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一方18:15:30  >  第二学区

終了条件2:『打ち止め』を護り切る


一方通行「だァれがテメェの思い通りになるかってんだよオオオォォォォォッッ!!!!」

 一方通行は、大きく吠えた。
 能力行使のスイッチは、切り替えない。

 多勢による包囲網で時間を浪費させ、体力を削いでいく。
 いかにも、洗脳趣味(パペットマスター)のやりそうなことだ。

 ならばこそ、ここで無駄に時間と体力使うワケにはいかない。
 最強の能力を以て、秒も惜しんで決着を着ける。
 それこそが、この場における最善の策であろう。

 何より、ほんの僅かであっても、打ち止め(ラストオーダー)が傷付く可能性があるならば、そんな手段を選べる筈も無い。
 圧倒的なオーバースキルで、完全完璧に打ち止めを護り抜く。
 それこそが、この場においての絶対条件なのだから。

 ――――周辺の気流ベクトルを解析。
 ――――降雨による影響、建造物及び周辺生物等の気流阻害要因を演算。
 ――――敵個体数、位置、外容を確認。

 ――――全演算式構築、入力完了。

 計して、およそコンマ五秒。
 一方通行は、たったそれだけの時間で以て、膨大な量の情報量と演算式を自分だけの現実(パーソナルリアリティ)にインポートしてのけた。


一方通行「死にたくねェヤツァ地面にキスしてなァッ!!!」


 そして、暴風が吹き荒れる。


 街路樹は軋むほどに身を撓ませ、赤い雨が近辺のビル壁に音を立てて打ちつけられる。
 アスファルトの路面も、今にも剥がれて飛んでいきそうだ。

 そんな、サイクロンもかくや、という嵐を向けられた妹達(シスターズ)達は、とてもではないが耐え切れない。
 ある者は宙空に投げ出され、ある者は転倒して地面に叩き伏せられ、ある者は風に飛ばされてくる物体で強かに顔を打たれた。

 獣の唸り声、虫の鳴き声、怪物の呻き声。
 あらゆる怨嗟の音が方々から上がるが、暴風はそれすらも掻き消し、吹き流していく。

一方通行「まァだまだまだまだまだまだァァァァァァァァァッ!!!」

 暴風は止む事無く、倒れた妹達を、強く、強く、押し潰すように、捻じ伏せる。
 メキメキ、と妹達の骨身が悲鳴を上げても、ガボガボ、と妹達の口から血泡が零れても。
 強く、強く、更に強く、風は妹達へと向けられる。

一方通行「アアアアアアアァァァァァァァァァァアアァァァァァァァッッッッ!!!!!」

 一方通行の周りには、とうに誰も立ってはいない。
 数十人、はたまた百人はいたかという妹達は、全員残らず、一方通行の風によって倒れ伏していた。
 それでも尚、一方通行は、手を緩めない。


 殴り飛ばしただけでは、気絶すらしなかった。
 銃で片足を撃ち抜いても、もう片足で起き上がってきた。
 頭を直接打ち据えても、数分とかからず立ち直っていた。

 朝からここまで、化物になった数多の人間達を見てきたからこそ言える。
 下手に手加減をしているだけでは、余計に傷付けるだけだ。
 起き上がれる程度の傷では、『コイツら』の傷の内には入らない。

 だから、やるなら徹底的に。
 全身の骨にヒビを入れるくらいに。四肢の筋肉が断裂するくらいに。
 二度と立ち上がってこれないように。立ち上がる気も起きないように。

 ――――せめて、全てが終わるまで、じっとしていてくれるように。

 一方通行は、妹達を、痛めつける。

 どれだけ重い怪我を負おうが、ここは学園都市。その医療技術で治せない外傷など無い。
 特に、あのカエル面の医者がまだ生きているのならば、どれほどの傷を与えようが、結局は問題無いのだ。

一方通行「ァァァァァァァァァァァ――――――ッッッ!!!!!」

 空を捻じ曲げるように唸る風は、より強さを増し、異形達へと牙を剥く。



 やがて風が止んだ時、当然ではあるが、周囲は戦場跡のような無残な有様だった。
 道路の舗装も剥げ落ちて、街灯、街路樹は根こそぎ圧し折られ、建物のガラスは一枚残さず割れている。
 そして、あちこちに累々と積み上げられた、異形の妹達。

 恐らく、どの個体も辛うじて生きてはいる筈だ。
 個体毎の外見、これまでの経験から推察される耐久性も、初めから演算に組み込んだ上での攻撃だったのだから。

一方通行「……チッ、バッテリーがやべェか。どォにか安全に充電できる場所を探さねェとな」

 ひとりごちて、電極のスイッチを切り替える。
 身体の力が抜けていくような感覚。
 同時に、右半身へ崩れそうになるバランスを右手に持ったアサルトライフルで何とか支える。

 どうにか、今回も乗り切れたようだ。


 左腕に抱いたままの打ち止めは、一向に目を覚ます気配がない。
 どう控えめに見ても、容体は芳しくなさそうだ。
 額に浮かぶ玉のような汗と、乱れた呼吸が打ち止めの不調を明らかに示している。

一方通行(クソ、どうする……オレにやれるコトは全部試した。
      かと言って、他にどうにかできそうな当てなンざ……)



 ふと、一方通行の脳裏に、ある記憶が蘇った。

 苦しみ続ける打ち止め。何も出来ない自分。

 その時現れた、一人の少年。

 彼がその『右手』で打ち止めに触れると、打ち止めの表情は和らぎ、一時的に体調を取り戻した。
 結局、それが根本的な解決にはならなかったものの、しかしその『右手』が、打ち止めを苦しめる何かを払い除けたのは間違いない。

 ならば、今のこの状況も、もしかしたら。
 あの『右手』なら、このどうにもならない何かを、ぶち壊してくれるのではないか。


一方通行(……はン、ああまで散々殺し合った相手に、今更助けてくれって土下座でもすンのか?)

 その少年とは、並々ならぬ因縁がある。
 出来る事なら、もう会いたくはない程の。

 しかし例えそうであっても。
 打ち止めだけは、絶対に、助けなければならない。

一方通行(――――そうだ、オレがどうだろうが、あのヤロウがどうだろうが、そんなコトは関係無ェンだ。
      打ち止めを助ける可能性があるなら、神サマに泥を投げてもいい。悪魔の靴を舐めてもいい。そんなコトは、関係無ェンだ)


 一方通行は、誰も動かなくなった街の中を、静かに歩き出した。


        終了条件2達成(エピソードクリア)
最終更新:2010年11月07日 06:04
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