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連ちゃんパパ - (2025/07/28 (月) 15:31:08) の1つ前との変更点
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&font(#6495ED){所要時間}:約 15 分で読めます
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&bold(){『連ちゃんパパ』}とは、1994年春頃から1997年秋頃にかけてパチンコ雑誌『パチプロ7』にて連載されていた&u(){とされる}[[漫画]]作品である。
作者はありま猛氏。全43話。連載当時は単行本化されていなかったが、2020年9月から10月にかけてKADOKAWAから全4巻が発売された。
*概要
&bold(){パチンコ誌に載っていた}にもかかわらず、''&color(red){パチンコ中毒に陥って周囲の信頼と人としての良心を失っていく家庭持ちの男の姿}''をコミカルかつ生々しく描いた怪作。
古い作品で連載当時は単行本化もされておらず、当時のリアルタイムの読者がネットから縁遠い層であろうことも手伝ってか、連載当時の詳細な情報がほとんど無い。
出版側も&bold(){掲載誌は2017年に廃刊、出版社も別の出版社と統合されている}という状況で当時の資料はほぼ残っていないという。
更には&bold(){作者さえはっきり覚えていないらしく}、問い合わせても連載期間すら上記の「1994年春頃から1997年秋頃」といった曖昧な返答しか得られないという状態である。
[[Wikipedia]]にも、作品単体の記事はおろか、ありま氏の記事にも記述が無かった(後述するブームが始まってからようやく単独記事が出来た)くらいのマイナーな作品であった。
ただ、のちに[[ニュースサイト「ねとらぼ」でのインタビュー >https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2006/14/news005_2.html]]で作者が語ったところによると、
編集部内では大ウケしており、&bold(){読者アンケートでも3〜4位をキープしていた}など、誌上での人気は高かったらしい。
……と、このように長らく人の目に触れる機会もなく歴史の闇に埋もれ忘れられつつあった本作だったが、いかなる経緯からか2010年代末頃に電子書籍化がなされる。
それから数年はさして注目を浴びることもなかったが、2020年の春頃に無料電子書籍サイト「マンガ図書館Z」で無料公開((2020年7月31日までの期間限定。))されていたところ、
画像掲示板「ふたば☆ちゃんねる」((ログが保存されない仕様であるため、初出の正確な日時や経緯は不明。当時の新型コロナウイルス流行の際にパチンコ屋がクラスターの温床になるという風潮があり、非常識なパチンカーを煽る目的で持ち込んだという説が有力。))で突如発掘され、
・''ごく一部を除いて度し難いクズばかりの登場人物''
・''畳みかけるような胸糞(超)展開の数々''
・それを''くどくさせずサラリと読ませてしまう作者の漫画力の高さ''
からあっという間に話題をかっさらう。そこからtwitterをはじめとするSNS・匿名掲示板へと飛び火し、そちらでも盛大にバズったことで時ならぬ大ブレイクとなった。
最盛期の勢いは凄まじく、マンガ図書館Zが&bold(){アクセス過多で一時サーバーダウンしてしまう}ほどであった。
『闇金ウシジマくん』や『[[カイジ>賭博黙示録カイジ]]』シリーズをはじめ、いわゆる「社会の底辺」や「人間のクズ」と呼ばれる層を描く漫画は数多くある。
多くの場合そういった作品は良くも悪くも露悪的な作風で、生々しい性描写や暴力描写がてんこ盛りだったり、
登場人物が因果応報だが凄惨な制裁を受けたりするのが半ばお決まりとなっている。
しかし本作はそのえげつないストーリーに反し、絵柄はまるで『釣りバカ日誌』や『BARレモン・ハート』などの人情もの・ファミリー作品のような、コミカルでデフォルメの効いたもの。
&bold(){クズを通り越して邪悪に片足突っ込んでいるようなキャラクターたち}の行動もかなり俯瞰的にコメディタッチかつドライな描かれ方をされており、
直接的なエログロ描写も(ないわけではないが)抑え気味にされている。
話の展開もスピーディでテンポ良く、内容のわりにはかなり読みやすく仕上がっている。
一方で、&bold(){胸糞悪いところは本当に容赦なく胸糞悪く}、『ウシジマくん』の丑嶋馨のような&b(){クズに制裁を与える人物も出てこないため、主人公は時折痛い目を見ながらも&u(){笑顔で}悪行を続けていく。}
このポップな絵柄や読みやすくテンポよい展開、心にしこりを残すような内容のブラックさのギャップは
&bold(){「飲みやすい猛毒」「悪意の[[ストロングゼロ]]」「スナック菓子感覚で摂取できる地獄」}などと例えられ、
・&bold(){「下手に重く描かれた劇画系胸糞漫画より精神に来る」}
・&bold(){「絵と話しの運びから露悪性が強い他の胸糞漫画よりは読後感はマシ」}
・&bold(){「とんとん拍子に読み進めて行ったら後から一気にダメージがきた」}
など、様々な感想を集めている。
このあたりのギャップは作者としても狙ったところらしく、連載を打診された際に
「''依存症でボロボロになる人間の漫画ならネタはあるがそれでもいいのか''」と聞いたところOKが出たためこんな内容になったらしい。
1日あれば一気読みも可能な手頃な長さでかつ無料配信という敷居の低さもあり、''誰でも気軽にパチンコの闇に触れられてしまう''という点もバズる要因になったのかもしれない。
作者のありま氏も突然の大ブレイクに困惑していたようで、取材で「『依存症』に囚われた人の行く末をこのマンガに込めており、&bold(){取り扱い注意啓発本}として見て頂ければ幸い」と語っている。
なお、ありま氏は『歓迎たけや旅館』『きっといつかは幸福寺』のような人情ものも多く描いており、本作の作風はむしろ異色な方である。
寧ろ人情話を得意とするからこそ、自身の体験や知人の話もあったとはいえ的確に&b(){読者の心をエグる}物語が描けたのかもしれない。
*あらすじ
遊びを知らず、真面目に働いて暮らしていた高校教師にして一児の父・&bold(){日之本進}。
しかし、彼はある日突然妻の&bold(){雅子}に逃げられ、さらに押しかけてきたヤクザから彼女が知らぬ間に&bold(){300万円の[[借金]]}をこしらえていたという事実を知らされる。
一人息子の&bold(){浩司}を連れ、妻を探す旅に出た進だったが、その途中で旅費や宿泊費の捻出のためパチンコに手を出し、のめり込むようになってしまう。
