夢を、見ていた。
まだ人類が平和だった頃の夢。
今となっては、遠い過去のように
なってしまった夢だ。
まだ人類が平和だった頃の夢。
今となっては、遠い過去のように
なってしまった夢だ。
「ライジングちゃん!
パンを口に含んで牛乳イッキ飲みなんて危ないって、
あれほど言ったのに……!!」
「むぐぶくぶくむぐ……!!」
泡を吹いて倒れるライジングちゃん。
何かが口からリバースしそうになるのを
懸命にこらえているようだ。
パンを口に含んで牛乳イッキ飲みなんて危ないって、
あれほど言ったのに……!!」
「むぐぶくぶくむぐ……!!」
泡を吹いて倒れるライジングちゃん。
何かが口からリバースしそうになるのを
懸命にこらえているようだ。
「……………………むずっ」
「あの、天号ちゃん?君は今、
何かとんでもない事をしようとしていないかい?」
「えいっ☆」
「あの、天号ちゃん?君は今、
何かとんでもない事をしようとしていないかい?」
「えいっ☆」
ズン。
理性よりも好奇心が勝ってしまった天号ちゃんの
可愛らしいパンチがライジングちゃんのお腹に炸裂した。
もちろん激しい威力ではなかったけれど……
ライジングちゃんの必死の抵抗を決壊させるには
十分だった。
理性よりも好奇心が勝ってしまった天号ちゃんの
可愛らしいパンチがライジングちゃんのお腹に炸裂した。
もちろん激しい威力ではなかったけれど……
ライジングちゃんの必死の抵抗を決壊させるには
十分だった。
「ぶぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
辺りに降り注ぐ、牛乳とかパンとか
○○とか××の雨。
「きゃああああああーっ!!
ちょっと、何よコレ───!!」
「うわぁっ、きたなっ!!おいコレどうすんだよ!!」
辺りに降り注ぐ、牛乳とかパンとか
○○とか××の雨。
「きゃああああああーっ!!
ちょっと、何よコレ───!!」
「うわぁっ、きたなっ!!おいコレどうすんだよ!!」
……………………
………………………………
…………………………………………
数十分後。
みんなでめでたくシャワールーム行きとなってしまった。
うなだれたライジングちゃんと、
先生にゲンコツを食らった天号ちゃんの姿に
みんな何と声をかけていいのか分からないようだ。
みんなでめでたくシャワールーム行きとなってしまった。
うなだれたライジングちゃんと、
先生にゲンコツを食らった天号ちゃんの姿に
みんな何と声をかけていいのか分からないようだ。
「……あの、天号ちゃん。
ついイタズラしたくなっちゃった気持ちは
分からないでもないけど……流石にアレは
よくなかったと思うな」
「はい、反省してます…………」
「ライジングちゃん、大丈夫?」
「………………………………」
いつも話題の中心にいるライジングちゃんが
押し黙っていると、みんなもつられて暗くなってしまう。
「ライジングちゃん…………」
いたたまれなくなったのか、猫丸ちゃんが
ライジングちゃんに歩み寄る。
ついイタズラしたくなっちゃった気持ちは
分からないでもないけど……流石にアレは
よくなかったと思うな」
「はい、反省してます…………」
「ライジングちゃん、大丈夫?」
「………………………………」
いつも話題の中心にいるライジングちゃんが
押し黙っていると、みんなもつられて暗くなってしまう。
「ライジングちゃん…………」
いたたまれなくなったのか、猫丸ちゃんが
ライジングちゃんに歩み寄る。
「………………記録」
「え?」
「あと1本牛乳イッキ飲みができれば
新記録だったのにぃ!!悔しい───!!」
「き、記録!?そんなののために、
あんな無茶な事したの!?」
「そんなのとはなんだいっ!記録保持者は
ヒーローなんだからね!今度こそわたしが
ヒーローになれると思ったのに……!」
「「ヒーロー!?今ヒーローって言った!?」」
「みっちゃんとはもはもちゃんは話が
ややこしくなるから黙ってて!!!!」
「「はい…………」」
ざわざわざわ…………。
「え?」
「あと1本牛乳イッキ飲みができれば
新記録だったのにぃ!!悔しい───!!」
「き、記録!?そんなののために、
あんな無茶な事したの!?」
「そんなのとはなんだいっ!記録保持者は
ヒーローなんだからね!今度こそわたしが
ヒーローになれると思ったのに……!」
「「ヒーロー!?今ヒーローって言った!?」」
「みっちゃんとはもはもちゃんは話が
ややこしくなるから黙ってて!!!!」
「「はい…………」」
ざわざわざわ…………。
その後、天号ちゃんはライジングちゃんにちゃんと
ごめんなさいをして、無事に仲直りできたみたいだ。
ごめんなさいをして、無事に仲直りできたみたいだ。
……………………
………………………………
…………………………………………
───あの頃の教室は毎日が輝いていて、
みんなが楽しく過ごしていた。
本当に、宝物のような日常だった。
そう、あの日が来るまでは。
みんなが楽しく過ごしていた。
本当に、宝物のような日常だった。
そう、あの日が来るまでは。
ドォッ!!!!!
