ブラック企業

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ブラック企業 - (2020/02/01 (土) 16:11:46) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2013/05/22 (水) 22:10:28
更新日:2024/05/01 Wed 19:30:16NEW!
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ブラック企業の定義はいろいろあるが、
最近は労働基準法をはじめとした労働法を守らない、あるいは守ってはいるが法の抜け穴を突いたグレーゾーンで過酷な労働をさせる企業を指すことが多いので、
それをここでは扱うことにする。
また、労働者を過酷にこき使うこと全般がブラックと言われることもある。
最近ではワンオペとかやりがい搾取なんて言葉も取り上げられている。

仕事をして金を稼ぐのが楽ではないのは当然であり、仕事が厳しいというだけでは大抵は ただの弱音 でしかなく、ブラック企業にはならない。
問題なのは厳しい労働をするための法律を守らない、あるいはグレーゾーンで過酷で低賃金な労働を平気で強いることである。

就活を控えているwiki篭もりたち、あなたがエントリーしている、あなたが内定をいただいた企業はブラック企業ではありませんか?


ブラック企業の例

本家wikipediaの該当ページを参照すると相当詳しいが、ここでは代表的な例だけを紹介する。

  1. 誰も達成できないようなノルマを課し、達成できないと自分や家族で契約してノルマを達成した形にしないといけない(通称:自爆営業)
  2. 開始早々研修をする…のは普通の企業でもやっていることだが、カルト宗教みたいなセミナーに参加させて洗脳。ブラック企業への不満=非常識と認識させる。
  3. サービス残業は当たり前。タイムカードも平気で偽造。あるいは仕事は家に持ち帰ってやれ。結果、過労死するような残業をするハメに。
  4. 気に入らない社員は徹底的にいびって自主退職に追い込む、もしくは言いがかり同様の理由で懲戒解雇する。自殺者が出ることも。
  5. 様々な仕事のための必須費用が全て自腹。費用を引くと実質的に最低賃金すら払われていない。 総支給額がまさかのマイナスになり税金を自分で収めないといけない事も
  6. セクハラ・パワハラなんて当たり前。止めろだって?甘ったれんな!
  7. 辞職も簡単ではない(後述)。
  8. 辞めたとして退職金や未払いの給与を踏み倒すのもザラ。離職票などの書類も送らず、自主退職でも解雇扱い(退職金を踏み倒すため)あるいはその逆(解雇予告手当を踏み倒すため)にされることも。
  9. 求人広告に書いてあることと条件が明らかに違う。キュゥべえですら提示した約束は守っているのに・・・
  10. タチの悪い弁護士や社会保険労務士*1と結託。
  11. 実際には通常の会社員と同じくらい行動を拘束しているのに、社員を「本社と業務契約を持つ自営業者」という扱いにして受けられるはずの各種社会保障をカットする。(偽装請負)



ブラック企業の恐ろしさ

一旦ブラック企業に入社して、すぐにやばさに気づいたとしよう。

「こりゃやばい…すぐにやめて別の会社を探そう!!」

ところが、ブラック企業はそれを阻止せんと方々から圧力をかけてくる場合がある。
「お前はまだ慣れてないだけ。もう少し頑張ろう?」「このくらい辛いのは何処でも同じ。」などと精神論で抑えにかかるのはまだ優しい方だろう。
人格否定でしかない恫喝じみた物言いで萎縮させ、もみ消そうとする事すらよくあること。
「お前がさっさとやめたせいで、ほかの社員のモチベーションが下がったor納品が間に合わず取引先に契約解消された。賠償しろ」などと要求して、本当に起訴してきた例もある。
法律の専門家から見れば主張の中身がお花畑ファンタジーとしか言いようのない支離滅裂さで、実際裁判でも企業の請求は1円たりとも認められなかったが、
それでも勝つまでは大変な時間的・心理的負担を強いられる。*2
さらにそもそもそんな話や手続をする時間すら与えられない。上司は耳すら貸さず退職届も受け取らない。仕方なくばっくれると損害賠償を請求されたりする。

そこを突破して無事にやめられたとしよう。実際、さっさと辞めてくれて助かったとか考えて見逃してくれる(?)ブラック企業も多い。

「…で、次の仕事は?」

そう、この就職難なご時勢。一旦仕事を辞めてしまうと、次の仕事がなかなか見つからない。
まだ年若く応募先が求める経験や資格免許を持っていて、応募や面接で上手く立ち回れるなら別だろうが、そもそもそれが出来る優秀な人材ならこんな事態に(ry
そもそも次の就職先の内定を貰ってから退職するのがベターなのだが、ブラック企業が従業員にそんな余裕を与えるのかというと(ry
なけなしの蓄えを食いつぶしたり、失業保険を受けながら何ヶ月ハローワークに日参しても、内定の1つももらえない人は山ほどいる。
徹夜して作った履歴書を3~4社に一気に送っても1社も面接にすらたどり着けない事すら少なくない。不採用を受け続けることの心理的な負担は相当大きく、精神的にもかなり参る。
これが怖いあまりに、ブラック企業だと知りつつやめられないという人もいる。