やっとの思いで見つけ出した雅子にも再び裏切られ、さらには無断欠勤が原因で職さえも失い、それでもパチンコに没頭。
かくして、いつしかどうしようもないクズに成り果てた進は、&bold(){遊ぶ金欲しさと借金返済のために悪行を重ねていく……!}
*主な登場人物
**日之本進
#center(){&bold(){オレが働きたくないの まだわかんないのか!}}
本作の主人公。元高校教師で34歳。一人称は「オレ」。
父親も教員で、親子で同じ職業。
元々は[[真面目>まじめ(真面目)]]で生徒にも慕われるよき先生だった……が、&bold(){失踪した妻を探す内に[[パチンコ]]を覚えてしまい、そこから坂道を転げ落ちるように堕落していく。}
当初は根っからの仕事人間でやや家庭を顧みないところはあれどまともな人間だったのだが、妻にこっぴどく裏切られ職まで失ったことで悪い方向に吹っ切れてしまったのか、あるいはパチンコによって秘められし本性が目覚めたのか、あれよあれよという間に働きもせず他人にたかった[[金>お金]]をパチンコに注ぎ込む&bold(){人間のクズ}のような男に成り下がってしまった。
その行動はとにかく刹那的かつ自分本位で((この辺はまだ善良だった時期に職場に届け出もせずに長期無断欠勤し、何事もなかったかのように復職を希望したりする所から元々そのような傾向があった事がうかがえる。))、目先の金や利益のためならどんな悪どいことでも''法に触れようと''何の葛藤も抱かずに行い((殺しと薬以外はほぼやっていると言ってもいいレベル。))、
そうして稼いできた金もパチンコに注ぎ込んで一瞬で溶かしてしまう。
ごく稀に反省したり自分の行為を恥じることもあるが、悪い意味で立ち直りが早くその数コマ後にはまた悪事を働いているというのがお約束。
恩に報いるという最低限の義理人情さえ一切持ち合わせておらず、&bold(){手を差し伸べてくれる人も平気で裏切り破滅へ追い込む}。
作中でたびたび口にする''「アハ!」「エヘ!」''といった、罪の意識をまるで感じさせない照れ隠しめいた笑い声がその狂気をより一層引き立たせている。
というかはっきり言って[[サイコパス]]にしか見えない。((もっとも進は完全に後天的にぶっ壊れたタイプなのでどちらかと言えばソシオパスである。))
人格的な美点としては、強い家族愛の持ち主であること。
子供に対して物理的に手をあげたことは無く、たとえ血のつながっていない連れ子であろうと&bold(){「身内」なら}愛し保護するほど。
しかし、愛してはいるものの家族への配慮・デリカシーの無さやパチンコで狂った感覚基準での言動が多く結局傷つけてしまうことが常なので美点と言って良いのか微妙なライン。
自身をパチプロと称しパチンコは17兆円産業だと嘯くものの基本的に儲けにはなっておらず、たいていの場面ではスって状況を悪化させるばかり。
反面パチンコが身の破滅を呼んだという自覚はあるが、やめようという気は全くない。最早[[パチンカス]]という蔑称ですら生温いレベル。
&font(l){これパチスロ誌で連載されてた漫画なんですけど……。}
一方で元教師と言う事もあってか悪事を働く際はかなりの行動力を見せ、頭もよく回る。
特に借金の取り立てに関しては&bold(){天職}と言ってもよく、見ていて胸が悪くなるようなえげつない手口を平然と使い、債務者に返済を強いるその手腕は、&bold(){本職のヤクザをも唸らせるほど。}((その手腕でもって一時債務者を自殺(ただし未遂に終わる)に追い込み、ヤクザに「やりすぎだ」と叱責されている))
また教育者としての資質もちゃんとあるようで、教え子達には今でも尊敬されているほか塾の経営者夫婦にも
「立派な講師なのにパチンコと酒で人生を潰すのは惜しい」と評されている((別の塾では働き出して2週間で解雇されてしまったこともあるが、この時は「教え方が生ぬるい」と言われている。受験向きの教え方が苦手なのかもしれない。))。
更にこの手のキャラクターには珍しく家事を嫌がるシーンもなく、基本的に必要なら炊事や掃除はちゃっちゃとやれるタイプ。&font(l){でもできる癖してパチンコ行って結局サボる。}
人間性が腐ってしまっただけで決して無能な人物ではない……のだが、そういった行動力や頭の回転の速さ、要領の良さなどは&bold(){もっぱら悪事にばかり活かされてしまう}ためむしろタチが悪い。
基本的に運は悪く、詐欺の被害に遭ったり、職場に振り込まなくてはならない金を落としてしまったりと本人に非のない場面で不幸に遭うことも多い。
むしろ更生してパチンコから足を洗おうとした時に限ってそういう目に遭いがちで、結局そこからまたズルズルと堕ちていくことになる。
一方&bold(){悪運だけは妙に強く}、ヤクザに幾度となくボコられても、強盗に襲われても、灰皿をぶつけられても、挙句の果てに&bold(){当たり屋を強要されて車にはねられても}後遺症もなく全快し、いよいよ進退窮まってきたところで運良く勝ちを拾うことが多い。
一度&bold(){保険金殺人のターゲットにされかけた}事もあったが驚異的な悪運で生き延びている。
そのためあれだけ好き放題していても多少痛い目は見れどなんだかんだで決定的な破滅だけは逃れている。
&font(l){本作はたびたび『ウシジマくん』と比較されるが、進はこの悪運の強さから一応払うものは払ってしまうため、実際に丑嶋と対決したら1:9で進側有利とも言われている。}
そんなどうしようもないクズだった進だが、物語後半で借金取りに学習塾の仕事を斡旋されたことでやや風向きが変わる。
善良な塾経営者夫婦のもとで働くうちに更生の意思が芽生え、以後もたびたびパチンコには手を出すものの中盤ほどの悪どさは見せなくなり、妻子にも真っ当な愛情を見せる場面が増えてくる。
また、精神科医にパチンコを「そこまで急にやめるとおかしくなって死んでしまうよ」と言われても、
やつれたまま「嫌だ!」と半狂乱になってパチンコを絶対にやめようとしたり(結局医者のすすめでやってしまうのだが)
更には子供たちを安全圏に置いてから自分ひとりで[[自殺]]まで図ろうとするなど、
&bold(){「パチンコへの依存とそれで覚醒した自分でも制御できない悪の才能」}に対する自己嫌悪と恐怖のようなものを見せるようになる。
最終的には身近にパチンコ屋があっては絶対に足を洗えないと悟り[[ド田舎>田舎]]に移り住み、自給自足で再起を誓うが……。
ちなみに作者のありま氏曰く、モデルは同氏の師匠だった漫画家のあだち勉([[あだち充]]の実兄)らしい。((ありま氏は2020年~2024年まで『あだち勉物語』~あだち充を漫画家にした男~を連載していた。))
#openclose(show=主な悪行){
-パチンコにのめり込み、息子の食事すら疎かにする。
