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19:56:24  >  第十五学区-条件2-リスタート

――――わったしっにはー、御坂美琴って名前があんのよ! いい加減に覚えろド馬鹿!!


 上条の記憶の中にある、初めの会話は、そんな理不尽な怒りで始まっていた。
 何だか知らない内に因縁を付けられたり、目の前で自販機をブチ壊されたり、スカートの下は短パンだったり。

 あまり、良い思い出とは言えそうにない、御坂美琴と『今の』上条当麻の、ファーストコンタクト。

 ――――ビリビリ言うな! 私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ!

 何故かいつも怒っているような顔をして。
 何故かいつも喧嘩を吹っ掛けられて。

 結局、『かつての』上条当麻は、この娘に一体何をしたのだろう。
 それは、考えても分からない。思い出そうとしても、思い出せない。

 ――――戦えって、言ってんのよ――――ッ!!

 けれど。
 あの時、御坂美琴を救ったのは。

 ――――あれは大切な友達なんでしょ。さっさと助けてきなさいよ。こっちは何とかするから。

 あの時、御坂美琴に救われたのは。
 間違いなく、今、此処に存在する上条当麻だ。


御坂「ケハハハハハハハハハハハハハハハ――――………ッッ」

 御坂は笑っている。楽しそうに、嬉しそうに、幸せそうに。
 上条の見たことのない、可憐で、綺麗な、歪んだ笑顔。
 赤い、笑顔。

 上条の拳は、まだ握られていない。



        終了条件2:『御坂美琴』を倒す



 静謐。
 全ての音が、消えている。
 その場に立っているのは、二人だけ。

 御坂は、雷撃の槍を繰り出した。
 上条は、無意識に幻想殺しを突き出して、雷撃の槍を掻き消す。

 御坂が電撃を放つ。
 上条が右手で払う。

 雷撃の槍。右手が殺す。
 砂鉄の槍。右手が殺す。
 超電磁砲。右手が殺す。
 本物の雷。右手が殺す。

 上条にとっては、目を瞑っていても避けられそうな攻撃だった。
 全て、身体が覚えているくらいに、避け続けてきた攻撃だった。


上条「御坂――――」

美琴「   ア 」

美琴「 ハ  ハハ ハ ハハ ハ ハハハ ハ ハハ ハ ハ ハハ  ハ
   ハハ ハ ハ ハ ハ ハハ ハハハ ハハハ ハハハ ハ ハハハ」

 御坂は、笑った。嬉しそうに。楽しそうに。
 上条の顔を、真正面から見つめながら。

上条「……っ」

 上条は、嗚咽を呑み込んで、御坂の顔を見る。
 赤く染まった顔を。笑みに歪んだ顔を。

 そして、脚を踏み出した。


 ―――恐らく、変わってしまった人達は、二度と、元には、戻らない

 神裂の言葉を思い出す。

 ―――黄泉のモノを取り込んだ人間は、黄泉の住人となる

 神裂の言葉。
 さっき打ち払った言葉が、今更のように、頭に響く。

上条(そんなワケ、ねえよな)

 襲いかかる電撃を、右手一本で払い除けながら、上条は脚を進める。
 御坂の顔を見ながら、一歩一歩、進んでいく。


上条(御坂、お前は、俺が、必ず――――!)

美琴「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛―――――――z______ッッッ!!!!」

 御坂の叫びも、叫びと共に放たれた電撃すらも、上条の幻想殺しが受け止める。

上条「御坂アアアアアッ!!」

 御坂と上条の距離は、既に1メートルも無い。
 上条は、最後の一歩を、踏み出した。

 御坂の身体から弾け飛ぶ電撃に、右手を突き出す。
 それだけで、数億ボルトの電撃が幻のように消え去っていく。

 電撃を全て掻き消した瞬間、上条は右拳を握り、大きく振りかぶった。

上条「――――必ず、元に戻してやる」


 上条の右拳が、御坂の顔面に突き刺さる。

 御坂の細い身体は、車に轢かれたかのように大きく弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた。



上条「――――っ」

 思わず、上条はその場に膝を落とす。
 拳にはもう、まるで力は残っていない。
 放っておけば肩の付け根から削げ落ちてしまいそうな程、腕が重く感じられた。

 アスファルトの路面に転がった御坂に、立ち上がってくる気配は無い。
 よくぞこれだけ目一杯殴れたものだ、と自嘲するように、上条は泣き笑う。


 恐らく、神裂の別れ際の一言さえ無ければ、きっとここまで思い切れはしなかっただろう。
 上条の絶望を更に煮詰めて地獄へ叩き落とすかのような、あの言葉さえ無ければ。
 ここまでの覚悟を決める事は、できなかった。



 神裂は言った。

 ――――ただ、一つだけ、貴方にだけは伝えなければいけないことがあります。

 絶氷のような瞳を携えて。
 白銀のような鋭い口調で。

 ――――散々に勿体を付けておいて、今更と言われるかも知れませんが。

 表情も無く、感慨も無く、ただただ事実だけを述べるように。

 ――――端的に、この異変を引き起こしたのは、恐らく――――


 それでも必死に、何かを堪えるように。
 ほんの一押しすれば泣き崩れて死んでしまいそうな空気を纏って。

 神裂は、告げた。


 ――――インデックス。あの子が、この異変の元凶です。



        終了条件2達成(エピソードクリア)
最終更新:2010年11月07日 06:00
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