怖い絵本(テレビ番組)

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怖い絵本(テレビ番組) - (2025/03/08 (土) 00:48:15) のソース

&font(#6495ED){登録日}:2022/04/05 (火) 22:37:13
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 15 分で読めます

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『怖い絵本』とはNHKが2020年より不定期に放送している10分程度の短編作品。
2025年3月の時点で第8シーズンまで制作されている。1シーズンにつき3話で、この3話が連続で放送されるため実質30分番組。
原作として用いられているのは、岩崎書店の『怪談えほん』シリーズ。
第2シーズンから同出版社の『妖怪えほん』シリーズもラインナップに加わるようになり、第3シーズン以降は汐文社の『えほん遠野物語』シリーズやロクリン社の『妖会録』シリーズという風に、出版社の垣根を超えたラインナップとなっている。

内容としては若手俳優らを起用したドラマパートが本編の前後に挿入され、前半のドラマパートで主人公が様々な理由から怪しげな絵本を手にし、後半のドラマパートでホラーなオチがつくようになっている。
本編はドラマパート主演による絵本の朗読で、朗読中は原作絵本の絵をCGを用いてそのまま動かしたアニメが流される。


さて、ここで少しだけ原作に当たる『怪談えほん』について説明しよう。
2012年から刊行が始まったシリーズで、仕掛け人として監修に携わったのは&font(l){『[[仮面ライダー響鬼]]』大好きおじさん}アンソロジストの東雅夫。
出版社から&bold(){「子どもが心底怖がるような絵本を作りたい」}という相談を受けて企画されている。

何故意図的に怖い絵本を作ろうとしたかと言うと、&bold(){「小さい頃に怖い体験や不思議な体験を多く積んでいた方が、その後の人生が豊かになるから」}という考えから。
編集者の熱意に押されて企画は動き出したが、当初は東氏も「あまりにも怖すぎると親の方が拒否感を示して買ってくれないんじゃないか」と難色を示していたようである。

その『怪談えほん』シリーズに参加した作家は以下の13人。
・&bold(){第1弾}&br()宮部みゆき、皆川博子、[[京極夏彦]]、恒川光太郎、加門七海
・&bold(){第2弾}&br()恩田陸、岩井志麻子、[[綾辻行人]]、小野不由美
・&bold(){第3弾}&br()佐野史郎、有栖川有栖、あさのあつこ、夢枕獏

&size(19){&b(){&color(red){ガチ勢ばっかじゃねえか!}}}

[[ミステリー]]、ホラー、怪談、幻想文学の大御所を多く起用しており、子どもを本気で泣かせにかかっているのが読書家なら一発で分かる布陣となっている。

このシリーズ、口コミで話題になった事もあり売り上げは上々。
子どもの持つ「怖いけれど覗いてみたい」という好奇心を見事に刺激し、現在は[[図書室]]に置いてある[[小学校]]も多いようだ。
シリーズのヒットにあやかり、現在は他の出版社も同コンセプトの絵本を多く世に出すようになっている。

ちなみにこのシリーズ、YouTubeにて一部のYouTuberが&bold(){「絶対に子どもに見せてはいけない!」}みたいなアオリ文で紹介している事があるが、前述のコンセプトを考慮するなら子どもに見せないのは制作側の意向を踏みにじる形になるため注意が必要。
そもそも見せてはいけないどころか、京極氏の絵本は白泉社が主催する「MOE絵本屋さん大賞」第5回にて、その年に発売された全ての絵本の中から選出された上で3位入賞を果たしている。


話をドラマの方に戻すが、本作は絵本原作という事もあってかEテレ(旧 教育テレビ)にて放送されている。
ただし放送時間帯は&bold(){深夜}。再放送ですら夜の10時前後であり、明らかに本来のターゲット層ではなく大人を狙っている。
その大人たちから好評を博している事実を受け、番組側は「この世に怖い絵本がある限り作り続けたい」とコメントを出している。
なお、原作の一つである『妖怪えほん』と『えほん遠野物語』は&bold(){全て京極氏が執筆している}関係で、氏の著書が本作にて映像化される割合は非常に高い。と言うか第5シーズンまでの時点で必ず1話は京極氏の作品が入っている。

