&font(#6495ED){登録日}:2025/7/26 (土) 22:24:00 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約7分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- イセゴイ/ターポンとはカライワシ目イセゴイ科に属する魚である。 *名称 学名(属名)はMegalops。「大きな眼」を意味するとされるが、「大きなElops」と解釈される場合もある。Elopsの詳細は近縁種の項目を参照。 イセゴイM. cyprinoidersの種小名は「コイに似た」という意味。 漢字表記は伊勢鯉で、海で見られる鯉に似た魚、という意味合いとされる。 漢名は海鰱で、日本で鰱は「たなご・はす」と読まれるが、中国での本来の意味はハクレンやカワヒラといったコイ科の大型種のうち、体に目立つ斑紋がない銀白色のものの総称である。 古い文献では、海鰱の福建語(閩南語または台湾諸語ともされる)読みであるハイレンの名称で書かれているものがある。 英名はIndo-Pacific Tarponで、アフリカ大陸の東海岸のインド洋からミクロネシアやオーストラリアなどの西部太平洋に掛けて分布することに由来する。また、 Bigeye HerringやOxeye Herringなどの地域名もある(どちらも「大きな眼のニシン」のような意味)。 ターポンM. atlanticusの種小名は「大西洋の」という意味。 英名のTarponはネイティブ・アメリカンがこの種に用いた名称に由来するとされる。また、釣り人の俗称として、その外見に由来するSilver Kingという俗称もある。 Indo-Pacific Tarponに対応して、ノースカロライナからブラジル周辺までの南北アメリカ大陸沿岸及びセネガルからアンゴラまでアフリカ大陸沿岸の大西洋に産することから、Atlantic Tarponと呼ばれることもあり、タイセイヨウイセゴイの和名もある。 本項目ではそれぞれの種名としてイセゴイ・ターポンを用いることとする。 *形態 両者ともに共通する形態は以下の通りである。 ・[[アロワナ>アロワナ(魚類)]]のような、上向きで目の後ろまで切れ込むほどの大きな口を持つ。下顎の中央に喉板という骨があるのも特徴的。 ・銀色に光り輝く大きな鱗を持つ。背中の鱗はやや青みがかかる。 ・背鰭は軟条のみからなり、最後の鰭条が後ろに長く伸びる。 ・臀鰭も軟条のみからなり。基底(付け根)の長さは背鰭のものよりも長い。 ・尾鰭は明確な二叉型で、黒みがある。 ・鰾(うきぶくろ)は有気管型で、内壁からガス交換が可能で空気呼吸が出来る。 イセゴイとターポンを形態で区別する場合は、以下の特徴が参考になる。 イセゴイ ・最大全長は1.5mで、通常は80㎝以下 ・背鰭鰭条数は16〜20 ・臀鰭鰭条数は23〜31 ・側線鱗数は30〜40 ・脊椎骨数は66〜70 ターポン ・最大全長は2.5mもしくはそれ以上で、1.5mを超えるものもごく普通。 ・背鰭鰭条数は13〜16 ・臀鰭鰭条数は22〜25 ・側線鱗数は53〜57 ・脊椎骨数は53〜57 一見するとイワシやニシンの仲間に似ているが、これらの魚との類縁関係は全くと言っていいほどなく、&bold(){系統上で最も近縁なのは[[ウナギ]]の仲間}である。 その証拠として、これらの魚は柳の葉のような薄く細長い型をしたレプトケパルス(レプトセファラス)期という発生段階を経る。この時は尾鰭を除けばウナギの幼生と酷似した姿である。 あまり一般には知られていないが、レプトケパルス期を経る硬骨魚類はかなり祖型的(原始的)なグループであり、所謂所謂[[古代魚>古代魚(魚類)]]でもある。 *生態 両者とも生態はよく似ており、熱帯から亜熱帯の沿岸域に生息している。 環境としては、岩礁帯やサンゴ礁、河川の河口域で多く見られ、時に完全な淡水域にも侵入する。 游泳力は強く、特にターポンは跳躍力も凄まじく、垂直方向に3m、水平方向には7m近く跳んだという記録がある。極めて稀なことではあるが、&bold(){&color(#F54738){釣り人が跳び込んできたターポンに当たり、首の骨を折って即死したり、ボートから転落して溺死したという事故さえある。}} 前述の通り、鰾を用いて直接空気中の酸素を取り込むことが可能であり、高い運動能力を支えるだけでなく、他の魚類が生存するのには厳しい低酸素の水中でも長時間耐えることが出来る。 餌は主にエビや小魚であり、その大きな口で丸呑みにして捕食する。 繁殖については、ターポンでは多少の知見があり、5〜9月に掛けて沖合の岩礁域で行われる。産卵数は非常に多く、雌1匹が1200万も産卵したとされる報告もある。 かつてレプトケパルス幼生は海中の有機物を皮膚から直接吸収するという説もあったが、動物プランクトンを食べて成長するらしい。 卵や幼生、幼魚はメキシコ暖流に乗って、時にポルトガルやフランス沿岸にまで到達することもある。全長5㎝程度で成魚と概ね同じような外見に[[変態>変態(生物)]]する。 