたが、対ミリオンズ用の兵器を導入したブースト軍に敗れ去る。
そのため、兵と共にコガネに籠城し、ハーテン・ノール本隊がコガネに到着するまでの間、ブースト軍からコガネを守り切ろうと画策する。
ヨハンたちによるコウテツ島襲撃でキマイラのほとんどを失うこととなったが、ミリオンズを守り抜くことに成功。
そのうち四体を引き連れてコガネを陥落させたが、対ミリオンズ用の兵器を導入したブースト軍に敗れ去る。
そのため、兵と共にコガネに籠城し、ハーテン・ノール本隊がコガネに到着するまでの間、ブースト軍からコガネを守り切ろうと画策する。
- ゲイム・ウォッチ(ヒューリン、男性)
二年前にヨハンのもとに現れた老人。ヨハンの体を欲しがる・吹き飛ばされても首が取れても平然と話すなど、謎が多い。
コクサイによれば、操られることに同意した人を意のままにすることができるようだ。
シロイコに協力しており、彼女の依頼を受け他のハーテン教徒たちの所持するミリオンズを借り受けようと暗躍する。
コクサイによれば、操られることに同意した人を意のままにすることができるようだ。
シロイコに協力しており、彼女の依頼を受け他のハーテン教徒たちの所持するミリオンズを借り受けようと暗躍する。
- 仮面の女(???、女性)
二年前にヨハンたちとキンバリーの隠れ家で出会った鳥類を思わせる不気味な仮面をつけた女性。ゲイムと行動を共にしている。
ヨハンの師匠マリアンナとの関連が疑われていたが、ゲイムに捕らわれていたコクサイにより、仮面の女が洗脳されたマリアンナであることが確定した。
しかし、何故マリアンナがゲイムに洗脳される道を選んだのかはわかっていない。
ヨハンの師匠マリアンナとの関連が疑われていたが、ゲイムに捕らわれていたコクサイにより、仮面の女が洗脳されたマリアンナであることが確定した。
しかし、何故マリアンナがゲイムに洗脳される道を選んだのかはわかっていない。
- ヤング・メン(ヒューリン、男性)
『雷龍』シロイコにつき従う若い男。性格は軽めでおちゃらけたところもあるが、その実力は確かなものである。
シロイコ軍の先陣を常に任されており、シロイコ軍の核弾頭と自称している。愛称は「若」
シロイコ軍の先陣を常に任されており、シロイコ軍の核弾頭と自称している。愛称は「若」
セッション内容
H273年、8月。ヨハンたち砲撃部隊の活躍もあって野戦に勝利したブースト軍は、その間を利用したマンジュたちのコガネ攻城こそは失敗したものの、『雷龍』シロイコの守るコガネの包囲に成功していた。だが、シロイコは城門を堅く閉ざし、籠城の構えを見せている。多数の兵を抱え、食料の問題を抱えながらもシロイコが籠城を選んだ理由としては、大都市であるコガネには豊富な食料の備蓄があったことと、何よりその近く、ヒワダからヨシノにかけてのところにハーテン・ノール率いるハーテン教本隊が20万の軍勢で位置していたためであった。野戦にこそ敗れたものの、シロイコ軍もいまだ8万近い兵力を有しており、およそ4万のブースト軍が両者を同時に相手にすることは不可能と言ってよい。そのため、ブーストは野戦には勝利したものの、一度引き上げようと考えていた。それを翻意させたのは、ブーストの親戚でありコガネの守備隊長でもあったポケルである。彼は、少数で忍び込みコガネに全部で三つある城門を同時にあけ、そこから同時に攻め込むことでハーテン教徒が混乱している間にコガネを一気に攻め落とすことを主張した。当初難色を示したブーストであったが、シロイコ軍の兵士の大半が最近加わったあまり訓練を受けていない兵であり、奇襲に対応しにくいことや長期間ジョウトの中心都市であるコガネを奪われていることによるヒロズ国への打撃を考慮した結果、その作戦に同意。アークと、精鋭の多いヨハンたちに城門を開けるよう依頼するのであった。
具体的な手順としては、以下の通りである。まず第一に、コガネに忍び込む。第二に、三つあるコガネへの城門と、コガネの城内に続く門を開け、ブースト軍が突入できるようにする。そして最後に『雷龍』シロイコとキンバリーをここで討ち取る。
なお、ヨハンたちが開けることになる城門はこのうち、北側と東側にある門である。残りの門はアークとポケルがそれぞれ担当することとなっていた。どの門も近くに詰所があり、そこでその開閉を管理している。そこの守衛を倒し、門を開けることが第二の目標であった。
また、最後の手順は、ここで出来ればシロイコたちを討った方がいいと考えたブーストとアークにより足されたものだ。巨大なキマイラであるミリオンズを作ってしまうキンバリーと、その力を最大限に利用しヒロズ国有数の都市を陥落させるシロイコ。どちらも、逃げられてはまたヒロズ国にとって厄介な存在となるだろう。
ヨハンたちはそれに同意。だが、一つの大きな疑問があった。どうやって、コガネに忍び込むかと言うことだ。
城壁を登る。それが、ポケルの答えだった。彼によれば、コガネの城壁ははしごなどの攻城手段を設置しにくくしている半面、普通の城門と比べると人が登りやすくなってしまっているらしい。最もそれは、常人には理解しえない程度の誤差でしかない。ヨハンたちも、本当に登れるのだろうかと遠くに見える城壁を見ながら考えた。だが、一人、ポケルの意見に同意した人物がいた。マックスである。元々義賊であり様々な場所に忍び込んできた経験を持つマックスは、ポケルの言わんとする登りやすさを即座に理解したのだ。俺がまず登る。皆は俺が垂らすロープを利用して登ってくれ。マックスが自信満々に告げた。
なお、ヨハンたちが開けることになる城門はこのうち、北側と東側にある門である。残りの門はアークとポケルがそれぞれ担当することとなっていた。どの門も近くに詰所があり、そこでその開閉を管理している。そこの守衛を倒し、門を開けることが第二の目標であった。
また、最後の手順は、ここで出来ればシロイコたちを討った方がいいと考えたブーストとアークにより足されたものだ。巨大なキマイラであるミリオンズを作ってしまうキンバリーと、その力を最大限に利用しヒロズ国有数の都市を陥落させるシロイコ。どちらも、逃げられてはまたヒロズ国にとって厄介な存在となるだろう。
ヨハンたちはそれに同意。だが、一つの大きな疑問があった。どうやって、コガネに忍び込むかと言うことだ。
城壁を登る。それが、ポケルの答えだった。彼によれば、コガネの城壁ははしごなどの攻城手段を設置しにくくしている半面、普通の城門と比べると人が登りやすくなってしまっているらしい。最もそれは、常人には理解しえない程度の誤差でしかない。ヨハンたちも、本当に登れるのだろうかと遠くに見える城壁を見ながら考えた。だが、一人、ポケルの意見に同意した人物がいた。マックスである。元々義賊であり様々な場所に忍び込んできた経験を持つマックスは、ポケルの言わんとする登りやすさを即座に理解したのだ。俺がまず登る。皆は俺が垂らすロープを利用して登ってくれ。マックスが自信満々に告げた。
その後も様々な話し合いが行われた。その中で、なるべく月明かりのない日がいいだろうとの案が出たため、潜入は二日後、新月の日に決定。そのため、少し時間の出来た一行は、決行までの間しばし休息することをすることになった。
