ステイルの周囲に『屍人』達が群がる。
中には雄叫びをあげ周囲の注意を引く者や、遠くの仲間に合図のようなものを出す者さえいる。
寄って集って、ステイルの顔を、身体を、殴り、締め上げていく。
ステイル「ぐ…っ!! 邪魔だと言ってるだろうがっ!」
ステイルは傍目から見ても分かるほど、怒っていた。
端的に言うと、キレている。
そうしている間に、『歩く教会』のフードを持った少年は、視界の外へと歩いていく。
追いかける事も、目で追う事も、出来ない。
ステイル「――――!!」
だから、ステイルは。
終了条件2:『屍人』の殲滅
『操られた』人間なら、元に戻る。
けれど『変わってしまった』人間は、元には戻らない。
まして、死んでいる人間が、元に戻る筈が無い。
元々、気にかける必要など無かったのだ、とステイルは気がついた。
何を心配していたのか。はたまた、忘れていたのか。
自分が、何の為に魔術を身につけたのかという事を。
ステイル「――――Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)」
静かに、名を告げる。
魔法名。魔術を使う際に名乗る、魔術師の名。
ステイル「Kenaz(炎よ)」
呟く。
同時に、ステイルの右手から、橙色の軌跡が噴き出した。
炎に形作られた剣が、その右手に現れる。
ステイル「PurisazNaupizGebo(巨人に苦痛の贈り物を)」
その炎の剣を、群がる『屍人』に、容赦なく叩き付けた。
逃げる間もなく、炎剣の着地点近くの屍人達は全て灰になった。
更に続けて、炎剣を振るう。
学ランを着た屍人が、炭になって崩れ落ちる。
セーラー服の屍人が、下半身だけ残して蒸発する。
スーツ姿の屍人が、灰と土に還っていく。
ステイル「――――邪魔だ。退け」
更に、身体の周囲をぐるりと一振り。
ステイルを囲んでいた屍人達は、残らず消え去った。
ステイルは、炎剣を持つ手を握り締める。
分かっていた事だ。
しかし、幻想殺しの少年に出会ってからは、忘れていたのかもしれない。
インデックスを守る為に、ステイル・マグヌスは人を殺す。
他人を殺せる人間が、死体を灰にすることに、何の躊躇いがあるというのか。
―――ォォォォォ―――
ステイル「っ!?」
突然の頭痛。サイレンのような音。
ステイル(なんっ、だ!? これは……っ!?)
ステイルの脳裏に、奇妙な映像が流れる。
映像。
というより。
視界。
―――ォォオォオオオオオオォォォォ―――
ステイル「が、アアアア―――ッ!?」
更に頭痛が激しくなる。
しかし、頭痛が激しくなるにつれて、頭の中の映像はクリアになっていく。
ステイル(これは……何だ? 誰かの、他の誰かの、視界?)
歩いている。
ゆっくりと、歩いている。
息遣いも聞こえる。体の揺れも感じる。全て分かる。
ゆっくりと、歩いていて、
ステイルの背中を、見ている。
ステイル「!!!?」
振り返る。
背後に迫っていた学ランの屍人を、炎剣で焼き尽くす。
同時に、頭の中の映像は途絶えた。
ステイル(何だ、これは……!)
が、すぐに、また別の映像が頭の中に飛び込んでくる。
映像の中に、ステイルの姿が見える。
ステイルの右斜め後方、約20メートル離れた場所からの『視界』。
ステイル(何なんだ、これは!!)
ステイルは疑問と頭痛を押し堪えて、『視界』の主へ炎剣を振るう。
蒸発する肉塊。同時に消える『視界』と、新たに浮かび上がる『視界』。
次から次へと脳裏に浮かぶ『視界』の主を、次々と炎剣によって消し去っていく。
何分の間、そうして、浮かんでくる視界を掻き消していただろうか。
―――ォォォォォォォ―――
サイレンの音が、次第に弱まってくる。
同時に、頭が引き裂けるかと思うほどに高まっていた頭痛が、段々と和らいでいく。
無我夢中に炎剣を振り回していたステイルが、ふと気がつくと、周囲にはもう屍人はいなかった。
ただ、もぞもぞと動く肉塊のようなモノや、肉の残骸である炭と灰だけが、細い雨に濡れて、しっとりと地面に靡いていた。
ステイル「――――」
ステイルが口の中で何かをボソボソ呟くと、手の中の炎剣は呆気なく消え去った。
フードを持った少年も、見失った。
あの『視界』も、もう視えない。
だが。
ステイルは、静かに目を瞑る。
――――息遣い。靴の音。
――――呻き声。突き出した自分の右手。白いフード。
――――目の前の人影。ツンツン髪の少年。
ステイルは、ゆっくりと目を開けた。
ステイル「……『超能力』、って感じじゃなさそうだね。
全く、つまらない事にやってきやがった……」
そして、走り出す。
誰かの『視界』を盗み視る、というチカラ。
これは果たして何なのか、ステイルには分からない。
けれど、ひとまず、そして何よりも、ステイル・マグヌスは、インデックスのことを考えた。
たった今視えた『視界』が、現在、あの『歩く教会』を持っていた少年が視ている『視界』ならば。
ステイルの向かう先は、決まっている。
終了条件2達成(ミッションコンプリート)
最終更新:2010年11月07日 05:16