&font(#6495ED){登録日}:2014/12/12 (金) 21:01:35 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 11 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- 脱出装置とは、文字通り施設や車両等からの緊急時脱出のための装置である。アニヲタ的にはコア・ファイターとか馴染み深いんじゃないだろうか。 とはいえ全ての脱出装置について語るのも何なので、ここでは軍用機のそれについて記すこととする。 *前史――なぜ脱出装置が必要となるか 航空機が開発され、実用化と軍事転用が盛んになって以降、第二次大戦後期までは航空機の最大速度は速くても精々が600km/h代中盤であり、 脱出するにしたってそこまで困難じゃなかった。搭乗前にパラシュートを背負っておいて、墜落前に飛び降りるだけでも何とかなったのだ。 しかし、これだとコクピットから飛び出した際に自機の尾翼にぶつかる危険があるし、何より高速化に伴って機体と脱出者の相対速度は増大する。 飛び降りた瞬間尾翼にラリアットされて&bold(){首が飛んだり}、&bold(){体が真っ二つ}になる事故も起きるようになったため、キャノピーを排除した上で座席ごとパイロットを放り出し、 接触事故の危険を抑えつつ比較的安全に降下する方式が考案された。いわゆる射出座席、あるいはベイルアウトだ。 当たり前だが作動させれば機体の方は確定でオジャンだし、パイロットも相当な衝撃を受けて最悪気絶する可能性もある。気軽に使える安全装置ではなく大人しく墜落するよりはマシな程度といったところ。 歴史上初めて射出座席を装備した機体は、ドイツはヘンシェル社の開発した試作ジェット戦闘機、He280だ。 これの射出座席は圧縮空気射出式で、後の火薬式に比べパワーはないが乗員への負担は小さかった。 射出座席を本格的に実用化したのは[[イギリス]]の航空機メーカー(現・射出座席関連製品製造業)のマーチン・ベイカーだ。ここで開発されていた火薬式が後のスタンダードになる。 火薬式のメリットは射出力の高さで、これによりパラシュートの展開高度を安全に稼いだり、機体との接触事故の危険性をより抑えることができた。 これが一般化するのはジェット機が急速に発展した大戦後になる。何しろ空気抵抗は速度の2乗に比例するわけだから、速度が倍加すれば抵抗は4倍になるわけだ。 そんな状態で墜落中の機体から自力脱出なんぞ[[出来るわきゃねぇ>ギム・ギンガナム]]ので、射出座席も必要に迫られて発展していったわけである。 *射出座席とモジュール式脱出装置 軍用機用の脱出装置は概ねこの2つに大別される。というか現状他にない。ついでに言うとモジュール式のほうがレアい。 **射出座席 [[オメガ11]]の友である。[[オメガ11]]イジェークト!!以上。 ……では芸がないので大雑把に現行式のを解説すると、 ①まずキャノピーをプリマコード(詳しくは導爆線でググって、どうぞ)なり火薬なりで爆砕or[[パージ]]します ②ロケット[[モーター]]に着火します ③パイロットが座席ごと直上に吹っ飛びます ④パラシュートを展開して降下します ⑤パイロットの皆様はお手元のサバイバルキット等各種備品をお確かめの上、速やかな装備と離脱を推奨します だいたいこんな感じ。 ⑤にもあるが、脱出から救出までのサバイバビリティ確保のために、射出座席には一人用の膨張式の筏や非常食、護身用[[拳銃]]、連絡用のトランシーバー、 そしてもっとも重要な防水アルミパッケージに入ったサバイバルキット(火熾し器具や釣具、ワイヤー式鋸、応急医薬品や方位磁針、サバイバルナイフなど)などが同梱されている。 ちなみに冷戦時代のU-2偵察機には、これに加えて捕虜になったとき用の自殺用服毒薬まで仕込まれていた。 まぁ、アメリカからソ連に亡命(物理)させられるとか地獄だろうし、偵察機のパイロットは機密に触れているのでしゃーないっちゃしゃーないのだが。 射出用のロケット[[モーター]]は火薬ぶっぱよりはGが小さいためパイロットも安全……と言いたいが、それでも15-20Gは普通にかかるので、 ちゃんと姿勢をとって身構えてないと首なり背骨なりが&color(red){「逝きましたー」}する事もありうる。 なので、射出直前にハーネス等で固定され、姿勢矯正を行う機構がついてたりする。 このハーネスにはライフジャケットや意識喪失時の補助として自動切り離し機能が内蔵されており、よっぽど不運が重ならない限りは脱出後に死ぬこたぁない……はず。 