ゼンマイガーの手入れを行う者、船に戻る者、ゴリラとバナナを調達しに行く者など一行は思い思いのことを行い始める。その中で、サラサはブースト軍の兵と共にいた。ブースト軍の兵士の中には、アサギの剣道場で師範を任されていたサラサに鍛えられたものも数多くいたのだ。サラサは再会した彼らから、昔より強くなったので試合して欲しいと言われ、剣を手にする。確かに、彼らの多くは昔より強くなっていた。昔のサラサなら危うかったかもしれない。だが、彼ら以上に、サラサの実力も伸びていたのだ。結局、サラサはその全てをいなし、彼らに稽古をつけていた。
それがひと段落した時、サラサに話しかけるものがいた。姉弟子であるコクサイの世話をしている兵士だ。コクサイは洗脳こそ解けていたが、洗脳されたことによって体力的に大きく消耗したらしく、まだ病床にあった。そのため、ブースト軍の看護兵が彼女の世話をしていたのだ。兵士によれば、コクサイはサラサに話したいことがあるらしい。
コクサイの下に向かったサラサは、彼女から二つのことを聞く。一つ目は、ヨハンに話したいことがあるののだが、ヨハンが呼んだら来てくれるか分からないので呼んできてほしいとのこと。もう一つが、シノノメ流の奥義についてであった。以前コクサイがサラサにそのことを尋ねた際、サラサは奥義にとらわれるより、自己を鍛練するべきだと答えていた。それ以降、二人がこの話題を話すことはなかったが、コクサイはいくらか気になっていたようで、師匠であり、サラサの父であるスオウにそのことを聞いていたらしい。スオウの返答も、サラサのものとそう変わりはなかった。だが、スオウは更に別のことも述べた。もしそのようなものがあるとすれば、それは小手先の技術によるものではなく、心構えや意志によって成り立つものだろうと。そして、コクサイはコウテツ島やそれ以降のサラサを見る中で、今のサラサはシノノメ流の奥義を自然と身につけているのではないか、と述べる。サラサは自分はまだ未熟だと返していたが、コクサイの言葉の通り、サラサは徐々にシノノメ流の奥義を体得しつつあった。最もそれは、言葉で説明できるようなものではなく、サラサが意識的に使えるわけではないのであった。
ゼンマイガーの手入れを行う者、船に戻る者、ゴリラとバナナを調達しに行く者など一行は思い思いのことを行い始める。その中で、サラサはブースト軍の兵と共にいた。ブースト軍の兵士の中には、アサギの剣道場で師範を任されていたサラサに鍛えられたものも数多くいたのだ。サラサは再会した彼らから、昔より強くなったので試合して欲しいと言われ、剣を手にする。確かに、彼らの多くは昔より強くなっていた。昔のサラサなら危うかったかもしれない。だが、彼ら以上に、サラサの実力も伸びていたのだ。結局、サラサはその全てをいなし、彼らに稽古をつけていた。
それがひと段落した時、サラサに話しかけるものがいた。姉弟子であるコクサイの世話をしている兵士だ。コクサイは洗脳こそ解けていたが、洗脳されたことによって体力的に大きく消耗したらしく、まだ病床にあった。そのため、ブースト軍の看護兵が彼女の世話をしていたのだ。兵士によれば、コクサイはサラサに話したいことがあるらしい。
コクサイの下に向かったサラサは、彼女から二つのことを聞く。一つ目は、ヨハンに話したいことがあるののだが、ヨハンが呼んだら来てくれるか分からないので呼んできてほしいとのこと。もう一つが、シノノメ流の奥義についてであった。以前コクサイがサラサにそのことを尋ねた際、サラサは奥義にとらわれるより、自己を鍛練するべきだと答えていた。それ以降、二人がこの話題を話すことはなかったが、コクサイはいくらか気になっていたようで、師匠であり、サラサの父であるスオウにそのことを聞いていたらしい。スオウの返答も、サラサのものとそう変わりはなかった。だが、スオウは更に別のことも述べた。もしそのようなものがあるとすれば、それは小手先の技術によるものではなく、心構えや意志によって成り立つものだろうと。そして、コクサイはコウテツ島やそれ以降のサラサを見る中で、今のサラサはシノノメ流の奥義を自然と身につけているのではないか、と述べる。サラサは自分はまだ未熟だと返していたが、コクサイの言葉の通り、サラサは徐々にシノノメ流の奥義を体得しつつあった。最もそれは、言葉で説明できるようなものではなく、サラサが意識的に使えるわけではないのであった。
リアノはそのころ、帆船『プリンシプル』の停泊する場所へと向かっていた。同行者として、テレポートが使える神官のバアムを連れている。甲板の上に立つ船員の姿が目視できるところまで辿り着くと、リアノは軽く手を振った。船員たちもすぐリアノに気が付いたようで、挨拶代わりの祝砲が響いたかと思うと、船から一人の人物が駆け寄ってきた。ヨキだ。ヨキはリアノが無事に戻ってきたことを大きく喜ぶと、感動したのか大きく泣き出してしまった。その様子を見ながらリアノの下へと歩いていた船員のジャックは幾分冷静な様子でヨキに告げる。まったく、キャプテンが戻ってこないわけがないだろう。ジャックがリアノ不在の間に起きた出来事を話しながら、ゆっくり四人で船に向かっていくと、再び船から駆けてくるものがいた。船員のキャサリンだ。彼女は幾分あわてた様子でリアノの前にやってくると、リアノの知人と名乗る少女が、一等の熊を連れ甲板にやってきたと告げる。その唐突な展開にヨキたちは訳が分からないといった顔を浮かべていたが、リアノは思い当たる節があった。リアノの師匠、モルガンである。
果たして、甲板にいたのはモルガンとその相棒である熊のベアーであった。どうしてここに、と尋ねるリアノに対し、ベアーが捕ってきた鮭をリアノに渡しながら、モルガンが答えた。リアノの顔が見たくなってね。既に山奥に隠遁しているモルガンにとって、ハーテン教徒の反乱は興味を持つようなものではなかったが、弟子であるリアノのことは別であった。ま、あんたらしく過ごしてるんじゃない。モルガンは少し茶化したように話すと、懐から手袋を取り出した。モルガンが師匠としてリアノに鞭を教えていた時に使用していた、手袋だ。モルガンによれば、この手袋の力で、鞭に短剣の長所を加えることができるとのことであった。モルガンはそれをリアノに投げ渡した。今のあんたなら、上手く使えるでしょ。既に一線を退いていたモルガンにとって、その手袋は無用のものとなっていたが、それでも鞭をうまく扱うだけの実力がないものには渡すつもりはなかったらしい。だが、今のリアノはその手袋をうまく扱うだけの機知と経験、技術を有している。モルガンはそう判断したのだった。なお、手袋を渡した後のモルガンとベアーは『プリンシプル』の船員たちと鮭パーティーをして帰ったようである。
果たして、甲板にいたのはモルガンとその相棒である熊のベアーであった。どうしてここに、と尋ねるリアノに対し、ベアーが捕ってきた鮭をリアノに渡しながら、モルガンが答えた。リアノの顔が見たくなってね。既に山奥に隠遁しているモルガンにとって、ハーテン教徒の反乱は興味を持つようなものではなかったが、弟子であるリアノのことは別であった。ま、あんたらしく過ごしてるんじゃない。モルガンは少し茶化したように話すと、懐から手袋を取り出した。モルガンが師匠としてリアノに鞭を教えていた時に使用していた、手袋だ。モルガンによれば、この手袋の力で、鞭に短剣の長所を加えることができるとのことであった。モルガンはそれをリアノに投げ渡した。今のあんたなら、上手く使えるでしょ。既に一線を退いていたモルガンにとって、その手袋は無用のものとなっていたが、それでも鞭をうまく扱うだけの実力がないものには渡すつもりはなかったらしい。だが、今のリアノはその手袋をうまく扱うだけの機知と経験、技術を有している。モルガンはそう判断したのだった。なお、手袋を渡した後のモルガンとベアーは『プリンシプル』の船員たちと鮭パーティーをして帰ったようである。