突如、轟音と激しい揺れが学園を襲った。
「な、なんだ!?地震か!?」
「外で何か……起きてるみたい……!」
「みんな!空を見て!!」
誰かの声で、皆が一斉に空を見る。
そこには……映画でしか出てこないような、
巨大な円盤が浮かんでいた。
「ま、まさか…………こんなのって…………」
「えっ、映画の撮影とかじゃ……ないよね……?」
「な、なんだ!?地震か!?」
「外で何か……起きてるみたい……!」
「みんな!空を見て!!」
誰かの声で、皆が一斉に空を見る。
そこには……映画でしか出てこないような、
巨大な円盤が浮かんでいた。
「ま、まさか…………こんなのって…………」
「えっ、映画の撮影とかじゃ……ないよね……?」
「宇宙人が、攻めてきた…………!?」
「う、うわああああああああっ!!!!」
ぽつりと放たれた一言で教室はパニックになる。
外へ逃げようとする子、
思わず『符号』を発動しようとする子、
その場にへたり込んでしまう子……。
行動に違いはあれど、皆まともな判断ができずにいた。
ぽつりと放たれた一言で教室はパニックになる。
外へ逃げようとする子、
思わず『符号』を発動しようとする子、
その場にへたり込んでしまう子……。
行動に違いはあれど、皆まともな判断ができずにいた。
「ええぃ、皆落ち着かんか!!」
ズンッ!!と、空気が重くなったような錯覚と共に、
覇気を込めた声が発せられる。
のじゃロリ猫ちゃんだ。
パニックだった教室が、一気にシン……と静まり返る。
「慌ててはいかん。落ち着いて行動せねば。
ワシに考えがある。みな、付いてくるのじゃ」
覇気を込めた声が発せられる。
のじゃロリ猫ちゃんだ。
パニックだった教室が、一気にシン……と静まり返る。
「慌ててはいかん。落ち着いて行動せねば。
ワシに考えがある。みな、付いてくるのじゃ」
コツ、コツ、コツ……。
普段は誰も立ち入らない学園の地下への階段を、
ゆっくりと降りていく。
一体何をするんだろう……?と不安ではあったけど、
のじゃロリ猫ちゃんなら何とかしてくれるかも知れない。
そんな一縷の希望が、皆を不思議と落ち着かせていた。
普段は誰も立ち入らない学園の地下への階段を、
ゆっくりと降りていく。
一体何をするんだろう……?と不安ではあったけど、
のじゃロリ猫ちゃんなら何とかしてくれるかも知れない。
そんな一縷の希望が、皆を不思議と落ち着かせていた。
「さて、着いたぞ。
普段なら決して入る事は出来ん場所じゃが……
ま、今なら大丈夫じゃろ。
おーい、入れてくれんかー」
地下何階まで降りただろう。薄暗い階段の奥、
小さな倉庫のような部屋の前で、
のじゃ猫ちゃんは扉に向かって声をかけた。
普段なら決して入る事は出来ん場所じゃが……
ま、今なら大丈夫じゃろ。
おーい、入れてくれんかー」
地下何階まで降りただろう。薄暗い階段の奥、
小さな倉庫のような部屋の前で、
のじゃ猫ちゃんは扉に向かって声をかけた。
がちゃり。
少し間を置いて、扉の鍵が開く音がした。
「よしよし。あ奴も流石にこの状況の異様さは
理解しておるようじゃな」
あやつ?
