セトルラーム共立連邦 > テクノロジー > ビルド・ネットワーク


概要

 量子ビルド・ネットワーク・システム、通称B.N.S.は、共立世界において広く利用される。包括的情報システムの一つ。旧星間機構が遺した初期B.N.S.情報を部分的に取得し、独自の発展を遂げた。今日では文明共立機構を始め、共同管理の名のもと関係各国において広く運用される。セトルラームにおいては民間大手(連邦交易ネットワーク)による通信事業が進んでおり、更に提携企業を通じた様々なサービスプランが普及した。現代文明が成り立つ根幹技術の一つとして数えられ、各国諸星系を繋ぐB.N.S.ゲートの普及にも繋がっている。また、跳躍途上の交信を可能とするI.B.L.C.(双方向バブルレーン通信)や、意識転送を司るライフサイクル・システムなどとの連携も進んだ。一方、星系間を跨ぐ高度な通信システムの弊害として、時空連続体に悪影響をもたらす危険性も指摘された。事象災害を誘発し、問題となって以降は安全性を高めた第3世代T.B.N.Sを開発。国際的な対処枠組みの構築を進めている。

名称

 当初はロフィルナ語による正式名称で統一されていた。
しかし、政府間取引の進展に伴って国際基準における利便性が指摘されるようになり、開発元の事情として最も著名な異世界言語の併用を認めた背景がある。
今日では共立英語による「Build Net」、または「Univorsocial」などの呼称法が定着して久しい。
一方、数あるOSの一つとして、共立連邦オリジナルの「Pardei Klanna」*1シリーズが普及し、その他、様々なソフトウェアの開発へと繋がった。

歴史

S.S.1244年
星間文明統一機構が初期ビルド・ネットワークシステム(N.B.N.S.)を導入。これにより、閉じたバブルレーン領域が形成され遍く宇宙に意識情報の伝播を可能とした。

S.S.1265年
今次世界における星間機構の解体に伴い、全てのB.N.S.ゲートが停止する。これにより、全ての航路を失った諸星系は再び世代航行の時代へ逆行した。

S.S.1295年
パレスポル星系に向けて航行中の移民船団が失われて久しいB.N.S.情報を解読。ハード上の問題から完全な復旧には至らなかったが、膨大な記憶情報の保存を可能とした。

S.S.1300年
同移民船団が新世代ビルド・ネットワークシステム(F.B.N.S.)を導入する。これにより、不完全な遅老技術を補完し、認知ストレスによる記憶死問題を克服した。

S.S.4807年
ツォルマリア星域主権企業連合体がB.N.S.情報を取得。同諸星系において、閉じたゲートの復旧を成し遂げた。

S.S.4929年
同企業連合体が国際社会にB.N.S.情報を開示。これにより、失われた航路の復旧が本格化する。アーディティムシ・ファーリルスト間を繋ぐ大型ゲートルート(宙域大運河)の近代化も進んだ。

S.S.4952年
セトルラーム共立連邦が新世代ルーゼリック・ワープ航法を開発。B.N.S.ゲートへ接続し、更なる航路の安定化に貢献した。
これ以降、諸星系の距離が加速度的に縮まっていく。最低でも数十年の時間を要した行程が数ヶ月に。

S.S.5000年(H.S.0年)
文明共立機構の発足に伴って改暦宣言がなされる。以降は同機構によるB.N.S.ゲートの共有が進んだ。

H.S.300年
セトルラーム共立連邦において第2世代量子ビルド・ネットワーク(S.B.N.S.)が実装される。これにより、大規模な意識の共有と転送を可能とし、跳躍プロセスの更なる短縮にも繋がった。

H.S.804年
セトルラーム連邦・共立機構主導で第3世代量子ビルド・ネットワーク(T.B.N.S.)が実装される。以降はライフサイクル・システムを導入。これにより、更に膨大かつ効率的な意識情報の処理を可能とした。
この時点でオリジナル(初期N.B.N.S.)の水準を凌駕し、過去最速のバブルレーン通信を実現する。