グレンは、久しぶりの自由を満喫していた。なにしろ、この半年は錬金術師として対ミリオンズ対策に勤しんでおり、休む時間などほとんどなかったのである。久しぶりにゼンマイガーのメンテナンスだ。張り切りながら工具を取り出したグレンは、落ちていたバナナの房に足を引っ掛け転んでしまった。何故バナナの房。そう思ったグレンは、あたりにバナナの房が大量に落ちていることに気が付いた。戸惑うグレンに、後ろからマックスが話しかけてきた。今すごい音がしたけど大丈夫だったか。そう話すマックスの手にはバナナが握られている。まさか、と思いグレンがマックスの背後を見ると、そこにはバナナを両手に喜ぶゴリラが見え隠れしていた。なお、マックスたちの布教もあってか、ブースト軍の一部の層ではバナナが流行していたらしい。
その後もグレンは、マックスと愉快な会話を繰り広げることとなったが、その視界の端でレイクが彼と話したそうに待っていることに気が付いた。どうにかマックスとの会話を切り上げると、グレンはレイクの下へと向かう。レイクは、コガネ潜入へと向かうグレンやヨハンたちの身を心配していた。私がキンバリーのことを調べて欲しいと言ったばかりに、こんなことにまで巻き込ませてしまってごめんなさいと謝罪するレイクに、グレンは気にするなと答える。もともと、レイクとグレンは、共通の友人であるシーダをキンバリーのせいで失っている。第二のシーダが出てきてほしくないとレイクは述べていたが、それはグレンも同だった。必ずみんなで帰ってきてね、と話すレイクにグレンは当たり前だ、と頷くのであった。
その後もグレンは、マックスと愉快な会話を繰り広げることとなったが、その視界の端でレイクが彼と話したそうに待っていることに気が付いた。どうにかマックスとの会話を切り上げると、グレンはレイクの下へと向かう。レイクは、コガネ潜入へと向かうグレンやヨハンたちの身を心配していた。私がキンバリーのことを調べて欲しいと言ったばかりに、こんなことにまで巻き込ませてしまってごめんなさいと謝罪するレイクに、グレンは気にするなと答える。もともと、レイクとグレンは、共通の友人であるシーダをキンバリーのせいで失っている。第二のシーダが出てきてほしくないとレイクは述べていたが、それはグレンも同だった。必ずみんなで帰ってきてね、と話すレイクにグレンは当たり前だ、と頷くのであった。
ヨハンは一人、宿舎に籠って鎧を作成していた。先の戦いで、傷ついた面当てを作り直していたのだ。面当ての作成がひと段落した時、ドアが開き、サラサが顔を覗かせた。何の用だと疑問を呈すヨハンに対し、サラサは一瞬分厚いカーテンで覆われた部屋の暗さに戸惑った様子を見せ、目を凝らしてヨハンを見つけるとコクサイが呼んでいるので来て欲しいと告げる。鎧の作成がひと段落したためか、サラサが呼んだためかは不明だが、ヨハンはあっさり了承。面当てを放り投げる。投げられた面当ては見事な弧を描きながら飛んでいき、鎧の頭部に収まった。ヨハンはそれを見て小さく頷くと、外へと歩き出した。
だが、宿舎から出たヨハンは、あまりの眩しさに目がくらみ、倒れてしまう。そんなヨハンに体を鍛えないからだと呆れた様に指摘するサラサであったが、ヨハンが苦笑しながら助けてくれと述べると、肩を貸し、共にコクサイのもとへと向かうのであった。
だが、宿舎から出たヨハンは、あまりの眩しさに目がくらみ、倒れてしまう。そんなヨハンに体を鍛えないからだと呆れた様に指摘するサラサであったが、ヨハンが苦笑しながら助けてくれと述べると、肩を貸し、共にコクサイのもとへと向かうのであった。
コクサイは床に伏せていたが、ヨハンたちがやってきたことに気が付くと、ゆっくりと身を起こした。そのまま礼を述べるコクサイに対し、ヨハンは照れ隠しなのかぶっきらぼうにまぶしいからカーテンを閉めてくれと答える。体力の落ちているコクサイに代わってサラサがカーテンを閉めた後、コクサイがヨハンに聞きたいことがあると切り出した。ヨハンは、師匠であるマリアンナのことをどう思っているのか。
ヨハンはすぐに答えた。邪魔になったら、排除する。その後、少し間をおいてこうとも答えた。あいつが変なことをしたら、殴り飛ばす。
ヨハンの解答にコクサイは頷くと、コクサイがゲイムに攫われてからのことを話し始めた。洗脳中の記憶は一切残っていないコクサイであったが、ゲイムたちに攫われてから一切の記憶がなかったわけではない。と言うのも、ゲイムの洗脳は洗脳される側が同意しないと効果を発揮しないためであった。コクサイは結局、それに同意してしまったのだが、それまでの記憶は多少あった。その中で、偶然にもゲイムと共にいる仮面の女がヨハンの師匠マリアンナであることを知ったのだった。
マリアンナも、ゲイムに洗脳されている。コクサイはヨハンにそう告げた。
でも、とコクサイは続ける。私みたいに洗脳を解除された人がいるわけだから、洗脳を解除できる方法がないわけじゃない。コクサイは自らの推論を述べた。コクサイはヨハンたちとの戦いのさなかで、一度、昏倒している。従って、マリアンナを何らかの手段で昏倒させることが出来れば、洗脳は解除されるのではないか。コクサイは、目の前にいるヨハンと、近くにいるサラサを交互に見つめた。ヨハン君と、サラサちゃんたちなら、きっとできる。私も協力できることは、協力するから。
ヨハンはすぐに答えた。邪魔になったら、排除する。その後、少し間をおいてこうとも答えた。あいつが変なことをしたら、殴り飛ばす。
ヨハンの解答にコクサイは頷くと、コクサイがゲイムに攫われてからのことを話し始めた。洗脳中の記憶は一切残っていないコクサイであったが、ゲイムたちに攫われてから一切の記憶がなかったわけではない。と言うのも、ゲイムの洗脳は洗脳される側が同意しないと効果を発揮しないためであった。コクサイは結局、それに同意してしまったのだが、それまでの記憶は多少あった。その中で、偶然にもゲイムと共にいる仮面の女がヨハンの師匠マリアンナであることを知ったのだった。
マリアンナも、ゲイムに洗脳されている。コクサイはヨハンにそう告げた。
でも、とコクサイは続ける。私みたいに洗脳を解除された人がいるわけだから、洗脳を解除できる方法がないわけじゃない。コクサイは自らの推論を述べた。コクサイはヨハンたちとの戦いのさなかで、一度、昏倒している。従って、マリアンナを何らかの手段で昏倒させることが出来れば、洗脳は解除されるのではないか。コクサイは、目の前にいるヨハンと、近くにいるサラサを交互に見つめた。ヨハン君と、サラサちゃんたちなら、きっとできる。私も協力できることは、協力するから。
デストラクションと二人(?)、バナナを食べながらマックスは悩んでいた。自分が今使っている魔導銃は確かに便利だが、少し火力が足りない。これでは今回の潜入において、自分が思う様にはじけられないのではないかと。そこに、一人の男が現れた。ティボルトだ。ティボルトは手に、弓と矢を持っていた。
その弓は、といぶかるマックスに対し、ティボルトが答える。この弓と特性の矢玉は、大いに火力が出る。今のお前ははじけたらないと言っていたからな。
