概要
アストラル・クアドラント・テクノエクスパンション・システム (通称、AQ-TES、アクテス)は、船内拡張を目的とする
セトルラーム共立連邦の技術。スペースに限りのある生活環境の利便性向上を目的として実装された。
歴史
時は宇宙新暦4952年。第1世代
ルーゼリック・ワープ航法の開発から、直接的な量子バブルレーンへのアクセスを可能とする。段階的に
第1世代F.B.N.Sとの接続が進められ、様々な分野に広く応用を重ねた経緯がある。共立公暦300年に
第2世代S.B.N.S.の運用を開始。同522年・
クラック対処協定の成立を契機に
ヴァンス・フリートン大統領による
進歩的シンギュラリティ構想が推し進められ、同585年、ついにシールド技術の集大成となる
第2世代QPR
の完成を迎えた。同625年に
量子ポートアルターが登場すると、フリートン政権は転移分野に対する国家規模の投資を促し、新たな移動手段の開発着手に漕ぎ着けたという。それが後の
AQ-TESに繋がる
オメガ・クアッド計画(通称、OQプラン1)となるわけだが、同804年に
第3世代T.B.N.S.の運用開始を迎え、これまでの常識から逸脱する大きな転換期を迎えた。同805年。フリートン大統領は、セトルラームの最高頭脳たる
ゾンガルト博士の提案に応える形で
OQプランαへの移行を許可。そこから空間拡張技術としての用途に舵を切り、同830年、ついに異相制御の要となる
第1世代AQ-TESの完成を迎えた。
仕様
ある特定のスペースにおいて、無限に広がる異空間への接続を可能とする。このシステムの実装から、小型構造物であっても都市型船舶に相当する生活環境を享受でき空間開拓の常識を一変させた。特筆すべきメリットを分かりやすく纏めるなら、次の通りに挙げられる。まず、セトルラームにおいて最大規模の需要を誇る
第3世代T.B.N.S.だが、無限空間と称されるオープンワールドにて多くの意識情報を定着させ、死の恐怖を克服するものである。しかし、その利便性は、あくまでも擬似的なものに過ぎず、
魂の牢獄として非難する声も聞かれた。
AQ-TESの拡張によって人類はテラフォーミングの必要すらなくなり、一部の有識者は
人口統制基本法の撤廃に期待しているという。爆発的な不老人口の増加に対処するため、あらゆる構造物に
『仮想』ではない本物の無限空間設備を整え、新たな技術革新の時代を切り開くことに多くの研究者が前向きな展望を示した。一方、このような技術の取り扱いは一歩間違えると内側からの
事象災害を引き起こすリスクも指摘されて久しく、共立公暦1000年・今日に至っても一部の運用に留まらざるを得ないのが実態とされる。セトルラーム政府の方針としては、種々の課題をクリアするまで大々的に普及させない措置を自主的に講じた。同845年から
ラムティス条約による規制が掛かっており、
レミソルト級スイートクルーザーなどの一部例外(845年以前に導入)を除いて如何なる民間船舶にも導入されていない。さらに、このシステムは
『量子バブルレーン』と総称される異層空間を利用することで、エネルギー供給の面でも飛躍的な進歩を遂げた。特に、
虚空エネルギー(虚数または異相線エネルギーとも言う)の抽出技術を採用することで、従来のエネルギー源に依存しない持続可能なエネルギー供給が可能となった。このエネルギーは、一部の施設や小型構造物において生活環境を維持するために必要なあらゆる活動に利用される。これにより、エネルギー供給の安定性が飛躍的に向上し、異星や遠隔地での長期的な探査や開拓活動が容易になった。このように、
AQ-TESは人々の生活や仕事の在り方を根本から変える可能性を秘めており、その応用範囲は無限に広がっている。ただし、技術の発展に伴い、倫理的な問題や安全性の確保が重要な課題となっているため、セトルラーム政府は引き続き慎重なアプローチを取っている。
ラムティス条約による規制措置もその一環であり、技術の悪用を防ぎつつ、適切な利用を促進することを目指す方針を繰り返し強調した。
第1世代AQ-TESの特徴として、
現段階では以下の4つの統合テクノロジーから成立している。
Dポータルスフィア
量子ポートアルターと似て異なる技術で、一定の安全性が保障された
量子球体構造。予め入域を許可された人物が近づくと自動的に発動し、