H.S.935年
無限空間.メンタル・セクションにおいて闘争世界教団による復活宣言。星間機構由来のAIを崇めていることが発覚する。

H.S.955年
ウェトラム人類統一機構が共立機構に加盟。係る自動工場を全て共立側と共有させることで合意し、更なる未来予測の向上に努めた。
ウェトラム政府の下部組織である闘争世界教団共立世界における外交の窓口となり、関係各国との交渉を担った。

主な導入国

 主要システム輸出国。民間・軍事を問わず幅広く利用される。T.B.N.S.導入以降においては生存権として含まれた。

 軍事利用を前提として部分提携を継続。体制維持の観点から民間では主にソフトフリーネットワークが用いられる。

 クラック対処事案における捜査権限の強化と引き換えにセトルラーム純産のものを広く普及させた。主に惑星間の通信インフラとして活用される。

 壊滅的な治安状況による整備の遅れが生じた。そのため、実質首都圏のみの運用に留まっている。

 軍事、民間を問わず広く普及した。かねてからの教育事業を始め、医療、製造、娯楽分野においても活用される。

 概ねセトルラーム純正のOSに頼るが、一部国産OSの開発を継続。国際競争力を高めた。メンタルダイブに関しては一定の規制を施して利用の安全性を高めている。

 民間、軍事を問わず広く普及した。闘争競技における利用が最も盛んとされる。一部の大企業においては独自のOSによる運用も進んだ。

 民間、軍事を問わず広く普及したが、経済格差による弊害で富裕層のみの利用に留まった。

 自由競争の名のもと、セトルラーム純産から自社産のものまで広く普及した。主に犯罪防止のための娯楽分野において重用されている。

 企業有志連盟の宣伝から民間に幅広く普及したが、交通分野における利用が最も突出している。

 対外交信の一環として一部提携し、規格違いの不便を克服した。ウェトラム本来のものでは、星間文明統一機構由来のプロトタイプを正当進化させた独自のシステム共立英語略称:U.U.N.S.Mk2)を活用する。

管轄領域

ウェタルバンナ空間

 ビルド・ネットワーク上に展開される無限のオープンワールド。通称、無限空間の名で知られるこの世界では、人間が想像するあらゆる現象を成り立たせ、機能している。その様態は、政府の直接管理下にある行政セクターを中心に、民間企業が連なる商業セクターと、アバター個々人が利用するフリーセクターによって構成された。各々が行き交う仮想空間では連邦法に基づく一定の自治権が成立し、共立秩序の原則のもと、関連省庁による安全な経済活動が維持されている。主観時間の調整が自由であることを除けば、現実と似たような感覚で旅行することも可能となった。

メンタル・セクション

 利用者個々人が展開するプライベート領域。個人の趣味嗜好が強く反映されるため一括して説明することは出来ない。一般に解放されている場合もあるが、殆ど入室できず、管理者による承認制となっている。領域の形態も様々であり、文字通り小部屋のような構造をしていることもあれば、宮殿並みに広い空間を取っていたり、迷路のように入り組んでいる場合もあった。中には独自サーバーで複雑な仮想世界を描くIT強者もいたりするが、いずれにせよ現実当局の監視を免れることは出来ず、仮に脱獄したとしても今度は裏社会の魔の手から己の領域を防衛しなくてはならない*2。脱獄の結果、メンタルに異常をきたした事例もあることから、当局による救出活動も盛んで、当然のことながら公に裁かれる危険な違法行為となる。一方、適切な医療行為として、対象の措置入院が認められた場合にメンタル・セクションを利用するケースも散見された。


リンクステーション

 異なるネットワーク・システムに接続するための中継基地として機能し、無限空間の要所に設置された。
現在はイドゥアム帝国が運営するソフトフリーネットワークと繋がっている。
当該ネットワークにおいては当事国の法律が適用されることから、出入国の手続きを取らなければならない。

主な接続技術

 以下の詳細に関しては、セトルラーム共立連邦/テクノロジーを参照のこと。

タクトアーツ(令咏術

 各界から提供される発動術式のインストールや、アンインストール、高速学習を可能とする。
これにより、一時頭痛に代表される様々な副作用が生じるものの、緊急時覚醒プロセスの短縮を実現した。
詠唱の効率化を始め、様々な恩恵を得られることから多くの魔導科学士がB.N.S.を利用する。