また、パラシュートはオートじゃないので操作手順を知ってなければならず、これも結構大変だったりする。 そのため、米軍では射出座席付航空機への搭乗者には訓練修了と資格取得を義務付けている。 これはただ相乗りするだけでも必須であり、ゆえにアメリカでは訓練未了の観光客などは戦闘機に乗れない。 なお、ロシアでは「ンな事知ったこっちゃねーよ」なノリで観光客を戦闘機に載せるツアーが開催される模様。 旅客機にパラシュートや射出座席が装備されてないのも概ねこのせいだったりする。素人が海にパラシュートで撒かれるとか[[死亡フラグ]]だよね。 まあそれ以前に、大型機なら不時着水してから脱出した方がリスクが小さいというのが大きかったりもするわけだが。 後、地上への安全かつ確実な減速ができるほどのパラシュートが搭載できなかった時期には、宇宙船の再突入ユニットに射出座席が装備されていたことも。 ちなみにガガーリンも射出座席で脱出しており、実は国際航空連盟の定める「宇宙飛行」の定義(着陸or着水まで船外に出ちゃダメ)から微妙に外れていたりする。 なお、ソ連は人類初の宇宙飛行と認定された後でこれをバラした模様。汚いなさすがソ連きたない。 最近では[[攻撃ヘリ>ヘリコプター(カプコン)]]にも採用されることが増えてきている。より低空・低速度用に設計されている他、そのまま飛び出すとほぼ間違いなくメインローターに切り刻まれるので先に爆破して時間差で作動したりとこちらはこちらで色々と工夫されている。 余談だが、普通は、というか当然ではあるが上向きにパイロットを射出するわけだが、F-104の初期型だけは一味違った。 というのも、垂直尾翼が鋭利すぎてパイロットの首が飛ぶのを防止するため、下向きにパイロットをぶっぱしていたのだ。 どう見ても「[[ボルガ博士、お許し下さい!>ボルガ博士]]」です、本当にありがとうございました。あるいは[[ガー様>ガーゴイル(ふしぎの海のナディア)]]の[[指パッチン]]でも可。 **モジュール式(ry 音速機からの脱出も(ある程度)安心確実になった射出座席だが、さすがに高々度超音速飛行中の脱出には厳しいものがあった。そこで開発されたのがこれ。所謂「緊急脱出ポッド」的なモノである。 コクピットそのものを脱出用カプセルユニットとして設計し、緊急時に射出することでより安全に救援を待てる、という寸法だ。 何より、パイロットを過酷な高々度環境に露出させないため、そういった点でもより安全性は高まっている。 大がかりなモジュールを組み込むだけあって、着水時の低体温症回避や非常用備品の充実など、パイロットのサバイバビリティを考えればこれ以上ないものではあった。 ただ、ユニットが大型化する関係上落下速度が速くなったり、パラシュートも大型化せざるを得なくなったり、軟着陸対策にエアバッグ仕込んだり、 それら諸々がモロに響いてただでさえ重いのがクッソ重くなったり、そのせいでそもそも搭載できる機体が限られたり、そして何より&font(b,red,19px){高い}。 近代化改修やメンテナンスの度に金が吹っ飛んじゃやってられねぇので、まともに採用した[[量産機]]は[[F-111]]くらいだった。 また、『ゼロゼロ射出』(高度0速度0からでも、パラシュート展開高度まで射出できる能力のこと)がやりづらいという欠点もある。 まぁデカいし重いから残当っちゃ残当かもしれない。 ただまぁ金かけただけの事はあるようで、救援到着までの簡易避難所としても機能するし、着水時には筏代わりにもなる。 雨風凌げるというのはサバイバル中の精神負荷に大きく関わってくるので、そういう意味では運用する側にとってはかなりありがたいだろう。 配備する側?わかりきってるじゃないの、言わせんな恥ずかしい。 アニヲタ的には上述のコア・ファイターとか、グリプス戦争以降のイジェクション・ポッドなんかがこれに該当する。 あとは[[R-9C>R-9C ウォー・ヘッド]]なんかもキャノピーごとコクピットを[[パージ]]して緊急脱出が可能。 これらは宇宙でも使われるので、モジュール式でないと 生存そのものが危ぶまれるとかカネをかけてでも回収したいモノを積んでいたりとか、そういった背景がある。 *やっぱりあったよ[[英国面]] 案の定と言うべきか、やっぱりかと言うべきか、はたまたまたお前かと言うべきか。 脱出装置の大家を擁する[[イギリス]]だからこそなのか、やっぱり紳士共の[[かっとビング>九十九遊馬]]なセンスはこの方面でも存分に発揮された。 かっ飛びすぎ?