風の谷のナウシカ(漫画)

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風の谷のナウシカ(漫画) - (2016/04/30 (土) 20:48:06) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/05/22(火) 22:11:26
更新日:2023/07/23 Sun 22:28:53
所要時間:約 13 分で読めます




映画『風の谷のナウシカ』の原作漫画。
作者は宮崎駿。全七巻。

【概要】
有名な映画の原作にあたる作品だが、映画の話はこのうちの2巻の途中くらいまでであり、2巻部分は展開もかなり異なる。

当時の慣習では原作無しのオリジナルアニメの企画を通すのが困難だったことから、
「じゃあ原作をでっち上げればいい」ということでパヤオが自分で描いたという経緯がある。

そんな不純な動機で書かれた割には非常に気合の入った大傑作である。
しかし映画と比べシリアスかつ残酷な展開が多く、間違ってもトトロポニョ
あるいは映画版ナウシカの気分で読むのはオススメしない(火垂るの墓くらいの覚悟で読むべし)。


映画版と同じく序盤は自然破壊をテーマにしているが、中盤は民族紛争、後半は生命倫理的な話になってくる。
スタジオジブリ設立からラピュタ・トトロ等の製作に時間を割かれてかなりの中断期間を経ている。
その間に起きた湾岸戦争はパヤオの価値観にかなりの衝撃を与えたらしく、本作終盤に相当な影響があったと後に述べている。
※似たような話は他にもあって、福田己津央も現実の戦争がお茶の間で流れる光景に受けた衝撃がガンダムSEEDに繋がったと話している。
あの戦争、何気に本邦の二次文化にすげー足跡を残しているのだ。


【あらすじ】
巨大産業文明が「火の7日間」と呼ばれる戦争によって滅び、大地が荒廃した世界。
汚染された大地は腐海と呼ばれる巨大な菌類の森に呑まれようとしていた。

「火の7日間」から1000年、小国風の谷の族長の娘ナウシカは、古き同盟を果たすためトルメキア王国の戦に招集されていた。
そんなある日、墜落するペジテの船を発見し、残骸から発見したペジテ市の姫ラステルからいまわの際に秘石を託される。
しかしクシャナ率いるトルメキアの親衛隊が秘石を追って風の谷に現れる。
ナウシカは秘石を守るために戦っていく。それが世界の真実を巡る戦いになるとは知らずに…


【主な登場人物】

◆ナウシカ
ご存知主人公兼ヒロイン。
映画版ラストの王蟲の来襲を退けた後も、終わらぬ戦争に自ら身を投じていき、やがて世界の真実にたどり着くことになる。
性格などは映画版と差異はほぼないが、躊躇なく殺人を行う場面もある。
しかし、漫画版は映画版とは比べものにならない程シビアな世界なため、あれぐらいでないと生きていけないのだろう。
映画版のナウシカが聖母的美しさなら、漫画版は戦乙女といったところか。

◆クシャナ
トルメキア帝国第四皇女。通称・殿下。
基本的なキャラクターは同じだが若干道化くさかった映画に対し、
戦略家としても優秀で彼女の為なら命を投げ出す部下が大勢いるなどカリスマ溢れる人物として描かれている。
手段を選ばず世界を変えようとする、ナウシカとはベクトルの違うもう一人の主人公。事実、ナウシカ以外で唯一表紙を飾っている。
ナウシカが終盤になるにつれて人間離れしていくのに対し、彼女は人間らしさを取り戻していくため「漫画版のヒロインはクシャナ様」と語る親衛隊員は多い。
漫画版ではそんな彼女の悲しい過去も語られる……
映画と違い五体満足である。

◆クロトワ
クシャナのサポートに送られてきた軍参謀。
貧乏な地方出身の平民軍人。
映画同様冴えない野心家なおっさんだが、クシャナの謀殺をかわすなどかなり狡猾な一面も見せる。
実は凄腕のコルベットの操縦士で幾度となくその卓越した腕前を見せるカッコいい一面も。
クシャナ殿下に膝枕してもらったうらやましい奴。

