丸山圭三郎『言葉と無意識』(1989)講談社現代新書
深層のロゴス・アナグラム・生命の波動
現代思想の問いは、言葉の問題に収斂する。
世界を分節し、文化を形成する「言葉」は無意識の深みで、どのように流動しているのか?
光の輝き(ロゴス)と闇の豊饒(パトス)が混在する無限の領域を探照する知的冒険の書。
●目次
Ⅰ 情念という名の言葉-ロゴスとパトス-
Ⅱ-ソシュール・人と思想
3 一般言語学理論
『講義』の成立事情
言語能力と社会制度と個人の実践
言葉による二重の疎外
<体系(システム)>というキー・コンセプト
<現前の記号学>批判
記号とは何か
共同幻想としての文化
自存的意味の否定
表層言語=ラング、深層の言葉=ランガージュ
Ⅲ-アナグラムの謎
●二人のソシュール●
1 アナグラムとは何か
文字の入れ替えによる<言葉遊び>
歌織物としての「百人一首」
水無瀬の里の景観
亡びゆく王朝への挽歌
2 詩法としての<音>の法則
古代ローマのサトゥルヌス詩
従来の詩法-律動(リズム)と諧調(ハーモニー)
畳韻法(アリテラシオン)ではない音の法則
アナグラム研究の事実経過と原資料
現実か、空想の産物か
パスコリへの手紙
パラグラム概念の重要性
アナグラムの具体例
暗号文(クリプトグラフ)としてのアナグラム
ソシュールの確信
浮かび上がる関係者の名前
フランスの詩に現れたアナグラム
神話的思考としての試作
伊勢物語の“かきつばた”
3 深層意識の働き
音楽の双生児
意識的か、偶然か
言語=意識の深層
詩人たちの証言
<間テクスト性>と意味生成
<本歌取り>も間テクストの一種である
引用の無限の連鎖
言葉と言葉はエロティックな恋をする
テクストの裏側に潜む力
アナグラムとポリフォニー
謡曲の声や能管の音色の幽玄
4 複数の主体<私>=<他者>
語るものは誰か?
非人称的空間-マラルメ、ヴァレリー、ニーチェ、アルトー
私はもう一人の他者である
<意味>の不在
イエスと葉巻とセックス
Ⅳ-無意識の復権
●心の奥にかくれているx●
1 非合理的なもの
既視現象・無意志的想起・集合的無意識
<光>の文化としての西欧の伝統
<気>と<影>をめぐって
東洋の優等生たち
表層の言葉(ロゴス)=ラングのみを対象とする学問
東洋の言語思想
唯識派の<アラヤ識>
2 無意識と身体
理性は万人の狂気である
精神分析学の登場-フロイトとユング
無意識は本能的なものか?
ヒトと動物の間
ゲシュタルトとは何か
二つのゲシュタルト
過剰なシンボル化能力とその所産
同類殺しをする動物
逆ホメオスタシス
言分けられた身
3 人間存在の重要性
自覚せざる精神分析学者・ソシュール
出来事(エヴエヌマン)としての言葉
ラング=ランガージュと意識=下意識
言葉の産物である<無意識>
欲動は言葉の産物か?
カオス・コスモス・ノモス
コスモスとランガージュの世界
<カオスモス>の現出
意味化の円環的運動
Ⅴ-文化と言葉の無意識
●金と性(セックス)と死●
1 心身を蝕む<物>信仰
貨幣は言葉である
価値は関係から成立する
関係が<物>を生み出す
人間の性(セックス)も言葉である
想像力が生み出す性感
動物も神も羞恥しない
自我の崩壊がもたらす羞恥の苦痛と快楽
関係の産物であるエロティシズム
<死>も言葉である
最初の神秘である<死>の目撃
人間は二度<死>を体験する
動物は死なない
万人が<心の病い>にかかっている
管理社会とストレス
2 無意識の開放
科学という<物神>
脳死判定と臓器移植
<正常><異常>とは何か
マーラーの音楽と狂気
<表層のロゴス>の産物
臨床心理学の治療は抑圧でしかない
<カタルシス>精神療法の効用と限界
<昇華>という存在喚起作用
<知る>ことは<創る>喜びをもたらす
最終更新:2008年09月10日 20:13