ニャルラトホテプ(ペルソナシリーズ)

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ニャルラトホテプ(ペルソナシリーズ) - (2019/12/06 (金) 01:37:59) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/10/03(水) 01:29:07
更新日:2024/04/08 Mon 15:16:15
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フハハハハハハハハハハハハッ!!

お前たちはひとつ大きな事を学んだぞ。どうにも出来ないこともあるという、世の理をだ!

私は、お前たち全ての人間の影だ。

人間に昏き心がある限り、私は消せん。


這い寄る混沌の、最後の試練を受取れ!!




※以下『ペルソナ2 罪/罰』のネタバレを含みます


『ペルソナ2』シリーズにおける全ての元凶にしてラスボス。
元ネタはクトゥルフ神話の邪神ニャルラトホテプ
ちなみに初出は前作『女神異聞録ペルソナ』である。

声:山野井仁(『罰』のみ)




【概要】

人類が共有する普遍的無意識のネガティブな領域を司る存在にして、その領域そのものの擬人化。
フィレモンの対となる存在であり、そのフィレモンの言葉を借りるなら「悪魔のように残酷な自分」、即ち人類が等しく共有する最悪の「仮面(ペルソナ)」である。
ペルソナ2の過酷な展開も、珠間瑠市全域で引き起こされた「噂の現実化」も全てこいつのせい。
舞耶曰く「恐ろしく皮肉屋で、悪意に満ちた、とても大きな存在」

劇中でちょっかいを掛けてくる際の姿は、『罪』では黒須淳の父・明成。『罰』では七姉妹学園制服の周防達哉。
……が、共通して金色の瞳を持ち、表情は嘲笑がデフォな、本物とは色々かけ離れた悪人面である。


【人格】

善悪問わずあらゆる存在を嘲笑し、他者を上から目線で否定して蹂躙する傲慢で卑劣な性格。
人心を知り尽くしながらも、理想や可能性、絆といった人が尊ぶものを無価値と断じ、その不完全さを証明するがごとき皮肉に満ちた策謀を張り巡らせては人々の営みを嘲笑う、底無しの悪意の権化である。


「日常や現実の破壊」「革命の煽動」といった餌を撒いて人々を誘導し、自らの手で破滅の引き金を引かせるのがニャルラトホテプの常套手段。
現実に不満や絶望を抱いている人間達に「力」を与え、彼らの暴走が人々を感化するよう仕向けて、人類全体が破滅に向かうように促していく。
劇中では、人々の間に流れる「噂」を次々に現実化させることで世間を混乱の渦に陥れ、妄想と現実の境界をあっけなく見失っていく人々を嘲笑いながら、想いを実現させる人間自身の力で世界を滅ぼさせようとしていた。

ちなみに、ニャルラトホテプの存在意義は、あくまでもフィレモンと同じく「人の自己確立」
本編での様々な策謀も、全ては人類が真に完全な存在になり得るかを測る「試練」であり、決して滅ぼしたり苦しめることが主目的ではない……少なくとも建前では。
言ってしまえば、普遍的無意識の裏と表。
ただし、きっかけを与えた後は人間を見守るというフィレモンとは違い、ニャルラトホテプは積極的に人間を悪意に晒すことを厭わない。
また、「人の保全・守護」にも一切興味がないので、人々が自己を確立できずに破滅しようとも、それを皮肉って嘲笑う始末である。
如何にすれば人の神経を逆撫で、激昂させ、絶望に叩き落とせるかを熟知しているので、煽る時のイキイキっぷりは相当なレベル。

ニャルラトホテプがクトゥルフ神話上において「特定の姿を持たず、関わった者には叡智を授けるがその後確実に破滅をもたらす神」であることを考えると、その本質をこれ以上なく言い表していると言えよう。

人の心が抱える暗黒面そのものであるため、完全に消滅させる手立ては人の心から影がなくなること以外にない。
しかし、光がある限り必ず影は生じるので、こいつが出てきたら片っ端から叩いて引っ込ませるというモグラ叩きをするしかない上に、何度倒しても普遍的無意識がある限り滅ぼすのは不可能。

つまり、仮にこいつを完全に滅ぼそうと思うのならば、人類全てを一人残らず皆殺しにして消し去るしかない。別に人類全てが完全な存在になるんでも構わんけどな!なれるもんならな!
人が人として存在する限りニャルラトホテプもまた文字通り不滅であるため、否応なく共存せざるを得ないのである。
この不滅性はこいつに通じるものがある。

これらの性質故に「ペルソナシリーズ最凶最悪の愉快犯」とも称される。


【能力】

作中では「噂が現実化する」現象を発生させている。
こいつの仕業で、珠閒瑠市は強い想いが実現する普遍的無意識の領域と混ざり合った異界と化した。
その影響範囲及び強制力は凄まじく、珠閒瑠市で噂として広まりさえすれば確率はおろか因果関係をも無視して具現化し、地球全土はおろか天体現象にさえも干渉できる。
噂は悪魔の間で流れるものでも現実化可能だが、これは「ペルソナ2」における神や悪魔が普遍的無意識(人の心の中)から生み出された存在である事も影響していると考えられる。
さらに、「神話」や「伝説」までも、昔から人間が伝えてきた「噂」として現実化の対象内。確かに言われればそのとおりなのだが、そのスケールの違いはちょっとズルくないですか?
化身のヒトラー(フューラー)は、その絶大な能力を「運命を嘲笑うニャルラトホテプの力」と評している。


源が「噂」であるが故に真実から生まれた噂なのか噂から生まれた真実なのかさえも判別が不能
人格や行動などにも影響し、基本的に人類がこの力に抗うことはできない。
加えて、この力の本質は人々の「願う心」よりも「信じる心」の方にあるので、噂の内容に反発心を抱いたりこんな現象の実在を知ったりしたらそれはそれでドツボに嵌まりかねないステキ仕様。
『罪』の終盤に流れる地上滅亡の噂を例にとると、自分らを選ばれし者と称して滅亡の到来を望む連中はもちろん、「何とか地上滅亡を止められないのか」と悩む心ある人たち、果ては「噂が現実化している」という真実を知る主人公たちでさえ「(本当の原因はどうあれ)マイヤの託宣が成就すれば地上が滅亡する」と認知することで現実化に加担してしまっている。どうしろと言うんだ。