2023年には夏と冬にそれぞれ総集編が放送された。夏は1時間、冬は更に時間が伸びて90分で新作も1本追加されている。
ナビゲーターとして夏にはシーズン4出演の板垣李光人が、冬にはシーズン1出演ののんと彼女が出演した作品の原作者である京極夏彦がそれぞれ出演しトークを行っている。
こちらでは京極氏の口から直接、&bold(){幼少期に怖い話に触れる事のメリット}と&bold(){決めつけから子どもに怖い絵本を読ませない行為の危険性}について説明がなされている。
これら総集編が余程好評だったのか、シーズン7でとうとう&bold(){ゴールデンタイム進出を果たし}視聴者を驚かせた。&font(l){そして案の定「子どもに見せるな」という感想がSNS上で飛び交うのであった。}


&size(16){&bold(){シーズン1}}

&bold(){いるのいないの}(怪談えほん)
作・京極夏彦 絵・町田尚子
主演&朗読・のん
#openclose(show=「みなければ いないのと おんなじだ」){
&bold(){ドラマパート}
YouTuberの女性は、築100年という古い旅館にやって来た。
建物や敷地のあちこちで撮影を続ける中、たまたま1冊の黒い絵本を発見する。

&bold(){絵本パート}
祖母の家で暮らす事になった少年は、古民家特有の高くて暗い天井が気になって仕方がない。
ある日、天井の梁に何者かがいるのを目撃して……。

「あると思えばある、ないと思えばない」という京極氏が長年述べている考えをそのまま絵本に落とし込んだもの。
それ故に一度認識してしまった少年は不安に駆られ続け、読者もいかにもな雰囲気の古民家内の描写にゾクゾクする事に。
『怪談えほん』シリーズが口コミで知名度を上げたのは本作が「大人が読んでも怖い」と評判になったからであり、本ドラマでも初回放送時のSNSでは同様の感想が多く見受けられた。
}

&bold(){おろしてください}(怪談えほん)
作・有栖川有栖 絵・市川友章
主演&朗読・コムアイ
#openclose(show=おきゃくさんの ようすが おかしい){
&bold(){ドラマパート}
雨宿りで古めかしい喫茶店にやって来た女性。
注文したコーヒーと一緒に、1冊の黒い絵本が渡される。

&bold(){絵本パート}
迷子になった少年が偶然乗り込んだのは、人間のふりをしたお化けたちが乗る電車だった。
怯える少年は、お化けの車掌のアドバイスを受けて駅で反対方向の電車に乗り換えるが……。

ドラマ化もされた火村英生シリーズ等でお馴染みの有栖川氏の作品。
主人公の少年も読者もようやく恐怖から解放されたと一安心したところで、容赦ないオチが襲い掛かる。
ほとんど電車の中で物語が進行するが、有栖川氏はいわゆる鉄ヲタとして有名な人物。
}

&bold(){かがみのなか}(怪談えほん)
作・恩田陸 絵・樋口佳絵
主演&朗読・趣里
#openclose(show=もし かがみの なかに だれかを みかけたら){
&bold(){ドラマパート}
図書館で調べ物をしていた女性は、怪しい声に導かれるままに1冊の黒い絵本を手に取ってしまう。

&bold(){絵本パート}
どこにでもある鏡。だが少女は知っている。
たまに鏡の中の自分が違う動きをする事を。鏡の中の自分が嘘を吐く事を……。

『[[六番目の小夜子]]』等で知られる恩田氏の作品。
最初、日常のあちこちに鏡(顔が映るもの)があると丁寧に前フリした上で虚像の存在が現実に介入してくる様を描いている。
舞台となるのは小学校。前述の通り小学校の図書室に原作絵本が置かれているケースも多いので、低学年の子はトラウマにならないか心配になってしまう。
}