そんな言わずもがなのことを言われても困る。 ○スイングアーム式脱出装置 かつてマーチン・ベイカーが…今となっては射出座席の大家であるはずの、あのマーチン・ベイカーがクソ真面目に考案した脱出装置。 機体にクレーンめいたアームユニットを仕込み、非常時にそれで&font(b,19px){機外にパイロットをぶん投げる}。仕掛けは中世の投石機そのもので、確かに物を放り上げるには悪くないが… ぶん投げた後?[[知らん、そんな事は俺の管轄外だ]]。 ○ボールトンポール P.100の脱出装置 英国式二人羽織こと[[デファイアント>ボールトンポール デファイアント]]でおなじみ、ボールトンポールが考案した軽戦闘機。見た目やコンセプトは[[英国面]]搭載型震電だと思っておけばいい。 震電系(推進式)の設計ということで、普通の脱出装置ではパイロットがプロペラに当たって[[ミンチよりひでぇ>バーナード・ワイズマン]]状態と化すのは明白。 で、どうやってこの問題をクリアしたかというと……&font(19px,b){機首の下半分を口のようにくぱぁし、そこからパイロットを放り出す}。 &font(l){まさかイギリスにもチャーケニストがいたとはこの海のリハクの目をもってしてもry} ○ヴィクターの脱出装置 英国が誇る三馬鹿、もとい3Vボマーの一角をなす最後発機。ハンドレベージの手になる大型爆撃機ヴィクター。 大型爆撃機だけあって5座という脅威の乗員数を持つ本機だが、その脱出形式も驚異だった。 パイロットはごく普通にベイルアウトするのだが、後ろ向きに座っている残り4名はどうやって脱出するのかというと、 &font(red,b,19px){二酸化炭素を充填したカプセルを起爆し、その爆圧で機外に退避する。} なお、残念ですらないし当然だが成功例はない模様。 *創作においての脱出装置 ウルトラマンシリーズが代表的。 怪獣の攻撃を受けて戦闘機が被弾炎上から 「脱出!」 の掛け声とともにパイロットが射出されてパラシュートが宙を舞うのは、特に昭和シリーズではMAT以降のお約束だった。 ちなみに戦闘機のミニチュアのコクピットから風防が吹っ飛んで座席が射出されるまで造形されており、架空の戦闘機でも非常にリアル。 一方で[[ゴジラシリーズ]]では[[ゴジラ]]の熱線を戦闘機が浴びたらそのまま粉々になることがほとんどであり、脱出に成功した事例はほとんどない。 アニメにおいてはゼロの使い魔Fの[[最終回]]で、才人が[[自衛隊]]から拝借したF2戦闘機をエンシェントドラゴンに特攻させる寸前で脱出装置を使用。 この際、レバーを引く、風防が吹っ飛ぶ、座席が飛び出すまでが細かく描写されている。 追記・修正は[[オメガ11]]と一緒にイジェークトしてからお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,7) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - えーっと、最後のは誰も生還できてないって事で良いのか? -- 名無しさん (2014-12-12 21:12:52) - 自爆装置じゃなくて自決装置じゃねーか! -- 名無しさん (2014-12-12 21:37:44) - ボールトンポールのやつってもしかしないでもMGS3の蛇さんがスネークイーター作戦の時にお世話になった奴じゃあ…いや、あれはゲームでフィクションだしな。無粋なツッコミはよそう。 -- 名無しさん (2014-12-12 21:57:31) - すまないね、湊くん。後は任せたから♪ -- 名無しさん (2014-12-12 21:59:13) - 内容が充実していて(英国面含む)とっても面白い!しかし小見出しを(ryしちゃうのはどうかと -- 名無しさん (2014-12-13 00:09:13) - たしかアメリカのB-1爆撃機の初期型はモジュラー式だったんだよね? -- 名無しさん (2014-12-13 00:21:41) - アメコミやアメリカ映画では大人の事情により確実に脱出に成功する模様 -- 名無しさん (2014-12-13 00:39:39) - ファフナーで使うとだいたい死ぬ -- 名無しさん (2014-12-13 01:02:15) - 実世界でも射出成功が半分、救助まで生きてるのがその又半分、復帰できるのがさらにその半分という話。