◆ユパ
腐海一の剣士で風の谷の族長ジルの親友。
やっぱりかっこいい。恐らく白兵戦では作中最強。
30人以上を相手に無双したり離陸直前の船に飛び移るというとんでもない芸当をやらかすスーパーおじいちゃん。
その上すごい博識。

◆アスベル
工房都市ペジテの王族の息子でラステルの双子の兄。
映画同様ガンシップで暴れまわりクロトワに撃墜されて腐海に落ちたところをナウシカに助けられる。
その後ひょんなことで出会ったユパと共に旅に出るが…

◆僧正
土鬼(ドルク)に属するマニ族の族長。
すでに盲目であり卓越した念話(テレパシーのようなもの)の使い手。
原作での大ババ様ポジ(大ババ様も登場する)。
ナウシカに希望を見いだし、本国からやってきた皇弟に逆らって命を落とす。

◆皇弟ミラルパ
土鬼の支配者。異能の力を持つ。
すでに悠久の年月を生きているが、クローン技術を恐れて延命医療のみで生きながらえている。
ナウシカを危険視し、その命を付け狙う哀しき宿業の男。
死してなお彼女をストーカーする元祖カオナシ。

◆皇兄ナムリス
皇弟の兄。異能の力が無いために実権を握れずにいたが、クーデターを起こして実権を奪い取る。
クローン技術などを用いて永遠に近い年月を生きられる不死身の身体を手に入れている。
人を信頼しておらず、部下としてヒドラと呼ばれる人造生命体を連れている。

◆チヤルカ
土鬼の叩き上げ僧兵の将軍。
ミラルパに忠誠を誓うが、一方でミラルパの所業を憂えている。
ナウシカと知り合うにつれて彼女の言葉に心を動かされるようになる。

◆チクク
ナウシカが砂漠のオアシスにあった、僧会に弾圧されて時代の影に潜った古代密教の僧院で出会った少年僧。
まだ幼い子供でありながら念話や読心を得意とする。

◆ケチャ
土鬼に属するビダ族の娘。
僧正の部隊に所属していたが、騒ぎに巻き込まれてユパやアスベルと行動を共にする。
家族を奪ったトルメキアを憎んでいる。

◆セルム
腐海に住み、蟲や粘菌生物と共存して生きる森の人の代表者。セライネという妹がいる。
腐海の真実を知る者であり、腐海に取り込まれて自我を失ったナウシカを救うべく尽力する。

◆蟲使い
腐海に入り、蟲を捕まえて使役する者達。
不衛生な生活習慣や、死人の身体を漁って金品を奪う行為から、この世界の人々からは最低辺扱いで嫌われている。

◆ヴ王
トルメキアの王でクシャナの父(ただし先代の王の血を引くクシャナを自分の王座を脅かす者として殺そうとするなど、王家との血の繋がりはない模様)。
すでに小太りのジジイだが、冷酷で強情で豪胆な人物。
ある巡り合わせでナウシカと共に世界の真実にふれることになる。
そっくりなピザな息子が三人いる。

◆王蟲
腐海に住む蟲たちのトップに位置する存在。
非常に堅い甲殻を持ち、念話で会話するなど高い知性を持つ。
しかしなぜか土鬼はこの王蟲すら培養する技術を持っている。

◆巨神兵(オーマ)
ペジテの地下より発見された古代の生体兵器。
最初は骨組みだけの状態だったが皇兄によって再生され、秘石を持つナウシカに呼応するかのように目覚め、母のように慕う。
当初は生まれたての赤ん坊レベルの知性しか持たなかったが、ナウシカからオーマの名を与えられたことで知性が急速に進化する。
高い火力と空を自在に飛ぶ能力を持つが、肉体からは毒の光が発せられており、長時間ともにいると死に至る危険がある。