第1世代AQ-TES

 第3世代T.B.N.S.とは似て異なる技術である。限られた領域から無限の空間拡張を可能とし、大規模に接続した。

ライフサイクル・システム

 現実世界において健康な肉体(不老)を維持するために導入された。医療用の支援管理システム。
また、無限空間に漂う大量の意識を保全し、転送や肉体の共有、再生を行う際にも利用される。

ナルクス・システム

 正式名称は、Nano Activity life cycle Cold control System。脳神経操作に特化した医療用システムで、元々は長期航行の苦痛を和らげるために開発された。今日では主観意識における時間感覚の短縮を始め、射幸感覚の延長や不安の抑制、労働意欲の向上に用いられる。異なる個々人の意識に共時性を持たせることも可能で、作業の効率化に必須とされた。最も身近な例では、待ち時間の苦痛をショートカットしたり、退屈な時間をやり過ごすために用いるのが一般的である。また、長い労働の中で終業時間が気になる、衝動的な逃避欲求を抑えたい場合にも効果的とされた。

第3世代ルーゼリック・ワープ航法

 主にB.N.S.ゲートを通じて安全に跳躍する場合と、緊急時直接ジャンプを行う場合の二通りの方式に分けられる。
登録された船舶は通常、B.N.S.ネットワークと接続しており、審査の所要時間を短縮した。
また、当局の視点から見ても遠隔操作を可能とし、臨検の手間も省けることからB.N.S.の利用を推奨している。
対象船舶はシステムとの連携を拒否することも出来るが、その場合は直接船内に乗り込まれ長時間の手続きに耐えなければならない。

B.N.S.ゲート

 主要航路を結ぶ大型ゲート。現在は共立機構の名のもと、関係各国における共同管理の形式を取る。
これがあると、ワープ機能を持たない艦船も跳躍可能となることからコスト削減に一役買った。
一方、係るゲートルートを通じてアポリアを誘発しているケースも確認され、現在、各国間の対策が進められている。

メモリー・サブスティテューター

 ネットワーク帯域の増幅装置。未開エリアにおける一時的な利用を想定して接続された。

双方向バブルレーン通信システム(ハイパーI.S)

 広域通信を行う場合は、通常、量子バブルレーンと呼ばれる無数の圧縮航路を介して当世界における因果律の破れを防止する。本来、光の速度を超えて情報を送ることは不可能とされるが、時間の流れが異なる別次元を利用することによって過去・現在・未来の辻褄を合わせられるからである。一方、マルチバースに絶大な影響を及ぼす観測システムの拡大は少なからず時空連続体の歪みを生じさせ、「この世界」では起こらないはずの事象災害を誘発してしまった。今日、共立各国に漂着する特異難民(異世界転移者)も過去に繰り返された収束実験の犠牲者とされる。加えて現代の科学では説明できない事象も散見されることから、各国政府はアポリアの一種である可能性に予測を立てて対策を進めた。

量子ポートアルター

 転移情報の保全のために接続される。ビルド・ネットワークを通じて様々なシステムと連携した。

社会問題

ビルド・ネットワークがもたらす現実的存在価値の喪失

 各社が提供するビルド・ネットワークは、インターネット上に無限のオープンワールドを展開し、個々の意識を一種のデータとしてダイブさせることを可能とした。このオープンワールドはライフサイクル・システムに接続され、あらゆる存在を定義するのである。既存のネットワークに個人の願望を投影し、独立させることも可能となった。このように全ての国民が理想の目的を達成できる反面、深層から戻れなくなる危険性も秘めており、政府による対策が進められている。また、このようなシステムの存在は、過激派(解脱主義者)によるテロ活動を誘発し、現実に生きる人々の安全を確保する必要に迫られた。以上の経緯から、共立公暦950年。連邦総議会において無限空間に関する不正対策基本法が制定されたのである。この法律の施行によって当局による阻止活動が可能となり、無限空間における様々な犯罪抑止に繋がった。