&size(16){&bold(){シーズン2}}

&bold(){悪い本}(怪談えほん)
作・宮部みゆき 絵・吉田尚令
主演&朗読・桜田ひより
#openclose(show=いつか あなたは わたしが ほしくなる){
&bold(){ドラマパート}
とあるお屋敷で若い女性が子どもたちを集め、絵本の読み聞かせをしていた。
彼女がバッグから取り出したのは、1冊の黒い絵本だった。

&bold(){絵本パート}
その本は、自らこの世の全ての悪が記されていると名乗った。
本は一人の少女に誘惑の言葉を投げ掛け続ける……。

&font(l){[[廃人一歩手前のゲーマー>ここはボツコニアン]]}直木賞作家で、「封印されし本」と「人が歩む中で紡ぐ『物語』」が交差して露わになる&bold(){人の傲慢さやエゴ}を描いた『英雄の書』『悲嘆の門』も手掛けた宮部氏の作品だが、他と比べるとかなり毛色が違うのが特徴。
当の宮部氏も、同じ事務所の京極氏に何度も「これで大丈夫か」と確認してきたそうな。
余談だが主演の桜田氏のTVドラマデビュー作は、宮部氏原作の『[[ステップファザー・ステップ]]』である。
}

&bold(){はこ}(怪談えほん)
作・小野不由美 絵・nakaban
主演&朗読・中島セナ
#openclose(show=なかみは どこに いったのかな?){
&bold(){ドラマパート}
引っ越し先で荷物を片付けていた少女は、前の住人が残していったと思しき箱を発見する。
中にはたくさんの雑貨と、1冊の黒い絵本が入っていた。

&bold(){絵本パート}
少女の周りでペットが次々と行方不明になり、決まって箱状の何かが開かなくなるという怪事が起きていた。
次は母親が消えるのではという不安に駆られた少女は大慌てで学校から帰宅するが……。

アニメ化もされた『十二国記』や『[[屍鬼]]』等で知られる小野主上が、ガチで子どもを怖がらせに来たホラー。
何が起きているのか明言されず、しかしながら断片的な情報から危険が迫っている様子を示す事で読者の不安を煽ってくる。
それ故にラストシーンは読者に最悪の未来を予感させるものとなっている。
}

&bold(){ことりぞ}(京極夏彦の妖怪えほん)
作・京極夏彦 絵・山科理絵
主演&朗読・松本穂香
#openclose(show=「なにか いますか?」){
&bold(){ドラマパート}
カメラ片手に神社を訪れた女性は、社殿でしゃぼん玉を飛ばして遊んでいる子どもを目撃する。
だが写真を撮っている間に子どもはいなくなり、あとには1冊の黒い絵本が残されていた。

&bold(){絵本パート}
あちらとこちらの境界は色んな所にある。
遊びでそういった場所を探索していた少女は、何もいない事に内心がっかりしていたが……。

[[島根県]]にて遅くまで外で遊んでいる子どもを攫っていくと伝えられる妖怪・ことりぞ(子取りぞ)。
実際のところは遅くなる前に子どもを家に帰すための方便であり、そういう意味では非常に教育的な内容。
日本画を彷彿とさせる精緻で美しい絵と、言葉少なに淡々と語られる物語のギャップが恐怖を一層引き立てている。
}


&size(16){&bold(){シーズン3}}

&bold(){くうきにんげん}(怪談えほん)
作・綾辻行人 絵・牧野千穂
主演&朗読・三吉彩花
#openclose(show=にげられないよ。 にげられないよ。){
&bold(){ドラマパート}
自宅でくつろいでいた女性の下に、身に覚えのない大きな荷物が届く。
中には1冊の黒い絵本が入っていた。

&bold(){絵本パート}
姿が見えず質量も持たない怪異・くうきにんげん。人々を襲っては仲間を増やしていくが誰もその存在に気付かない。気付けない。
こうしている間にも、君のすぐ傍に……。

『[[Another>Another(綾辻行人)]]』等元々オカルト好きで知られる綾辻氏だが、本作はどちらかと言うと氏が大好きと公言する『[[ウルトラQ]]』寄りの話。
ただし事件は解決しないし、都合よく何とかしてくれるアイテムの類なんて存在しない。
この物語の語り部が誰か分かった時、安全だと高を括っていた読者が一転して当事者になってしまう構成は流石の一言。
}