ためしに一度矢を射ってみると、今までの魔導銃とは比べ物にならない威力を持っていた。サンキュー、ティボルト。礼を言うマックスに対し、ティボルトは手を差し出す。両方合わせて二万五千だ。結局、このお金はティボルトが好物としているメロンをデストラクションが渡したことで、一応の決着を見た。
その弓は、といぶかるマックスに対し、ティボルトが答える。この弓と特性の矢玉は、大いに火力が出る。今のお前ははじけたらないと言っていたからな。
ためしに一度矢を射ってみると、今までの魔導銃とは比べ物にならない威力を持っていた。サンキュー、ティボルト。礼を言うマックスに対し、ティボルトは手を差し出す。両方合わせて二万五千だ。結局、このお金はティボルトが好物としているメロンをデストラクションが渡したことで、一応の決着を見た。
新しく手に入った弓にマックスはすっかり夢中になった。普段のティボルトであれば、今のマックスに話は通じないだろうと考え、去っただろう。
だが、今日は違った。
なあ、マックス。最近、思うんだよ。ティボルトの言葉にマックスは弓の弦を引っ張りながら、適当に返事をした。
「運命」って、やっぱあると思うんだよな。ティボルトの言葉にマックスは矢をつがえ遠くの木を狙うように、弓を構えながら適当に返事をした。
セルモさんとの間に「運命」の赤い糸が見えるんだよ。ティボルトの言葉による衝撃のあまり、マックスが放った矢は、大きく狙いをそれることとなった。
だが、今日は違った。
なあ、マックス。最近、思うんだよ。ティボルトの言葉にマックスは弓の弦を引っ張りながら、適当に返事をした。
「運命」って、やっぱあると思うんだよな。ティボルトの言葉にマックスは矢をつがえ遠くの木を狙うように、弓を構えながら適当に返事をした。
セルモさんとの間に「運命」の赤い糸が見えるんだよ。ティボルトの言葉による衝撃のあまり、マックスが放った矢は、大きく狙いをそれることとなった。
何言ってんだこいつ、とマックスは心の底から思ったが、ティボルトとの友情の手前、うかつに突っ込むことができず、微妙な表情を浮かべる。
デストラクションはいくらか人間の常識を介していなかったようであり、大きく肩をすくめた。
だが、ティボルトは興奮しているのか、彼らの行動に気づかず話を続ける。
セルモとティボルトは、二度も戦場で行動を共にした。確かにそうだ。
セルモは印象に残った出会いとして、ティボルトのことを上げている。それもそうだ。
更に、この前のコガネ近郊での戦いにおいて、危機にひんしたティボルトを、セルモは身を呈して庇っている。それももちろん、事実だ。
つまり、セルモとティボルトの間に「運命」の赤い糸が結ばれている。
力強く断言するティボルトに、なんでそうなるんだ、とマックスは心の底から思った。
だが、結局仲間思いのマックスは、ティボルトの妄想を否定しては可哀そうだと考え、無理だとは思うけど応援するとの立場を取らざるを得なかった。セルモさんを誘って見せる、意気揚々と去っていくティボルトを見ながらマックスはしばし悩んでいたが、ま、いいかと割り切り新たに入手した弓の点検を始めるのだった。
デストラクションはいくらか人間の常識を介していなかったようであり、大きく肩をすくめた。
だが、ティボルトは興奮しているのか、彼らの行動に気づかず話を続ける。
セルモとティボルトは、二度も戦場で行動を共にした。確かにそうだ。
セルモは印象に残った出会いとして、ティボルトのことを上げている。それもそうだ。
更に、この前のコガネ近郊での戦いにおいて、危機にひんしたティボルトを、セルモは身を呈して庇っている。それももちろん、事実だ。
つまり、セルモとティボルトの間に「運命」の赤い糸が結ばれている。
力強く断言するティボルトに、なんでそうなるんだ、とマックスは心の底から思った。
だが、結局仲間思いのマックスは、ティボルトの妄想を否定しては可哀そうだと考え、無理だとは思うけど応援するとの立場を取らざるを得なかった。セルモさんを誘って見せる、意気揚々と去っていくティボルトを見ながらマックスはしばし悩んでいたが、ま、いいかと割り切り新たに入手した弓の点検を始めるのだった。
潜入を前に愛しのトカゲ、アアアアとゆったり休んでいたセルモのもとに、ティボルトが現れたのはそれからすぐのことであった。ティボルトの思いに全く気がついていないセルモは、いつも通りティボルトに対応する。そんなセルモに対し、ティボルトは提案した。一緒に修業しませんか。
なぜ、修業。自他共に文官だと認めるセルモは怪訝そうな顔を浮かべる。そんなセルモに対し、ティボルトはセルモがティボルトと共に修業する利点を述べた。セルモはその軍略と魔術の腕から、戦いに補佐兼参謀役として参加することが多い。その際、セルモが他の人より先に補助を行うことで、戦いを有利に進められるだろう。しかし、セルモは素早く行動することが苦手だ。だから、素早く行動することが得意なティボルトと共に修業し、その技術を習得することは重要だろう。ティボルトのこの提案の陰には、少しでも長くセルモと行動したいとの思いが見え隠れしていた。だが、その辺りに全く気付いていないセルモはティボルトの提案をもっともだと思い、それに同意。こうして互いの思惑はどうであれ、コガネでの戦いが終わった後、セルモはティボルトと共に素早く行動するための技術を習得するべく、修行を行うこととなった。
なぜ、修業。自他共に文官だと認めるセルモは怪訝そうな顔を浮かべる。そんなセルモに対し、ティボルトはセルモがティボルトと共に修業する利点を述べた。セルモはその軍略と魔術の腕から、戦いに補佐兼参謀役として参加することが多い。その際、セルモが他の人より先に補助を行うことで、戦いを有利に進められるだろう。しかし、セルモは素早く行動することが苦手だ。だから、素早く行動することが得意なティボルトと共に修業し、その技術を習得することは重要だろう。ティボルトのこの提案の陰には、少しでも長くセルモと行動したいとの思いが見え隠れしていた。だが、その辺りに全く気付いていないセルモはティボルトの提案をもっともだと思い、それに同意。こうして互いの思惑はどうであれ、コガネでの戦いが終わった後、セルモはティボルトと共に素早く行動するための技術を習得するべく、修行を行うこととなった。
そして、二日の時が流れ、いよいよ潜入当日。ヨハンたちはブーストたちと潜入に関する確認を再度行い、夜が来るのを待つのみとなった。
一方、コガネの城内ではシロイコが天守閣の様な場所で、ブースト軍を見渡していた。野戦に敗北した中で、コガネに籠城できたのは幸運だった。と述べるシロイコに傍らにいる若い男、ヤングが同意する。近くに、ハーテン本隊が位置しており、後数日もすればこのコガネにたどり着く。そうすれば、ブースト軍と言えども撤退せざるを得なくなるだろう。シロイコはヤングの言葉に軽く頷いたが、一方で油断は禁物だと返す。それに同意したのはキンバリーだった。作った際には無敵と思われたミリオンズであったが、コウテツ島に潜入されてから半年もたたない内に対抗策を作り上げられてしまった。ヒロズ国にはまだまだ有能なものも多いことは、間違いないだろう。
そう言うやつは暗殺すればいいのでは、と述べるヤングに対しシロイコは苦笑しながら、既に一度ゲイムが試していると返す。その際標的となったのは、対ミリオンズで重要な役割を果たしたグレン。だが、妨害が入ったことにより失敗し、それ以降警備が厳重になったため要人の暗殺は不可能に近くなったのだった。なるほど、と同意したヤングはあることに気が付いた。そう言えば、ゲイムは今何を。シロイコが答える。ゲイムは今コガネの外にいる。万が一の場合に備え使われていないミリオンズを、貰ってきてもらおうと思ってな。