「なんとか面接までたどり着いたぜ!!」

甘い甘い。ブラック企業はしつこくあなたに影を落とす。

「はいはい、wiki篭もりさんは…あれ、履歴書にこの会社を2ヶ月でやめたと書いてありますね?どうしてですか?」
「ブラック企業だったから…」
「…あなたね、仮にも勤めていた会社そういう風に呼ぶんですか?単に貴方が能力的についていけなかっただけでは…おっと失礼。…本日はお疲れ様でした。合否の連絡は概ね1週間前後で郵送でお送りします。今後のご活躍を期待しております。」
「ウワァァァン(;_;)」

「性格が合わなくて…」
「へ?…会社にはいろんな人間が働いてて、性格が合わないなんてよくある事でしょ?あなたは気の合う人としか仕事が出来ない、と?それはちょっと困りますねぇ…はは。…本日はお疲れ(ry 」
「\(^o^)/オワタ

そう、ブラック企業を早く辞めても、それを単に「ブラックだから」だけでは信用してもらえない。解雇された腹いせや、退職の原因を隠すために嘘をいう者もいるため当然である。
そもそも上に記したような内容だけで前の会社の悪口雑言を垂れ流すだけ・自分の短所を露呈するだけでイメージが悪くなるばかりである。*3
中途半端に誤魔化しても、すぐ話に矛盾が出て「こいつ、絶対何か隠しているな?」と勘付かれたり、仮に通せたとしても「忍耐力のない奴」とでも思われたら、それだけでほぼ不採用確定となる。

詳細を説明するつもりなら、可能な限り具体的にかつ詳細に、何より客観的に、会社を辞めるに至った経緯を説明することである。
どのような条件*4で働いていて、どういった手順を踏み*5、どのように話が進んでいったのか*6?また自身の身体・精神状態はどうだったか?
詳細にメモをとり、書類や資料も残しておくとよい。日記をつけていればそれも役に立つだろう。
退職した後でも、忘れないうちに思い出せる限りの事を書き留めて整理しておこう。情報量と整合性を確保することで話に信憑性を持たせることができる。
もっとも、そうやってかき集めた資料を就活先がちゃんと目を通してくれるかというのは全く別の話だが。
また、仮に信用されたとしても、ネガティブな話ばかりでは面接官の心象は振るわない。なので、 そこからポジティブな話題・表現に無理にでも繋げて、前社での出来事を引きずらない前向きな人間と見てもらえるよう話を付け足したい。

法律も厚労省も次の就職先までは用意してくれない。
挙句過去の記憶が脳裏にちらつき、どの会社もブラック企業に見えてきてなかなか次の一歩が踏み出せないままずるずると生活保護に頼るばかりになっていくという例もある。
一度ブラック企業に勤めたら、それこそやめてもその呪縛に付きまとわれることを覚悟しなければいけないのだ。
それ以前に数年単位での職歴があるならまだいいが、新卒採用者にとっては特に深刻である。
そして、困窮の果てに履歴書さえ持ってくれば即採用、な会社に飛び込めたかと思えばそこもやっぱりというか ブラック企業だった… という、最悪のスパイラルにはまることも…


ブラック企業への対策

入社する前の情報収集、この一点である。
もちろん、入ってしまったのであれば場合によっては弁護士を頼んだり、労働基準監督署に駆け込むしかない。だが、これらは手間ばかりかかって効果は正直薄い。*7
法的手段を使って賠償を勝ち取っても、ブラック企業にいつまでも居続けられるわけがない。
第一、被害に遭わないに越したことはないだろう?
「とにかくブラック企業には入らない」ことが必須だ。
例え一時しのぎでも履歴書を汚さないためには早まった就職はしない方がいい。