ただし完全無欠の力というわけではなく、ある程度「噂」が拡散しないと効果が発揮されず、荒唐無稽な内容ほど「噂」と呼べる規模まで広めるために周到な下準備が必要になるなど、「成立までに時間と手間がかかる」という欠点を抱える。
だが裏を返せば、噂と混乱が拡散し続けて流れに乗ってしまえば最後、爆発的かつ連鎖的に影響が伝染し続け、妄想による現実の侵食を食い止める事は困難或いは不可能となる。

その他の欠点としては、「噂」でさえあれば現実化の対象がほぼ無差別で、敵対者(主人公)にとって有利に働く噂さえも現実化してしまう点が挙げられる。
もっとも、「伯爵」などの例を見る限り、そのような影響さえもニャルラトホテプの愉悦のスパイスに過ぎないのだろうが。

ちなみに、フィレモンが弱体化し例え消滅しようともコイツには影響がない
何このチート。


【シャドウ】


感じるぞ…お前と、もう1人のお前を。

俺はお前の影…見ることはできても消せはしない


ニャルラトホテプによって具現化した、主人公勢の多重存在。
邪悪で攻撃的な笑みと怪しく輝く赤い瞳が特徴。
『罪』では、「周防達哉ら5人は仮面党のテロリスト」という噂に対抗して「周防達哉ら5人はテロを止めようとしている正義の味方」という噂を流した結果、前者がシャドウとして現実化した。
続編の『罰』では、終盤ニャルラトホテプの仕掛けるゲームの駒として召喚され、パーティメンバーの心を揺さぶってくる。
ついでに、引っ掛け問題でプレイヤーの心も揺さぶる。

また、『罪』のシャドウは噂によって「本体の偽物」という設定も与えられているので、本体がシャドウを否定したままでも倒せるが、一方では本体不在のまま他者がシャドウを否定し打倒した場合、本体が廃人化するという特性も持つ。
この特性は、『罰』で折に触れて示唆される「光がそうであるように、影もまた人を人たらしめるうえで必要な概念である」ことの一端を示している。「光」が差せば「影」は必ずどこかに生じ、「影」がなければ差す「光」も無いのだから。

ニャルラトホテプの影響をダイレクトに受けているためか、総じて行動がニャルラトホテプらしさ全開。
ペルソナ4の影たち「各人の最も隠したい内面の化身」であったのに対し、こちらのシャドウは「各人の抱える負い目を冷笑する」存在である。
隠したがっている本音を巧妙なミスリードを交えて暴露するのみならず、本体に「自らが犯した過ちの認知と清算」を迫る彼らは、サブタイトルが示すとおり主人公らの「罪の意識」「自罰感情」の具現化とも言える。

そんな彼らを倒すと、倒された事実に驚愕したり己を倒した本体を称賛(!)しながらも、「これで終わりではない」「心の影から目を背けてはならない」という忠告とも脅迫とも取れる捨て台詞を吐きながら消えていく。
如何にも悪辣極まりない歪んだ心の影といった風情だが、実はこれ、後の作品で登場するシャドウ達が倒された後、各人のペルソナに変じる事と示す意味は一緒だったりする。
「己の影と向き合う強い心がシャドウをペルソナとなす」ということは、裏を返せば「己の影と向き合いきれなくなったとしたら、影はいつでも再び牙を剥く」ということなのだから。
影は、今も変わらずそこにいるのだ。


アンビリーバボー……バット、これでジ・エンドじゃない……ボクはいつでも、キミを見ているぞ……!

分かってると思うけど、これで終わりじゃないからね。光は影と、影は光と離れられはしないんだ……

俺に勝っても影は消せない。影はどこまでもお前に付き纏う。それを忘れるな。


また、「仮面党の幹部」という設定に沿って仮面党の終末思想を礼賛するなど、他人の想念によって人物像を歪められている点もペルソナ4の影と共通する。
ただし、なまじ歪められているのが明らかであるからこそ、それを拡大解釈させてシャドウの言動の全てを嘘っぱちと片付けさせてしまうという心理的な罠として利用しているのが、ニャルラトホテプのえげつないところ。

主人公たちがまだシャドウという概念にも明るくない、「罪」「罰」を通して最初のシャドウ戦であるシャドウ舞耶戦では、本人を含めた全員がシャドウの全てを偽物と否定し、強迫的とさえ言える前向きさの裏側にある厭世感から目を逸らしてしまった。
「憧れのお姉ちゃんの昏い影」「彼女だけがそれと向き合えていない」という見たくもない真実を覆い隠す霧として「10年前に犯した罪に向き合う決意」「大切な絆を取り戻した再会の感動」を利用した所業は、「嘲笑う者」の面目躍如と言える。


このように、P2におけるシャドウの最も厄介な特徴は、本体だけでなく本体の親しい関係者を積極的に巻き込んでくること。
これにはペルソナの有無は問われない。
本体が他者と関係を築き上げた後にシャドウが登場することも相まり、巻き込まれた者たちも「親しい者の知りたくなかった影を受け入れられるか否か」を否応なしに試され、また暴露されることになる。
P2における影との対峙は本体だけの問題ではなく、その場にいる者全てが試される試練なのである。


  • メタル
シャドウの亜種存在。
登場人物の恐怖心・罪悪感の象徴である人物の姿を形どった見た目で現れるシャドウで、赤く光り輝く目と全身が黄金色の金属でできている不気味な外見が特徴。
名前は「メタル・〇〇」と付けられる。
登場したメタルは栄吉が抱く強権的かつ暴力的な父親像への恐れが生んだ「メタル・ダディ」、淳が抱く母親に捨てられた過去への悲しみが生んだ「メタル・マム」、そして達哉が抱く親友たちへの罪悪感が生んだ「メタル・フレンズ」*1