-パチプロになると自称するが、収支を取っている様子もなくただ場当たり的に金を突っ込んで遊んでいるだけ。
-ヤクザの家に転がり込み居候する。
-借金の取り立てを勝手に行う。
--やり口は債務者の子供が通う学校で親が借金持ちだと言いふらし、イジメを誘発して払わせるというもの。
--''浩司が自分のことで同級生にバカにされていると聞いてその手口を思いついた。''
--やりすぎて''債務者を自殺未遂に追い込む''。流石に落ち込んだ。
-銀行員の女に惚れられ、怪しみもせず相当な額の家賃とパチンコ代を貢がせる。
--進自身の悪行ではないが、''その女は横領で逮捕される''。
-預かったお金をパチンコ屋で増やそうとし、増やせないとトンズラ。
-息子を''300万で売る''。
-浩司を心配し引き取っていた担任の先生の家に仮病で泊めて貰った挙句、''[[レイプ]]する''。
--しかも性欲からの行為ではなく、''自分をレイプした男の息子を身近に置いておけないだろうと計算した''上で、浩司を取り返すためにやっている。
--担任の先生は[[処女]]を奪われた上に妊娠までしてしまう((最終的には生理不順だったとオチがつく。))が、敬虔なクリスチャンのため堕胎が許されないという理由で責任を取れと結婚を迫られ、[[お金持ち>金持ちキャラ]]の[[お嬢様>お嬢様(属性)]]なことをいいことに金をたかってパチンコ三昧。
-新聞屋で働いていたところ集金してきた新聞代を強盗に奪われ、&color(red){元ヤクザ}の新聞屋店長に弁償を迫られて''自分も換金所強盗を計画する''。
--実行寸前まで行くものの、他の強盗が先に手を出したため未遂に終わる。捕まえて[[警察>日本警察]]に突き出したことでお手柄となり、ついでに&color(red){その強盗の正体が新聞屋の店長だった}((実は進が集めてきた金を奪ったのもこいつで、完全な自作自演。))ため弁償の必要もなくなる。
--ヤクザには本心を見抜かれるも''笑顔でしらばっくれる''。
-教え子たちに再起を願ってのカンパをしてもらい、泣きながら更生を誓う……が''結局その金をパチンコに注ぎ込み、次は別の年の教え子たちにたかろうとほくそ笑む。''%%おい。%%
-他の男のもとを転々とした末1人になっていた雅子の家に転がり込み((一応雅子側も受け入れる気ではいたが。))、金をたかる。
-パチンコを打っている最中に雅子が産気づいたと聞かされ、一応駆けつけようとはする……ものの''両替を優先する''。
--母子ともに危険な状態ですぐ帝王切開しないといけないのに、戸籍が抜けていないため子供の父親になってしまう((民法772条参照。))のを嫌い手術を渋る。(流石にマジのガチでママが死にかけた際には自ら離婚届を破り捨てたが)
-[[生活保護]]を不正受給しようとする。
-ヤクザとグルになって''自分の就職先の''弁当屋さんをパチンコ中毒に追い込み、[[地上げ]]を手伝う。
-老夫婦からの取り立ての際に家宝の皿を躊躇なく差し押さえして売り飛ばす。
--更にその皿の隣にあった壺が高価な骨董品だと誤認し、ポケットマネーで老夫婦の借金を返済。勿論善意で立て替えたわけではなく、''「さっきの家宝の皿は金利分の返済で消えた((ここに関しては本当だが。))から元金を徴収する」と噓をついて、家財道具を根こそぎリサイクルショップ屋に売り飛ばす''。
--更にカモフラージュの為にリサイクルショップに売上金を全額渡し、まんまと壺だけを盗む徹底ぶり。まあその壺は贋作だったので二束三文だったのだが。
-パチンコ屋で暴力沙汰に巻き込まれ、加害者の勤務先の会社からリストラの口実に訴えてほしいと頼まれ金を受け取る。
--が、加害者からお詫びにと[[鍋]]をご馳走になり、情が湧いてしまい''逆に会社の方を脅迫する''。
-アパートの近くにマンションが建つと日照権を理由に立ち退き料をぼったくろうとする。
-再婚相手の和菓子屋一家に勝手に養護施設に入れられてしまった浩司を引き取るため、ヤクザとグルになって和菓子屋への営業妨害と脅迫を行ってもらう。((立派な犯罪ではあるが、この一件に関してはどちらかというと和菓子屋のやっていることに問題がある。))
-パチンコの後手を洗わなかったせいで再婚相手の和菓子屋で''食中毒''を発生させ、1か月の営業停止処分に。
}
**日之本浩司
#center(){&bold(){この人もうパパじゃない}}
#center(){&bold(){ボクのパパはお金では人を売らない}}
進の息子。揃いも揃って度し難いクズの両親に振り回され悲惨な目に遭う不幸な少年。
だが無自覚かつ悪意なく事態を悪化させてしまう傾向にあり、旅の途中旅費の入ったカバンを置き引きされてしまった進に資金調達のためパチンコを勧めたのも浩司。
雅子が打っているのを横で見ていたらしくパチンコには変に詳しい。&font(l){初めてのパチンコに挑む進に素朴ながら的確なアドバイスを与える姿は「ここだけはパチ雑誌の連載漫画らしい」と評判。}
とはいえ物事の判断のつきにくい子供ゆえ致し方ない部分も大きく、良くも悪くも歳相応というのが妥当なところか。&font(l){そもそも息子にパチンコなんか覚えさせた雅子が一番悪い。}
我が子を金で売る父に我が子を放置して逃げ出す[[母>お母さん]]、しかも揃ってパチンコ狂いという酷すぎる環境にあって我が身を悲観しがち。何度かは完全に両親に愛想を尽かしかけたほか、自閉症((作中での診断。現代でも誤解されがちだが、自閉症は先天性の広汎性発達障害の事を指すため、恐らく実際は小児うつや場面緘黙症など別の[[精神疾患]]と思われる。当時は自閉症への知識や理解が今ほど世に広まっていなかったのだろう。なお単行本では修正済み。))にかかり口がきけなくなってしまったこともある。
しかしなんだかんだで両親への愛情は強く、最終的には元の鞘に戻ろうとする。&bold(){が、それがかえってよくない方向に働くことがほとんど。}
両親の問題を抜きにしてもかなりの不幸体質で、友達ができたかと思えばその父親がアル中だったり、
好きになった女の子の父親が詐欺師だったせいで離れ離れになったり、万引きの濡れ衣を着せられたり、
進に無断で再婚相手とその両親に養護施設に預けられイジメを受けたりしている。
**日之本雅子
#center(){&bold(){見るだけだったらいいわよね}}
#center(){&bold(){お金使わなきゃいいわよね}}
#center(){&color(red){&bold(){勝てばいいのよね}}}
進の妻であり、この作品における''全ての元凶''。
そのクズっぷりは進に勝るとも劣らない。&bold(){真の邪悪}とまで呼ばれる辺りどのような人物かうかがい知れるものだろう。
近所でも噂になるほどのパチンコ狂いで、夫に隠して&bold(){300万円の借金を作った挙句に置き手紙を残して蒸発}。