だが、当然ながら、ブラック企業が自分で「私たちは法律を守らないであなたたちをこき使います!!」だなどと正直に名乗るわけがない。
会社説明の文章が響きだけやたらポジティブな文体まみれだったり…「アットホームな職場です」なんかはブラック伝家の宝刀である。
ブラック企業は、所詮労働者など使い捨てのコマ、補充の効く部品…否、一時の燃料くらいにしか思っていない。
ベテランの社員なんていつかないから、社員数が100人以上いるのに社員の30%近い人数を募集していたり、異常に若手ばかりだし、
新人にすぐ責任ある仕事を任せ、指導もバックアップもない。もちろん仕事がうまくいかなければ精神崩壊レベルの罵倒や理不尽な処分を言い渡され、逃げ出そうとすれば上記の通り損害賠償を毟り取ってくる。
アットホームと言えば聞こえはいいが、実際には私生活干渉がひどいということもある。

これはほんの一例に過ぎないが、ブラック企業を見抜くコツは結構存在している。

ハローワークで手に入る情報だけでも、よくよく見比べれば企業の体質が透けて見えてくる。
ほかにも、今ならブラック企業に関する情報がネット上に大量に流れている。
注意して欲しいのは、インターネットには解雇された腹いせにブラック企業呼ばわりされる、冤罪ブラック企業も稀に発生するという事。
こちらも情報収集で見分けがつく。とにかく情報を集め、よく考え分析しよう。




どうしてブラック企業になってしまうのか?

これも原因はいろいろある。
社長や上司がそもそも法律を知らないという例。
経営が危ないのをブラック化でごまかしている例。
ビジネス書を自分に都合よく曲解した経営者がブラック化させる例。
そもそも労働基準法のあり方自体、労働者保護に傾きすぎなので、ブラック企業を一概に責める訳にもいかないではないか?という指摘もある。

これらの指摘はどれも間違いだとは断言できない。
労働政策をどうするかは非常に難しい問題で、唯一の答えがあるものではないし、企業による部分も大きいからだ。
企業に都合のよいように法律を改正するように働きかけるのもまた、企業の自由であるだろう。
だが、「今ある法律を守らない」ブラック企業は許されてはならないのである。

そもそも、企業とはブラック・ホワイト問わず、常に資本主義的競争の荒波に飲まれているのだ。
収益を上げられない会社であればどんなホワイト会社であれ潰れる。
ブラック企業は確かに法的責任を問われるが、ブラック企業だから取り潰されると言う訳ではない。
つまり、ブラック企業が蔓延る社会=社員を使い潰すことで効率よく金が稼げる社会、である、と言い換えることもできるのである。
ブラック企業になれば社員にこぞって逃げられ、企業が成り立たない…ということであれば、ブラック企業は自動的に潰れ、根深い問題にはならない。
だが、労働者は、解雇されれば即座に家族まで含めて生活がピンチになる。
それだけでも労働者は立場が弱く、そのためにブラック企業はどうしても出てきてしまうし、そのために労働関係諸法の保護が存在しているのだ。

我々が忘れてはいけないことは、ブラック企業で搾取されているはずの労働者もまた、ブラック企業の片棒を担いでいるということだ。
ブラック企業の労働者の中には感覚がマヒしている人がおり、
ブラック企業を当然と思ってしまうので「労働法を守る」というそれだけの希望をブラック企業の社長と一緒になって非難する例が少なくない。
それだけではない。ブラック企業の経営者も、法律を破ってもそういう人たちが働いてくれるとタカをくくってしまい、ブラック企業は今日も平気で法律を破ってしまうのだ。
ブラック企業を容認して自分が苦しむだけなら自己責任と言えなくもない。
だが、それに他の人を巻き込む権利なんて誰にもありはしないだろう。ブラック企業の被害者だからと言って、一方的に同情ばかりできるわけではないのだ。

そしてまた、一般消費者もブラック企業の発生の一因と言える。
あなたは「無料○○」が好きだろうか?
値段だけはどんどん安く、サービス・品質はどんどん良く、でなければ嫌、となれば、真っ先にしわ寄せを受けるのが人件費。
その企業自身が明確なブラック企業でなくとも、下請けに対して無茶な要求をしているのであればその下請け企業がブラック化していったりする。

技術の発展や企業努力による価格破壊は歓迎されて当然だが、商品・サービスの低価格化が真っ当な努力によるものなのかどうか、消費者が知る機会は少ないのが実情である。

良質の商品・サービスには相応の対価を支払う姿勢と、安いサービスの裏に何があるのか一度は考える姿勢を持ちたいものである。

「何かにお金を払っていないのなら、あなたはそこの顧客ではない――あなたの方が売り物の商品なのだ」
(Joey Tyson著"You Are Not the Product"より)