  • リバース・ペルソナ
シャドウ達が保持する専用ペルソナ。
皆、本体の後期専用ペルソナに対応した外見を有する。
専用ペルソナを降魔した状態で彼らとの戦闘に勝利すると、光陰双方に耐性を持つ完全な姿となる*2



【対抗策】

正真正銘の不死にして不滅という特性、狡猾で悪辣極まりない邪悪な思考回路、人心や社会情勢に留まらず天体の動きさえも支配し意のままに操る能力……。
正しく理不尽そのものであるニャルラトホテプを制す方法だが、実はワイルドのような特別な資質も、ペルソナ能力すらも必要ない。

それは「辛い現実や真実から逃げず、全てを受け入れた上で、なお諦めない」こと。

人であれば誰にでも出来うることであり、それ故にニャルラトホテプ相手には特別な資質や能力は無意味と化す。
もっとも、実際にその境地に辿り着くのは並大抵のことではない。
理想、夢、希望、可能性、絆といった「光」を手に入れて成長することで、「自身は『影』を受け入れ克服できた」と自認する者には打倒は不可能。
何故ならそれは、打ち克ったのではなく、「影との戦いに終わりはない」という『現実』から目を背けただけだからである。
理不尽への反骨心や真実を求める心、人と人とのかけがえない絆でさえも「影」から目を背けさせる手管として弄する様は、後のペルソナシリーズでのメインテーマたちに対する最悪のアンチテーゼ的存在とも言える。

ニャルラトホテプと対峙する者は、

ニャルラトホテプが紡ぐ悪意が生み出す過酷な『現実』や『真実』から目を背けて都合の良い夢物語に逃げず、

過酷な現実や世界の無常さと真正面から向き合った上で、それでもなお現実に立ち向かえるか?

という逃げ道のない究極の試練と戦わねばならない。

まとめると、コイツが際限なく繰り出す試練の全てを受け止めて、折れず腐らず抗って生きることが、対抗手段です。

事実、最終決戦前に主人公たちは「運命なんて後出しの予言と変わらない」とニャルラトホテプの嘲笑をはね退けており、
打倒後の「宇宙の中心に蠢く白痴の塊はお前達自身、人間がいる限り私は消せん…!」という捨て台詞に対しても「お前のことは覚えておいてやるから、さっさと消えろ」と一蹴している。

とは言っても、ただの開き直りでは影の試練から目を背けて逃げただけにしかならないことはニャルラトホテプも熟知しているので、狡猾極まりない策を練ってはあの手この手と搦め手を使って陰湿に揺さぶりをかけてくる。
故に攻略は非常に困難。「試練」の名は伊達ではない。
おまけに、そこまでしてこいつの「試練」を乗り越えても、その先に待っているのが大団円とは限らない。
全てを受け入れた上で諦めない心とは、その場限りの口先の応酬で勝利して示すものではない。
達哉が『罰』のエンディングで滅亡した向こう側に独り帰還したように、例え先に待つのが過酷な宿命であっても生涯を掛けて向き合い、前に進んでいくことで示し続けるしかないのだ。

影は見ている……ずっと。ずうっと……


【各作品での行動】


異聞録篇


フフフ…道に迷いし愚かな男よ…

汝が欲する力とやらをくれてやろう

この頃は『P2』時のような表立った暗躍は行っておらず、敵・神取鷹久が有するペルソナとして登場する。
しかし主人公たちとの決戦の最中に暴走し、逆に宿主である神取を乗っ取ってしまう「危険なペルソナ」として描かれた。
この時の見た目はのっぺらぼうの黒い悪魔のような姿。

神取が稀に落とす封神具「無貌の仮面」を使用して召喚するとニャルラトホテプをペルソナとして行使できるが、彼の異母兄弟にあたる城戸玲司しか降魔できないのでそれ以外のキャラを選んでいるといらない子になっちゃう可哀想な子。


罪世界(向こう側)



クク…誰でも夢を叶える権利があるか…。

最後まで幻想に縋り、自分と同じ名の女を捧げた。

これが、この女の夢だ!!

それに免じて、お前たち人間が望んだ、滅びの夢を叶えてやろう!!


『罪』における姿は「黒須淳の理想とする父親像」
10年前の回想で淳が天野舞耶達に対し迎えに来た本物の父を「叔父さんだよ」と紹介しており、この時すでに淳の心は実際の父親から離れ始めていた。

本物の父親はその後「マイアの託宣を成就してはいけない」と七姉妹学園の時計塔の歯車に自ら挟まれて本編開始の10年前に他界。
ニャルラトホテプはその10年もの間、淳の理想の父親のフリをしていた。

淳が歪んだ想い出に踊らされていたのもこいつが元凶で、「舞耶は達哉たちが社に閉じ込め、放火して殺した」と吹き込んだことが原因。
なお、実際の放火犯はみんな大好き電波っぱこと須藤竜也
達哉はこいつに刺されて重傷負うわ、舞耶も生きてはいたものの須藤のせいで大火傷を負うわで散々な目に遭っている。

淳の「舞耶(お姉ちゃん)のように夢を与える存在になりたい」という願いを利用し、「他者の理想を叶える存在」ジョーカーに仕立てあげる。
そして仮面党を裏から操り、シバルバー浮上と託宣成就に必要とされるイデアルエナジーを収集。
それと並行して、噂によってラスト・バタリオンを自らの化身として具現化させ、混乱をさらに加速させる。
カラコルで淳が達哉らと対峙して力を望んだ時には、「天使と呼ばれた者にふさわしい力」を与えてエンジェルジョーカーに変貌させた。
なおJOKER時代の淳が使用していたペルソナはニャルラトホテプの化身だったと書籍で明かされている。


淳が敗れた後は、自身に反目した彼からジョーカーとしての力と権限・ペルソナ能力を剥奪し、残存する仮面党員と達哉らのシャドウを配下に据えて本格的な暗躍を始める。
特に珠間瑠市地下に埋まるシバルバー(アメノトリフネ)内は独壇場で、「この存在の噂を信じていた、珠間瑠市の住人全員が共有する普遍的無意識の世界の一部」であり、悪い方向性の思考が優先的に現実化するのはニャルラトホテプの性格の具現化か。