おまけに&bold(){不倫}までやっており、進達に現場を押さえられた際は彼と浩司の説得に応じて帰ると約束しておきながら&bold(){結局間男と逃げ出す}という暴挙に及んだ。
決して不細工ではないが美人とも言い難い容姿だが、妙にモテる上に貞操観念というものがほとんど無いのか、進と正式に離婚もしないうちから男を何人も乗り換えている。
間男達も不倫がバレて進に謝罪するどころか逆に見せつけて勝ち誇るような下衆だったり自分の汚職の責任を雅子に押し付けて逃げ出したりと基本的にクズばかりだが、
雅子はそんな彼らにすら掌返しの速さに&bold(){ドン引きされる}などしており、クズとしての格の違いを見せつけている。
クズとしての方向性は進とは対照的な面があり、意志と責任感が弱く意図せず周囲に迷惑を撒き散らすタイプ。
進が遊ぶ金欲しさに積極的に他人から金をせしめに行く一方で借金を一応自力で完済しているのに対し、雅子は自発的に他人を害することはあまりないものの、
&bold(){人に隠れて借金を膨らませた挙句尻拭いを周囲の人間に押し付けて逃げ出す、ということを何度となく繰り返している。}
保身のためなら''ヤクザと組んで保険金目当てで進を殺すことすら厭わない''((一応未遂に終わったが、この際無事に帰ってきた進には何食わぬ顔で笑いかけている……。))など、悪事に対する抵抗のなさはある面では進以上。
人の親としての責任感も皆無で、何かにつけて浩司を自分から引き取ろうとしておきながら、いざ自分が追い詰められるとすぐ息子を放置して逃げ出す。
&bold(){「追いつめられるとすぐ家族をパージして逃げる」}という行動パターンが基本として確立されているのは
&bold(){「家族への情はあるが我欲で他人を破滅させに行くことには躊躇がない」}進とのクズの方向性の対比とも言える。
それでいて自分がクズだという自覚は進以上に薄く、&bold(){いかにも良識的な人間の代表のような顔をして進を非難することもある。}
進がクズである事は間違いないし、言っていること自体はだいたい正論だが、雅子だってまったくもって偉そうに人を悪く言えるような立場ではない。
離婚の際に「あなたみたいな人に浩司を任せておけない」などと宣いながら''結局自分がパチンコで身を持ち崩し間男との子供ごと浩司を進に押し付ける''など、
はっきりいってその言動は[[ブーメラン]]以外の何物でもない。
無自覚さも手伝ってか外面は良く、進同様にその場その場では反省してしおらしくもするため、傍目には良妻賢母のように見えなくもないのが余計に悪質。
進がクズ行為を働いている時はまともな主婦のように振る舞う一方、
逆に進が真面目に働きだし更生しかかると絶妙なタイミングでトラブルを起こし、台無しにしてしまう。誰が呼んだか''人間のクズのシーソーゲーム''。
紆余曲折あり最後は進と復縁し、浩司と[[双子]]の娘の良子・知子((3人目の愛人との間にできた子))とともに再起を図るが……
**ヤクザ(本名不明)
#center(){&bold(){いつも親のエゴで迷惑すんのは 子供なんだよな}}
スキンヘッドで強面の大男。貸金業者「OKローン」の社長で、雅子に金を貸し、違法金利で進を破滅に追い込んだ張本人。
前科三犯で取り立てのためなら手段を選ばず、進に&bold(){当たり屋を強要}したり、フィリピンで保険金殺人を計画したりするなどれっきとした悪人。
だが、&bold(){面倒見のいい人情家としての面も併せ持っており}、進に職場を斡旋したり、家を追い出された彼と浩司を居候させたりもしている。
なんだかんだで進のことは気に入っているが、彼のクズぶりに呆れたり取り立ての手口の悪どさに引いたりする場面もある。
実は、パチンコの借金が原因で両親が破局し養護施設に入れられたという過去を持つ((余談ではあるが作者のありま氏も養護施設の出身。))。
そのため今の自分の有り様に思う所がないわけではないようで、よく似た境遇にある浩司と自分の過去を重ね、一度は進の育児放棄を見兼ねて夕食を作ってやったり、彼を引き取ろうとしたりしたこともある。
浩司の一件に限らず、アル中債務者の息子をこのまま父親と暮らしていたらろくな事にならないとして引き剥がし祖父と一緒に暮らさせたりするなど、&u(){子どもには}優しい。
悪人であることは間違いないのだが、読者から「''思考が人間の延長線上にない''」とまで言われている進や雅子に比べれば「筋は通している」「人間味は残している」と言える類の人物。
漫画等にありがちな、悪事の表現を抑え任侠的な面も強調されたファッションヤクザではなく、割とやることはやっている&bold(){ガチのヤクザ}。だが、その彼ですら多くの読者に&bold(){「まだまともな方」「人間に見える」}と評価される辺りに本作のキャラクター観が窺える。
**その他
その他ゲストキャラ・サブキャラも多数登場するが、その&bold(){大半はバカかクズか悪人}。
-進のバッグを置き引きしたおばちゃん(最終的に改心したが)
-パチンコにはまり、借金をしてはダム建設現場の常連になっている進の友人
-勤務先から&bold(){1億8千万}の横領をして進に貢いでいた女性
-中には&bold(){40億の損害を出した挙句にその責任を妻に押し付け高跳びしたネズミ講社長}までいた、雅子の間男達(最初のやつに至っては夫である進の前で堂々と居直っていたから一層たちが悪い)
-会社が潰れたショックで不貞腐れ全く働こうとせず、年老いた父親の年金まで酒につぎ込んでいた、権太くん(浩司の友達)のパパ
-進の再就職先の新聞会社の、&bold(){マッチポンプ強盗}で私腹を肥やしていた&bold(){元ヤクザ}の悪徳社長
-知り合いに片っ端から&bold(){投資詐欺}を触れ回る、映子ちゃん(浩司のガールフレンド)のパパ
-連れ子の浩司を跡取り候補として歓迎しておきながら、実子ができたとたん邪険に扱った挙句&bold(){勝手に養護施設に入れてしまった}進の再婚先の老舗の和菓子屋一家
-浩司をいじめる養護施設の子供達
-防犯カメラをろくに確認もせず浩司が万引きの犯人であると決めつけたテレビゲーム専門店の店主の夫婦
-上記窃盗事件の真犯人で浩司のランドセルに&bold(){未会計のゲームソフトをこっそり入れ、後で恐喝してタダでせしめる}つもりだった不良中学生
など、バリエーション豊かなクズ達がストーリーを彩っている。
このあたりが「''クズのスマブラ''」「''インフレクズパワーバトル''」と呼ばれる所以か。
悪人以外の登場人物もどこかズレていたりスネに傷のあるものが多く、まともなのは進を更生させた塾講師夫婦と雅子の再婚相手の板前、
そして進の取り立てに利用された浩司の同級生の子供たちくらいである。
追記、修正はパチンコの沼にはまらずお願いします。