一方、コガネの城内ではシロイコが天守閣の様な場所で、ブースト軍を見渡していた。野戦に敗北した中で、コガネに籠城できたのは幸運だった。と述べるシロイコに傍らにいる若い男、ヤングが同意する。近くに、ハーテン本隊が位置しており、後数日もすればこのコガネにたどり着く。そうすれば、ブースト軍と言えども撤退せざるを得なくなるだろう。シロイコはヤングの言葉に軽く頷いたが、一方で油断は禁物だと返す。それに同意したのはキンバリーだった。作った際には無敵と思われたミリオンズであったが、コウテツ島に潜入されてから半年もたたない内に対抗策を作り上げられてしまった。ヒロズ国にはまだまだ有能なものも多いことは、間違いないだろう。
そう言うやつは暗殺すればいいのでは、と述べるヤングに対しシロイコは苦笑しながら、既に一度ゲイムが試していると返す。その際標的となったのは、対ミリオンズで重要な役割を果たしたグレン。だが、妨害が入ったことにより失敗し、それ以降警備が厳重になったため要人の暗殺は不可能に近くなったのだった。なるほど、と同意したヤングはあることに気が付いた。そう言えば、ゲイムは今何を。シロイコが答える。ゲイムは今コガネの外にいる。万が一の場合に備え使われていないミリオンズを、貰ってきてもらおうと思ってな。
そして、夜。月明かりが全くない暗闇の中、ヨハンたちはシロイコ軍の目をくぐりながら城壁への接近に成功する。なお、事前の準備の際、見つかりにくいものの城門を開けるための詰所に遠い地点から潜入するか、幾分見つかりやすいものの詰所に近い場所から潜入するか議論となっていた。結局、この程度の壁ならすぐ登れるとマックスが強く主張したため、ヨハンたちは詰め所に近い場所での城壁登りとなる。
この壁登りは、マックスが自信通りにその持ち味を大いに発揮した。ヨハン、サラサ、リアノに細かな指示を頼むと、グレンとセルモの支援を受けたマックスは常人では見つけられないような僅かな突起を器用に足場として一気に登って行った。途中、壁が崩落しやすい場所などもあったが、義賊としての勘で危険を察知したマックスはそれを回避。そのまま僅かな間で人の背丈の七倍にもなる城壁を登り切ったのである。
この壁登りは、マックスが自信通りにその持ち味を大いに発揮した。ヨハン、サラサ、リアノに細かな指示を頼むと、グレンとセルモの支援を受けたマックスは常人では見つけられないような僅かな突起を器用に足場として一気に登って行った。途中、壁が崩落しやすい場所などもあったが、義賊としての勘で危険を察知したマックスはそれを回避。そのまま僅かな間で人の背丈の七倍にもなる城壁を登り切ったのである。
その後、マックスが降ろしたロープを利用してヨハンたちは次々と登っていく。結局、彼らの素早い侵入に気づけた兵士はいなかった。コガネへと侵入したヨハンたちは、二手に分かれ、ヨハン、リアノとマックス、そしてセルモが東側の、サラサとグレンが北側の城門へと向かった。夜陰に紛れた彼らは、互いやアークたちと連絡を取りながらハーテン教徒の兵士たちに気づかれることなくあっさり詰所へと到着。そのまま、詰所の番人をしていた鳥人間と魚人を不意打ちで昏倒させる。だが、城門を開ける装置のある部屋に行くための扉には鍵がかけられていた。ヨハンたちは一瞬戸惑うも、番号を忘れたとき用のメモが残されていることに気が付く。そのメモに書かれている言葉は暗号のようなものであったが、リアノが機転を利かせ片方をあっさり解くと、もう片方の暗号の中身もさして苦労することなく理解するのであった。その言葉を打ちこみ鍵を解除したヨハンたちは、アークたちとタイミングを合わせ、城門を開ける装置を起動させる。
重い音を立てながら、城門が徐々に開き始めた。
重い音を立てながら、城門が徐々に開き始めた。
同時にポケルの部下が放った信号弾により、ブースト軍の本陣にいたブースト、ゴン、マンジュなどはヨハンたちが城門の開放に成功したことを理解する。流石、ヨハンたちだ。この機に乗じて、一気に攻め込むぞ。ブーストの掛け声とともに、ブースト軍の兵士たちがコガネへと進軍を始めた。先陣を切るのは、ゴン率いる『いてまえ』。大量のフライングバッファローが上空を飛びだしていく。
籠城の最中、わずかなの休息に入っていたシロイコであったが、城門の開く音は瞬時に彼女を目覚めさせることとなった。すぐに、ヤングが彼女の部屋へと入って来る。コガネの城門と、城と街とをつなぐ門が全て開いた。ブースト軍の仕業で、しばらくは、閉じそうもない。ヤングの報告は、コガネがブースト軍によって陥落したとほとんど同義のことを意味していた。シロイコは、手早く鎧を着込むと、ヤングにキンバリーを呼ぶよう指示する。命を受けたヤングが部屋から去ると、入れ替わりに一人の老人が部屋に入ってきた。ゲイムだ。ゲイムは落城しつつあるコガネの緊迫した状況とは異なり、いつものゆったりとした、それでいて不気味な気配を漂わせている。見事に、奇襲されましたの。この状況下でもいつもと変わらぬ口調のゲイムに、シロイコは苦笑する。それで、ミリオンズは間にあったのか。シロイコの問いに、ゲイムは頷く。ゲイムは二頭のミリオンズを用意していた。この短い期間に二頭のミリオンズを持ってこれたのは流石だが、ブースト軍を相手にするには少ない。そんなシロイコの考えを読んだのか、ゲイムが何かを含んだような笑みを浮かべ尋ねる。どうですか将軍、私があなたを操らせていただけるのなら、この状況を好転させられますぞ。シロイコは首を横に振った。例え死んだとしても、私が私であることに意味はある。それに、まだお前やキンバリーたちもいるからな。まずは、ブースト軍に少しでも被害を与えられるようまずはミリオンズを起動させよう。シロイコの言葉にゲイムは仕方ないと言った表情を浮かべ、ミリオンズを起動させるべく去っていった。
ヨハンたちはアーク、ポケルと合流を果たし、『いてまえ』との待ち合わせ場所である神殿の前にやってきていた。シロイコを探すにあたり、街中で最も機動力を発揮できそうだったのがフライングバッファローであったためである。間もなく、何か大きなものが羽ばたく音と共に、大量のフライングバッファローが神殿の近くへと降り立った。先頭にいたフライングバッファローから降りたゴンが、ヨハンたちにねぎらいの言葉をかける。
そのまま、シロイコたちを探そうと言った時、城の近くから轟音が聞こえた。見ると、ミリオンズが二頭、城の近くに現れていた。驚くゴンに対し、アークが冷静に告げる。あのままミリオンズが暴れると住民に被害が出る上に、城壁などが壊され使い物にならなくなってしまう。しかし、あのミリオンズにかまけている間にシロイコたちが逃げ出す恐れがある。幸い、ミリオンズを倒せる砲撃部隊がやって来る方角は分かるので、二手に分かれ片方がミリオンズの脚止めと誘導。もう片方がシロイコたちを探しだそう。わずかな協議の後、ヨハンたちはフライングバッファローに次々とまたがり、飛び立っていった。
ミリオンズを脚止め、誘導する。それがヨハンたちの選んだ道だった。
