はじめに
この記事はダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)というTRPGの概要です。TRPGや日本産RPGの原点を語る時によく出てくるD&Dとは当記事で紹介しているシステムを指します。
世界的に有名なTCG『マジック:ザ・ギャザリング』で有名なウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から2022年の冬にD&Dのルールブックが販売されます。(かつて2022年6月末までは日本の代理店としてホビージャパンから発売されていました。)
そんなD&Dというシステムを簡潔に紹介します。
作品としてのD&D
D&Dの歴史とその影響力
D&Dの歴史は、そのままTRPGそのものの歴史とも言えます。1974年にアメリカで世界で最初に発売されたTRPGで、日本では1985年に発売されました。以降バージョンアップを繰り返し、現在は第5版まで発売されています。
海外、特にアメリカでは最も遊ばれているTRPGであり、その影響で「ウィザードリィ」や「ウルティマ」などのD&Dの影響を受けたゲームが世に出ました。
このD&Dの影響を受けたゲームが後に「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」をはじめとする国産RPGの影響を受けました。
故にD&Dのことを「全てのRPGの元祖」とも呼ばれています。
D&Dの世界観
D&Dの世界観は他のTRPGとは違い、多くの世界観があります。しかし全てを紹介すると混乱を招く恐れがあるので、1番よく遊ばれている「フォーゴトン・レルム」という世界を説明します。
フォーゴトン・レルム
第5版ではデフォルトになっている世界で、現実世界の中世の時代をモチーフとしてます。
メインとなる舞台は中世ヨーロッパをモチーフとした大陸「フェイルーン」です。他にも中東のアラビアンナイトのような大陸「ザハラ」や古代中国や江戸・戦国時代の日本などアジア圏をモチーフとした大陸「カラ・トゥア」があります。
ドラゴンランス
2023年12月3日に発売されたアドベンチャー集(キャンペーン・シナリオが載っているシナリオ本)『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』で追加された世界です。
この世界の歴史はかつて"竜殺しの騎士"と呼ばれた英雄が竜槍(ドラゴンランス)を使って悪竜の女神を倒し、別世界に追放したという出来事が世界観の由来となっています。
現在はある出来事が原因で神々はこの世界を見捨て、さらに追放された悪竜の女神が帰還し、ドラゴン軍で各地を蹂躙し再び世界は闇に包まれようとしています。
この世界観は「アンサロン大陸」という大陸が舞台となっています。この世界特有として、ケンダーという小型の種族がPC種族として選べるようになりますが、ドラゴンボーン、ハーフリング、ティーフリングはこの世界では存在しません。
D&Dの判定方法やキャラクターシートの内容
D&Dは元祖TRPGシステムなので判定やルールはシンプルとなってます。
しかしシンプルな故に細かい裁定とかはないので、呪文や魔法のアイテム、RP、アイデア次第でルールに載ってない事も可能(要GMと相談)になることがあります。なのでこれらを駆使すればやれることは無限大です。
なお、D&DのGMは「DM(ダンジョン・マスター)」と呼びます。
判定
基本的に判定で使用するダイスは20面ダイス1つ(1d20)を使用します。具体的に言うと、20面ダイスに《能力修正値》(他システムで言う能力値ボーナス)とアイテムや武器、技能に「習熟」している場合に使える《習熟ボーナス》の2つを加算して達成値が難易度(目標値)以上なら成功、難易度未満なら失敗となります。
なお戦闘時の攻撃ロール(命中判定)限定で判定の結果、「1」の出目はファンブル、「20」の出目はクリティカルとして処理します。
判定は主に4種類あります。