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#right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/
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&bold(){『連ちゃんパパ』}とは、1994年春頃から1997年秋頃にかけてパチンコ雑誌『パチプロ7』にて連載されていた&u(){とされる}[[漫画]]作品である。
作者はありま猛氏。全43話。連載当時は単行本化されていなかったが、2020年9月から10月にかけてKADOKAWAから全4巻が発売された。
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*概要
&bold(){パチンコ誌に載っていた}にもかかわらず、''&color(red){パチンコ中毒に陥って周囲の信頼と人としての良心を失っていく家庭持ちの男の姿}''をコミカルかつ生々しく描いた怪作。
古い作品で連載当時は単行本化もされておらず、当時のリアルタイムの読者がネットから縁遠い層であろうことも手伝ってか、連載当時の詳細な情報がほとんど無い。
出版側も&bold(){掲載誌は2017年に廃刊、その後出版社も別の出版社と統合されている}という状況で当時の資料はほぼ残っていないという。
更には&bold(){作者さえはっきり覚えていないらしく}、問い合わせても連載期間すら上記の「1994年春頃から1997年秋頃」といった曖昧な返答しか得られないという状態である。
[[Wikipedia]]にも、作品単体の記事はおろか、ありま氏の記事にも記述が無かった(後述するブームが始まってからようやく単独記事が出来た)くらいのマイナーな作品であった。
ただ、のちに[[ニュースサイト「ねとらぼ」でのインタビュー >https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2006/14/news005_2.html]]で作者が語ったところによると、
編集部内では大ウケしており、&bold(){読者アンケートでも3〜4位をキープしていた}など、誌上での人気は高かったらしい。
……と、このように長らく人の目に触れる機会もなく歴史の闇に埋もれ忘れられつつあった本作だったが、いかなる経緯からか2010年代末頃に電子書籍化がなされる。
それから数年はさして注目を浴びることもなかったが、2020年の春頃に無料電子書籍サイト「マンガ図書館Z」で無料公開((2020年7月31日までの期間限定。))されていたところ、
画像掲示板「ふたば☆ちゃんねる」((ログが保存されない仕様であるため、初出の正確な日時や経緯は不明。当時の新型コロナウイルス流行の際にパチンコ屋がクラスターの温床になるという風潮があり、非常識なパチンカーを煽る目的で持ち込んだという説が有力。))で突如発掘され、
・''ごく一部を除いて度し難いクズばかりの登場人物''
・''畳みかけるような胸糞(超)展開の数々''
・それを''くどくさせずサラリと読ませてしまう作者の漫画力の高さ''
からあっという間に話題をかっさらう。そこからtwitterをはじめとするSNS・匿名掲示板へと飛び火し、そちらでも盛大にバズったことで時ならぬ大ブレイクとなった。
最盛期の勢いは凄まじく、マンガ図書館Zが&bold(){アクセス過多で一時サーバーダウンしてしまう}ほどであった。
『闇金ウシジマくん』や『[[カイジ>賭博黙示録カイジ]]』シリーズをはじめ、いわゆる「社会の底辺」や「人間のクズ」と呼ばれる層を描く漫画は数多くある。
多くの場合そういった作品は良くも悪くも露悪的な作風で、生々しい性描写や暴力描写がてんこ盛りだったり、
登場人物が因果応報だが凄惨な制裁を受けたりするのが半ばお決まりとなっている。
しかし本作はそのえげつないストーリーに反し、絵柄はまるで『釣りバカ日誌』や『BARレモン・ハート』などの人情もの・ファミリー作品のような、コミカルでデフォルメの効いたもの。
&bold(){クズを通り越して邪悪に片足突っ込んでいるようなキャラクターたち}の行動もかなり俯瞰的にコメディタッチかつドライな描かれ方をされており、
直接的なエログロ描写も(ないわけではないが)抑え気味にされている。
話の展開もスピーディでテンポ良く、内容のわりにはかなり読みやすく仕上がっている。
一方で、&bold(){胸糞悪いところは本当に容赦なく胸糞悪く}、『ウシジマくん』の丑嶋馨のような&b(){クズに制裁を与える人物も出てこないため、主人公は時折痛い目を見ながらも&u(){笑顔で}悪行を続けていく。}
このポップな絵柄や読みやすくテンポよい展開、心にしこりを残すような内容のブラックさのギャップは
&bold(){「飲みやすい猛毒」「悪意の[[ストロングゼロ]]」「スナック菓子感覚で摂取できる地獄」}などと例えられ、
・&bold(){「下手に重く描かれた劇画系胸糞漫画より精神に来る」}
・&bold(){「絵と話しの運びから露悪性が強い他の胸糞漫画よりは読後感はマシ」}
・&bold(){「とんとん拍子に読み進めて行ったら後から一気にダメージがきた」}
など、様々な感想を集めている。
このあたりのギャップは作者としても狙ったところらしく、連載を打診された際に
「''依存症でボロボロになる人間の漫画ならネタはあるがそれでもいいのか''」と聞いたところOKが出たためこんな内容になったらしい。
1日あれば一気読みも可能な手頃な長さでかつ無料配信という敷居の低さもあり、''誰でも気軽にパチンコの闇に触れられてしまう''という点もバズる要因になったのかもしれない。
作者のありま氏も突然の大ブレイクに困惑していたようで、取材で「『依存症』に囚われた人の行く末をこのマンガに込めており、&bold(){取り扱い注意啓発本}として見て頂ければ幸い」と語っている。
なお、ありま氏は『歓迎たけや旅館』『きっといつかは幸福寺』のような人情ものも多く描いており、本作の作風はむしろ異色な方である。
寧ろ人情話を得意とするからこそ、自身の体験や知人の話もあったとはいえ的確に&b(){読者の心をエグる}物語が描けたのかもしれない。
*あらすじ
遊びを知らず、真面目に働いて暮らしていた高校教師にして一児の父・&bold(){日之本進}。
しかし、彼はある日突然妻の&bold(){雅子}に逃げられ、さらに押しかけてきたヤクザから彼女が知らぬ間に&bold(){300万円の[[借金]]}をこしらえていたという事実を知らされる。
一人息子の&bold(){浩司}を連れ、妻を探す旅に出た進だったが、その途中で旅費や宿泊費の捻出のためパチンコに手を出し、のめり込むようになってしまう。
やっとの思いで見つけ出した雅子にも再び裏切られ、さらには無断欠勤が原因で職さえも失い、それでもパチンコに没頭。