舞耶がカニ缶のことを考えた時一つだけ降らしたのは、恐らくおちょくっていたか遊んでいたかのどっちか。

そしてヒトラーフューラーが倒されると、シバルバーの果てにある普遍的無意識の世界で対峙。
この時、ようやく自分の両親が死亡していることに気付きショックに打ちひしがれる淳に、ここぞとばかりに淳の願いの矛盾と、彼の願いによって街が大混乱に陥ったことを嘲笑った。
そして淳の両親を惨殺し、PTメンバーの父親をゴタ混ぜにしたような怪物『グレートファーザー』として立ち塞がる。


ここは私の世界だ。私がお前達の存在を抹消しようと思えば、指一つ動かさず、お前達は消え失せる。
勝ち目が無いと知った上で、それでも私に挑むのか?それも矛盾だ…

負けることなんて考えてたら、夢も未来も掴めないわ!!

よかろう…父の務めとして最後に少し遊んでやる。

お前達の持てる全てで、未来とやらを掴んで見せろ!

僕らの未来は自分でで決める!

誰の好きにもさせはしない!


そしてグレートファーザーは激戦の末に敗北し、こうして全ての戦いが終わる……

かと思われた直後。
背後から現れた七姉妹学園の教師・岡村真夜がオリジナルの聖槍ロンギヌスを手にとって舞耶の身体を貫き、彼女を殺害
舞耶の死を以てマイヤの託宣が成就してしまい、彼女の「誰でも夢を叶える権利がある」という言葉を逆手にとって、全人類が無意識に願う破滅願望を叶えることで世界はシバルバーに載った珠間瑠市を残して崩壊した。

崩壊した世界の中で浮島のように孤立した珠間瑠市も、ライフラインの寸断等によって遠からず滅ぶことが『罰』で示唆されており、ある意味『if』から連なる「IでICBMが発射されなかった」世界そのものに終止符を打った。
この段階に至ってさえも、あくまで「人の願いを叶えただけ」というスタンスを崩さず、敢えて自分で手を下さないあたりはとことん性悪。

絶望に打ちひしがれる達哉たちに、フィレモンは夏祭りでの出会いそのものを回避することでの『達哉たち五人が交わることがなかった世界(パラレルワールド)』の創造を提案し、達哉たちはそれを承諾した。

この時、達哉だけが「忘れたくない…忘れられるものか」「行かないでくれ…独りにしないでくれ」と忘却を拒んだ結果、『罰』の世界に綻び(特異点)が生じてしまった。
しかし、その拒絶は前述の「まやかしの希望に縋らない」という条件を辛うじて守る形ともなり、ニャルラトホテプに再戦を挑む権利にもなったと言える。

ちなみに岡村真夜が舞耶を殺したのは「元々自分が生贄になる予定だったが、偶然舞耶が同じ名前だったから」
または「舞耶が同じ名前だからあいつでもいいんじゃね?」とでも吹き込まれた可能性もある。

何よりも悪質なのは彼が世界を滅ぼすツールとして用意したマイヤの託宣の、最後の一節「そして、刻は繰り返す」
何が悪質かというと、この一節は世界の滅亡を示すくだりである「後に残るは地上の楽園」のさらに後に記されているのである。
つまり、託宣が成就して世界が滅び、その上で達哉たちが因果のリセットを選ぶところまで完璧に見透かしていたということで、この予測は見事に的中し、結果フィレモンは後手に回る羽目になった。


罰世界(こちら側)



クックックックッ…

どうだ、周防達哉!? 罰は気に入ったか?

一緒に戦ってくれなどと、言えるわけがないな?

この世界が滅びに瀕しているのは、全てお前のせいなのだからな!!


『罪』世界(向こう側)と意図的に分岐させられた『罰』世界(こちら側)とは普遍的無意識の世界を通して繋がり、ニャルラトホテプはこちら側にもちょっかいをかけ始める。
舞耶が達哉にデジャ・ヴュを抱いた原因であるシーン(2人が駅前でぶつかるシーン)を見て「滑稽だったぞ」と嘲笑っていた。

真っ先にちょっかいをかけたのは、相も変わらず森本病院にぶち込まれて強制ヒッキーライフを送っていた須藤竜也
こちら側でも父親の英才教育による精神的過負荷ででんぱっぱーとなっていた彼に「電波」として向こう側の存在を囁き始め、結果的に竜也は向こう側の記憶を取り戻すことはなかったものの「こちら側は間違ってる」と行動を開始した。
その直後、舞耶との再会によって生まれたデジャ・ヴュから特異点であることを自覚し、ニャルラトホテプの存在と目的を察知した達哉へ名状し難い神話生物を差し向けて弄び始める。

父親の率いる新世塾の噂操作によって依頼されて人を殺すJOKERの力を与えられた竜也は、向こう側の展開を再現すべく行動していたが、空の科学館で死亡。
皮肉にも、その最期までも向こう側で辿った末路と酷似していた。
当時拠り所のない達哉にとって数少ない頼れる存在だった宮代詩織も、彼が須藤に与えたJOKERの力によって歯車を狂わされた。

しかも、己の弱さを認めた上で死んだ神取鷹久(ご丁寧にペルソナはニャルの化身)を蘇らせ、達哉たちにぶつけてくる*3など、行動はより陰湿になっている。
神取もそのことを理解しており、海底神殿で南条くんから差し伸べられた手を払い、「因果の鎖を断ち切れるかな」とニャルラトホテプの討伐を遠回しに託して死亡する。

本格的に表立って動き出すのは終盤、ラストダンジョンのモナドマンダラ。
こちら側は「達哉たち4人の忘却」を絶対的な前提として存在する可能性世界。
忘却を誓った4人全員が思い出すと前提が成り立たなくなって崩壊してしまうという性質を利用し、栄吉・リサ・淳の3人を人質に取り「ゲーム」を仕掛けてくる。