&bold(){とうふこぞう}(京極夏彦の妖怪えほん)
作・京極夏彦 絵・石黒亜矢子
主演&朗読・鈴木福
#openclose(show=「こわくないから また おいでよ」){
&bold(){ドラマパート}
行きつけの中華料理店へとやって来た高校生は、注文を待っている間に本棚の中から1冊の黒い絵本を発見し手に取る。

&bold(){絵本パート}
お化けが怖い少年は、毎晩恐ろしい妄想を膨らませては布団の中で怯えていた。
ある満月の夜、彼の下に本物のお化けがやって来るのだが……。

とうふこぞう(豆腐小僧)は元々は江戸時代の子ども向け読み物のキャラクター。そういう意味では絵本への登場は原点回帰とも言える。
京極氏の持つ「お化けは怖いだけではなく愉快な存在でもある」という信条を体現した本作は、怖がりの子どもにこそ読んでもらいたい。
余談だが絵を担当した石黒氏は、京極氏の著書『豆腐小僧双六道中』シリーズの挿絵全般も担当している。
}

&bold(){ざしきわらし}(京極夏彦のえほん遠野物語)
原作・柳田国男 文・京極夏彦 絵・町田尚子
主演&朗読・上白石萌歌
#openclose(show=孫左衛門の家も終わりだ、と男は思った。){
&bold(){ドラマパート}
若くして起業に成功し、順風満帆な人生を送る女性。
彼女の手元には1冊の黒い絵本が大事に保管されていた。

&bold(){絵本パート}
遠野郷に昔住んでいた孫左衛門という長者は、たった1日で家中の人間が死に絶えてしまった。
悲劇に見舞われる少し前、孫左衛門宅からやって来たと言う2人の少女が道で目撃される……。

[[岩手県]]遠野に古くから伝わる伝承や風習、明治までの間に地域で実際に起きた怪事件を記録した『遠野物語』。
そのうち、山口孫左衛門という実在の人物の没落に纏わる記述をメインに再構成したもの。
座敷わらしは禍福を司る妖怪であり、必ずしも福だけをもたらす存在ではないという事を肝に銘じておきたい。
}


&size(16){&bold(){シーズン4}}

&bold(){雪ふる夜の奇妙な話}(妖会録)
作&絵・大野隆介
主演&朗読・芳根京子
#openclose(show=雪はまたたくまに大雪となり、山や谷を白くおおいつくした。){
&bold(){ドラマパート}
雪山で遭難した女性は、辿り着いたロッジで1人暮らす老婆に助けを求める。
老婆が部屋から出て行った後、1冊の黒い絵本が目に留まった。

&bold(){絵本パート}
とある雪の夜、ハナコはコロポックルの男性に助けを乞われ、雪山へと足を踏み入れる。
妖怪たちが棲む山での、たった一夜の少女の冒険物語。

「妖怪に出会ってしまった記録の書」、略して「妖会録」シリーズの&font(White,#000000,14px){「しろい絵本」}。
鉛筆画による白を強調したモノクロームの世界と、そこに描かれるお馴染みの妖怪たちの姿に目を奪われる。
冒頭の一見関係なさそうなエピソードと本編が繋がった瞬間がとても気持ち良い。
}

&bold(){おいで おいで…}
作・中村まさみ 絵・松本ジョゴ
主演&朗読・飯豊まりえ
#openclose(show=だって、ぼくは みてしまったんだ。){
&bold(){ドラマパート}
インターネットカフェの女性店員は、自分を誘う不気味な声に導かれるままとあるブースへ向かう。
客はおらずつけっ放しにされた状態のモニターに、1冊の黒い絵本が映り込んだ。

&bold(){絵本パート}
神社の境内で友達と一緒に遊んでいた少年は、自分を誘う怪しい声を耳にする。
帰り道、突然吹いた旋風の中に、少年は見てはいけないものを目撃してしまった……。