かくして、いつしかどうしようもないクズに成り果てた進は、&bold(){遊ぶ金欲しさと借金返済のために悪行を重ねていく……!}
*主な登場人物
**日之本進
#center(){&bold(){オレが働きたくないの まだわかんないのか!}}
本作の主人公。元高校教師で34歳。一人称は「オレ」。
父親も教員で、親子で同じ職業。
元々は[[真面目>まじめ(真面目)]]で生徒にも慕われるよき先生だった……が、&bold(){失踪した妻を探す内に[[パチンコ]]を覚えてしまい、そこから坂道を転げ落ちるように堕落していく。}
当初は根っからの仕事人間でやや家庭を顧みないところはあれどまともな人間だったのだが、妻にこっぴどく裏切られ職まで失ったことで悪い方向に吹っ切れてしまったのか、あるいはパチンコによって秘められし本性が目覚めたのか、あれよあれよという間に働きもせず他人にたかった[[金>お金]]をパチンコに注ぎ込む&bold(){人間のクズ}のような男に成り下がってしまった。
その行動はとにかく刹那的かつ自分本位で((この辺はまだ善良だった時期に職場に届け出もせずに長期無断欠勤し、何事もなかったかのように復職を希望したりする所から元々そのような傾向があった事がうかがえる。))、目先の金や利益のためならどんな悪どいことでも''法に触れようと''何の葛藤も抱かずに行い((殺しと薬以外はほぼやっていると言ってもいいレベル。))、
そうして稼いできた金もパチンコに注ぎ込んで一瞬で溶かしてしまう。
ごく稀に反省したり自分の行為を恥じることもあるが、悪い意味で立ち直りが早くその数コマ後にはまた悪事を働いているというのがお約束。
恩に報いるという最低限の義理人情さえ一切持ち合わせておらず、&bold(){手を差し伸べてくれる人も平気で裏切り破滅へ追い込む}。
作中でたびたび口にする''「アハ!」「エヘ!」''といった、罪の意識をまるで感じさせない照れ隠しめいた笑い声がその狂気をより一層引き立たせている。
というかはっきり言って[[サイコパス]]にしか見えない。((もっとも進は完全に後天的にぶっ壊れたタイプなのでどちらかと言えばソシオパスである。))
人格的な美点としては、強い家族愛の持ち主であること。
子供に対して物理的に手をあげたことは無く、たとえ血のつながっていない連れ子であろうと&bold(){「身内」なら}愛し保護するほど。
しかし、愛してはいるものの家族への配慮・デリカシーの無さやパチンコで狂った感覚基準での言動が多く結局傷つけてしまうことが常なので美点と言って良いのか微妙なライン。
自身をパチプロと称しパチンコは17兆円産業だと嘯くものの基本的に儲けにはなっておらず、たいていの場面ではスって状況を悪化させるばかり。
反面パチンコが身の破滅を呼んだという自覚はあるが、やめようという気は全くない。最早[[パチンカス]]という蔑称ですら生温いレベル。
&font(l){これパチスロ誌で連載されてた漫画なんですけど……。}
一方で元教師と言う事もあってか悪事を働く際はかなりの行動力を見せ、頭もよく回る。
特に借金の取り立てに関しては&bold(){天職}と言ってもよく、見ていて胸が悪くなるようなえげつない手口を平然と使い、債務者に返済を強いるその手腕は、&bold(){本職のヤクザをも唸らせるほど。}((その手腕でもって一時債務者を自殺(ただし未遂に終わる)に追い込み、ヤクザに「やりすぎだ」と叱責されている))
また教育者としての資質もちゃんとあるようで、教え子達には今でも尊敬されているほか塾の経営者夫婦にも
「立派な講師なのにパチンコと酒で人生を潰すのは惜しい」と評されている((別の塾では働き出して2週間で解雇されてしまったこともあるが、この時は「教え方が生ぬるい」と言われている。受験向きの教え方が苦手なのかもしれない。))。
更にこの手のキャラクターには珍しく家事を嫌がるシーンもなく、基本的に必要なら炊事や掃除はちゃっちゃとやれるタイプ。&font(l){でもできる癖してパチンコ行って結局サボる。}
人間性が腐ってしまっただけで決して無能な人物ではない……のだが、そういった行動力や頭の回転の速さ、要領の良さなどは&bold(){もっぱら悪事にばかり活かされてしまう}ためむしろタチが悪い。
基本的に運は悪く、詐欺の被害に遭ったり、職場に振り込まなくてはならない金を落としてしまったりと本人に非のない場面で不幸に遭うことも多い。
むしろ更生してパチンコから足を洗おうとした時に限ってそういう目に遭いがちで、結局そこからまたズルズルと堕ちていくことになる。
一方&bold(){悪運だけは妙に強く}、ヤクザに幾度となくボコられても、強盗に襲われても、灰皿をぶつけられても、挙句の果てに&bold(){当たり屋を強要されて車にはねられても}後遺症もなく全快し、いよいよ進退窮まってきたところで運良く勝ちを拾うことが多い。
一度&bold(){保険金殺人のターゲットにされかけた}事もあったが驚異的な悪運で生き延びている。
そのためあれだけ好き放題していても多少痛い目は見れどなんだかんだで決定的な破滅だけは逃れている。
&font(l){本作はたびたび『ウシジマくん』と比較されるが、進はこの悪運の強さから一応払うものは払ってしまうため、実際に丑嶋と対決したら1:9で進側有利とも言われている。}
そんなどうしようもないクズだった進だが、物語後半で借金取りに学習塾の仕事を斡旋されたことでやや風向きが変わる。
善良な塾経営者夫婦のもとで働くうちに更生の意思が芽生え、以後もたびたびパチンコには手を出すものの中盤ほどの悪どさは見せなくなり、妻子にも真っ当な愛情を見せる場面が増えてくる。
また、精神科医にパチンコを「そこまで急にやめるとおかしくなって死んでしまうよ」と言われても、
やつれたまま「嫌だ!」と半狂乱になってパチンコを絶対にやめようとしたり(結局医者のすすめでやってしまうのだが)
更には子供たちを安全圏に置いてから自分ひとりで[[自殺]]まで図ろうとするなど、
&bold(){「パチンコへの依存とそれで覚醒した自分でも制御できない悪の才能」}に対する自己嫌悪と恐怖のようなものを見せるようになる。
最終的には身近にパチンコ屋があっては絶対に足を洗えないと悟り[[ド田舎>田舎]]に移り住み、自給自足で再起を誓うが……。
ちなみに作者のありま氏曰く、モデルは同氏の師匠だった漫画家のあだち勉([[あだち充]]の実兄)らしい。((ありま氏はその後2020年~2024年まで『あだち勉物語』~あだち充を漫画家にした男~を連載していた。))
#openclose(show=主な悪行){
-パチンコにのめり込み、息子の食事すら疎かにする。
-パチプロになると自称するが、収支を取っている様子もなくただ場当たり的に金を突っ込んで遊んでいるだけ。