こんな地下の奥深くに、誰かいるというのだろうか?
だとしたら……一体いつから……?
少し間を置いて、扉の鍵が開く音がした。
「よしよし。あ奴も流石にこの状況の異様さは
理解しておるようじゃな」
あやつ?
こんな地下の奥深くに、誰かいるというのだろうか?
だとしたら……一体いつから……?
「久しいの、神楽坂。何百年ぶりじゃ?」
「………………324年と64日ぶり。
正直、あんたには会いたくもなかったけど」
「ハ、相変わらずの口ぶりじゃのぉ。知らぬ仲でも
あるまいに、もう少し再会を喜んでも良かろう」
「………………324年と64日ぶり。
正直、あんたには会いたくもなかったけど」
「ハ、相変わらずの口ぶりじゃのぉ。知らぬ仲でも
あるまいに、もう少し再会を喜んでも良かろう」
部屋の中では、わたし達と変わらないくらいの
年齢に見える女の子が、注連縄が巻かれた
岩の上に腰掛けていた。
足元まで伸びた赤い髪、巫女さんのような和服姿。
その出で立ちはわたし達にのじゃ猫ちゃんと同じ、
「人ではない異質さ」を感じさせるのに十分だった。
年齢に見える女の子が、注連縄が巻かれた
岩の上に腰掛けていた。
足元まで伸びた赤い髪、巫女さんのような和服姿。
その出で立ちはわたし達にのじゃ猫ちゃんと同じ、
「人ではない異質さ」を感じさせるのに十分だった。
「ワシが何を頼もうとしておるかは、
オヌシならもう理解っておるじゃろ。
外のうるさい小蝿の手から、こやつらを守りたいんじゃ。
ワシの大切なおも……友達だからのぉ」
「今おもちゃって言いかけたよねのじゃ猫ちゃん」
オヌシならもう理解っておるじゃろ。
外のうるさい小蝿の手から、こやつらを守りたいんじゃ。
ワシの大切なおも……友達だからのぉ」
「今おもちゃって言いかけたよねのじゃ猫ちゃん」
「分かってるわよ。
この子達を守るためなら、力を使うのも吝かじゃない。
……あんたの言う通りにするのは癪だけどね」
スゥ、と神楽坂と呼ばれた女の子は目を閉じて下を向く。
そして……何かの呪文のような言葉を唱え始めた。
まるで聞き取れないけれど、その声には
何かの『力』が宿っているのが僅かに感じ取れる。
この子達を守るためなら、力を使うのも吝かじゃない。
……あんたの言う通りにするのは癪だけどね」
スゥ、と神楽坂と呼ばれた女の子は目を閉じて下を向く。
そして……何かの呪文のような言葉を唱え始めた。
まるで聞き取れないけれど、その声には
何かの『力』が宿っているのが僅かに感じ取れる。
「……『絶対不可侵領域』」
ブワッ!!と、何かがわたし達の身体を
突き抜けていくような感覚。
まるで、目に見えない壁が通過して行ったような……?
突き抜けていくような感覚。
まるで、目に見えない壁が通過して行ったような……?
「はい、おしまい」
「はやっ。流石じゃのぉ」
「えっ?……あの、のじゃ猫ちゃん、
一体何がどうなったの……?」
おずおずと手を挙げて尋ねる猫丸ちゃん。
「ウム、簡単に言えばこの学園は今、
こやつが作り出した結界の中に入った。
この結界はこやつが認めた者以外中に入る事はできん。
要するにここはたった今安全地帯になった、
というわけじゃよ」
「け、結界!?そんなのをあっさり作り出せるなんて、
あの人何者なのっ!?」
「私の名前は神楽坂。よろしくね、はもはもちゃん」
「えっ、わ、わたしの名前、知って…!?」
「あなただけじゃない。皆の事もよーく知ってるわ。
私はここから動けないけれど……
外の様子はこの子達が教えてくれるの」
いつの間にかバサバサとはばたく蝙蝠が
部屋の中に入ってきていた。
じゃあこの人……蝙蝠と話せるって事……!?