- 能力値判定:技能判定で指定した行動以外の基本的な判定はこれを使用します。判定は「1d20+指定された能力修正値」となります。技能判定以外で広範囲に判定する場合、特定の道具を使用し、それに対して習熟がある場合、習熟ボーナスを加える事ができます。
例)ローグが盗賊道具を使って錠前破りをする場合、ローグは盗賊道具に習熟しているので、「1d20+【敏捷力】修正値+習熟ボーナス」となります。
- 技能判定:〈隠密〉や〈知覚〉など能力値判定のうち特定の行動に対応してこの技能判定を使います。クラスや種族によって特定の技能に習熟がある場合、能力修正値に加えて習熟ボーナスも加味して判定できます。指定された技能に習熟がない場合は能力値判定と同じ方法で判定します。
- 攻撃ロール:いわゆる命中判定の事で、戦闘中に敵に攻撃する時の判定です。目標値は「AC(アーマー・クラス)」の値を使用し、達成値がACの値以上ならヒット、ACの値未満ならミスとなります。
- セーヴィング・スロー(セーヴ):呪文の効果や罠、毒や病気から耐えたり避けたりする判定です。他の判定と違って受動的な判定で、各クラスごとに特定の能力値を使ったセーヴに習熟しています。習熟しているセーヴで判定する場合、能力修正値に加えて習熟ボーナスも加えて達成値を算出できます。セーヴの内容次第ですが、失敗した場合は効果はそのまま受けますが、成功した場合は効果を無効化したり、ダメージの場合は半減になる等の効果を受けます。
キャラクターの性能
キャラクターの性能は大きく5つに分かれます。
6種類の能力値
- 【筋力】・・・文字通り筋肉量や力持ち、運動神経を表す能力値です。近接武器と一部の射撃武器の命中精度と威力に影響を与えます。
- 【敏捷力】・・・俊敏さや反射神経、平衡感覚、手先の器用さを表す能力値です。射撃武器や一部の近接武器の命中精度と威力に影響を与えます。
- 【耐久力】・・・スタミナや生命力を表す能力値です。最大HPの上昇幅に影響を与えます。
- 【知力】・・・正確な記憶力や論理的思考など、知能に関わる能力値です。ウィザードとアーティフィサーが使う魔法に影響を受けます。また、アーティフィサーの一部のサブクラスは、武器を使った命中精度や威力の影響を筋力や敏捷力の代わりに使用できます。
- 【判断力】・・・知覚や直感、洞察能力に関わる能力値です。クレリックやドルイド、レンジャーが使う魔法に影響を受けます。
- 【魅力】・・・コミュニケーション能力に関わる能力値です。フレーバーですが容貌(美貌or強面)にも関わります。ウォーロック、ソーサラー、バード、パラディンが使う魔法の影響を受けます。
なお、これらの能力値はその値によって能力値ボーナスである「能力修正値」が算出されます。また、PCが持つ各能力値の最大値は「20」点です。
種族
- ヒューマン:我々人間を指す種族です。住む地域によっては現実世界同様に肌の色が違います。環境の適応力が高い為居住地域が他の種族の中で最も幅広く、そして野心家が多い種族であります。
- エルフ:森に住まう種族で、眠ることは無いので代わりにトランスという瞑想が睡眠の代わりになります。自然や魔法、芸術や音楽を愛する種族です。性格は傲慢な者が多くいますが、人当たりの良い者も時々います。
- ドワーフ:人間よりも小さいが頑丈です。宝石や貴金属を愛する種族で、性格は我慢強さと義理を重んじますが、強情で融通が効かない頑固者の一面もある種族です。その為か多くのドワーフ達は石工か鍛治職人、宝石細工師になっています。
- ハーフリング:農村や田園地区に住まう、ヒューマンの、半分ほどの大きさの種族です。基本的に陽気で愛想が良く、好奇心旺盛な種族です。基本的に小さな共同体にて暮らしてますが、その共同体を守る為、又は単に好奇心からか広い世界を冒険する者もいます。
- ドラゴンボーン:ドラゴンが二足直立して、翼と尻尾を無くした風貌の種族ですが、近年では尻尾の生えたドラゴンボーンもいるようです。その名前通りに、先祖がドラゴンで、その先祖によって鱗の色が変わっています。身長は2m弱あり筋骨隆々な体格で、先祖同様にドラゴンブレスを吐いて攻撃が出来ます。性格は質実剛健で気高い性格の者が多いです。
違うって言ってるのにスカイリムのドヴァキンでは?と言ったのはどこのどいつだ!!