そのまま、シロイコたちを探そうと言った時、城の近くから轟音が聞こえた。見ると、ミリオンズが二頭、城の近くに現れていた。驚くゴンに対し、アークが冷静に告げる。あのままミリオンズが暴れると住民に被害が出る上に、城壁などが壊され使い物にならなくなってしまう。しかし、あのミリオンズにかまけている間にシロイコたちが逃げ出す恐れがある。幸い、ミリオンズを倒せる砲撃部隊がやって来る方角は分かるので、二手に分かれ片方がミリオンズの脚止めと誘導。もう片方がシロイコたちを探しだそう。わずかな協議の後、ヨハンたちはフライングバッファローに次々とまたがり、飛び立っていった。
ミリオンズを脚止め、誘導する。それがヨハンたちの選んだ道だった。
途中、砲撃部隊の隊長であるマンジュに事の次第を告げに行ったゴンと別れ、ヨハンたちはミリオンズの目前にたどり着く。だが、破壊活動を行うミリオンズは、彼らのことなど眼中にないと言った具合に破壊活動を続けている。脚止めし、砲撃部隊の入ってくる門へと誘導するためにはまずミリオンズの気を引かなければならない。その役目を担ったのは、リアノとサラサだった。これまで様々な敵の動きを止めてきたリアノの鞭は、一瞬ではあったが、ミリオンズの動きすらも縛り付けたのだった。そこに、サラサが強力な一撃を叩き込む。ミリオンズたちの目が、ヨハンたちを認識した。同時にミリオンズがサラサたちをめがけて腕を薙ぎ払う。建物すらも破壊するこの一撃は、普通の人間なら一瞬で粉微塵になってしまうだろう。だが、そこにはヨハンがいた。鉄壁の鎧を持つヨハンはミリオンズの攻撃を軽く受け流すと、誘導する方向を皆に指図する。ミリオンズは徐々に、ヨハンたちの意に沿って動き始めた。
しかし、ここで一つ問題が起きる。ブースト軍が街に侵入してきたことや、ミリオンズが動き出したことで、騒ぎに気が付いた街の人々がパニックを起こし始めていたのである。彼らを安全なところに退避させなければ、被害がさらに拡大する。そう感じたグレンは、人々を避難させるべく指示を出し始めた。しかし、逃げようとする人々は多く、グレン一人では住民を避難させきることは難しい。そのことに気が付いたヨハンは、ミリオンズを人の少ない路地へと誘導し始める。多少遠回りにはなるが、避難が必要な住民を少しでも減らそうとの考えだった。更に、セルモもグレンを手伝い始める。冷静かつ物腰も穏やかな彼女は、パニックに陥っている人を落ち着かせるうえで大きな役割を果たすこととなった。比較的人通りの少ない路地に入ってからは、マックスとデストラクションがミリオンズを更に挑発。こうしてヨハンたちは、ミリオンズをマンジュたち砲撃部隊が待つ場所へと着実に誘導していくのだった。
しかし、ここで一つ問題が起きる。ブースト軍が街に侵入してきたことや、ミリオンズが動き出したことで、騒ぎに気が付いた街の人々がパニックを起こし始めていたのである。彼らを安全なところに退避させなければ、被害がさらに拡大する。そう感じたグレンは、人々を避難させるべく指示を出し始めた。しかし、逃げようとする人々は多く、グレン一人では住民を避難させきることは難しい。そのことに気が付いたヨハンは、ミリオンズを人の少ない路地へと誘導し始める。多少遠回りにはなるが、避難が必要な住民を少しでも減らそうとの考えだった。更に、セルモもグレンを手伝い始める。冷静かつ物腰も穏やかな彼女は、パニックに陥っている人を落ち着かせるうえで大きな役割を果たすこととなった。比較的人通りの少ない路地に入ってからは、マックスとデストラクションがミリオンズを更に挑発。こうしてヨハンたちは、ミリオンズをマンジュたち砲撃部隊が待つ場所へと着実に誘導していくのだった。
一方の砲撃部隊は、既に準備を整えヨハンたちの到着を今や遅しと待ち構えていた。そして、フライングバッファローに乗ったヨハンたちが、彼らのすぐ近くを通り過ぎると、隊長のマンジュが指示を飛ばす。直後に、大砲が一斉に火を吹いた。そこから放たれた弾がミリオンズに命中していき、ついにはその片方が崩れ落ちる。それを見た砲撃部隊から、歓声が上がる。だが、その声は直後に悲鳴へと変わった。何者かが、砲撃部隊めがけて爆撃を行ったのである。幸い、この一撃はグレンの指示を受けたゼンマイガーが防御壁を作り出したことで、被害は最少に抑えられた。ヨハンたちが弾の飛んできた方角を向くと、そこには小型の大砲を肩に抱えたキンバリーが立っていた。最高傑作をつくりあげたはずだったのですけどね。キンバリーはそう呟くと、砲撃部隊の近くにいたグレンの方を向いた。大学にいたころは、あなたがここまでの人だとは思ってもいなかったですよ。普段は飄々とした表情のキンバリーであったが、この時ばかりは憎しみのこもった眼で、グレンを見つめていた。グレンもじっと、キンバリーを見つめ返す。レイクと共に、長年追っていた男を、ついに捉えたのだ。
あれが、お前の言っていた男か。キンバリーの横に、甲冑に身を包んだ女性が現れた。おそらく、シロイコであろう。アークたちが探していたはずの、シロイコがどうしてこの場に。アークたちはどうしたのだろうか。その答えは、砲撃部隊を襲った炎が、直前でかき消されたことで明らかになった。
すまない、敵の数が多くてな。そう話しながらヨハンたちの前に、アークが現れる。特にあの女が、強い。アークの視線の先には、仮面の女が立っていた。ポケルとあいつを何とかする。ヨハンたちは、シロイコとキンバリーを倒してくれ。アークの言葉に、サラサが刀を抜きながら答える。もちろんです。任せてください。
あれが、お前の言っていた男か。キンバリーの横に、甲冑に身を包んだ女性が現れた。おそらく、シロイコであろう。アークたちが探していたはずの、シロイコがどうしてこの場に。アークたちはどうしたのだろうか。その答えは、砲撃部隊を襲った炎が、直前でかき消されたことで明らかになった。
すまない、敵の数が多くてな。そう話しながらヨハンたちの前に、アークが現れる。特にあの女が、強い。アークの視線の先には、仮面の女が立っていた。ポケルとあいつを何とかする。ヨハンたちは、シロイコとキンバリーを倒してくれ。アークの言葉に、サラサが刀を抜きながら答える。もちろんです。任せてください。
対するシロイコは、ゆっくりと剣を抜いた。その刀身は電気を纏っているかのように青く光っている。シロイコはその切っ先をヨハンたちに向けた。だが、その動作に危機を感じたリアノが即座に鞭を振るう。比較的ゆっくりとした鞭の一撃をシロイコは難なくかわす。だが、リアノの目的はその先にあった崩れた家の破片であった。それを鞭で掴み、シロイコへと飛ばす。既に回避行動を取っていたシロイコはその一撃を避けることはできなかった。やむなく輝きを増していた剣で切り裂く。せっかくの充電が。体勢を整えたシロイコはそう呟いた。確かに、先ほどよりその刀身はいくらか黒い。だが、まあいいだろう。ヨハンたちへと目を向け、シロイコは続けた。一人でも多く、死出の道連れにしてやろう。そして、そこから戦いは始まった。
シロイコとキンバリー以外にも、その場にはヤングを含めシロイコ配下の精鋭が集っている。従って、熟練の兵でも互角の戦いを繰り広げることが難しそうであることは目に見えていた。だが、そこにいたのは、ヨハンたちだった。真っ先に動いたのは、セルモとティボルト。シロイコ軍でも圧倒的な早さを誇るヤングであっても、彼らを上回ることは出来なかった。セルモさん、今です。セルモに格好いいところを見せるべく先手を取るティボルト。だが、セルモはその様子を冷静に見ていた。なるほど、そうやって速く動けばいいのですね。ティボルトの行動を分析しながら、セルモは前線へと支援を飛ばす。これで、セルモの行動は終わった。
