レテ川

レテ川


レテ川(Lethe)は、ギリシア神話における冥界ハデスの国)に存在する冥界の5つの大河の一つで「忘却の川」として知られています。


レテ川の概要

レテ川は、ギリシア神話において「忘却」を象徴する重要な存在です。
その水を飲むことで魂は過去を忘れ、新たな人生に向けて準備されます。この概念は転生思想や死後の世界での安息と結びつき、多くの文学作品や哲学的議論にも影響を与えてきました。
名前の意味
  • レテ(Λήθη)はギリシア語で「忘却」や「隠匿」を意味し、その名の通り、レテ川の水を飲むと、魂は生前の記憶をすべて忘れてしまいます
死者の魂が飲む水
  • 古代ギリシア人は、死者の魂が転生する前にこの川の水を飲むことで、生前の記憶を完全に失い、新しい人生を始めると信じていました
  • これにより、過去の苦しみや悲しみから解放されると考えられていました
プラトンの『国家』における言及
  • プラトンは『国家』の最終章「エルの物語」で、死者がレテ川にたどり着き、その水を飲んで過去を忘れ、次の人生へと転生する様子を描いています
  • この概念は、輪廻転生や魂の浄化といった思想と結びついています
ムネーモシュネーとの対比
  • 一部のギリシア宗教では、記憶を保つことが重要視されており、レテ川ではなく「ムネーモシュネー(記憶)の泉」の水を飲むことが推奨されました
  • ムネーモシュネーの水を飲むことで、魂はすべてを記憶し、全知となると信じられていました
忘却と平安
  • レテ川は単なる記憶喪失ではなく、苦しみや悩みから解放されるための「忘却」を象徴しています
  • これは、死後の世界で安らぎや平安を得るために必要なプロセスとして描かれています
現代哲学への影響
  • 近代哲学者マルティン・ハイデッガーも「存在の隠蔽」や「存在の忘却」を重要なテーマとして扱い、「レーテー」をその象徴として用いました
芸術や文学での描写
  • レテ川は多くの詩人や作家によって取り上げられています
  • たとえば、ジョン・キーツやエドガー・アラン・ポーなどがこの川を作品に登場させており、その水が持つ「忘却」の力が詩的な比喩として使われています

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最終更新:2025年01月31日 14:12