作者の中村氏は児童向け怪談本を数多く手掛けており、別名義で怪談師としても活動している人物。
この物語は氏が小学校低学年の頃、実際に体験した不思議な出来事を元に書かれたという。
子どもが考え得る限り最も安全な場所が役に立たないという無力感、恐怖がそのまま読後の後味の悪さに直結している。
}

&bold(){かっぱ}(京極夏彦のえほん遠野物語)
原作・柳田国男 文・京極夏彦 絵・北原明日香
主演&朗読・板垣李光人
#openclose(show=他の土地と違って、遠野の河童の顔は赤い。){
&bold(){ドラマパート}
放課後残って学校のプールサイドを掃除していた少年は、奇妙な&font(#c53d43){赤い粘液}が落ちているのを目撃する。
粘液を辿って行った先で少年は、1冊の&font(#c53d43){赤い絵本}を発見した。

&bold(){絵本パート}
&font(#c53d43){遠野郷では昔から河童の目撃情報が報告されている。}
&font(#c53d43){ある日、村の女性が全身真っ赤な奇妙な赤ん坊を産み落として……。}

『遠野物語』の中から[[河童]]に関連する記述のみを抜粋し、再構成したもの。
体色は&font(#c53d43){赤}だとはっきりしているものの、絵本の河童は全身像が描かれておらず読者に想像の余地を与えている。
実は遠野における負の歴史を体現した存在であり、その事実を理解した上で読むと最後の赤ん坊のエピソードは非常に怖い。
}


&size(16){&bold(){シーズン5}}

&bold(){しびと}(京極夏彦のえほん遠野物語)
原作・柳田国男 文・京極夏彦 絵・阿部海太
主演&朗読・石井杏奈
#openclose(show=こんなものは、もう幽霊なんかじゃない。){
&bold(){ドラマパート}
亡くなった祖母の家に母親とともに遺品整理に訪れた女性。
祖母の思い出に浸る中、ふと開けた引き出しの中から1冊の黒い絵本が出てくる。

&bold(){絵本パート}
土淵村にて報告された、亡くなった老婆が葬儀の晩に自宅へと戻ってくる話。
一方、六日町では父子家庭の父親が死に、残された子どもの元へその父親が毎夜戻ってきて……。

『遠野物語』とその続編である『遠野物語拾遺』から、死霊についての話を1話ずつ取り上げて再構成したもの。
未練から連日のように現世に舞い戻ってくる死者という、『遠野物語』の中でもトップクラスに怖い話。道連れが欲しいのか、はたまた残して逝けないという親心か……。
一方で、原作者の意図とは裏腹に『遠野物語』が文学として評価されるきっかけとなった話でもある。
}

&bold(){こっそり どこかに}
作&絵・軽部武宏
主演&朗読・蒔田彩珠
#openclose(show=日暮れの町に ぽろんぽろん はやく拾いに いかなくちゃ){
&bold(){ドラマパート}
自宅のパソコンで深夜まで仕事をしていた女性を見舞う突然の停電。
明かりを探している最中、記憶にない1冊の黒い絵本を発見した彼女は、暇潰しにランタンの明かりで読み始めた。

&bold(){絵本パート}
壊れたおもちゃの部品を探しに、単身夕暮れの町へ飛び出していく少年。
徐々に浸食してくる闇の中では、そこかしこに怪異が蠢いていた……。

作者の軽部氏の絵本デビュー作で、第8シーズンまでに使用された作品の中では最も古い2006年刊行。
夕闇に包まれ昼間とは違った顔を見せる町。見えない部分に何かがいるのではないかという不安は誰もが一度は経験した事があるのではないだろうか。
違和感を覚える主人公の少年の格好も、怪異の存在に気付いているのが少年だけと思しき描写も、ラストのオチに綺麗に繋がっている。
}

&bold(){夜の神社の森のなか}(妖会録)
作&絵・大野隆介
主演&朗読・矢本悠馬
#openclose(show=「にんげんが、森に入ったぞ」){
&bold(){ドラマパート}
飲み屋のテナントが多く入った地下街で、酔っぱらいの会社員は帰り道に浮浪者から1冊の黒い絵本を押し付けられる。