意外かもしれないが、経営者の中には、当の労働者よりもブラック企業に厳しい考え方をする人たちも少なからず存在している。
ブラック企業がのさばって、カットした人件費で安値攻勢をかけたりすることが許されてしまえば、まじめに労働法を守っている企業がバカを見るからだ。
それでサービスの質が落ちていくのは、消費者にとっても他人ごとではない。
安値のみを追い求めた結果臨界点を突破し、最低限度の安全性すら守られない商品が世に出れば、取り返しのつかない大損害を蒙るのは消費者なのである。

更に、公務員批判としてよくある「サービス残業は民間では当たり前」。だが、本当は「サービス残業は民間のブラック企業なら当たり前」だ。
ブラック企業を批判すべきなのに、ブラックじゃないところをブラックに引きずり下ろして何の意味があるのか?
こんな不毛な批判はブラック企業が高笑いするだけだ。*8
醜いルサンチマンは、ブラック企業にとって追い風になっていることを認識すべきだろう。


どんなところがブラックか?

流石にここで社名を公表することはしないが、web上ではブラック企業ランキングやらブラック企業大賞が開催されるので、
興味のある人は見てみるといいだろう。
こうしたところでは、腹いせでのブラック告発も割と淘汰されていると言われる。

業界構造的にブラックにならざるを得ないことで有名なのが、中小企業の元請クラス、特に土建屋。
彼らは現場を仕切り、発注者からの注文に応えるために数多くの図面や資料を作成する。
そして下請の職人さんが現場で動いている間は基本、現場でその作業を監督する。
…じゃあデスクワークは何時やるの? 想像の通りだ。定時のアフター5からが大半なのである。
その日の作業が終わってから明日の作業の段取りをし、一方で発注者からの要請にも応え続けなければならない。
はっきり言って一人ですべてを残業なしに回すのは不可能である。だからといって、中小企業の規模では多人数をその現場につけられるような余裕はまずないのだ。
必然、現場担当にはとてつもない負担がのしかかる。
なんとか彼らの負担を軽減しようという良心的な会社だと、
一現場終わったら一週間とか10日間の休暇を与えてリフレッシュさせてから(というか現場が動いてたら土曜日なにそれおいしいの?である)次の現場に配置するが、
そんな余裕がない会社も多い。
伊達に3Kと呼ばれてはいないのだ。

そして広告代理店。
小規模なデザイン刑務所もとい事務所だけではなく、トップクラスの最大手もむしろ危ない。大手トップでも過労死(過労鬱による自殺を含む)やそれにまつわる裁判も何度か起きている。
不規則な生活が多いメディア業界や芸能界と関わるため、修正依頼も土日問わずやってくる。また、所謂ウェーイ系学生が入ることが多い業界であるせいか、セクハラやパワハラ、過労自慢が常態化しやすい風土もあり、過労で鬱になりだした社員にさらなる鬱材料を追加している。
過労自慢体質は出版社などメディア系全般の病理とも言える。

「社会的地位が安定したブラック職場」といえば学校や病院も少なくない。
特に学校では生徒の素行や家庭環境の問題も持ち込まれやすく、さらにその競技に全く詳しくないのに部活の顧問を押し付けられるのも常態化しており教員の過労に拍車をかけている。近年はこれを解消するために「部活の技術指導は外部コーチに」「ガチで競技をしたい子供は外部チームに行け」という方針も勧められつつある。
病院は所謂三次救急系病院、小児科・産婦人科・外科系がブラックになりやすい。特に産婦人科は出産時間をコントロールしきれない*9ため勤務が不規則になりやすく、そのくせ患者の親族側も「出産は大したことがない」とナメてかかっているためうまくいかなかった時のトラブルも多い。このため志望者が減っている診療科の筆頭を長年走っている。
学校教師や医師は「聖職者」として敬意を持たれる代わりに「聖職者なんだから」と特に義務のある訳でもない仕事や金額に見合わないクオリティの仕事を押し付けられやすく、当人もその気になりやすいのである。

また、アニヲタ的にはアニメ業界のブラックぶりも有名であろう。
アニメーターの多くはフリーという扱いなのでブラック「企業」とは厳密には異なるのだが、扱いのひどさは唖然とするものがある。
今のアニメーターの収入は新人だと年収50万にもならず、20代平均でも100万ちょい。実家の援助か生活保護なしでは生きていけないのだ。
作画崩壊という現象も、こうしたアニメーターの過酷すぎる環境が一つの原因であるとも言われている。

ほら誰ですか、そこで違法配信アニメ見ながら作画崩壊乙だのまーたアニオリかよ…だの「海外字幕UZEEEE」だの文句垂れてるのは?あんたみたいなのがアニメ業界をますますブラックにしているんですよ?


え?ノルマ未達成?じゃあ追記・修正だな…

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