- ティーフリング:人間の体にデヴィルやデーモンといった悪魔のような角と尻尾が生えた種族で、他の種族からは差別されて嫌われています。そのせいか悪の道に進む者もいます。悪の道に歩まない者でも、偏見を受けた過去から中々他者を信用しようとしません。しかし偏見という色眼鏡を外して友として接した場合はその恩義を返す義侠心もある種族です。
- ノーム:ハーフリング同様に背の丈が低く、好奇心に溢れる種族ですが、悪戯好きで、機知に富んで発想力豊かな性質を持ちます。彼らの多くは技師、錬金術師、修理屋などの職についています。
- ハーフエルフ:人間とエルフの両方の血筋を受け継いだ者達です。人間の野心家や独創性、エルフの洗練された感覚や自然、芸術の感性を持ち合わせており、2つの種族を繋げる役割を果たしている者が多いです。
- ハーフオーク:野蛮な種族『オーク』とヒューマンの血を受け継ぐ種族です。オークは野蛮で血に飢えている種族で、そのオーク由来の強面な顔や筋肉隆々な体と頑丈さもありますが、人間由来の野心家や知性からなる狡猾さも持ち合わせています。ティーフリング同様他の種族から嫌われていますが、喜怒哀楽が激しく、世間に受け入れてもらう為に余計な注意を引かぬよう、又は信心と親切を示して信用を勝ち得ようとする者もいます。
クラス
いわゆる職業、ジョブに当たるもので、クラスごとにレベルアップ時のビルドが固定されています。また、クラスごとにサブクラスがあり、同じクラスでも微妙にビルドが変わります。実際のサブクラスは多数あるので各クラスごとにサブクラス1つを紹介します。
- ウィザード:D&Dの世界にある、目に見えない魔法の糸(ウィーヴ)を操って火炎や稲妻、精神支配などを呪文として発動させる技術を学問として修めた魔法使いです。D&Dの魔法には8種類あり、ウィザードのサブクラスもそれぞれに対応しています。
- 力術系統:ウィザードのサブクラスの1つです、冷気、火炎、雷鳴(いわゆる轟音による攻撃)、電撃、強酸による攻撃呪文が力術系統の呪文で、それらを得意とするウィザードです。別名力術士とも呼ばれています。特殊能力として、力術呪文使用時の範囲攻撃で味方だけを巻き込まれないようにしたり、力術呪文のダメージに追加ボーナス付与したりできます。
- ウォーロック:呪文を使うクラスですが、ウィザードとは違い、高位の妖精や悪魔、異界の存在など別次元に存在する強力な存在と契約する事で呪文を使う妖術師です。契約相手によってサブクラスが派生します。
- フィーンド:ウォーロックのサブクラスの1つです。強力なデヴィルやデーモンなどといったフィーンド(魔物)が契約相手であるウォーロック達は攻撃呪文を中心とした呪文を習得し、敵のHP0にする度に一時的HP(外付けHPで、被ダメージ時に優先的に減少される)というバリアを発生したり、判定する時に追加のダイスを振って追加の達成値付与して成功させやすくしたりする等の特殊能力を会得します。
- クレリック:神に使え、その神の力を由来する魔法を行使して戦う聖職者です。クレリックが使う呪文は、イメージ通りの回復呪文、死者蘇生呪文等が揃っています。クレリックには神性伝導という2種類の効果がある特殊能力があり、一つはアンデッドモンスターを退散する効果、もう一つはサブクラスクラスごとに効果が変わります。信奉する神格によってサブクラスが分かれます。
- 生命の領域:クレリックのサブクラスの一つです。生命を司る神格を信奉しているクレリック達は、他のクレリックとは違って、回復呪文の回復量にボーナスの付与や2つ目の神性伝導として呪文を介さずにHPを回復させるなど、クレリックの中でも回復のエキスパートとなったクレリックです。
- ソーサラー:生まれつき持っている魔力を使い、呪文を強化したり特殊な効果を及ぼす魔術師です。このクラスは独自のリソース「魔力点」を持ち、魔力点の使い道は呪文発動に必要なリソース「呪文スロット(後述)」に変換したり、呪文のダメージロール振り直し、呪文の射程を延長したり、敵の呪文によるセーヴ判定にペナルティを与える等があります。生まれ持った魔力の源泉がどこから由来するかによってサブクラスが分かれます。ソーサラーが扱う呪文はほぼウィザードとと同じです。