QIP制御空間(QIP=『Quantum Infinite Pioneer』の略。)に繋がる
〈正門〉が開かれる。その性質を踏まえて、広大なリアルオープンワールドの創造に期待する声も聞かれた。現状としては、今日の科学技術をもってしても不確定要素が多く、事故防止の観点から未だ検証段階に留まっているのが実態とされる。共立公暦1000年・現時点においては、あくまでも運営のメンテナンス技術(あるいは防衛能力)に依存するシステムとなるため、起点となる設備自体が異常をきたすと直ちに崩壊してしまう類の構成となった。QIP制御区内には無数の『Pリレルムゲート』が配置されており、それぞれが異なる次元へ通じる。これらのゲートは高度なセンサーと制御システムによって管理されており、指定されたエネルギーパターンに基づいて次元を開く。例えば、強力な重力場を持つディメンションから、そうではない無重力空間へのアクセスも可能とされる。また、時間の流れが遅い空間も存在し、長期的なシミュレーションに適しているという。これにより、幸運にも
AQ-TESの使用権を留保された一部の管理者は、物理的な制約を超えて様々な環境下での生活システムを構築することが可能となった。Dポータルスフィアは、エネルギー効率の高い量子トンネル効果を利用しており、エネルギー消費を最小限に抑えながら次元間の移動を実現する。この技術は、量子コンピューティングによってリアルタイムで最適な移動経路を計算し、使用者にとって最も安全で効率的な移動を提供する。また、ポータルスフィアには多層防御システムが組み込まれており、外部からの不正アクセスや干渉を防ぐためのセキュリティが万全に整っている。さらには、Dポータルスフィアを通じてアクセスする空間には、専用の環境調整システムが設置されており、各次元の特性に応じて最適な環境条件を維持することができる。これにより、研究者や利用者は、どのような過酷な環境下でも安全かつ快適に活動することが可能となる。Dポータルスフィアは、異世界の技術と現代科学の融合によって生まれた革新的なシステムであり、QIP制御区内の生活と研究を支える重要な技術要素となっている。これにより、利用者は未知の次元を探求し、新たな知見を得ることができる。
Dネクサスフラックス
QIP制御区には、通常の移動手段となるPリレルムゲートの他、
『Dネクサスフラックス』と称される
第7世代量子テレポーテーションポッド(次元ボールポッド)が設置されている。
AQ-TESの利用者たちは、緊急時、この特殊な
ボールポッドを用いて瞬時にエリア内の他の場所へ移動できることから、更なる運用効率の向上も期待された。Dネクサスフラックスが瞬時に空間転移できる性質上、必然的に
量子ポートアルターの仕様に近い性質を持つことから、緊急時以外での使用は厳格に制限されている。Dネクサスフラックスの技術は、最新の量子場理論に基づいており、次元間のブレイクスルーを可能にする。これにより、エネルギー効率が劇的に向上し、従来のテレポーテーション技術と比べて安全性が飛躍的に高まった。さらに、このシステムは内蔵のAIによってリアルタイムで監視されており、異常検知機能が備わっているため、使用者の安全が最大限に確保される。ボールポッド内には、使用者のバイタルサインや心理状態をモニタリングするためのセンサーが組み込まれており、緊急時には自動的に最適なテレポート先を選定する。これにより、使用者はストレスや恐怖を感じることなく、安全に移動が可能となる。更に、このポッドは複数の使用者を同時にテレポートできるため、大規模な緊急事態にも対応可能。これにより、Dネクサスフラックスは単なる移動手段に留まらず、全体的な安全性や効率性の向上に寄与する多機能システムとして認識されている。また、この技術は他の分野にも応用が期待されており、未来の科学技術の発展において重要な役割を果たすことが予想される。
Tシミュレイト・インフィールド
QIP制御区の壁や床には
『ホログラフィック流動パネル』が組み込まれており、これによって対象の
異層空間(Tシミュレイト・インフィールド)を拡張できる。必要に応じて考察課題をシミュレーションし、任意の圧力環境を再現することも可能となった。