しかし、セルモの行動が終わっても、ヤングはまだ動けなかった。その横から、鋭い攻撃が飛んできたためである。飛ばしたのは、リアノ。ゼンマイガーの力でその身が軽くなった彼女はセルモの支援を受けた後、大きく跳躍して敵陣へと切り込み、鞭を振るった。その場にいたシロイコ軍全体を巻き込むこの攻撃に、ここだと言わんばかりにヨハンとグレンが支援を行うと、その大半が吹き飛ぶ。おまけに、辛うじて生き残ったヤングも鞭にからめ捕られ、自由な身動きが取れなくなってしまった。踏んだり蹴ったりなヤングは、その体勢からようやく鋭い一撃をヨハンに放つが、ゼンマイガーが作り出した防御壁によりあっさりと受け止められる。その間にヨハンが魔力を解放。シロイコは後ろにいる部下を庇おうとするが、マックスの放った矢により妨害され、強力な一撃がシロイコと部下に命中する。このヨハンの攻撃が終わった時点でシロイコ軍の精鋭たちはシロイコ、キンバリー、ヤングを残し戦闘不能となっていた。更に、この隙に乗じて一気にシロイコの元へと詰め寄っていたサラサが、鋭い斬撃を放つ。シロイコもこの懐にやってきた剣士を目下の脅威と見なしたのか、サラサに切り返す。こうして、二人の剣士による切り合いが始まった。怒りを込めたサラサの斬撃は、セルモの支援もあって鋭さを増し、シロイコに大きな打撃を与えることに成功する。だが、シロイコの剣も一撃が重たかった。優れた剣士であっても、その一撃を受け止めるのは難しかっただろう。ましてサラサは、防御を捨てている。しかし、そこにはヨハンとゼンマイガーがいた。彼らの作り出す防御壁は、シロイコの攻撃の大半を受け止めていた。このままシロイコを押し切れるかもしれない。だが、そう簡単にはいかなかった。この戦いの中でシロイコは徐々に調子を上げてきており、その剣も再び電気を纏い始めたのである。むしろ、サラサは気力で持ちこたえることこそできていたが、押し切られるのは時間の問題となっていた。
そしてついに、シロイコがよろめいたサラサを倒そうと剣を構える。その瞬間、シロイコの体は突然現れた鞭に絡め捕られ、引っ張られていった。リアノが、自らの目の前にシロイコを引き寄せたのである。この攻撃に激高したシロイコはリアノを倒そうと剣を振るうが、リアノは持ち前の身軽さとグレンの適切な指示を受け、その斬撃を間一髪で何度も避けていった。そして、この隙にとヨハンとマックスがシロイコ目掛け攻撃を行う。マックスの一撃こそシロイコの剣に撃ち落されたが、ヨハンの魔術はシロイコを切り裂き、地に伏せさせた。
なおもキンバリーが残っていたが、彼らが動揺した隙にヨハンたちは体勢を立て直していく。気力が尽き、立ったまま気絶していたサラサをグレンが我に返らせ、キンバリーの見せた危険な動きをセルモが牽制する。やけになったキンバリーが放った一撃はマックスを捉えるが、マックスの怒りを込めた反撃にあって、こちらも倒されるのであった。
シロイコとキンバリー以外にも、その場にはヤングを含めシロイコ配下の精鋭が集っている。従って、熟練の兵でも互角の戦いを繰り広げることが難しそうであることは目に見えていた。だが、そこにいたのは、ヨハンたちだった。真っ先に動いたのは、セルモとティボルト。シロイコ軍でも圧倒的な早さを誇るヤングであっても、彼らを上回ることは出来なかった。セルモさん、今です。セルモに格好いいところを見せるべく先手を取るティボルト。だが、セルモはその様子を冷静に見ていた。なるほど、そうやって速く動けばいいのですね。ティボルトの行動を分析しながら、セルモは前線へと支援を飛ばす。これで、セルモの行動は終わった。
しかし、セルモの行動が終わっても、ヤングはまだ動けなかった。その横から、鋭い攻撃が飛んできたためである。飛ばしたのは、リアノ。ゼンマイガーの力でその身が軽くなった彼女はセルモの支援を受けた後、大きく跳躍して敵陣へと切り込み、鞭を振るった。その場にいたシロイコ軍全体を巻き込むこの攻撃に、ここだと言わんばかりにヨハンとグレンが支援を行うと、その大半が吹き飛ぶ。おまけに、辛うじて生き残ったヤングも鞭にからめ捕られ、自由な身動きが取れなくなってしまった。踏んだり蹴ったりなヤングは、その体勢からようやく鋭い一撃をヨハンに放つが、ゼンマイガーが作り出した防御壁によりあっさりと受け止められる。その間にヨハンが魔力を解放。シロイコは後ろにいる部下を庇おうとするが、マックスの放った矢により妨害され、強力な一撃がシロイコと部下に命中する。このヨハンの攻撃が終わった時点でシロイコ軍の精鋭たちはシロイコ、キンバリー、ヤングを残し戦闘不能となっていた。更に、この隙に乗じて一気にシロイコの元へと詰め寄っていたサラサが、鋭い斬撃を放つ。シロイコもこの懐にやってきた剣士を目下の脅威と見なしたのか、サラサに切り返す。こうして、二人の剣士による切り合いが始まった。怒りを込めたサラサの斬撃は、セルモの支援もあって鋭さを増し、シロイコに大きな打撃を与えることに成功する。だが、シロイコの剣も一撃が重たかった。優れた剣士であっても、その一撃を受け止めるのは難しかっただろう。ましてサラサは、防御を捨てている。しかし、そこにはヨハンとゼンマイガーがいた。彼らの作り出す防御壁は、シロイコの攻撃の大半を受け止めていた。このままシロイコを押し切れるかもしれない。だが、そう簡単にはいかなかった。この戦いの中でシロイコは徐々に調子を上げてきており、その剣も再び電気を纏い始めたのである。むしろ、サラサは気力で持ちこたえることこそできていたが、押し切られるのは時間の問題となっていた。
そしてついに、シロイコがよろめいたサラサを倒そうと剣を構える。その瞬間、シロイコの体は突然現れた鞭に絡め捕られ、引っ張られていった。リアノが、自らの目の前にシロイコを引き寄せたのである。この攻撃に激高したシロイコはリアノを倒そうと剣を振るうが、リアノは持ち前の身軽さとグレンの適切な指示を受け、その斬撃を間一髪で何度も避けていった。そして、この隙にとヨハンとマックスがシロイコ目掛け攻撃を行う。マックスの一撃こそシロイコの剣に撃ち落されたが、ヨハンの魔術はシロイコを切り裂き、地に伏せさせた。
なおもキンバリーが残っていたが、彼らが動揺した隙にヨハンたちは体勢を立て直していく。気力が尽き、立ったまま気絶していたサラサをグレンが我に返らせ、キンバリーの見せた危険な動きをセルモが牽制する。やけになったキンバリーが放った一撃はマックスを捉えるが、マックスの怒りを込めた反撃にあって、こちらも倒されるのであった。
シロイコとキンバリーを、倒した。安堵する一行の耳に、少しずつ歓声が聞こえてきた。ミリオンズを倒し撤退しつつあった、砲撃部隊がヨハンたちの偉業に気が付いたのである。その声は、少しずつ大きくなっていく。だが、もう一組、アークたちと仮面の女との戦いは、終わっていなかった。両者の戦いは、目まぐるしいものであり、ヨハンたちが助太刀に入ろうにもつけ入る隙がなかった。隙が、少しでもできれば。ちょうどその時、遠くから馬蹄の音が近づいてくるのが分かった。ブースト率いる、ブースト軍本隊だ。その音が戦っている三人にも聞こえたのか、わずかに隙が生まれた。今なら助けに入れる。そう思った時だった。
なかなか、厄介じゃの。ヨハンにとって、聞き覚えのある声がすぐ近くから聞こえた。ゲイムだ。だが、覚醒しつつあるお前さんなら、この状況を変えられよう。
ゲイムが指を鳴らすと同時に、ヨハンは意識を失った。