異世界転移者と危険な特威生物

 遥か古の時代。広い宇宙において、ツォルマリア文明が遺した旧型ゲートは後にイドゥニア世界の覇権を左右するアーティファクトの一つとなって新興諸国の動向に影響を与えた。一方、初期ルドラス船団においては、来たるべき世界大戦に備えるための大型コネクションとして当該遺物の研究が進められ、新たなゲート間交信を成り立たせるF.B.N.S.(第1世代量子ビルド・ネットワーク)としての再稼働を迎えたのである。その開発過程で犠牲となった研究者は数知れず、引き起こされた位相断裂の嵐(アンチ・トンネル効果)によって幾つもの亜光速船が収束波動の安定しない異次元へと飲み込まれていった。更に時が進み、S.B.N.S.(第2世代量子ビルド・ネットワーク)の研究が本格化すると、それに呼応するかのように封鎖されて久しい断裂空域の膨張が始まったのだという(研究筋)。この頃から数多の世界に跨る局所的な転移現象が頻発し始め、共立機構は問題の異界難民(異世界人)の存在を公に認めた。以上の経緯から、セトルラームにおける一連の実証実験にも司直の手が及ぶ流れとなり、大規模に是正された経緯がある。この世界に漂着したものは穏健な生き物だけではなく、人類に敵対的な未知のモンスターも含まれていた。そうした特威生物の中には既存の銃火器が通用しないタイプも存在し、科学法術(タクトアーツ)を始めとする様々な異能技術の発展を促した。

世界秩序の在り方を巡る闘争世界教団の圧力

 闘争世界教団は、メンタル・セクションの深部、または連邦政府の統治が及ばないセクター・ヴォルセスに活動拠点を置く。ツォルマリア系の宗教団体。過去数次に渡って繰り返された悲惨な戦争経験から、ウェトラム政府によるこの世からの解脱を支持する。B.N.S.ネットワークによって構築された無限空間の住人であることに誇りを持ち、平和の担い手として活動する彼らは現代世界における様々な社会構造の歪みを訴えた。また、「人類が繰り返す生き物である以上、現在の共立体制による安寧は一時的のものでしかなく、内なる悪意によって遅かれ早かれ現行秩序の崩壊を迎えるであろう」と主張している。共立機構が主催する闘争競技にも否定的で、「人類が実体を持つ限り、例えどのような合理的施策を講じようと決して人の心の摩耗は避けられず、無分別な挑戦を招くだけ」との見方を示した。そのため、最終的には認知される限りの全ての苦しみから人類を解き放つことを目的とし、閉じた領域(無限空間)における事象の操作も含め、一切の手段を問わない。

 以上の特異性から、連邦国内においては史上、最も警戒すべきイレギュラーの一つとして指定され、その他の国家も(多少の温度差はあるものの)概ね同様の警戒体制を取っている。無限空間における活動拠点の隠匿の巧妙さはさることながら、現実世界においても存在するはずがない多数の無人コンビナートを建設。高度なカモフラージュを可能とする星間機構のテクノロジーは諸外国の目を長らく欺き、共立圏外において人知れずウェトラム国家の建設を成し遂げた。外部との接触にあたっては最新技術の流出を避けるため、あえて旧式兵器による数の暴力を誇示するなど、単なる武装勢力としてはもはや黙認できない存在となって久しい。一方のウェトラム政府は、高度の外交実績を認める共立機構に対して執行猶予と称する暫しの相互不可侵を保つ方針を固めている。その間、双方にとって、より良い世界の構築に努めることを条件とし、旧暦時代から引き継ぐ原罪教典の見直しに転じる可能性も示唆した。

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技術
最終更新:2025年05月16日 23:14

*1 Pardei Klannaとは、ロフィルナ語で「吉兆の共立」を指した表現とされる。過去大戦の反省から、平和利用の願いを込めて命名された。

*2 対ウェトラム接触以前に領域ごと侵食され、公共当局によってパージされたケースもある。被害を受けたメンタル・セクションの主に損失補填などあるわけもなく、逆に脱獄容疑で逮捕されるなど散々な目にあったという。