要約すると「各部屋で正しい選択肢を選ばなければシャドウ強化。間違った選択肢を選びすぎると記憶を取り戻す。3人思い出すと世界消滅」というもの。
うらら&克哉のシャドウが揃って強化されれば栄吉が思い出し、パオフゥ&舞耶のシャドウが強化されればリサが思い出してしまう。
達哉が特異点となることで、すでに崩壊寸前まで追い込まれていた世界に止めの一撃を放とうとしていた。
その最終決断をも達哉に投げ渡す当たり、フィレモンの影としての悪辣さがこれでもかと滲み出ている。

なお、全てのシャドウが強化されるとニャルラトホテプの前座である「月に吼えるもの」が最強段階まで強化される。
ハルマゲドンで一発とか言っちゃダメ

全ての試練を突破し、モナドマンダラ最深部から普遍的無意識の世界に到達した達哉たち一行の前に顕現する。


クック…虫のいい話だな?
辛い事は仲間に押し付け、自分だけは記憶を持ったままでいたいなどと…許しがたい大罪だ
罪には罰を下さねばならん。
だから、その女と再び出会う機会を与えてやった。
仲間達とめぐり合う運命を紡いでやったのだ。

私が憎いか?
しかし、それもお前達人間が望んだことだ。
お前達の心の底にある滅びの渇望…それが私だ!
影は、運命に逆らう者を決して許さん。

過去の仲間たちとの絆を利用した策謀の真相を告げながら、「向こう側」での達哉の『罪』を嘲笑い糾弾しながら責めたてる。
達哉が己の罪に苛まれる最中、罰世界で出逢った新しき仲間パオフゥ、克哉、うららは少年を導く「大人」として発破をかけた。


ああ、うるせえ…
運命運命…同じことしか言えねぇのか…?
いいか、達哉…運命なんてのはな…

後出しの予言と何も変わらん。
何かが起こった後で、こう言えばいいんだ…

「全部運命だった」ってね!

運命に抗わんとする彼らを滅ぼすべく、自身も真の姿へと変貌するが、彼らの発破により達哉はついに、真に現実と己の罪に向き合い立ち向かう覚悟と決意を決める。


生に意味などないと知るがいい!


ゆえにがありがある!

私は、お前たち人間そのものだ!!


俺は、もう二度と背中を見せない…

犯したにも…自分にもだ!!


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


覚悟を決めた達哉は決意を新たにニャルラトホテプの打倒を誓い、真っ向から対峙したことで、両者は因縁の最終決戦を迎える。
この最終決戦での両者の台詞の応酬は、『ペルソナ2』という作品を締めくくる屈指の名シーンと言って差し支えない。


本来ならば人間の暗黒面の化身故に不滅であるニャルラトホテプが敗北することはない。
しかし「特異点」として自らが嘲笑し弄んでいた達哉らの行動と呼びかけに、己の力の源である(達哉たち自身を含む)街の人々が心を動かされていたことで、死闘の末に有り得ない筈の敗北を喫する。



クッ……クックックック…ハーッハッハッハ!!

なんという!矛盾…!!

これが私の運命だと!?

だが…覚えておけ…!

宇宙の中心で轟く白痴の塊とは、貴様ら自身だということを…!!


貴様等ある限り…私は消せんっ…!!



「全ての可能性は影という混沌から生まれる」というフィレモンの示唆から、自分の執拗な策謀や嘲弄、底無しの悪意こそが達哉という「凡人」を人々の希望たる「超人」へと成長させた「試練」であり、己の敗北を決定付けていたという真実に気づくも、それでもなお何ら変わる事はなく、「人の価値を否定することで人の成長を促す」という矛盾に満ちた己が運命と、それを与えた人類をなおも嘲笑いながら、影は遂に普遍的無意識の底に沈み、敗北を認めた。

ちなみにどんな選択肢を選んでも淳だけは絶対に「向こう側」のことを思い出さないが、他の二人が思い出すとEDの一部(アラヤ神社の場面)が変化する。
誰か一人だけ思い出すパターンは、非常に後味が悪い上にやるせない。
栄吉のみが思い出すと「今度こそギンコや淳を守り抜いてみせる」、リサのみが思い出すと「今度こそ、絶対に忘れない」とそれぞれが涙ながらに誓う。
二人が思い出すか、一人だけが思い出すか、舞耶だけが覚えているか、どれが一番幸福なのかは分からない。


【劇中での化身】

劇中では多くの化身が存在するが、前提として、『2』本編で噂により生まれた存在は全てニャルラトホテプの化身である。
ここで紹介されているのは代表的なもので、これ以上さらに存在する可能性もある。


ゴッド神取


我は神取…ゴッド・神取なり…

『女神異聞録』『罰』に登場。
『女神異聞録』では「デヴァ・ユガ」を作りだして世界中の人間を洗脳し、人類抹殺を企てた男「神取鷹久」が降魔させたペルソナが、逆に神取の心の闇に付け込んで神取を支配下に置き、魔人と化したモノ。
「頭頂部から神取の上半身が浮かび上がった、頭と両手だけしかない黄金の巨大観音像」とも呼ぶべき奇怪な姿を持つ。
「衆生を救う」という神取の意思と願望が観音の姿を象ったペルソナ。

『罰』ではニャルラトホテプの化身となって蘇生させられた神取のペルソナとして登場。
ボスだった頃の見た目から大きく変化し、「引き裂かれた金色の観音像の残骸を纏う、黒く奇怪な人型の怪物」というペルソナらしいスマートな外見となった。
例えるなら『罰』のJOKER第二形態以降の変化に相当する存在。
ボロボロの観音像は、神取が死亡した後ニャルラトホテプにより生み出された結果ペルソナが形骸化した事を示している。


羅喉

月間少年ジャンプで連載されていたコミカライズ『ペルソナ 罪と罰』に登場。
物語の黒幕「日下耶雲」に仕えるペルソナ使いとして暗躍した化身。
人間はおろか悪魔にすら嫌われるほど厭味ったらしい性格で、自我を持たない悪魔しか配下にいない。
基本的に化身らしからぬ小物の道化に徹していたが、物語の終盤に自らの死を以って事態を最悪の状況に追い込んだ。
最終回におけるフィレモンとのやり取りでニャルラトホテプの眷属である事が明確になるが、その際には化身らしい傲岸な目を見せている。
使用ペルソナは「ディアブル・ド・ラプラス(ラプラスの悪魔)」。


伯爵


明日が"明るい日"と誰が決めた?