- 竜の血脈:ソーサラーのサブクラスの1つです,祖先がドラゴンであるソーサラー達は、その先祖由来の魔力を生まれ持って扱えます。特殊能力として、先祖のドラゴンの種類によって特定の属性攻撃呪文のダメージにボーナス発生、体に竜の鱗が生えて鎧を装備してなくてもACに補正の付与、竜の翼が生えて飛行可能などとドラゴン由来の能力が獲得します。
- ドルイド:森林や草原など自然を対象に崇める祭司がドルイドです。ドルイドには円環というコミュニティを形成し、どの円環に属しているかによってサブクラスが分かれます。共通する能力として、動物に変身する能力や加齢速度を1/10にする能力など、フレーバー的な能力を獲得します。ドルイドが使う呪文は自然由来の呪文が多く、回復呪文や攻撃呪文、補助呪文など幅広い範囲で対応のできるクラスです。
- 土地の円環:ドルイドのサブクラスの一つです。より自然と結びつきやすい円環に所属しているドルイド達はどの自然に結びついているかによっては、本来ドルイドが習得できない呪文も習得できるようになります。他の特殊能力として、呪文を使う時の呪文スロットを休憩中に回復したり、移動困難な地形に対して移動時のペナルティを無効化する等があります。
- バード:歌や音楽を呪文に変える吟遊詩人です。そして多芸の面もあるクラスです。具体的に説明すると、特殊能力として、バードの声援によって自身を除く仲間1人に戦闘中や探索時の判定に追加のダイスを振って達成値に加える事ができる能力や、習熟してない技能に本来の習熟ボーナスの半分だけ追加で達成値に加える能力等が獲得し、さらに呪文も攻撃、回復、補助など幅広く習得でき、そしてある程度武器に対して習熟があるので近接攻撃もできる等まさにオールラウンダーなクラスとなってます。バードはスタイルによってサブクラスが分かれます。
- 知の学派:バードのサブクラスの1つです。このサブクラスのバードは属するバードは王族の忠誠や神の教えよりも美と真実の追加を重視しています。特殊能力として、言葉の刃で敵キャラの攻撃ロールや能力値判定、ダメージロールの値をバードの声援で使うダイスの出目分だけ減少したり、バードの声援の効果を強化する等があります。
- バーバリアン:原始的な本能で戦場を大暴れする未開の地からやってきた蛮人戦士です。呪文は一切使えませんが、回数制限のある「激怒」によって近接武器によるダメージに追加ボーナスを獲得し、さらに物理攻撃に対してダメージを半減にする効果もある攻防一体のリソースが特徴です。バーバリアンの激怒の源によってサブクラスが分かれます。
- 狂戦士の道:バーバリアンのサブクラスの1つです。このタイプのバーバリアンは、激怒は暴力をもたらす手段であり、血塗られた道を歩み、戦いに置いて自身の命をも顧みない狂戦士(バーサーカー)達です。激怒より大きなリスクを背負う代わりに攻撃回数を増やして火力を出す「狂乱」や激怒中は魅了や恐怖と言った精神効果を無効化するなどリスクの多い火力型のバーバリアンとなっています。
- パラディン:悪に立ち向かう為に誓いを立てて戦う騎士です。クレリック同様に回復呪文や神性伝導を使用でき、神性伝導はサブクラスごとに2つの効果があります。さらに呪文使用せずに回数制限でキャラクター1人にHPや毒や病気の治療ができる等の特殊能力を獲得します。誓いを立てた内容によってサブクラスが分かれますが、誓った内容は守らなければなりません。
- 献身の誓い:パラディンのサブクラスの1つです。正義と秩序の崇高な理想に結びつけた誓いをしたパラディンで、別名白騎士と呼ばれます。特殊能力として、神性伝導で攻撃ロールにボーナスを付与し、さらに魔法の武器扱いにする効果や、悪魔やアンデッドを退散して逃げていく効果等があります。
- ファイター:あらゆる武器と防具に習熟し、あらゆる戦闘技術の基礎を学んだ熟練の戦士です。基本的に呪文は習得できず、他のクラスのような個別のリソースはありませんが、全クラス最多の最大4回の攻撃が可能で、さらに怒涛のアクションで攻撃など追加の行動が可能になる能力、そして自身のHPを即座に回復する能力など戦闘において前衛の要となるクラスです。なお、他のクラスと違う点として、能力値上昇(一つの能力を2点上昇or2つの能力値をそれぞれ1点ずつ上昇を選ぶ)のタイミングが「4、8、12、16、19レベル」と5回ありますが、ファイターだけは追加で「8、14レベル」と7回も能力値上昇が出来ます。戦闘訓練の方法によってサブクラスが分かれます。
