作画崩壊

登録日:2011/04/14(木) 01:41:12
更新日:2022/11/28 Mon 09:07:12
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作画崩壊(さくがほうかい)とは、アニメを始めとする漫画、ゲーム、イラスト等で稀に起こる現象。



【概要】

素人目に見ても明らかに出来の悪い作画が発生すること。
基本的に趣味でイラスト等を公開するアマチュアではなく、
あくまでそれを職業とするプロのアニメーターや原画家が描いている場合に用いる。

アニメ等の媒体では動く絵を見せる事を第一とする都合上良作・駄作と評価を下す基準が作画の出来に左右される場合も非常に多く、
作品自体の評価の比重は絵がかなりの部分を占めているといっても過言ではない。

脚本や声優の演技はいいのに作画ひとつで台無しになることも多く、見た者を残念な気持ちにさせる。
原作がある作品で起こると原作ファンの怒りは並大抵のものではないだろう。

一部はソフト化・後日配信の際に修正される場合もある。

言うまでもなく2次元でしか起こり得ないものだが、時折実写作品において演者が凄まじい顔芸や怪演を披露した際には「3次元で作画崩壊」と表現されることもしばしば。
こちらは本来の意味での作画崩壊とは逆に、演技力の高さに対する称賛の意味を持つことが多い。

【要因】

さて、アニメ制作サイド、特に評価に直結する制作会社だって作画崩壊なんて起こしたいわけがない。
絵がおかしければ修正するなり描き直すなりしたいのが本音のはずである。

手抜きと故意は流石に記載しない。これに該当するのはおそらくロボ刑事番長くらいだろうし。
(このケース原作者の希望で雑なタッチをそのままアニメ化させた。)

作画崩壊が起こり得る主な原因は以下の通り。

製作費が少ない




アニメ作りに参加したいものは格別に安いギャラでこき使ってやるでゲス

好きでやってる連中は給料安くて済むでゲスな

そそ、そんな金はないゾイ!
タダで続きを作るから、許しておくれでゲス!

(※念の為に言っておくがこのセリフは第一話が大コケしたことへの損害をチャラにするための取引であるため、そのレベルのアニメしか作れなかったことは留意)
そしてレベルの低さで大好評

他の理由も辿っていくとこれに行き着くことも多い。
アニメ30分一話を制作するのに掛かる費用は1500万円前後と言われる。
アニメーターの待遇等を考えるとギリギリかそれ以下なのだが、ともかくこの辺りの相場を下回ると無理にでもコストを削ることになる。

その一環として1枚あたりにかける人件費を抑えるため、かける時間を短くするか単価の安いスタジオに発注するという手を使う。
前者は最初の絵の出来もさることながら、そこからのチェック→リテイクもおざなりになってしまいがち。
後者はそもそもアニメーターの技術が低かったり、海外スタジオだと言葉や距離の壁が災いしてクオリティの確保がし辛いといったことが起きる。

なお、海外スタジオ=単価・レベルの低いスタジオではないので注意。
経験や育成によりレベルが上がり、中国をはじめとしたアジア圏でも日本の下手な制作会社よりも技術や待遇で勝る会社は少なくない。

時間がない




なんですって!?明後日の朝に放送!?
間に合うわけないでしょ!
徹夜で働けばいいでゲショうが?
もう3日も徹夜しているんだよ~
アニメーターにも基本的人権はありますぞ!
ほぉ〜そう…?黙れ!我が国はあくまで独裁国!悪の枢軸ぞ~い!

起きろカービィ!
ぽ〜よ…
テレビ放送まであと5時間だぞ!働けぃ!
ぱぁゆぅ…


駄目よ!とても完成しないわ!
放送まであと20分あるぞい!
間に合わないよ~どうすりゃいいんだ!?
とにかく放送準備ぞい!傑作シリーズのスタートぞい!

(※まだ未完成段階の発言)

ぶっつけ本番でアフレコとは…正気の沙汰ではない…

(このアニメの声優は他の役職もこなしていました)


アニメ作品も一つの商品。当然売れる見込みのあるタイミングを狙って世に出される。原作付きの場合特に顕著。
なので制作の大枠が決まった時点であまり余裕のないスケジュールが引かれてしまうこともある。
全体のスケジュールの中で、デザインや脚本等のプリプロダクションが長引くと更に状況は悪化する。

こうして30分の1話で2か月前後、と言われる所要期間ギリギリを攻めたり、ひどいときはクオリティを確保し辛い外注を行ったり、チェックや修正を減らしたり……等せざるを得なくなり作画崩壊につながる。
公開開始前のストックを十分に確保できなかったり、単純計算では余裕があっても序盤の回で時間をかけ過ぎたしわ寄せが起きたりして後半では目に見えて息切れすることも……