AQ-TESの利用者たちはリアルタイムで好みのプライベート・フィールドを構築しつつ、各人の目的に応じた創作活動を続けている。このシステムは、極限環境の再現能力を持っており、異星の低重力環境や深海の高圧環境まで、多様な条件をシミュレートすることができる。これにより、利用者は仮想的に異なる環境下での研究や実験を行い、通常空間での適応能力や技術を向上させることが可能である。さらに、このホログラフィック流動パネルは、視覚だけでなく、温度、湿度、風などの感覚もリアルに再現するため、まるで実際にその場所にいるかのような体験ができる。特筆すべき要素として、このホログラフィック流動パネルには
現象魔法/術式学/呪文論から着想を得た
コール・スクリプトによる使役的呪文機構が施されており、必要に応じて場の環境を変動、擬似的な現実改変に至らしめる機能を兼ね備えている。この機能により、利用者は仮想的な魔法や術式を使用し、現実では不可能な実験やシミュレーションを行うことができる。当然、使用の限度を超えると内側から
事象災害(特に
アポリア)を引き起こしかねないわけだが……セトルラーム政府の方針としては、
ラムティス条約に基づく規制措置を講じた上で現行利用者の権利を一部留保した。
Tシミュレイト・インフィールドの多機能性により、様々な分野の研究者たちがその機能を活用している。例えば、医療研究においては、人体の様々な部位をホログラフィックに表示し、手術のシミュレーションや新しい治療法の検証が可能である。工学分野では、建築物の耐久性や新しい素材の特性を拡張環境でテストし、通常空間での建設プロジェクトに応用することができる。また、教育の分野でもこの技術は大いに役立っており、一部の学生たちは拡張的フィールドトリップを通じて世界中の名所や歴史的な出来事を
現実世界において追体験することができる。これにより、学習効果が高まり、より深い理解を得られるであろうことが期待されている。このように、
Tシミュレイト・インフィールドは単なるシミュレーション技術に留まらず、様々な分野での応用が期待される画期的なシステムとして評価された。
Bフラクタル・アーキテクチャー
QIP制御区の建築構造は
『バブルレーン・フラクタル・アーキテクチャ(通称、BFA理論)』に基づいて設計されており、
クリエイション・システム
による自己再生・自己増殖の機能を有している。利用者が新たな活動スペースを必要とした際には、この建築構造が自動的に増殖し、必要なスペースを提供する仕組みを採用した。ある研究のために温度や湿度が一定に保てる空間を求めた場合、このアーキテクチャが瞬時にそれを形成し、利用者が思い描いた通りの環境を提供する。
自己再生の際に用いる
ナノマテリアルSC(流動微細半導体群)は、損傷が発生しても瞬時に修復可能で、常に最適な生活環境の構築へと繋がった。ナノマテリアルSCは、微小なロボット群が集まって構成されており、破損箇所を検出すると迅速に修復を開始する。また、このナノマテリアルは自己学習機能を持ち、繰り返し修復を行うことで効率的かつ効果的に損傷を修復することができる。
自己増殖機能の特徴として、
フラクタル構造を持つ建築設計を提供し、必要なスペースを構築する。フラクタル構造は、無限に自己類似のパターンが繰り返されるため、無限に広がる空間を提供することができる。この技術により、QIP制御区のスペースは制限されることなく、利用者のニーズに応じて自在に拡張される。
バブルレーンの名が示す通り、このアーキテクチャーも
ルーゼリック・ワープ理論から派生し、
虚空のエネルギー抽出技術として実装。バブルレーンは、異次元空間へのアクセスを可能にし、異次元からエネルギーを取り込むことで、無限のエネルギー供給を実現する。このエネルギーは、建築物の維持や新たな空間の構築に利用されるだけでなく、研究や実験のエネルギー源としても活用される。さらに、バブルレーン・フラクタル・アーキテクチャーは環境に優しい設計が施されており、エネルギー効率の向上と廃棄物の最小化を目指している。これにより、持続可能な研究環境が実現され、長期的なプロジェクトにも対応できる。利用者たちは、快適で効率的な研究スペースを享受しながら、未来の技術を探求し続けることができる。
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最終更新:2024年10月21日 18:35