危険な非常手段であることに変わりはない -- 名無しさん (2014-12-13 01:11:21) - チャー研のアレって脱出装置だったのか… -- 名無しさん (2014-12-13 06:43:25) - 104も最初は下から脱出する方式だったよね、結局従来の上になったけど -- 名無しさん (2014-12-13 07:35:37) - ↑5グース「せやろか?」 -- 名無しさん (2014-12-13 07:36:29) - ギアスのKMFが印象的。 -- 名無しさん (2014-12-13 13:12:04) - ウルトラシリーズの戦闘機の玩具でも再現できるのがあったよね? -- 名無しさん (2014-12-13 15:19:13) - スパロボから入ると大抵の場合原作に脱出装置が無くて驚く -- 名無しさん (2014-12-13 15:30:16) - ギアスのナイトメアフレームやゾイドのハマシュートとかぐらいしか思い付かない -- 名無しさん (2014-12-13 15:49:52) - ガンダムのコアファイターは脱出装置なんだろうか? -- 名無しさん (2014-12-13 21:42:14) - エースコンバットの敵機は一部を除き撃墜即死な感じ 主人公もだけど -- 名無しさん (2014-12-13 22:42:11) - ↑×2もちろん。Vのは違うものに成り果てているが。 -- 名無しさん (2014-12-13 22:50:19) - 「兵士さん、お許し下さい!」「うわぁぁぁあ」 ドーン -- 名無しさん (2014-12-13 23:10:30) - コアファイターは脱出装置に移動力と自衛程度の攻撃力を加えた代物だが。ファーストのは胴体にダメージを食らう=コアファイターにダメージだからなぁ。まずはAパーツを射出しないとダメだから時間掛かるし。 -- 名無しさん (2014-12-13 23:11:50) - クロスボーンX3とネオガンダムのコアファイター脱出は素晴らしいと思う。GジェネFのムービー見てそう思う。 -- 名無しさん (2014-12-13 23:14:18) - ↑×2初代はパイロット以外にも逃げ帰らなきゃいけないものがあったからなー。そのせいで肥大化してしまった感がある。 -- 名無しさん (2014-12-13 23:46:59) - カプコン<「やっぱりヘリの方が安全だな!」 -- 名無しさん (2015-05-01 14:06:21) - スパロボの脱出装置の高性能さはよくネタにされる。広範囲攻撃だろうが核爆発だろうが、果ては惑星破壊レベルの攻撃でも余裕で生還。宇宙でも深海でも異次元でもお構いなしに、場所を選ばずパイロットを即座に戦艦まで送り届ける。しかし、中には脱出装置が壊れていたおかげで生還したアラドという貴重な例もあるのだが -- 名無しさん (2017-08-20 00:33:54) - エリア88では低空で被弾したため、「脱出したら狙い撃ちされる」と、敵対空砲に特攻した漢(モブ)がいたっけな。 -- 名無しさん (2017-08-20 13:18:08) - 脱出時にかかるGでブーツ脱げる程度なら幸運、足を伸ばしたままだとつま先がコンソールに(引っかかったまま引っ張られて)喰われて無くなったり -- 名無しさん (2017-08-27 15:21:48) - ↑2エリア88だとエリア85の正規軍のヘリが被弾して特攻(相手はラジコンだったが……)、地上空母編でもキャンベルとバクシー、他多数が特攻かけてたな キャンベルは義手義足外して脱出しようとしてドジッたから半分事故だが -- 名無しさん (2019-11-11 10:56:07) - G-NOMEというゲームでは機体ごとに脱出される向きを把握しとかないと多大な隙をさらしたりするし、メルク軍という陣営の機体は自動脱出装置が全く積まれてないので隙を見て手動で逃げる必要があったりと、フィクションながら脱出要素との縁は深い -- 名無しさん (2020-05-08 19:38:17) - ↑2 エリア88外人部隊メンバーは敵から憎まれ倒しだからな。身分も微妙だし、捕虜として取り扱われるか疑わしいのかも -- 名無しさん (2020-06-05 16:49:22) - 現実の話だけだと文章量が少ないので、創作のことについても入れていいと思うが、どうだろうか。 -- 名無しさん (2021-10-30 11:33:45) - ↑8 スパロボのは脱出と言うよりもはや「緊急転送装置」とでも言ったほうが良さそうなノリよね -- 名無しさん (2021-10-30 15:11:41) #comment #areaedit(end) }