シンメトリー

シンメトリー


シンメトリーとは「同じ尺度で測れること」「調和や均整」「左右対称」を意味し、美術や建築、自然界など様々な分野で「美しさ」や「安定感」の象徴として重視されてきた概念です。


概要

シンメトリー(symmetry)は、主に「左右対称」や「均整」「調和」を意味する概念です。語源は古代ギリシャ語の「シュンメトリア(symmetria)」で、「同じ(syn)」と「測る(metron)」を組み合わせた言葉です。もともとは「共通の尺度で測れる」「一定の比例を保つ」といった意味で使われており、そこから美的・宇宙的な調和も表すようになりました。
現代では、幾何学や建築、美術などで「左右対称」「点対称」「回転対称」など、形や構成要素が一定の規則性や均衡を持って配置されている状態を指します。たとえば、図形においてはある点や直線、面を基準にして、対応する各部が等距離に並ぶことがシンメトリーです。
シンメトリーは、安定感や調和、美しさを感じさせるため、建築物や装飾、絵画、舞台構成など幅広い分野で用いられています。古代ギリシャやローマの建築、西洋美術、バレエの群舞などでは、シンメトリーが美の基本とされてきました。
また、シンメトリーの反対語はアシンメトリー(非対称)で、均衡を崩すことで動きや独特の美しさを表現する場合もあります。

作品例

映画「シャイニング」におけるシンメトリー(左右対称)の映像的特徴

映画「シャイニング」におけるシンメトリー(左右対称)の映像的特徴は、スタンリー・キューブリック監督ならではの徹底した美学と恐怖演出に直結しています。
左右対称の構図の多用
  • キューブリックはホテル内部や大広間、廊下、カーペットの幾何学模様、237号室など、画面の中心に被写体や建築要素を配置し、左右対称になるようにカメラを構えることが多いです
  • 特に有名なのが、双子の少女が並んで立つ廊下のシーンで、シンメトリーな構図とシンメトリーなキャラクター配置が観客に強烈な違和感と恐怖を与えます
人工的な整然さがもたらす非現実感・不安感
  • シンメトリーは本来、美しさや安定感を感じさせるものですが、映画ではその「整いすぎた」人工的なバランスが逆に冷たさや不気味さ、死の気配を強調します
  • 自然界にはほとんど存在しないほどの完璧な対称性が「このホテルには何か得体の知れないものがいる」という感覚を観客に植え付けます
ステディカムによる滑らかな移動とシンメトリーの融合
  • ステディカム(手ブレのない移動撮影機材)を使い、廊下や階段を滑るように移動するカメラワークも特徴的です
  • 三輪車のダニーを追う低いアングルのショットなど、シンメトリーな空間の中をカメラが滑らかに進むことで、観客はまるで迷路の中に迷い込んだような没入感と不安を味わいます
「完璧な対称性の中の違和感」
  • 双子の少女など、一見完璧なシンメトリーに見えても、よく見ると服や髪、表情などに微妙なズレや違いがあり、これがさらに不安や恐怖を増幅させています
シンメトリーによる「視覚的でありながら視覚を超えた恐怖」
  • 暴力やグロテスクな描写ではなく、シンメトリーな映像美そのものが、目に見えない不安や異常性を観客に感じさせるという、独特のホラー演出となっています

要約すると、「シャイニング」の映像はシンメトリーを極めて意識的に使い、整然とした美しさが逆に不安や恐怖を呼び起こす、唯一無二の映像体験を生み出しています。

関連ページ

最終更新:2025年05月05日 14:08