-ヤクザの家に転がり込み居候する。
-借金の取り立てを勝手に行う。
--やり口は債務者の子供が通う学校で親が借金持ちだと言いふらし、イジメを誘発して払わせるというもの。
--''浩司が自分のことで同級生にバカにされていると聞いてその手口を思いついた。''
--やりすぎて''債務者を自殺未遂に追い込む''。流石に落ち込んだ。
-銀行員の女に惚れられ、怪しみもせず相当な額の家賃とパチンコ代を貢がせる。
--進自身の悪行ではないが、''その女は横領で逮捕される''。
-預かったお金をパチンコ屋で増やそうとし、増やせないとトンズラ。
-息子を''300万で売る''。
-浩司を心配し引き取っていた担任の先生の家に仮病で泊めて貰った挙句、''[[レイプ]]する''。
--しかも性欲からの行為ではなく、''自分をレイプした男の息子を身近に置いておけないだろうと計算した''上で、浩司を取り返すためにやっている。
--担任の先生は[[処女]]を奪われた上に妊娠までしてしまう((最終的には生理不順だったとオチがつく。))が、敬虔なクリスチャンのため堕胎が許されないという理由で責任を取れと結婚を迫られ、[[お金持ち>金持ちキャラ]]の[[お嬢様>お嬢様(属性)]]なことをいいことに金をたかってパチンコ三昧。
-新聞屋で働いていたところ集金してきた新聞代を強盗に奪われ、&color(red){元ヤクザ}の新聞屋店長に弁償を迫られて''自分も換金所強盗を計画する''。
--実行寸前まで行くものの、他の強盗が先に手を出したため未遂に終わる。捕まえて[[警察>日本警察]]に突き出したことでお手柄となり、ついでに&color(red){その強盗の正体が新聞屋の店長だった}((実は進が集めてきた金を奪ったのもこいつで、完全な自作自演。))ため弁償の必要もなくなる。
--ヤクザには本心を見抜かれるも''笑顔でしらばっくれる''。
-教え子たちに再起を願ってのカンパをしてもらい、泣きながら更生を誓う……が''結局その金をパチンコに注ぎ込み、次は別の年の教え子たちにたかろうとほくそ笑む。''%%おい。%%
-他の男のもとを転々とした末1人になっていた雅子の家に転がり込み((一応雅子側も受け入れる気ではいたが。))、金をたかる。
-パチンコを打っている最中に雅子が産気づいたと聞かされ、一応駆けつけようとはする……ものの''両替を優先する''。
--母子ともに危険な状態ですぐ帝王切開しないといけないのに、戸籍が抜けていないため子供の父親になってしまう((民法772条参照。))のを嫌い手術を渋る。(流石にマジのガチでママが死にかけた際には自ら離婚届を破り捨てたが)
-[[生活保護]]を不正受給しようとする。
-ヤクザとグルになって''自分の就職先の''弁当屋さんをパチンコ中毒に追い込み、[[地上げ]]を手伝う。
-老夫婦からの取り立ての際に家宝の皿を躊躇なく差し押さえして売り飛ばす。
--更にその皿の隣にあった壺が高価な骨董品だと誤認し、ポケットマネーで老夫婦の借金を返済。勿論善意で立て替えたわけではなく、''「さっきの家宝の皿は金利分の返済で消えた((ここに関しては本当だが。))から元金を徴収する」と噓をついて、家財道具を根こそぎリサイクルショップ屋に売り飛ばす''。
--更にカモフラージュの為にリサイクルショップに売上金を全額渡し、まんまと壺だけを盗む徹底ぶり。まあその壺は贋作だったので結局二束三文だったのだが。
-パチンコ屋で暴力沙汰に巻き込まれ、加害者の勤務先の会社からリストラの口実に訴えてほしいと頼まれ金を受け取る。
--が、加害者からお詫びにと[[鍋]]をご馳走になり、情が湧いてしまい''逆に会社の方を脅迫する''。
-アパートの近くにマンションが建つと日照権を理由に立ち退き料をぼったくろうとする。
-再婚相手の和菓子屋一家に勝手に養護施設に入れられてしまった浩司を引き取るため、ヤクザとグルになって和菓子屋への営業妨害と脅迫を行ってもらう。((立派な犯罪ではあるが、この一件に関してはどちらかというと和菓子屋のやっていることに問題がある。))
-パチンコの後、手を洗わなかったせいで再婚相手の和菓子屋で''食中毒''を発生させ、1か月の営業停止処分に。
}
**日之本浩司
#center(){&bold(){この人もうパパじゃない}}
#center(){&bold(){ボクのパパはお金では人を売らない}}
進の息子。揃いも揃って度し難いクズの両親に振り回され悲惨な目に遭う不幸な少年。
だが無自覚かつ悪意なく事態を悪化させてしまう傾向にあり、旅の途中旅費の入ったカバンを置き引きされてしまった進に資金調達のためパチンコを勧めたのも浩司。
雅子が打っているのを横で見ていたらしくパチンコには変に詳しい。&font(l){初めてのパチンコに挑む進に素朴ながら的確なアドバイスを与える姿は「ここだけはパチ雑誌の連載漫画らしい」と評判。}
とはいえ物事の判断のつきにくい子供ゆえ致し方ない部分も大きく、良くも悪くも歳相応というのが妥当なところか。&font(l){そもそも息子にパチンコなんか覚えさせた雅子が一番悪い。}
我が子を金で売る父に我が子を放置して逃げ出す[[母>お母さん]]、しかも揃ってパチンコ狂いという酷すぎる環境にあって我が身を悲観しがち。何度かは完全に両親に愛想を尽かしかけたほか、自閉症((作中での診断。現代でも誤解されがちだが、自閉症は先天性の広汎性発達障害の事を指すため、恐らく実際は小児うつや場面緘黙症など別の[[精神疾患]]と思われる。当時は自閉症への知識や理解が今ほど世に広まっていなかったのだろう。なお単行本では修正済み。))にかかり口がきけなくなってしまったこともある。
しかしなんだかんだで両親への愛情は強く、最終的には元の鞘に戻ろうとする。&bold(){が、それがかえってよくない方向に働くことがほとんど。}
両親の問題を抜きにしてもかなりの不幸体質で、友達ができたかと思えばその父親がアル中だったり、
好きになった女の子の父親が詐欺師だったせいで離れ離れになったり、万引きの濡れ衣を着せられたり、
進に無断で再婚相手とその両親に養護施設に預けられイジメを受けたりしている。
**日之本雅子
#center(){&bold(){見るだけだったらいいわよね}}
#center(){&bold(){お金使わなきゃいいわよね}}
#center(){&color(red){&bold(){勝てばいいのよね}}}
進の妻であり、この作品における''全ての元凶''。
そのクズっぷりは進に勝るとも劣らない。&bold(){真の邪悪}とまで呼ばれる辺りどのような人物かうかがい知れるものだろう。
近所でも噂になるほどのパチンコ狂いで、夫に隠して&bold(){300万円の借金を作った挙句に置き手紙を残して蒸発}。
