ホルス

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ホルス - (2025/01/30 (木) 09:43:07) のソース

** ホルス
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ホルス(Horus)は、[[エジプト神話]]における重要な神であり、天空、太陽、月、そして王権を象徴する存在です。
ハヤブサまたはハヤブサの頭を持つ人間の姿で描かれ、古代エジプトにおいて最も古く、最も広く信仰された神の一柱です。
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*** 概要
**** ホルスの基本情報
:親族関係|
- 父: [[オシリス]](冥界の神)
- 母: [[イシス]](魔術と母性の女神)
- 叔父: [[セト]](砂漠と混沌の神)
:象徴|
- ハヤブサ、太陽と月(両目)、ウジャトの目(ホルスの目)
:役割|
- 天空と太陽・月を司る
- 王権の守護者
- 正義と秩序の象徴

**** ホルスの神話
:1. [[オシリス]]と[[セト]]の物語|
- ホルスは[[オシリス]]と[[イシス]]の息子として生まれました
- 父[[オシリス]]が弟[[セト]]によって殺害された後、ホルスは母[[イシス]]によって隠れ里で育てられます
- 成長したホルスは父の仇を討つべく[[セト]]との戦いに挑みました
- この戦いは[[エジプト神話]]でも特に有名で、「正義(ホルス)」と「混沌([[セト]])」の象徴的な対立として語られます
:2. ホルスとセトの戦い|
ホルスと[[セト]]の戦いは長期にわたり、多様な形態を取りました。
:・身体的戦闘|
- [[セト]]がホルスの左目(月)をえぐり取りますが、知恵の神[[トート]]によって癒されました
- この目が「ウジャトの目」として後世に護符となります
:・法廷闘争|
- 神々が介入し、最終的にはホルスが正当な王位継承者として認められました
:・象徴的勝利|
- ホルスが[[セト]]を打ち負かしたことでエジプト全土を統一し、秩序を回復しました
:3. 王権との結びつき|
- ホルスはエジプト王([[ファラオ]])の化身とされ、生きている間は「現世のホルス」、死後は「[[オシリス]]」として扱われました
- この考え方はエジプト王権理念の中核を形成し、[[ファラオ]]たちは自らを「ホルス名」で表現しました

**** ホルスの象徴
:1. ウジャトの目(ホルスの目)|
- ホルスが失った左目(月)が再生したことを象徴する「ウジャトの目」は、再生や保護、健康を表す護符として広く用いられました
:2. ハヤブサ|
- ホルスはハヤブサまたはその頭部を持つ姿で描かれます
- ハヤブサは天空を飛ぶ鳥であり、その鋭い視力から太陽や月との関連性が強調されました
:3. 太陽と月|
- ホルスの両目はそれぞれ太陽(右目)と月(左目)を表し、昼夜や宇宙全体を司る存在として描かれます

**** ホルス信仰
:1. エドフ神殿|
- エジプト南部エドフにはホルス神殿があり、紀元前237年から約180年にわたって建設されました
- この神殿は現在も保存状態が良く、ホルスとセトの戦いを描いたレリーフなどが見どころです
:2. [[ハトホル]]との関係|
- ホルスは愛と美・豊穣を象徴する女神[[ハトホル]]と夫婦関係にあるともされます
- 二柱の再会を祝う儀式はエジプト全土で行われ、その象徴性から社会的繁栄や自然界の秩序とも結びつけられました

**** 歴史的背景と影響
:政治的役割|
- ホルス信仰はエジプト統一や王朝正統性の基盤となり、[[ファラオ]]たちがその化身として崇められることで国家宗教として機能しました
:文化的影響|
- ホルスと[[イシス]]像は後世、西洋文化において聖母子像として転用されたとも言われています
:現代への影響|
- ホルスは現在でも古代エジプト文化や宗教研究において重要な存在であり「ウジャトの目」はジュエリーやデザインモチーフとして人気があります
- また、その物語や象徴性は文学や映画など多くのフィクション作品にも影響を与えています
- ホルスは単なる天空神ではなく、「正義」「秩序」「再生」の象徴として古代エジプト文明全体に深く根付いた存在でした
- その多面的な役割から、多くの人々に崇敬され続けています

*** 作品例
**** 『太陽の王子 ホルスの大冒険』
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アニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』における主人公ホルスの名前や物語には、エジプト神話のホルスとのいくつかの共通点や影響が見られますが、直接的な関連性は薄く、むしろ象徴的な要素やテーマにおいて共通する部分があると考えられます。
:1. 太陽との結びつき|
- [[エジプト神話]]においてホルスは天空神であり、特に太陽と月を象徴する存在です
- 『太陽の王子 ホルスの大冒険』では、主人公ホルスが「太陽の剣」を手に入れ、それを鍛え直して悪魔グルンワルドを倒すという物語が展開されます
- この「太陽」というモチーフは、[[エジプト神話]]のホルスが持つ[[太陽神]]としての側面を想起させます
:2. 正義と秩序の象徴|
- [[エジプト神話]]では、ホルスは混沌を象徴する[[セト]]と戦い、父[[オシリス]]の仇を討つことで秩序を回復する役割を果たします
- 同様に『太陽の王子 ホルスの大冒険』でも、主人公ホルスは[[悪魔]]グルンワルドという混乱と破壊を象徴する存在に立ち向かい、村人たちを団結させて平和を取り戻します
- この点で、両者には「正義」と「秩序」の回復というテーマが共通しています
:3. 英雄的成長|
- [[エジプト神話]]のホルスは父[[オシリス]]の死後、孤独な中で成長し、最終的に王権を確立します
- 同様に、『太陽の王子 ホルスの大冒険』でも主人公ホルスは父親を失い、自ら困難な旅路に出て英雄として成長していきます
- この「英雄譚」の構造も共通点として挙げられます
:違いと独自性|
- 『太陽の王子 ホルスの大冒険』は北欧的な世界観やアイヌ伝承など多様な文化的要素を取り入れており、その舞台設定やキャラクターには[[エジプト神話]]から直接的な影響は見られません
- また、物語自体は日本独自のアニメーション作品として制作され、高畑勲監督や宮崎駿らによる[[人間ドラマ]]や共同体の連帯といったテーマが強調されています

『太陽の王子 ホルスの大冒険』に登場するホルスには、名前や「太陽」という象徴的要素から[[エジプト神話]]のホルスとの間接的な影響が感じられる部分があります。しかし、この作品はむしろ北欧や日本独自の文化的背景を基盤としており、[[エジプト神話]]から直接借用されたわけではありません。そのため、両者は象徴性やテーマにおいて重なる部分があるものの、それぞれ独立した物語として楽しむべき作品と言えるでしょう。
** 関連ページ
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