- チャンピオン:ファイターのサブクラスの1つです。別名闘士とも呼ばれ、肉体鍛錬をする典型的なファイターのタイプです。特殊能力として、攻撃ロールのクリティカルの条件が最大「18」以上まで緩和したり、高レベルだと自分のターンの開始する度にHPが少量回復する効果など、順当に強化される特殊能力を獲得します。
- モンク:僧院で修行し、それによって「気」というエネルギーを用いて、素手や武器を使って戦う武術家です。武術によって素手でも武器並みに戦えるようになる能力や気ポイントというリソースを使って連打で攻撃回数を増やすなど有利に戦う能力、バーバリアンと同じく「鎧わぬ守り」がありACに補正が付く(モンクは鎧と盾は装備不可)能力などがあります。モンクは修行時にどの格闘スタイル「門派」によって修行していくかでサブクラスが分かれます。
- 開手門:モンクのサブクラスの1つです。イメージとしては空手やカンフーの使い手で、気ポイントで発動する連打に追加効果を付与したり、高レベルでは激震掌という、相手に体を素手攻撃で命中させた時に相手の体を振動させ、次のターンで震動を止めると、相手はセーヴ判定し、成功なら10d10ダメージ、失敗なら即座にHP0にするインパクト大な技を習得します。
- レンジャー:人々を脅かす巨人やドラゴン、野生動物などを狩る荒野の狩人です。ファンタジーにおけるレンジャーは弓使いの部分をイメージされますが、武器に関してはファイター並みにいろんな武器を装備できます。また呪文も扱う事が可能で、得意な敵を設定してその敵の追跡や知識にボーナスを得て判定したり、高レベルだとその得意な敵に対しての攻撃ロールかダメージロールにボーナスを付ける事が出来ます。斥候としての適性もあり、カモフラージュして隠れたり、痕跡を魔法でも使わない限り敵に感知されないという能力も獲得します。レンジャーには狩りの形態によってサブクラスが分かれます。
- ハンター:レンジャーのサブクラスの1つです。別名狩人と呼ばれ、オーガやオーク、巨人やドラゴンなどの人々の文明に対する脅威と戦うレンジャーです。レベルが上がっていくと、狩りの技、守りの技、複数回攻撃、守りの技の奥義を習得します。いずれも有用で、敵単体に通用する技や、複数体の敵と戦うのに有利な技などがあります。
- ローグ:ローグとは「ならず者」という意味で、ローグの多くは盗賊や殺し屋、スリ、詐欺師として生計を立てていますが、鍵屋や探偵などまともな仕事で生計を立てている者もいます。盗賊道具に習熟しているので鍵開けや罠解除の役割があります。また戦闘時は攻撃時に目標の敵の周りに味方がいる場合は追加のダメージロールを振って火力増加したり、素早く敵の間合いから安全に離れたり、移動距離を伸ばしたりするなどヒットアンドアウェイが得意なクラスです。ローグの技術の方向性によってサブクラスが分かれます。
- シーフ:ローグのサブクラスの1つです。別名盗人と呼ばれ、このタイプのロールは強盗や盗賊、山賊、スリなどの犯罪者だけでなく、トレジャーハンター、冒険家、探偵も含まれます。特殊能力として、素早くスリや罠解除、鍵開けを素早くできるようになるだけでなく、魔法のアイテム使用時の条件を無視して装備、使用できるようになったり、高レベルでは自分のターンが終えたら、ラウンド経過前にもう一度自分のターンが回ってくる効果など強力な特殊能力を獲得します。
- New!アーティフィサー:サプリメント『ターシャの万物釜』で追加された魔法と科学を組み合わせたクラスで、ホムンクルスを生み出したり、魔導砲という特殊な大砲を生み出したり、ロボットを製作したり、鎧からパワードスーツへ魔改造したり、錬金術で秘薬を作ったりと今までにないタイプの動きができるクラスです。魔法も扱えますがある程度の近接戦闘能力もあり、サブクラス次第では後衛型と前衛型に完全に分かれます。さらに自分の装備している武器や防具を改造して特殊能力を付与させる事ができるようになります。そのことから「魔法技師」とも呼ばれてます。
- アルケミスト:アーティフィサーのサブクラスの1つです。別名錬金術師と呼ばれています。戦闘スタイルは後衛型で、アーティフィサーの中でも回復魔法が得意で、ランダム性のある薬品を生み出す、回復魔法の回復量や酸、毒、死霊、火属性の攻撃魔法の威力にボーナスを付与、一部の回復魔法を呪文スロットを消費せずに発動できる(回数制限あり)等の特殊能力を獲得します。