おまけに&bold(){不倫}までやっており、進達に現場を押さえられた際は彼と浩司の説得に応じて帰ると約束しておきながら&bold(){結局間男と逃げ出す}という暴挙に及んだ。
決して不細工ではないが美人とも言い難い容姿だが、妙にモテる上に貞操観念というものがほとんど無いのか、進と正式に離婚もしないうちから男を何人も乗り換えている。
間男達も不倫がバレて進に謝罪するどころか逆に見せつけて勝ち誇るような下衆だったり自分の汚職の責任を雅子に押し付けて逃げ出したりと基本的にクズばかりだが、
雅子はそんな彼らにすら掌返しの速さに&bold(){ドン引きされる}などしており、クズとしての格の違いを見せつけている。
クズとしての方向性は進とは対照的な面があり、意志と責任感が弱く意図せず周囲に迷惑を撒き散らすタイプ。
進が遊ぶ金欲しさに積極的に他人から金をせしめに行く一方で借金を一応自力で完済しているのに対し、雅子は自発的に他人を害することはあまりないものの、
&bold(){人に隠れて借金を膨らませた挙句尻拭いを周囲の人間に押し付けて逃げ出す、ということを何度となく繰り返している。}
保身のためなら''ヤクザと組んで保険金目当てで進を殺すことすら厭わない''((一応未遂に終わったが、この際無事に帰ってきた進には何食わぬ顔で笑いかけている……。))など、悪事に対する抵抗のなさはある面では進以上。
人の親としての責任感も皆無で、何かにつけて浩司を自分から引き取ろうとしておきながら、いざ自分が追い詰められるとすぐ息子を放置して逃げ出す。
&bold(){「追いつめられるとすぐ家族をパージして逃げる」}という行動パターンが基本として確立されているのは
&bold(){「家族への情はあるが我欲で他人を破滅させに行くことには躊躇がない」}進とのクズの方向性の対比とも言える。
それでいて自分がクズだという自覚は進以上に薄く、&bold(){いかにも良識的な人間の代表のような顔をして進を非難することもある。}
進がクズである事は間違いないし、言っていること自体はだいたい正論だが、雅子だってまったくもって偉そうに人を悪く言えるような立場ではない。
離婚の際に「あなたみたいな人に浩司を任せておけない」などと宣いながら''結局自分がパチンコで身を持ち崩し間男との子供ごと浩司を進に押し付ける''など、
はっきりいってその言動は[[ブーメラン]]以外の何物でもない。
無自覚さも手伝ってか外面は良く、進同様にその場その場では反省してしおらしくもするため、傍目には良妻賢母のように見えなくもないのが余計に悪質。
進がクズ行為を働いている時はまともな主婦のように振る舞う一方、
逆に進が真面目に働きだし更生しかかると絶妙なタイミングでトラブルを起こし、台無しにしてしまう。誰が呼んだか''人間のクズのシーソーゲーム''。
紆余曲折あり最後は進と復縁し、浩司と[[双子]]の娘の良子・知子((3人目の愛人との間にできた子))とともに再起を図るが……
**ヤクザ(本名不明)
#center(){&bold(){いつも親のエゴで迷惑すんのは 子供なんだよな}}
スキンヘッドで強面の大男。貸金業者「OKローン」の社長で、雅子に金を貸し、違法金利で進を破滅に追い込んだ張本人。
前科三犯で取り立てのためなら手段を選ばず、進に&bold(){当たり屋を強要}したり、フィリピンで保険金殺人を計画したりするなどれっきとした悪人。
だが、&bold(){面倒見のいい人情家としての面も併せ持っており}、進に職場を斡旋したり、家を追い出された彼と浩司を居候させたりもしている。
なんだかんだで進のことは気に入っているが、彼のクズぶりに呆れたり取り立ての手口の悪どさに引いたりする場面もある。
実は、パチンコの借金が原因で両親が破局し養護施設に入れられたという過去を持つ((余談ではあるが作者のありま氏も養護施設の出身。))。
そのため今の自分の有り様に思う所がないわけではないようで、よく似た境遇にある浩司と自分の過去を重ね、一度は進の育児放棄を見兼ねて夕食を作ってやったり、彼を引き取ろうとしたりしたこともある。
浩司の一件に限らず、アル中債務者の息子をこのまま父親と暮らしていたらろくな事にならないとして引き剥がし祖父と一緒に暮らさせたりするなど、&u(){子どもには}優しい。
悪人であることは間違いないのだが、読者から「''思考が人間の延長線上にない''」とまで言われている進や雅子に比べれば「筋は通している」「人間味は残している」と言える類の人物。
漫画等にありがちな、悪事の表現を抑え任侠的な面も強調されたファッションヤクザではなく、割とやることはやっている&bold(){ガチのヤクザ}。だが、その彼ですら多くの読者に&bold(){「まだまともな方」「人間に見える」}と評価される辺りに本作のキャラクター観が窺える。
**その他
その他ゲストキャラ・サブキャラも多数登場するが、類は友を呼ぶのかその&bold(){大半はバカかクズか悪人}。
-進のバッグを置き引きしたおばちゃん(最終的に改心したが)
-パチンコにはまり、借金をしてはダム建設現場の常連になっている進の友人
-勤務先から&bold(){1億8千万}の横領をして進に貢いでいた女性
-中には&bold(){40億の損害を出した挙句にその責任を妻に押し付け高跳びしたネズミ講社長}までいた、雅子の間男達(最初のやつに至っては夫である進の前で堂々と居直っていたから一層たちが悪い)
-会社が潰れたショックで不貞腐れ全く働こうとせず、年老いた父親の年金まで酒につぎ込んでいた、権太くん(浩司の友達)のパパ
-進の再就職先の新聞会社の、&bold(){マッチポンプ強盗}で私腹を肥やしていた&bold(){元ヤクザ}の悪徳社長
-知り合いに片っ端から&bold(){投資詐欺}を触れ回る、映子ちゃん(浩司のガールフレンド)のパパ
-連れ子の浩司を跡取り候補として歓迎しておきながら、実子ができたとたん邪険に扱った挙句&bold(){勝手に養護施設に入れてしまった}進の再婚先の老舗の和菓子屋一家
-浩司をいじめる養護施設の子供達
-防犯カメラをろくに確認もせず浩司が万引きの犯人であると決めつけたテレビゲーム専門店の店主の夫婦
-上記窃盗事件の真犯人で浩司のランドセルに&bold(){未会計のゲームソフトをこっそり入れ、後で恐喝してタダでせしめる}つもりだった不良中学生
など、バリエーション豊かなクズ達がストーリーを彩っている。
このあたりが「''クズのスマブラ''」「''インフレクズパワーバトル''」と呼ばれる所以か。
悪人以外の登場人物もどこかズレていたりスネに傷のあるものが多く、まともなのは進を更生させた塾講師夫婦と雅子の再婚相手の板前、
そして進の取り立てに利用された浩司の同級生の子供たちくらいである。
追記、修正はパチンコの沼にはまらずお願いします。
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