作画監督のレベルが低い



絵がガッタガタでゲス!
絵が下手なのはキャラデザイナーのせいゾイ
作画監督も酷かったでゲスからね

(※作画監督と不仲である為これはあくまでも嫌味である)

リテイクの時間があっても、そもそも作画品質に責任を持つ作画監督がスキル不足では意味がない。
力量のある作画監督というのは貴重な人材であり、各社取り合いで捕まらないことも多い。

こうなると経験の浅いアニメーターに任せざるを得ないこともあったり、作業ペースが遅いのを人数で無理やりカバーする人海戦術*1をとって画風がちぐはぐになったり、
「腕が良く筆も早いが、画風が一昔前」或いは「キャラデザと著しく相性の悪い画風の作画監督」がピンチヒッター的に就いて「上手いけどなんかコレジャナイ画」が出来上がったりといった問題に繋がる。

作画チームのレベルが低い



才能はないけど根気だけはある物好きは腐るほどいるでゲス!
うんうん

姉ちゃん、皆才能ゼロだぜ…?
思ったより深刻ね…

ここ…こりゃ何ゾイ?
あまりにも酷すぎるでゲス
カービィの描いた絵だ…!
あぁもうダメ…

それに比べフーム良いね、目つき悪いけど
(※最後のは視聴者の感想です。)

作画品質の責任はまず作画監督が負うとはいえ、当然実際に描いているスタッフのスキルが低すぎればどうしようもない。
とはいえ、あからさまに技術の足りていないアニメーターやスタジオだと「普通は」仕事が回ってこない。
上記の原因やその他事情により普通じゃない事態になると、アニメーターの画力不足がそのまま表面化するという事も起こりうる。
なお、上記のうち3つ目のケースは現実の作画スタッフの息子(当時6歳)が描いた絵が使われているため、作中ではスタッフのレベルが低いとされているが、実際は違うため注意。

【対策】


キャラクターデザインを起こす際に無駄な線を極力省く、
なるべく動画枚数を減らすよう動きの少ない演出を心掛ける等、制作陣も苦心している。

視聴者の心を掴む一話、物語のクライマックスに当たる部分、最終回や原作の名シーンに力を注ぐ為、中盤で予算や労力を温存するのも一般的。
これは逆に名最終回を生み出す要因となったりもする。

しかし、こうした努力の上でも起きる時は起きてしまう悲劇なのである。

【事例】


トランスフォーマー

4クール以上が普通だった昔のセル画アニメでは、放送期間の長さや作画に掛かる手間から作画崩壊はそこまで珍しくも無かった。
しかしこの日米合作シリーズは本当に息つく間もなく作画が乱れまくることで有名で、
陰影が無い、輪郭がフニャフニャになる、武器を持つ手が逆になる、配色がフェイズシフト装甲ばりに変化しまくる、
また作画ミスも毎回の如く発生し、キャラの立ち位置がシャッフルされる、顔が突然ブサイクになる、ビームが銃口からはみ出る、破壊された者が一瞬で修復される、軍隊のマークが敵軍のものになる、
酷い時にはキャラが分身する、描くキャラを間違える、セル画の重ね合わせミスで巨大化するなどもはや名物と化している。

ロスト・ユニバース

作画崩壊の代名詞的な作品の1つ。通称「ヤシガニ」(第4話「ヤシガニ屠る」に於いて特に作画が悪かったことに由来)。
そもそも企画段階からスケジュールが無茶苦茶だったことにより、
オープニング映像の大部分が未完成のまま放送開始。作画監督飛ばし(いわゆる「ノー作監」)が行われるに至ったせいで本編の作画も酷いことになった。

夜明け前より瑠璃色な

作画崩壊の代名詞的な作品の1つ。通称「キャベツ」(第3話の料理シーンで、出てきたキャベツが緑色の球体状の何かであったことに由来)。
ヤシガニ同様無茶なスケジュールがたたり、作画監督が仕事を全う出来なかったパターン。

MUSASHI-GUN道-

作画崩壊の代名詞的な作品の1つ。
特定の話とかシーンとかいうレベルではなく、全26話の大半が作画崩壊回という偉業?を成し遂げた。2006年放送の作品で、である。
うろ覚えで描いてるのかと思うぐらい作画の安定性が低い。
作画ミスもかなり多く、キャラの基本的な特徴を間違えることも度々。
口パクしていないぐらいなら普通、口パクがズレて別のキャラになる、キャラの一部が透過して背景が透けて見える、描くキャラそのものを間違えるなどといった大事故を数えても片手では到底足りない。
10話~12話の3話、通称「小早川三部作」はもはや伝説。