それある限り、人は不安から逃れられん。

安らぎは遠きあの日にこそあると思わんかね?

『罪』『罰』に登場。
蓮華台ロータスの空き店舗に一夜にして現われたという、謎のアンティークショップ「時間城」店主。
罪の噂操作では淳最強装備「伝説の花」を80万で売ったり麻希にあげたり、盗られたり、ロータスでアロマセラピー営む香さんにあげたり色々手広く活躍している。
何がしたいんだコイツは。

PSP版ペルソナ2罪の追加シナリオにおいては、あの手この手で人間を陥れようとする他の化身とは一線を画し、矛盾を内包する混沌の一化身として自らをも嘲笑するというスタンスを表明している。
傍観者としての役割に徹しつつも主人公たちの利になる行動を取るのは、調子に乗って暗躍する自分が痛い目に遭うのを期待してのことなのかもしれない。
モデルはおそらくチクタクマン。


聖槍騎士団「ロンギヌス13」


フロイライン…どうやら、このシバルバーの秘密に気づき始めたようだな

『罪』に登場。
ラスト・バタリオンに所属する13人構成のパワードスーツ部隊。
ロンギヌスの複製品を装備し、ペルソナを封じる攻撃を仕掛けてくる。
なお、おそらく隊長であるロンギヌス1のみ白い機体となっている。
詳しくは個別項目を参照。


アドルフ・ヒトラー/フューラー


大衆は、全てを決定してくれる指導者を欲するのが常よ…

先を煩い決を下すのは、苦痛だからなぁ!!

『罪』に登場。
ニャルラトホテプが「噂」を利用して作りだした化身。
仮面党に敵対する勢力「ラスト・バタリオン」の総帥だが当然アドルフ・ヒトラー本人ではない。
オリジナルの聖槍ロンギヌスを武器とし、ロンギヌス1が持っているアイテム「スピリットリヴ」を使わない限り解除されないペルソナ封じを仕掛けてくる。

実はこのロンギヌスの槍には「2000年もの間を一度も途絶えること無く語り継がれた伝説」という最凶クラスの噂が生んだ「刺されたら止めどなく血と水が溢れ出し続ける」という呪いとも言える噂の力が宿っており、
戦闘中ではその効果を発揮しないものの、急所に受けるとペルソナの回復魔法すら効かず確実に致命傷となる。
『罪』において舞耶がこの槍に刺し貫かれた時、リサによる懸命な治癒が効かなかったのはこの噂の力の為。
使用ペルソナはニャルラトホテプの化身の一つ「月に吼えるもの」

海外では流石にアウトだったのか、リメイク版の海外販売にあたって名称が「フューラー」に変更され、グラサンを掛けされられた。
ヒトラーが敵キャラとして関わる創作作品は数あれど、ヒトラー自身が槍を振るって前線に立つゲームはこの作品くらいなものであろう。
付け加えると、ラスト・バタリオンはヒトラーと聖槍騎士団のみならず、末端の構成員に至るまで全員がニャルラトホテプの化身である。


名無しの少女

PSP版『罪』の追加シナリオ『暗影』に登場。
外見は、高慢そうな顔をした金髪ロールの女生徒。モブ用NPCの使い回しなのはナイショ。
『罪』本編開始の少し前の聖エルミン学園に流れた噂によって生じた化身。
自らを「兆し」と称し、園村麻希かつての行いをあげつらうかのように自らをアイドルと崇めさせる異界を作り出して、そこに教師や生徒たちを引き込んでいた。
達哉たちに時を遡らせた伯爵に「化身の一つに過ぎないくせに余計な事をする」と文句を言う一方、伯爵同様に「訳知り顔の"奴"もまた化身の一つに過ぎない」と示唆するような台詞も吐く。


橿原明成(偽)


父への懺悔、母への断罪、全てお前が望んだことだ!!

もっと喜べ!!矛盾しているぞ!!

『罪』に登場。
元々は黒須淳の父で、岡村真夜・須藤竜也らと共に、事件の核心に関わる奇書「イン・ラケチ」を執筆した世界史教師。
本人は本編開始の10年前に死亡しているが、ニャルラトホテプに魂を囚われた結果、数多ある化身の1つに成り果てた。
本編開始の10年前に「理想の父親像」として淳が仲間についた嘘、そして当時の子供たちの噂から「淳の理想とする父親」の姿を取って実体化。
すでに他界していた本物の父と息子を捨てた母の代わりに、10年もの間「理想の父親」として淳を養育。
その際に淳に虚言を吹き込むことで淳を歪んだ想い出で踊らさせ、『罪』本編における一連の騒動を巻き起こした。

シバルバー内で正体を明かした際は「感動の対面だぞ、泣けよ」とばかりに捕らえていた黒須純子と本物の橿原明成の魂を呼び出し、残酷な真実を嘲笑いながら淳に告げ、精神がボロボロになり動けない淳の代わりとばかりに二人を「断罪」と称して魂を完全に抹消。
この心を徹底的に踏みにじる非道極まりない残忍さから舞耶を心底激怒させるも、

矛盾だな。何者をも許す広い心がお前の専売特許ではないのか?