近くにいたサラサたちは、ヨハンから背筋が凍りつくような邪気が発せられるのを感じた。半年近く前、パルパークの近くで感じた気配と、同様のものだ。その邪気には、アークとポケルも反応を示した。同時に、ヨハンが黒い炎を彼ら目掛けて放つ。この一撃はアークの魔術とポケルの構えた盾によって、どうにか受け止められた。だが、その隙に仮面の女が巨大な炎をポケルとアークに放っていた。
爆炎が辺りを包み、煙が晴れると、そこには重傷をおったアークとポケルがいた。その様子を見たゲイムは顔を大きくゆがませて笑う。
さあ行け、ヨハン。とどめを刺すのだ。
ゲイムがそう述べると、ヨハンの指輪のうちの一つが緑色に輝き始めた。
なかなか、厄介じゃの。ヨハンにとって、聞き覚えのある声がすぐ近くから聞こえた。ゲイムだ。だが、覚醒しつつあるお前さんなら、この状況を変えられよう。
ゲイムが指を鳴らすと同時に、ヨハンは意識を失った。
近くにいたサラサたちは、ヨハンから背筋が凍りつくような邪気が発せられるのを感じた。半年近く前、パルパークの近くで感じた気配と、同様のものだ。その邪気には、アークとポケルも反応を示した。同時に、ヨハンが黒い炎を彼ら目掛けて放つ。この一撃はアークの魔術とポケルの構えた盾によって、どうにか受け止められた。だが、その隙に仮面の女が巨大な炎をポケルとアークに放っていた。
爆炎が辺りを包み、煙が晴れると、そこには重傷をおったアークとポケルがいた。その様子を見たゲイムは顔を大きくゆがませて笑う。
さあ行け、ヨハン。とどめを刺すのだ。
ゲイムがそう述べると、ヨハンの指輪のうちの一つが緑色に輝き始めた。
ヨハンは、夢を見ていた。幼いころの夢だった。その夢の中で少年ヨハンは、両親から綺麗な装飾が施された指輪を渡されていた。その指輪は当時のヨハンにとってはいくらか大きいものであったが、今は指にぴったりはまっている。と、場面が変わり、いくらか成長したヨハンが雑踏の中で倒れていた。この雑踏は、おそらくニューキンセツのものだろう。その倒れたヨハンを巡って、物乞いたちが話している。正確には、ヨハンのはめている指輪を巡ってだった。彼らはヨハンが両親からもらった指輪は高級そうなものでもあり、それを売って金を得ようとしていたのだ。ヨハンは抵抗しようとするが、空腹もあってか力が出ない。物乞いたちはそんなヨハンから指輪を抜き取ろうとし、そのまま不意に現れた女に蹴り飛ばされた。何をするんだと怒る物乞いに対し、女は威勢よく言い放った。人の弟子に、勝手に手を出してんじゃねえよ。それが、師匠マリアンナとの出会いであった。結局、行くあてもないヨハンは彼女の下に正式に弟子入りすることになるのだが、その際、ヨハンの指輪を見たマリアンナは何か考えるような表情をしていた。それから、ヨハンとマリアンナの口は悪いが信頼のある師弟関係が始った。マリアンナはヨハンのことをやたらとおちょくってはいたが、何度か真面目な表情で、その指輪だけは大事にしろよ話していた。
そしてさらに場面が変わる。今度は、ヨハンがマリアンナたちと共に初めて錬金術師としての仕事を終えた時のことだった。仕事中は罵声を飛ばしていたマリアンナであったが、ヨハンの作り上げたものを見て満足そうな表情を浮かべていた。ヨハンは他の仲間と共に打ち上げに行こうとしていたが、そんなヨハンをマリアンナは引き留めた。初めて仕事をやり遂げたお祝いだ。マリアンナからヨハンが渡されたのは、いかにもマリアンナらしい悪趣味なほどに豪華な装飾が施された指輪であった。昔から持ってる指輪も、その指輪も、何があってもなくすなよ。そう述べたマリアンナは、いつになく真剣な表情をしていた。
大切にするよ。ヨハンも、真面目な顔で応じる。ヨハンがそう返した理由としては、マリアンナが真剣な表情をしていたこともあるが、素直にマリアンナが祝ってくれたことが、嬉しかったこともある。もちろん、今のヨハンはどちらの指輪も、大切にはめている。
この打ち上げが終わった後、マリアンナはヨハンのもとからいなくなっていた。そこを最後に、ヨハンは目を覚ました。
そしてさらに場面が変わる。今度は、ヨハンがマリアンナたちと共に初めて錬金術師としての仕事を終えた時のことだった。仕事中は罵声を飛ばしていたマリアンナであったが、ヨハンの作り上げたものを見て満足そうな表情を浮かべていた。ヨハンは他の仲間と共に打ち上げに行こうとしていたが、そんなヨハンをマリアンナは引き留めた。初めて仕事をやり遂げたお祝いだ。マリアンナからヨハンが渡されたのは、いかにもマリアンナらしい悪趣味なほどに豪華な装飾が施された指輪であった。昔から持ってる指輪も、その指輪も、何があってもなくすなよ。そう述べたマリアンナは、いつになく真剣な表情をしていた。
大切にするよ。ヨハンも、真面目な顔で応じる。ヨハンがそう返した理由としては、マリアンナが真剣な表情をしていたこともあるが、素直にマリアンナが祝ってくれたことが、嬉しかったこともある。もちろん、今のヨハンはどちらの指輪も、大切にはめている。
この打ち上げが終わった後、マリアンナはヨハンのもとからいなくなっていた。そこを最後に、ヨハンは目を覚ました。
ヨハンが夢から覚めると、目の前には仮面の女とゲイムが立っている。しかし、ゲイムはいらだった様子で仮面の女の方を向いていた。おのれマリアンナ、まだ小細工を。ヨハンの近くにいたサラサたちは、ヨハンの体から、凍りつくような邪気が消え去ったことに気が付いた。いつものヨハンだ。サラサたちは、安堵した。ゲイムはしばらく仮面の女を睨みつけていたが、目を離すとヨハンの方を向いた。今からお前の仲間を葬り去ってやろう。
ゲイムたちが放つ殺気にブースト軍の兵士たちが後ずさりを始める。だが、その中でヨハンたちに近づくものがいた。ブーストだ。ブーストはサラサに尋ねた。あの老人は、人を操る力があるのか。サラサはその通りだと答える。
ブーストは頷くと、マンジュにアークとポケルの手当てを任せ、ヨハンたち一人一人の顔を見渡した。今は対テレポート結界が機能していて、おれたちは逃げることができない。だが、あの二人も逃げることはできない。人を操ることができるような危険な力を持つ男を、おれはここで倒したい。おれ一人では難しいかもしれないが、ヨハンたちの力があるなら、きっと倒せる。協力してほしい。
即座に、刀を構えながらサラサが同意した。人を操るようなやつを、許しては置けない。グレンが、リアノが、マックスが、セルモが、次々に同意する。ヨハンも短くうなずくと、ゲイムと仮面の女の方を向いた。
こうして、コガネの城門近くでヨハン、サラサ、グレン、リアノ、マックス、セルモ、そしてゼンマイガーとブーストが、ゲイムと仮面の女に戦いを挑むのであった。
ブーストは頷くと、マンジュにアークとポケルの手当てを任せ、ヨハンたち一人一人の顔を見渡した。今は対テレポート結界が機能していて、おれたちは逃げることができない。だが、あの二人も逃げることはできない。人を操ることができるような危険な力を持つ男を、おれはここで倒したい。おれ一人では難しいかもしれないが、ヨハンたちの力があるなら、きっと倒せる。協力してほしい。
即座に、刀を構えながらサラサが同意した。人を操るようなやつを、許しては置けない。グレンが、リアノが、マックスが、セルモが、次々に同意する。ヨハンも短くうなずくと、ゲイムと仮面の女の方を向いた。
こうして、コガネの城門近くでヨハン、サラサ、グレン、リアノ、マックス、セルモ、そしてゼンマイガーとブーストが、ゲイムと仮面の女に戦いを挑むのであった。