「ヤシガニ」「キャベツ」「ムサシ」の3作を「三大作画崩壊アニメ」に数えることも多い。

【注意】

なお、「作画崩壊」とは作画のクオリティが著しく低い場合を指すのであって、
「大きさがおかしい」「色が設定と違う」「状況的にありえないものが描かれている」「指の数がおかしい」などの不備は「作画ミス」と呼ばれて区別されている。

また、80年代辺りまでのアニメでは画風の統一は今現在よりも厳密ではなく、担当作監毎の絵柄が強く出やすい傾向にあったため
回ごとにキャラデザの画風が異なることが一般的であった。
「あくまで画風が異なる」のであって絵の乱れとはまた違う話しであるため、これも作画崩壊とは呼ばないので注意。

また、
1. 静止画として見ると崩れている作画であっても、動画として見ると迫力のあるカットになっている
2. 金田伊功・湯浅政明の様に最初からパースが歪んだ空間であることを表現する
3. メディアミックス化の際に、意図的に原作の雰囲気から掛け離れたデザイン・設定表を採用する(事例:代替わりする毎に美しくなる彼女とか一度も原作通りになったことがない彼女とか原作者が尊敬するアニメーターの全面アレンジとか原作を手掛けたデザイナー自ら原作のイメージから様変わりさせた例やほぼ全シリーズ毎で版画調からぬいぐるみ調のデザインになったシリーズやロトスコープを全面採用したあの作品やゲーム版・第2のアニメ版で劇画調になったあの作品
4. エンドカード・記念ムック等で起用されたゲストが好き放題に解釈して描く

これらは作画崩壊ではありません。はやる気持ちを抑えて、
1は「中割り*2」・2は「金田(湯浅)パース」・3は「リファインデザイン」・4は「トリビュート(或いはアンソロジー)」と呼ぼう。
そうしないと、許可を出した原作側にもアレンジした制作陣にも失礼だ。

そもそも、本来アニメーションとは動画用に描かれた絵の連続で表現するものであり、途中の部分をキャプチャーした静止画に難癖付けるのはナンセンスというもの。

アクションシーンの中割りなどは、躍動感を表現するために意図的にデフォルメすることが多い。
静止画として見ると骨格がおかしかったり、輪郭がブレていたりすることは多いが、動画としては迫力あるものになっていたりする。
特にベテランのアニメーターが担当すると、この傾向が顕著。
止め絵をしっかり描いて中割りを意図的に崩している。

これは昔からある表現技法なので、動画の一部を切り取ってネタにしたり、作画崩壊だと騒ぎ立てるのは
技法についての知識もない奴がおちょくるだけの無礼な行為である。

また、表情などをほとんど視認できないロングショットなど、フニャフニャな作画でも動画にしたときにほとんど違和感のないものも存在する。

良識あるファンならば、アニメの絵は動画として楽しもう。

確かに、絵心のある人にとっては僅かなデッサンの狂いに腹立たしさを覚えるかもしれない。
しかし絵の知識に乏しい人からすれば「どこが?」と思えることもあり、粗探しも過ぎると作画厨扱いされかねない。
よっぽど酷いのはともかく、多少なら気にしない…或いは気づかず純粋に楽しむ人も多いので自重も大事である。
絵の質も作品に没入するための大事な要素ではあるが、それのみならず全体の出来こそが何よりも注視すべき点だろう。

ちなみに、多くの現場において作画監督はあくまで原画の責任者であり、動きのチェックは動画検査などと呼ばれる。
本当にアレなケースでもやり玉に挙げる人を間違えないように。



















【おまけ ~画伯達が描いたシーン~】

ふぅ、真面目な説明はこんくらいでいいだろ。



作画崩壊……それは時に芸術を生む。

見た者の腹筋を崩壊させるシュールな絵面が生み出されることがあるのだ。

描く方がある程度狙ってやってる顔芸と根本的に違うのは、
プロが真面目にやっているのに明らかにおかしいところだろう。いってみればシリアスな笑いに近い。


以下、良い作画崩壊集(画像がなくなった為例として作品名のみ)


1. キャラクターやメカのデザインが明らかにおかしい(いわゆる「かんたん作画」)