武器や防具、マジックアイテム
- 近接武器:攻撃ロールとダメージロールに【筋力】修正値の影響を受けます。 例:クォータースタッフ、ロングソード、グレードアックス等
- 妙技:妙技の特性のある武器は攻撃ロールとダメージロールに【筋力】修正値の代わりに【敏捷力】修正値を選択できます。 例:ダガー、シミター、ショートソード、レイピア等
- 遠隔武器: 攻撃ロールとダメージロールに【敏捷力】修正値の影響を受けます。例:ショートボウ、ライト・クロスボウ、ハンド・クロスボウ、ロングボウ等
- 投擲:一部の近接武器はそれを投げつけて攻撃できる武器があります。攻撃ロールとダメージロールに影響するのは【筋力】修正値と近接武器と同じです。例:ジャヴェリン、スピア、ハンドアックス、ライト・ハンマー等
- 防具:防具には4種類あり、いずれもAC(アーマー・クラス)が設定されています。ACとは、攻撃ロールの目標値であり、防御性能と回避能力を組み合わせたものです。なので他のTRPGとは違い、防具によるダメージ軽減はありません。
- 軽装鎧:ACの値は「軽装鎧の防具ごとに設定されたAC+【敏捷力】修正値」となります。例:レザー、スタテッド・レザー等
- 中装鎧:ACの値は「中装鎧の防具ごとに設定されたAC+【敏捷力】修正値(最大値2点まで)」となります。例:ブレストプレート、スケイル・メイル等
- 重装鎧:ACの値は「重装鎧の防具ごとに設定されたAC」のみで【敏捷力】修正値は含めません。例:チェイン・メイル、プレート等
- 盾:盾の種類はシールドのみですが、鎧とは違い、片手に持つだけで、鎧のACと重複出来るようになります。なお、両手武器を持っている場合は装備不可です。
- マジックアイテム:冒険中に手に入る強力な武器やアイテムの総称です。代表的なマジックアイテムをいくつか紹介します。
- ポーション・オブ・ヒーリング:飲み薬で、飲むと即座にHPを回復する効果があります。このポーションの強化版がいくつもあります。
- カンドレッツ・オブ・オーガ・パワー:装備するだけで即座に【筋力】が「19」点へ上昇するオーガの力が封じ込められた篭手(ガンドレット)です。
- フレイム・タン:魔法の剣で合言葉を唱えてると刃から炎を纏い、明かりを確保し、近接攻撃時に火属性攻撃の追加ダメージを与えます。
某国産RPGでは同名の火属性の剣として登場します。
- フロスト・ブランド:刃に冷気を纏う魔法の剣で、近接攻撃するときに冷気属性の追加ダメージを与え、さらに火属性に対しては抵抗(ダメージ半減)を得ます。
某国産RPGでは、冷気属性の剣の名前が『アイスブランド』という表記になってます。
呪文
D&Dの呪文には以下の特徴的なポイントがあります。
- 呪文のリソースは数量制ではなく、「回数制」:リソースの管理はいわゆるMP制ではなく、魔法の回数制で管理します。呪文にはレベルの概念があり、1レベルから9レベルまであります。呪文を使うクラスのレベルによって呪文レベル事に回数制限が決まっています。例えばレベル3ヴィザードの呪文スロットはレベル1は4つ、レベル2は2つとなっています。呪文ごとにレベル分けされていますが、低レベルの呪文も高レベルの呪文スロットを使用した場合、呪文の効果が上昇します。スロットの回復手段は「大休憩」という、最低8時間を要する休憩(うち6時間は睡眠)をしなければなりません。大休憩が終えれば、呪文スロットは最大値まで回復します。ただし、ウィザードやウォーロック、土地の円環ドルイドのように「小休憩」という、最低1時間を要する短い休憩を取れば、呪文スロットの一部ないし全て回復します。
- 全くリソース無しで唱えられる呪文「初級呪文」:ほとんどの呪文は呪文スロットを1点消費して発動しますが、初級呪文だけはリソース無しで唱えることができます。初級呪文の内容は攻撃呪文と補助呪文のみで、初級呪文の攻撃呪文を使えば、呪文スロットを全く使わないので、まともに武器が扱えないウィザードやソーサラーも積極的に戦闘に参加しやすいのです。
これらを組み合わせる事でキャラごとの役割が明確となり、他のPCと協力してシナリオを進行します。レベルアップすると新たなアクションや呪文が獲得したり、能力値が上昇したりするので、キャラクターの成長をより感じやすくなってます。
パーティ