イセゴイについての知見は乏しいが、大同小異と考えられており、こちらは黒潮に乗って新潟県や東京湾に辿り着くこともある。 寿命は非常に長く、ターポンで50年以上生き、イセゴイは後述するが40年以上飼育された例がある。 *人間との関係 ***食用 不向きである。特にターポンは。 何故ならば、肉がかなり臭いからである。 実際に食べた人によれば、何故か金属のような匂いがするようで、生は勿論のこと、文字通り煮ても焼いても匂いが落ちず、とても食べられたものではなかったという。 一方で、イセゴイに関しても同じように臭くて食べられたものではないという声があるが、こちらは身そのものは美味であり、その気になれば食べられないこともないようで、南方の国々では干物などに加工されて実際に食用にされることもある。 但し、祖型的な魚にはよくあることだが、小骨が多く、調理には手間がかかる方である。 ***観賞・ペット ターポン・イセゴイのどちらも[[ペットとして流通>アクアリウム(趣味)]]、飼育されることがある。 多くの熱帯魚のような華美な模様はないものの、眩しいほどに光り輝く銀の鱗は、それだけで充分に美しく、肉食魚らしい精悍な顔付きは、魚好きならば魅了されてしまうだろう。 しかしながら、ターポンは古代魚としてはかなり成長が早い上に遊泳力も高い。その上個人レベルの観賞魚としても最大級のサイズになることは覚えておかねばならない。 水槽内では多少成長が遅くなるものの、120㎝水槽程度では到底間に合わず、最低でも180㎝水槽以上、出来れば10数㎥は容量のあるタタキ池のようなものを用意すべきであろう。 一方、イセゴイは水槽で飼育すると30㎝を超えた辺りからかなり成長が遅くなるため、120㎝水槽程度でも騙し騙し飼うことが出来る。 塩分の必要性に関しては諸説あるようで、ターポンは純淡水で飼育可能だがイセゴイは無理という声がある一方、逆にイセゴイは淡水でも飼えるがターポンは一時的ならば問題はないものの、長期的には急死するリスクが上がるといった声も挙がっており、最近では後者の説が有力視されている。安全を取るならば、海水の15〜25%、あるいは50%以上の汽水で飼育すべきであろう。 また、多くの古代魚に共通して空気呼吸への依存が高く、飼育水槽を水を一杯にしてしまうと呼吸できずに溺死してしまうため、そこも注意点である。 そして先述のように寿命も非常に長く、上手に飼えば数十年は軽く生きる長寿な魚(個人が飼育可能な種としては)なので長い付き合いになる事も覚悟しなければいけない。 餌はどちらも活き餌を好むが、浮上性の肉食魚用人工飼料も慣らせば食べるようになる。 ちなみにターポンに関しては何故か&bold(){顔面に腫瘍が発生しやすい}という厄介な所があり、精悍な顔立ちが醜くなりやすいのも厄介である。 これはぶつける事でそうなるわけではないのか、どれだけ広い水槽で飼ってもダメらしく、水族館ですら防ぐことはできないそうだ。 ***釣り ターポンはその巨体もさることながら力が非常に強い…即ち引きが強いため、釣り魚としても人気がある。 ***その他 ターポンが生息している国では餌やりが可能な所もあり、 それを観光の目玉にしている国もあるようだ。 ***展示している(していた)水族館 ターポンはかつて飼育していた所も含めれば四か所と意外と少ない。 一方でイセゴイに関しては一応は日本に生息している種である事も関係してか11か所と多い。 中でも神奈川県の新江ノ島水族館で飼育されているイセゴイは1984年に釣り人から見かけない魚を釣ったと持ち込まれており、それ以降なんと40年も生きているという。 当時は10cm程度しかなかったようだが現在は50㎝もの大きな体格に成長しているとの事である。 *近縁種 カライワシElops hawaiensis 属名のElopsはギリシャ語でチョウザメを意味していたとされるが、現在はカライワシの属名に用いられる。種小名は「ハワイ産の」という意味。 イセゴイ科と比べて体高が低く、鱗が非常に細かい。 *余談 台湾ではサバヒーという魚を食用に養殖しており、それが食文化として根付くほどポピュラーな食材なのだが イセゴイはその養殖場に侵入して稚魚や幼魚を食い荒らしてしまう為、害魚扱いされて嫌われている。 日本においてはかつて静岡県に『浄ノ池』なる池があり、そこには当時はかなり珍しく、 尚且つ本来は海に生息している魚が多数生息していた不思議な池であった。 そんな池に生息する不思議な魚の一種としてイセゴイもいたという。((当時はハイレンという表記がされていた。)) イギリスやアメリカの軍はかつてターポンという名前の潜水艦を保有していたことがある。 追記・修正お願いします #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 同種のヒラという魚は骨こそ多いが美味いらしい -- 名無しさん (2025-07-28 15:48:41) - ↑ヒラはその見た目と生息地から釣り人からは有明ターポンとも呼ばれているとの事ですがこちらは正真正銘ニシンの仲間みたいです。 -- 名無しさん (2025-07-28 23:57:42) #comment() #areaedit(end) }