出典:魔法少女リリカルなのはStrikerS 、8話、セブン・アークス、
2007年4月~9月、©なのはStrikerS PROJECT
  • この青空に約束を―
  • かみちゃまかりん
  • みなみけ~おかわり~
  • PSYCHO-PASS サイコパス(公式で謝罪文が出た)
  • サムライフラメンコ(海外発注の作画が、カット300枚に対してリテイクが200~250枚)
  • ポケットモンスターXY(主にデデンネ関係。なお、後番組であるサン&ムーンは動きに特化したキャラデザを基に作画しているので賛否両論はあるものの作画崩壊には入らない)
  • GANGSTA.(サムライフラメンコと連続で作画崩壊を起こして、製作会社が倒産)
  • メルヘン・メドヘン(作画クオリティ改善として第9話・第10話の放送が延期となり第1話・第2話の再放送を実施。しかし数週間後にようやく放送されたその最新話は誰の目から見てもわかる崩壊ぶりを映していた...作画クオリティ改善とは一体。終盤の第11話・第12話はもろにスケジュール崩壊の影響を受け、放送されたのはなんと一年以上後という異常事態となった)
  • 俺が好きなのは妹だけど妹じゃない(先行上映が制作上の都合で中止になった時点で危ぶまれていたが、やはり2話で崩壊し、その後作画崩壊が続き、10話中9話が作画崩壊したという異様な作品となってしまった)
    6話ED原画クレジットの正直困太も本作を語る上で欠かせない。
    BDの発売を2ヶ月延期し作画修正して発売すると期待されたが、肝心の中身が作画修正を全くせず、TV版の作画のまま発売するという暴挙に出た。
出典:俺が好きなのは妹だけど妹じゃない、3話「俺と妹は二人で一人のラノベ作家だ」より、
18年10月10日から放送中、NAZ × マギア・ドラグリエ、いもいも製作委員会、
©2018 恵比須清司・ぎん太郎/KADOKAWA/いもいも製作委員会

2. 動きがカックカクで不自然
  • 天空戦記シュラト(シュラってる)

3. 2とは逆に動きを出すために人物の画像(骨格など)がヘン
  • NARUTO(サスケェ…)
  • 鉄腕バーディーDECODE:02(演出)
  • 遊戯王デュエルモンスターズ(伝説の第200話。井上善勝監督回)

4. 全てがおかしい
  • 超時空要塞マクロス(よく出来ているところと、出来ていないところの格差が激しすぎる)
  • MUSASHI-GUN道-(最初から最後まで酷かったが、最後には自分達でネタにしてしまっていた)
  • ガンドレス(作画ばかりでなくキャラの色が良くて3色、最悪単色。DVD発売時には修正前が特典になってしまった)
  • 学園都市ヴァラノワール(OVA)(尋常でない作画枚数の少なさ、紙芝居というレベルを越える)
  • DYNAMIC CHORD(珍妙なパースに画風の違いすぎるモブ、背景美術や意味不明な演出も手伝って2017年最強のネタアニメ扱いされた)
  • ロスト・ユニバース(ヤシガニ、OPすら未完成…、しかも最先端の試みである3Dは納期を守れていた上に品質すら安定していた)
  • 夜明け前より瑠璃色な(キャベツ)
  • EX-ARM(主要キャラは3DCG、サブキャラは2Dという組み合わせだが、メインの3DCGの方がモデルも動きも低品質で専門学生レベル。更に2Dの絵は画風が合っていない)

しかし、上記の「三大作画崩壊アニメ」に代表される、映像全体で作画が大きく崩壊している作品はともかく、
明らかにコマ送りをしてたった一瞬の不自然な部分(所謂中割)を

「作画崩壊w」

とか言っている無礼な人間もいる(愛ゆえに言っている場合もある。というか上記3のパターンがそれ)
皆さんはもっと寛容な心を持って、純粋に作品を楽しんでいただきたい。

なお、2002年に朝霧の巫女東京ミュウミュウサイボーグ009で作画崩壊の同時多発テロが起こったのだが、
その隣で星のカービィが放送したのがあの「星のデデデ」である。

また、デュエル・マスターズVSRF第20話では作画崩壊をネタにした回がある。
詳しくは当該項目参照。




追記・修正はミスヤシガニを受賞してからお願いします。

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最終更新:2022年11月28日 09:07

*1 1話毎に4人以上なんてことも。但しこれは「エフェクト担当」「メカ担当」「キャラ担当」等得意不得意を見抜いた上で、それに集中できるように配置している戦略的演出というケースもあるので、一概には悪くは言えない。まぁズラッと並んだ場合は少し怪しい。

*2 動きを埋めるためのカットのこと。

*3 ちなみにOPのアムロのパイロットスーツが青いので有名だが、これは色指定ミスではなく、同じく白い文字であるために被ってしまうスタッフロールの文字を見やすくするために敢えて青い色にしたものである。