&bold(){絵本パート}
神社の境内で羽団扇を拾った少年は、その日の夜に妖怪たちの案内で森の奥へと入っていく。
妖怪たちが潜む森での、たった一夜の少年の冒険物語。

「妖会録」シリーズの&font(#000000,#808080){「くろい絵本」}。
濃淡のコントラストで表現された闇夜の森は、『雪ふる夜の奇妙な話』と同じく鉛筆画によるもの。
[[見るなのタブー]]からの解放に伴うカタルシスと、お祭りが終わった後のような一抹の寂しさを併せ持った読後感を味わえる事だろう。
}


&size(16){&bold(){シーズン6}}

&bold(){きつね、きつね、きつねがとおる}
作・伊藤遊 絵・岡本順
主演&朗読・北香那
#openclose(show=「ねえ。むこうでひかっているのは、なあに?」){
&bold(){ドラマパート}
レトロ趣味の女性は、一軒の古い射的場を訪れる。
ゲームの景品として手に入れたのは、1冊の黒い絵本だった。

&bold(){絵本パート}
家族で食事に行った帰り道、女の子は進行方向に不思議な光が灯っているのを目撃する。
徐々に近づいてくるそれは、とても愉快なきつねの花嫁行列だった。

「[[狐の嫁入り>化け狐・化け狸]]」の伝承を題材にした作品で、シーズン3で取り上げられた『とうふこぞう』同様に怖くないお化けの絵本。
主人公と同じで背が低く大人と同じものが見えない事を不満に思う読者の子どもに対し、子どもの時にしか見られない景色を楽しもうという作者からのメッセージが読み取れる。
本作は2012年に「第17回日本絵本賞」を受賞している。
}

&bold(){かえりみち}
作&絵・森洋子
主演&朗読・石橋静河
#openclose(show=ねえ、見えるでしょ){
&bold(){ドラマパート}
仕事を終え、帰宅するべくバスへと乗り込んだ女性。
後部座席に座った彼女は、そこに1冊の黒い絵本が置かれてあるのに気付く。

&bold(){絵本パート}
小学校の下校時間、子どもたちにとって帰宅するまでの道のりは大冒険の連続だ。
子どもの想像力によって、通い慣れた道は切り立った崖やジャングルへと早変わり。無事にお家へ帰り着けるのだろうか?

小学生の頃、誰もがやったであろう帰宅途中の他愛もない遊び。
細密な鉛筆画によって交互に描かれる現実と空想の描写は、大人の読者にとって遠い日の記憶をくすぐる事だろう。
作者の森氏は元々は大学に助教授として勤めており、本作で絵本デビューを果たしている。
}

&bold(){おともだち できた?}
作・恩田陸 絵・石井聖岳
主演&朗読・豊嶋花
#openclose(show=うん できたよ){
&bold(){ドラマパート}
母、姉とともに外出の準備をする少女だったがどうも姉の様子がおかしい。
姉が席を立ったあと、少女は目の前に1冊の黒い絵本が現れるのを目撃する。

&bold(){絵本パート}
見知らぬ町に引っ越してきた少女。両親や近所の人は揃って少女に友だちはできたかと尋ねる。
そんな少女にできたたくさんの友だちとは……。

親が転勤族だったという恩田氏が、自身の少女時代を参考に書いたという作品。
絵を担当した石井氏は本来優しい画風なのだが、恩田氏の意向で気味の悪い絵になったという。
あるページを境に、一転して全てが不穏になる描写は読者の恐怖心をこれでもかと煽ってくる。
}


&size(16){&bold(){怖い絵本 冬のトークスペシャル}}

&bold(){おばけにょうぼう}
作・内田麟太郎 絵・町田尚子
主演&朗読・見上愛
#openclose(show=「ばけのかわが はがれんようにな」){
&bold(){ドラマパート}
結婚式当日。花嫁となる女性は水滴の音が気になり洗面所へと向かう。
洗面台の上には、1冊の黒い絵本が置かれてあった。

