** ニャルラトホテプ ニャルラトホテプ(Nyarlathotep)は、[[H.P.ラヴクラフト]]が創造した[[クトゥルフ神話]]に登場する[[邪神]]で、「[[外なる神]]」の一柱です。 彼は「這い寄る混沌(Crawling Chaos)」や「千の貌を持つ者」として知られ、他の神々と異なり積極的に人間社会に干渉し、混乱と狂気をもたらす存在として描かれています。 ---- #contents() ---- *** 概要 ニャルラトホテプは[[クトゥルフ神話]]における最も多面的で魅力的なキャラクターです。 その多様な化身と悪意ある行動によって、人間社会に混乱と破滅をもたらす一方で、物語全体を動かす中心的存在でもあります。また、その知性と人格によって他の[[邪神]]とは一線を画し、人間との接触が多い点から「[[クトゥルフ神話]]」の中でも特異な地位を占めています。 **** 特徴と役割 :多様な化身| - ニャルラトホテプは「千の貌を持つ者」と呼ばれるように、無数の姿で現れます - これには古代エジプトの[[ファラオ]]風の「黒い男」、恐ろしい怪物、女性的な姿などが含まれます - 彼の化身はそれぞれ異なる能力や目的を持ち、状況に応じて姿を変えることができます - 例えば、「膨れ女」や「赤の女王」といった化身も知られており、それぞれが特定の象徴や役割を担っています :知性と人格| 他の[[外なる神]](例: [[アザトース]])が知性や意志を持たない存在であるのに対し、ニャルラトホテプは明確な知性と悪意を持つ唯一の神です - 彼は人間と直接対話し、言葉巧みに人々を堕落させたり破滅へ導くことを楽しみます - また、他の[[邪神]]たちや崇拝者たちすらも冷笑するような態度を取ることがあります :目的と行動| ニャルラトホテプは他の[[邪神]]たち(特に[[アザトース]])の使者として活動しますが、その行動には独自の悪意が見られます - 人間社会に混乱や狂気をもたらすことを目的とし、時には技術や知識を与えることで人類を破滅へ導きます - 特に、人間との接触や干渉が多く「[[クトゥルフ神話]]」の中でも最も人間的で親しみやすい存在として描かれることがあります **** 初出と文学的役割 :初登場| - ニャルラトホテプは1920年に発表されたラヴクラフトの短編小説『ナイアルラトホテップ』で初めて登場しました - この作品では、彼は謎めいた発明家として描かれ、人々に不思議な装置を見せながら狂気へと誘います :文学的役割| - ラヴクラフト作品内では「狂言回し」や「物語の推進役」として機能します (→[[トリックスター]]) - 彼は物語の中で主人公たちを欺き、恐怖へと誘導する重要な役割を果たします :混沌の象徴| - ニャルラトホテプは「混沌」を体現する存在であり、その行動や言葉は人間には理解不能なものとして描かれます - 彼との接触は、人間の知性や精神構造そのものを破壊するような影響を及ぼします :[[宇宙的恐怖]]との関係| - [[クトゥルフ神話]]全体が示す「人類の無力さ」や「宇宙的恐怖」のテーマにおいて、ニャルラトホテプはその象徴的存在です - 彼は人類が宇宙規模では取るに足らない存在であることを直接的かつ皮肉的に示します *** 作品例 **** 『ペルソナ2』 #amazon(B00005S89Q) 『ペルソナ2』におけるニャルラトホテプは、シリーズ全体でも特に重要な役割を担うキャラクターであり、[[クトゥルフ神話]]に登場する[[邪神]]をモチーフにしています。 :人類の悪の化身| - ニャルラトホテプは、人類の「悪意」や「影」を象徴する存在であり、善の化身であるフィレモンの対極に位置します :命題と目的| -「人は完全な存在になり得るか」という命題を巡り、フィレモンと長きにわたり議論を交わしてきました - フィレモンが人類の可能性を信じて見守る立場であるのに対し、ニャルラトホテプはその否定派として、人類の破滅を通じて自らの主張を証明しようとします :珠閒瑠市への影響| - 『ペルソナ2』の舞台である珠閒瑠市を「噂が現実化する街」に変貌させた張本人です - この力を利用して、人々の心に潜む闇や欲望を煽り、混乱と破滅を引き起こします 『ペルソナ2』におけるニャルラトホテプの行動と役割は以下のとおりです。 :ジョーカー事件| - 主人公・周防達哉の親友である黒須淳(ジョーカー)に力を与え「願いを叶える怪人」として珠閒瑠市で暗躍させます (→[[黒幕]]) - この噂が広がることで、さらなる混乱を引き起こしました :化身としての活動| - ニャルラトホテプは様々な姿(化身)を取ることが可能で、人間や異形の存在として暗躍します - これには彼自身が直接行動する場合と、化身が独自の意志で動く場合があります :ラスボスとしての登場| -『ペルソナ2 罪』および『罰』の両方でラスボスとして登場し、その最終形態は無数の触手と虚ろな人面を持つ巨人という姿です - プレイヤーに対して執拗な攻撃と挑発を繰り返します 『ペルソナ2』におけるニャルラトホテプのテーマ的意義には以下のものがあります。 :光と影の関係性| - ニャルラトホテプは、人間が持つ「光=ポジティブマインド」と「影=ネガティブマインド」の表裏一体性を象徴しています - 彼は人間が光ばかりを追い求めることで影を捨て去り、その結果として自滅する様子を理想として描いています :対抗手段| - ニャルラトホテプは人間の心そのものとも言えるため、完全な消滅は不可能です - しかし、「全てを受け入れた上で諦めないこと」が唯一の対抗手段とされています - このテーマは物語全体に深い哲学的意義を与えています ニャルラトホテプは、『ペルソナ2』シリーズ全体の核心となる存在であり、人間性や善悪について深く掘り下げたキャラクターです。その行動や言動は物語に緊張感と深みを与え、プレイヤーに対しても哲学的な問いかけを投げかけます。彼の存在によって、『ペルソナ2』は単なるRPG以上のテーマ性を持つ作品となっています。 ** 関連ページ #related()