と返し、逆に彼女を皮肉るなど悪辣さは留まることを知らない。
そして己を怪物「グレートファーザー」へと変貌させ、舞耶たちに最終決戦を挑んだ。

なお上述したようにヒトラーとその配下も等しくニャルラトホテプの化身であるというだけでなく、
『罪』の劇中で中核を担ったアイテムである水晶髑髏やシバルバーさえも、全てがニャルラトホテプの一部でしかなかった。

イデアルエナジーの収集もマイヤの託宣の成就でさえもそれ自体に大した意味はなく、仮面党の活動もラスト・バタリオンとの闘争も、世界の滅亡というネガティブの極致な誇大妄想を大衆に「噂」させるための壮大な三文芝居だったのだ。


ニャルラトホテプ(ペルソナ体)


忘れるな…お前はジョーカーだ…殺せ…殺せ…殺せ…

『罪』に登場。
JOKERのペルソナとして具現化した姿。
外見は白黒のモノトーンを基調としたスマートなペルソナらしい外見で、体の各部にはニャルラトホテプの化身に見られる青白い斑点模様がある。
淳の傷ついた心が、目の血涙や左胸の心臓マークに刺さった無数のナイフを表す。


グレートファーザー


よかろう…父の務めとして最後に少し遊んでやる。

お前達の持てる全てで、未来とやらを掴んで見せろ!

『罪』に登場。
ニャルラトホテプの戦闘時における化身の一つであり、『罪』のラスボス。
外見は『月に吠えるもの』の頭部を橿原明成の姿を模したニャルラトホテプ本体が務め、四肢が達哉以外の父親の姿になった異様な外見。
メインキャラクター達が「父親」に対して抱くネガティブなイメージをひとかたまりにした怪物。

元ネタとしては、ユング心理学における「原父」の原型のみならず、フランスの心理学者ラカンが提唱した「どうにもならない現実」の象徴である「父の名」の要素までも含んでいると思われる。
イラスト版で見ると、いい年取った中年のおっさん数人が黒ボンテージファッションを着こんで組体操しているように見え、非常にキモイ


神取鷹久


追い掛けたまえと言いたいところだが今は使われる身…このまま返すわけにもいかん。

お相手願おう。

CV:山野井仁 / 小杉十郎太

『罰』に登場。
秘密結社「新世塾」幹部の一人にして、『女神異聞録』で「セベク・スキャンダル」を引き起こした張本人。
ペルソナの知識(人工的なペルソナの付与)を欲した竜蔵により、噂の力で復活させられ、表向きは竜蔵の秘書「神条久鷹」として暗躍していた。
また、ほぼ目的通りの機能を持たせて完成した「プチ・デヴァシステム」という転送装置ももたらしている。

ニャルラトホテプに魅入られた者の業なのか、黒いサングラスの下には眼球はなく真っ暗な眼窩があるだけである。
新世塾が傾倒している存在の実態を理解したうえで狂言回しに撤し、南条からの憐れみをも「光には光の…影には影の役割がある」と称して受け止め、敢えて舞耶らと敵対する。
使用するペルソナはニャルラトホテプの化身の一つ「ゴッド・神取」


御前


我の眠りを覚ます者は、何者ぞぉぉぉぉぉ!?

『罰』に登場。
新世塾の中心人物・須藤竜蔵が崇拝していた戦国武将「澄丸清忠」の首の木乃伊の姿を取った化身。
新世塾の一部の幹部にのみ「啓示」を伝えて新世塾を凶行に走らせた元凶。
彼らが御前から受ける啓示は、ニャルラトホテプからの「破滅への誘い」にすぎない。

御神体という立場を利用して竜蔵らを「啓示」によって巧みに操り、「罪世界(向こう側)の歴史をトレースさせる」ように噂を広めさせ、珠閒瑠市を「アメノトリフネ」として浮上させる。
そして本丸公園に現れた珠閒瑠城で「操龍の神事」を行わせ、珠閒瑠市以外の世界を滅ぼさせようとさせた。
儀式を実行させた後は、用済みとばかりに竜蔵を自身の眷属「忌まわしき狩人」へと変貌させた。
また、新世塾に幹部として属していた菅原陸上自衛隊師団長にX-1,X-2を供給させた後、用済みと見做したのか彼を冒していた末期癌の癌細胞を変異させ、彼の望む不老不死を与えた。

竜蔵が敗れた後は本性を露わにし、御前の首から異形の四足獣めいた身体を生やす、甲冑風の甲殻でその身を鎧った怪物となった。
この化身に限っては、伝承上の存在を元にしたものであり、その伝承を利用することで一撃で滅ぼすことができる…のだが、条件が非常に面倒くさい*4


周防達哉(偽)


どうした?また殻に閉じ籠り逃げるのか?

その女と出会い、記憶を取り戻した時のお前の顔 最高の見ものだったぞ!

『罰』に登場。
御前を倒した後モナドマンダラに送られた達哉一行の前に顕現した、周防達哉の姿を模した化身。
「セブンスの制服を着こんだ達哉」という風体だが、悪意に満ちた金色の眼や冷笑を浮かべた笑みなど、見た目の印象は本物とは全く別物。
「達哉のことが気に入ったからこんな姿になった」とのことだが、
ここでの「気に入った」とは、「格好の玩具」としての意味合いであろう。

この姿でも悪意に満ちた本性を存分に発揮しており、罰世界での達哉やその仲間達の姿に変化したり、罪世界の達哉の仲間を利用した悪趣味極まる「ゲーム」を実行したりと、一行を言葉巧みに嘲笑い翻弄した。


ニャルラトホテプ・月に吼えるもの


クックック…ハーハッハッハッ!!

人形風情が!過去、私に同じ事を言った者達がどうなったか教えてやろう!!