&bold(){絵本パート}
お化けの仲人が間を取り持ち、一組のお化けの夫婦が誕生した。
子どもも生まれ、順風満帆な結婚生活を送る夫婦。だが女房のお化けにはある秘密があった。

江戸時代に描かれた絵巻物『化物婚礼絵巻』の内容を下敷きに、ベテラン作家の内田氏が執筆した絵本。
お化けの女房のようにパートナーに明かせない秘密を抱えた人も実際にいるのではないだろうか。
登場するお化けの不気味さを如実に表している独特なタッチの絵は、本番組3度目の登場となる町田氏の筆によるもの。
}


&size(16){&bold(){シーズン7}}

&bold(){あずきとぎ}(京極夏彦の妖怪えほん)
作・京極夏彦 絵・町田尚子
主演&朗読・坂元愛登
#openclose(show=「ああ それは あずきとぎだ」){
&bold(){ドラマパート}
ある雨の日、下校途中の学生は一軒の古書店を訪れる。
そこで不思議な音を耳にした彼は、音のする場所で1冊の黒い絵本を発見した。

&bold(){絵本パート}
夏休みに祖父の暮らす田舎へやって来た少年は、川の淵で不思議な音を耳にする。
祖父にお化けなんていないと教わった少年は、気を付ければ大丈夫と高を括り淵へと遊びに行くが……。

川の近くで小豆を研ぐような音を立てる妖怪・[[あずきとぎ>小豆洗い/小豆とぎ]]。
その正体は諸説あるが、本作の登場人物は子どもが危ない場所へ近付かないようにするための方便だと解釈している。
京極氏は過去に「自分の小説は妖怪を紙上で再現するために書いている」と語っているが、本作も紛れもなくそうであると読者は実感する事だろう。
}

&bold(){こっちをみてる。}(怪談えほん)
作・となりそうしち 絵・伊藤潤二
主演&朗読・三浦透子
#openclose(show=かおが ゆっくり こっちを みた。){
&bold(){ドラマパート}
とある小学校の保健室。
ベッドで横になる女児に物語をせがまれた保険医は、机の上にあった1冊の黒い絵本を手に取り読み始める。

&bold(){絵本パート}
身の回りのあらゆる物に顔が浮かび上がって見える少年。
その全てが自分を見ているという恐怖に駆られた少年は、堪らず駆け出すが……。

壁の染みなどが人の顔に見える((専門用語で「顔パレイドリア」と呼ばれる現象。))という、よくある経験がそのまま恐怖に転じる物語。
本作は2024年に発売された怪談えほんシリーズ最新作にして、一般公募から出版に至った作品。作者のとなり氏はこれが処女作となる。
『[[富江>富江(漫画)]]』や『[[首吊り気球]]』などで知られるホラー漫画界の鬼才・伊藤潤二の絵が、作品に恐怖という名の彩りを添えている。
}

&bold(){かくれんぼねこ}
作&絵・つじにぬき
主演&朗読・成海璃子
#openclose(show=りーん りーん みいつけた){
&bold(){ドラマパート}
自宅からいなくなった飼い猫を探す女性。
最後に探した縁の下で、彼女は1冊の黒い絵本を発見する。

&bold(){絵本パート}
一人で人形遊びをする少女りんを呼ぶ声の主は、一匹の[[ねこ>猫]]だった。
ねこに促されるまま、庭でかくれんぼ遊びを始めるりんだったが……。

海外での受賞歴もあるつじ氏の絵本デビュー作。
りんが行く先々の背景には、よく見ると様々な騙し絵が仕込まれている。
ラストの母親の言葉も相まって、最初から最後まで幻想的な雰囲気を保ったまま物語が進行していく。
}


&size(16){&bold(){シーズン8}}

&bold(){ちょうつがい きいきい}(怪談えほん)
作・加門七海 絵・軽部武宏
主演&朗読・塩野瑛久
#openclose(show=きい きい きいきききいいい。){
&bold(){ドラマパート}
幻聴に悩まされ病院へ診察に訪れた青年。
検査の結果を待つ間、1冊の黒い絵本を手に取って読み始める。

