世界五分前仮説
世界五分前仮説は、イギリスの哲学者バートランド・ラッセルによって提唱された哲学的な
思考実験で、「世界は実は5分前に始まったのかもしれない」という仮説です。
この仮説は、懐疑主義的な視点から「知識」や「過去」の存在について根本的に問い直す試みです。
概要
仮説の内容
- 世界は5分前に現在の状態で突然創造されたと仮定します
- このとき、私たちが持つ記憶や歴史的な証拠(化石や建物など)、さらには物理的な痕跡(例えば木の年輪や汗のシミ)も、すべて「5分以上前から存在していたかのように見える形」で作られたものだとします
否定不可能性
この仮説が興味深い点は、それを否定することが論理的に不可能であるという点です。
- たとえ5分以上前の記憶や証拠を提示しても、それ自体が「5分前に作られた偽の記憶や証拠」である可能性を排除できません
- また、因果律(原因と結果の関係)も経験的な仮定に過ぎず、論理的必然性から導かれるものではないため、過去の存在を確実に証明することもできません
哲学的意義
この仮説は「知識とは何か」「過去とはどのように認識されるべきか」という哲学的問題を考える材料となります。
- 私たちが信じる「過去」や「記憶」は、本当に実在するものなのか、それとも単なる現在の状態に基づく推測なのかを問い直します
- また、科学や歴史が依拠する因果関係や証拠という概念が、どこまで信頼できるものなのかを考えさせられます
関連する議論
この仮説は、神学や創造論で提唱された「オムファロス仮説」に影響を受けています。この議論では、たとえばアダムとイブが最初からへそを持っていたという設定を通じて、「世界が古い状態で創造された」という考え方が示されています。
また、この仮説は映画『マトリックス』のようなシミュレーション仮説とも関連性があり、「現実とは何か」を問う現代哲学にも通じています。
世界五分前仮説は、日常的には荒唐無稽に見えますが、哲学的には非常に深い問いを投げかける思考実験です。私たちが当然視している「過去」や「記憶」の概念を再評価し、知識や現実について新しい視点を提供します。
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最終更新:2024年12月30日 19:06