『罪』『罰』に登場。
自らの本性を剥き出しにした際に姿を現す化身。
『罪』ではヒトラーのペルソナとして、『罰』では最終決戦におけるニャルラトホテプの第一形態として登場した。


無貌の神


二兎を追うものは一兎を得んと、一度教えたぞ。学習能力のない奴だ

だが良かろう。それほど返して欲しければ返してやる

PSP版『罰』の追加シナリオ『無影無踪』に登場。
普遍的無意識の海へ散ってしまった宮代詩織の精神を取り戻すために向かったカダスマンダラの最終局面にて達哉達の前に立ちはだかる。
その見た目は女神転生シリーズにおいて登場した時と全く同じ黒い体表に赤い翼を生やした悪魔の姿で、ファンにとっては懐かしいものである。

詩織の最後の心の一部を返せと叫ぶ達哉に「あれだけ救いたかった現実の世界がここにいる間にも滅びるぞ? 舞耶さえいれば他はどうでもいいのか?」などと責め立てた上で、達哉の望み通りと言わんばかりに詩織の反影を実体化させるのだが…。

「邪魔しないで拓也。外しちゃったじゃない」

何と「向こう側」と同じように詩織にも聖槍を持たせて舞耶を不意打ちで殺させようとしたのである。
あわや「向こう側」と同じ悲劇が繰り返されそうになったが、今回は仲間がいたこともあってか間一髪で阻止することができた。
…が、ニャルの悪意と非道さはこれに終わらず「向こう側」の淳の時と同じように「返して欲しいと言ったから返したんだ。喜べよ」と嘲笑った挙句、「舞耶かその哀れな女かどちらか好きな方を選べ」と達哉の心を徹底的に踏みにじった。

このあまりにもえげつない行為に舞耶達は激怒し、精神をボロボロにされて動けない達哉抜きで立ち向かうことになる。
しかし、これもニャルの化身の一つでしかないため、倒されても余裕の態度を崩さずモナドマンダラで待つと言い残して去っていった。

クックッ…座興はここまでにしておこう。さあ、早く覚醒の世界へ戻るがいい。早々に化身ではなく私直々に相手をしてやろう

待っているぞ。待っているぞ…

フハハハハハハハハ…


ニャルラトホテプ・這いよる混沌


ふはははは!実に!愉快!!

私にこの姿を晒させたのはお前達が初めてだ…最高の賛辞を抱いて死ねぃ!

『罰』に登場。
ニャルラトホテプの最終形態にして真の姿。
無情な現実と真実全てを真に受け入れ成長し、覚悟を決めた達哉たちの前に立ち塞がった『罰』のラスボス。
その見た目は、自身の顔の代わりに仮面めいた無機質な人面が無数に浮かび、無数の触手を生やした異形の人型の黒い影。
「明確な顔が無いからこそ誰にでもなれる」というペルソナ2におけるニャルラトホテプの性質を体現した姿とされる。

ちなみに月に吼えるものやグレートファーザー、淳のジョーカーのペルソナや罰でのゴッド・神取には共通したデザインとして体のどこかに蛸の吸盤のような青白い斑点模様の列があり、
恐らくこの青白い斑点もこの姿の時の無数の人面が簡略化されたものだと思われる。



【余談】

  • 上記の通り多種多様な化身がいるが、他にも化身として青葉区ダブルスラッシュで「ワンロン占いをしてくれる女の子」がそれだとする意見がある。
    誕生月入力時に「イアイアハスタア」と入力するとあからさまに取り乱し、召喚必須マテリアルカード「キングインイエロー」をくれる。
    だが「キングインイエロー」で召喚できるのはクトゥルフ神話上ニャルラトホテプと敵対関係にある「黄衣の王」ハスターであり、逆にフィレモンの化身ではないかとする説もある。

  • PSP版追加シナリオのアディショナルシナリオにおいて、心が四散してしまった詩織の救出へ向かったカダスマンダラの元ネタは、クトゥルフ神話を作り出したハワード・フィリップス・ラヴクラフト原作の小説『未知なるカダスを夢に求めて』。
    主人公ランドルフ・カーターが、深い眠りの底にある世界「ドリームランド」へ没入していく物語であり、時系列的に後日譚に当たる「銀の鍵」でカーターは、このドリームランドに深入りしすぎたために現実世界では行方不明となる。

    カーターが目指し、ドリームランドへ入れる「夢見る人」の中で唯一到達できた最終目的地がタイトルにあるカダスであり、それはニャルラトホテプが治める城である。
    カダスとドリームランドが存在する「夢」を本作における「普遍的無意識世界」とすれば、ニャルラトホテプはまさしく人間の意識の底にいるということになる。

    さらなる余談であるが、カーターに限らずドリームランドを追い求めて深入りしすぎた「夢見る人」は全員残らず現実世界で破滅し、ドリームランドの住人に成り果てている。ギリシア神話では眠り(夢)と死は隣り合わせとされているが、それに引っ掛けているのではないかという考察もある。
    そんな魔境にあるニャルラトホテプの城のど真ん中で支店を開くサトミタダシはどうかしている。

  • ファンの間では、「竜蔵が欲した『人工的なペルソナ能力の付与』は『3』における桐条グループの持つ技術と同一ものではないか」「神取がもたらしたそれを竜蔵が桐条グループ側へ流したのではないか」という説があるが、憶測の域を出ていない。

  • 勘違いされがちだが、罪世界にて「舞耶を守り切れなかったこと」や「世界の破滅を防げなかったこと」は、あくまでニャルラトホテプからの試練の一環であり、これらを味わったことはニャルラトホテプに対する敗北ではない。
    真の敗北とは、「無常な現実(仲間の死、世界の滅亡)を受け入れられず、仲間との再会の約束を言い訳にして『世界のリセット』を選んでしまったこと」に他ならない。
    ……まあ元々正真正銘普通の高校生だった罪世界の面々に、ニャルラトホテプが生み出した過酷な現実から目を背けるなという方が無理ゲーとも言えるのだが。

    さらに、「五人全員が記憶を取り戻せば『リセット』は無効となる」という最重要事項を伏せながらこの「リセット」を唆したのはニャルラトホテプではなく、立場的に本来味方側であるはずのフィレモンである。
    ニャルラトホテプとフィレモンは、互いに対極に位置する対存在であると同時に、両者共に人類に試練を与える共犯者でもあるのだ。

    そもそも、前述の通りニャルラトホテプの試練に打ち克つ方法は「逃げないこと」である。にも拘らず、フィレモンは10年前にペルソナ様をやった事実(=ニャルラトホテプに抗う力)ごとなかったことにしようとしており、これは達哉らに対する慈悲などではなく、「もうお前らじゃ無理だからいいや」という見限りに近い扱いと取ることもできる。


追記・修正お願いします。

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