&bold(){絵本パート}
自宅のドアのちょうつがいに小さなお化けが挟まって悲鳴を上げているのを目撃した男の子。
家のあちこちに潜むそれから逃げるべく、男の子は外へ飛び出していくが……。

&font(l){[[マツケンサンバ>マツケンサンバII]]で除霊ができると呟いた結果SNSで大バズりした}怪談作家の加門氏による、日常が一瞬にして非日常へと切り替わる恐怖を描いた逸品。
「きい きい」というオノマトペの使い方が非常に巧みで印象に残る。
最後の頁に描かれた玩具の車の様子から、読者は否が応でも最悪な結末を想像してしまう一方で、逃れる術は無いという諦めも感じてしまう事だろう。&font(l){それでも、それでもマツケンサンバなら何とかしてくれる!}
}

&bold(){おんなのしろいあし}(怪談えほん)
作・岩井志麻子 絵・寺門孝之
主演&朗読・齋藤潤
#openclose(show=おんなが あるいてきた。){
&bold(){ドラマパート}
初々しい会話をしながら女友達と炬燵で受験勉強をする少年。
ふと炬燵布団の裾を見ると、1冊の黒い絵本が頭を出していた。

&bold(){絵本パート}
ある雨の日、肝試しで古い倉庫に単身乗り込んだ少年は、現れたお化けを怒鳴りつけてしまう。
その帰り道、少年は何かに導かれるように廃屋へと辿り着き、そこで……。

[[岡山>岡山県]]が生んだ&font(l){[[豹>ヒョウ(動物)]]の扮装をしてテレビに出る変態おばさん}ホラー作家の岩井氏による、ストレートな心霊モノ。
自分を強い男だと見せたかったがために余計な事をした少年がこの後どうなったのか、絵を見る限り碌な結末にはならなかったであろう。
水彩画による湿気を孕んだ絵が、じめっとした恐怖を演出している。
}

&bold(){おめん}(怪談えほん)
作・夢枕獏 絵・辻川奈美
主演&朗読・芋生悠
#openclose(show=みんな ふこうに なればいい){
&bold(){ドラマパート}
職場で後輩や先輩に不満を募らせるOLは、SNSに相手の悪口を投稿して憂さを晴らしていた。
こっそりスマホを使い終えた彼女は、ラックの中に書類に混じって1冊の黒い絵本が置かれてあるのを見つける。

&bold(){絵本パート}
周りの子に妬みや怨みを募らせ続ける少女。
そんな彼女の前に、他者に呪いをかけるという不思議な面が現れる……。

『[[陰陽師>陰陽師(夢枕獏の小説)]]』などで知られる夢枕氏が手掛ける、「人を呪わば穴二つ」を体現した物語。
誰もが誰かを疎ましく思いながら生きている――最後の頁の絵がそう告げているように見える。
作中の&bold(){にんげんだから}という台詞にハッとした読者もいるのではないだろうか。
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追記・修正は怖い絵本に魅入られてからお願いします……。

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- いるからね  -- 名無しさん  (2022-04-06 03:30:12)
- 当然だが絵も怖い  -- 名無しさん  (2022-04-06 06:38:37)
- 綾辻・小野夫妻両方参加してるのか…他のメンバーも凄くて笑うわ  -- 名無しさん  (2022-04-07 02:49:48)
- 恩田陸が一番大人しいってどういうことだよ!  -- 名無しさん  (2022-04-08 22:50:01)
- こんなん夜中に見たら眠れなくなるわ。録画で見て正解だった  -- 名無しさん  (2022-04-10 22:26:23)
- ホラー回が多く大人の自分でも恐怖を覚えるほど。数十年後何かのタイミングで思い返して見れたらいいね。純粋な心であれば尚。  -- 名無しさん  (2023-08-14 22:38:37)
- なんでここまで全力を尽くしたのか(恐怖)  -- 名無しさん  (2023-08-14 22:48:39)
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