◆庭の主
旧世界の芸術や動植物が保存されている「庭」の主。
1000年以上を生きてきた人工生命体で、あらゆる言語を話し、強力な超常の力を操る。
腐海による世界の浄化が終わった時、「庭」を解放する役目を持っている。

◆墓所の主
ラスボス。
世界の復興を目的に、旧世界の人間により創造された浄化の神。
土鬼の聖都・シュワに存在する旧世界の墓所、その最深部に配置されている肉塊。
腐海や庭の主、旧世界の超技術を欲する人々を利用する事で、世界を司ってきた。

【専門用語】

  • 辺境国家
腐海に隣接する小国のこと。
辺境諸民とくくられるが多くがトルメキア王国と同盟を結び帰従している。

  • 風の谷
塩の海の近くに位置する小さな辺境国家。
風のおかげで腐海の毒から守られている。

  • トルメキア王国
武力で世界を支配する国家。
後にトルメキア戦役と呼ばれる戦争を起こし、土鬼へ侵略する。
土鬼と二分する勢力を誇る大国で風の谷を含む辺境諸国と同盟を結んでいる。
土鬼側が厳しい規則で旧世界の技術を自制していたため、事実上最大の戦力を誇る国となっている。

  • 土鬼(ドルク)諸侯国
トルメキアと世界を二分する宗教国家。
諸侯国とあるように近隣の部族の集合体である。
僧会と呼ばれる宗教団体が政治や軍事の実権を握っており、その頂点に超常の力を持つ神聖皇帝が君臨している。
聖都シュワでは火の七日間以前の技術が保存されており、本来の戦力はトルメキアをもはるかに凌ぐ。
しかし、強大すぎるが故に不死身の兵士ヒドラの使用を禁じるなど、旧世界の技術を規制している。
最終的にはなりふり構わず旧世界の技術を乱用したが、その力で逆に自国を壊滅させてしまった。

  • ペジテ
地下から旧世界のエンジンなどを発掘する工房都市。
トルメキアに帰順しているが、民族としては土鬼に近い。

  • 大海嘯
火の7日間の後に3回あったと伝えられる、腐海が突如に沸き津波のように押し寄せてくる大災害。
すでに300年間起きていなかったが、ナウシカは王蟲の大移動が大海嘯の前触れではないかと思っている。

  • シュワの墓所
土鬼の首都シュワの中心部にある黒くて四角いピラミッドのような建造物。
そこには旧世界の秘密が眠ると言われている。

  • 超常の力
いわゆる超能力。ごく一部の人間が持つ先天的な能力であり、墓所の技でも身につけられない。
声を使わずに直接相手の心に語りかける「念話」や人の心を読んだり入りこんだりする能力などがある。 


以下ラストのネタバレ



















滅びをもたらすとされた腐海も蟲たちも、旧世界の人間が作り出した地球を再生するための浄化システムであり、
人間は汚染された大地で生きられるよう作り替えられた(しかしそれは不完全であり、出生率は下がり、歳をとると体が石のようになってしまう奇病が蔓延している)ため、
腐海が生み出す清浄な世界では生きられない身体となってしまっている。

シュワの墓所の主は土鬼皇帝のように従う人間に延命技術やヒドラの生成技術などの力を与え、
清浄な世界を取り戻した暁には身体を元に戻すことを約束して使役し、再生を進めていた。

しかしナウシカは人としての尊厳を選び、生きていくことで人も腐海も蟲も変わっていくことに希望を託して拒絶し、シュワの墓所を破壊、
他の人々には真実を告げぬまま、秘密を抱えて生きていくのであった。



ワイド版でありながら全巻セットが2780円とリーズナブル価格である。

古い作品のため最近は置いてない本屋も多いが、
コンビニやヴィレッジバンガードのジブリコーナーなど意外なところにあるので興味ある人は探してみよう。



追記・修正はメーヴェに乗りながらお願いします。

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