「はやっ。流石じゃのぉ」
「えっ?……あの、のじゃ猫ちゃん、
一体何がどうなったの……?」
おずおずと手を挙げて尋ねる猫丸ちゃん。
「ウム、簡単に言えばこの学園は今、
こやつが作り出した結界の中に入った。
この結界はこやつが認めた者以外中に入る事はできん。
要するにここはたった今安全地帯になった、
というわけじゃよ」
「け、結界!?そんなのをあっさり作り出せるなんて、
あの人何者なのっ!?」
「私の名前は神楽坂。よろしくね、はもはもちゃん」
「えっ、わ、わたしの名前、知って…!?」
「あなただけじゃない。皆の事もよーく知ってるわ。
私はここから動けないけれど……
外の様子はこの子達が教えてくれるの」
いつの間にかバサバサとはばたく蝙蝠が
部屋の中に入ってきていた。
じゃあこの人……蝙蝠と話せるって事……!?
「お察しの通り、私は人間じゃない。
千年の時を生きる、吸血鬼。と言っても、
人の血はもう吸わないし、いきなり襲いかかったり
しないから、安心して」
「吸血鬼[ヴァンパイア]ッ……!!」
隣でしおんちゃんが静かに興奮している気がするけど、
とりあえずスルーして話を続ける。
「神楽坂さん、どうしてわたし達を助けてくれるの?
わたし達、今が初対面なのに……」
「あら、水くさいわね。さっきも言ったけど、
私は蝙蝠達を通じて外の事なら何でも知ってるの。
そっちは知らなくても、私からしたらあなた達は
もう自分の家族同然よ。守るのは当たり前ってコト」
千年の時を生きる、吸血鬼。と言っても、
人の血はもう吸わないし、いきなり襲いかかったり
しないから、安心して」
「吸血鬼[ヴァンパイア]ッ……!!」
隣でしおんちゃんが静かに興奮している気がするけど、
とりあえずスルーして話を続ける。
「神楽坂さん、どうしてわたし達を助けてくれるの?
わたし達、今が初対面なのに……」
「あら、水くさいわね。さっきも言ったけど、
私は蝙蝠達を通じて外の事なら何でも知ってるの。
そっちは知らなくても、私からしたらあなた達は
もう自分の家族同然よ。守るのは当たり前ってコト」
神楽坂さんはのじゃ猫ちゃんと相対していた時と違い、
優しくて少しからかうような目をこちらに向ける。
「はもはもちゃんの恥ずかしい秘密も知ってるのよ?
毎晩ヒーローになった時のために
変身ポーズの練習をしてたり、そのまま寝ちゃって
お布団におね」
「わ───っ!!!わ────っ!!!
わかったから!!!わかったからその先は言わないで!!!」
優しくて少しからかうような目をこちらに向ける。
「はもはもちゃんの恥ずかしい秘密も知ってるのよ?
毎晩ヒーローになった時のために
変身ポーズの練習をしてたり、そのまま寝ちゃって
お布団におね」
「わ───っ!!!わ────っ!!!
わかったから!!!わかったからその先は言わないで!!!」
最悪。この人(人じゃないけど)は多分いい人
なんだろうけど、最悪だ。
全部プライベートがバレてるなんて……!!
これからは常に蝙蝠が近くにいないかどうか
確かめながら過ごさなきゃいけないな……。
なんだろうけど、最悪だ。
全部プライベートがバレてるなんて……!!
これからは常に蝙蝠が近くにいないかどうか
確かめながら過ごさなきゃいけないな……。
「さて!ここからは具体的に今後の策を考えなくては
いけないわね。この学園周辺が安全になったとはいえ、
食料と水の確保、周辺の人の避難方法、
外部との連絡方法などなど、やる事は山積しているわ。
……学校のお勉強は、しばらくお預けになりそうね」
いけないわね。この学園周辺が安全になったとはいえ、
食料と水の確保、周辺の人の避難方法、
外部との連絡方法などなど、やる事は山積しているわ。
……学校のお勉強は、しばらくお預けになりそうね」