パーティとは志や目的が同じ冒険者達がチームを組んでダンジョンを攻略して行く集団です。キャラクターごとに得意分野と苦手分野があるので、それらをパーティ内で補い合い、ダンジョンを踏破します。
ダイスの出目によっては必ずしも良い結末となる訳ではありませんが、ダイスやアイデアによって生まれたドラマがよりセッションが盛り上がると思います。
最後に
ルールブックは「プレイヤーズ・ハンドブック」「ダンジョン・マスターズ・ガイド」「モンスター・マニュアル」の3冊になります。
その中でPLは「プレイヤーズ・ハンドブック」だけ用意すれば事足ります。DMをするなら追加でモンスターデータが網羅している「モンスター・マニュアル」とDMの心得や選択ルールが載っている「ダンジョン・マスターズ・ガイド」を購入できればより良いですが、無理に買う必要はありません。ちなみに値段はそれぞれ5,500円ほどです。
ですがいきなり5,000円も出すのは少しハードル高いので、低レベル帯限定で基本ルールがついて、シナリオが同梱しており、さらにサンプルキャラもついている「スターターセット」(2,200円ほど)や「デラックス・プレイ・ボックス」(2,750円ほど)も発売されていますのでこちらから買ってもオススメできます。
……とここまで紹介したのですが、実は
事実上の無料版のルールブックとして
フィフスエディションRPGコア・ルール(リンク先のサイトの「フィフスエディションRPGコア・ルールの所にPDFがDL出来るところがあります)がホビージャパンからPDF形式でのダウンロードが可能です。名前が「フィフスエディションRPG」という表記になってますが、これは商標の関係でD&Dという表現が出来ないだけで、
実質的にはD&D第5版のルールに対応しています。翻訳元のOGL(オープン・ゲーミング・ライセンス)のSRD(システム・レファレンス・ドキュメント)に乗っているデータ(D&D第5版のルールを使って他の作品を作るために公開しているデータで、例として
パグマイア(グループSNE)等があります)に加えて、ホビージャパン社が今後フィフスエディションRPGで都合が良いように一部元のD&Dには無いデータとかはあります。また、クトゥルフ神話を題材にした互換サプリメント「
サンディ・ピーターセンの暗黒神話体系 クトゥルフの呼び声TRPG」(2022年9月上旬発売)等もこのルールに準じています。
2024年6月18日にホビージャパンでかつて配布されていた
公式の無料ルールブックである「
ベーシックルール」がウィザーズ・オブ・ザ・コーストから再び配布されました。これにより公式で無料ルールブックとして遊ぶことができるようになります。フィフスエディションRPGの違いは、クラスは
ファイター、ウィザード、クレリック、ローグの4つのクラスしかないのと、種族が
ヒューマン、ドワーフ、エルフ、ハーフリングのみと少なめですが、
魔法のアイテムや敵として出せるモンスターデータが豊富で、
DMとしての処理の仕方やルールが記載されているので、
フィフスエディションRPGと組み合わせて遊ぶ事も可能です。
2023年3月末にはこのシステムを原作とする映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』が公開されました。
2023年8月23日にサプリメント『ターシャの万物釜』が発売されました。これは新クラス「アーティフィサー」の追加と既存のクラスの新たなサブクラス追加、キャラビルドのルール追加など記載されています。
2023年12月3日にドラゴンランスという世界で遊べるキャンペーン・シナリオ集『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』が発売されました。新たな世界「ドラゴンランス」で追放された邪悪な竜の女神が率いるドラゴン軍をPC達が抵抗するという戦記もののようなキャンペーンとなっております。
2023年8月にこのシステムを元に作られたゲーム『
バルダーズ・ゲートⅢ』がPC版(
Steam)で発売し、12月21日に
PS5版発売と共に両方のバージョンに日本語版が実装しました。
解説が長くなりましたが、皆さんも1度TRPGの元祖であるD&Dを遊んでみてはいかがでしょうか。
最終更新:2024年09月11日 00:08