SCP-161-JP

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SCP-161-JP - (2020/04/26 (日) 12:56:07) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/02/02 (木曜日) 11:39:00
更新日:2024/05/04 Sat 14:14:46
所要時間:約 5 分で読めます



SCP-161-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『伊れない病』。オブジェクトクラスは堂々の「Keter」に指定されている。

SCP-161-JPは「伊る」動作及び概念を認識できなくなってしまう精神的な異常だ。
一度この異常を発症してしまうと、「伊る」動作や、それに関係する概念への認識が、過去にさかのぼって失われてしまうのである。

例えば、日本の伝統芸能である『能』は、その殆どに「伊る」仕草が用いられているので、SCP-161-JPを発症してしまった犠牲者には能楽師の演技が正常に認識できなくなってしまう。
その結果、折角の伝統芸能が「和装をしてお面を付けた人間が、扇子を片手に舞台上をウロウロと歩き回っているだけ」という、風雅も何も無い非常に残念なものに見えてしまうのである。

…動作に共通点の多い『狂言』好きの筆者としては困る異常である。

しかも、このオブジェクトには厄介なオマケが付いている。
通常、記憶に干渉する類のSCiPは罹患した後でも改めて覚え直すことである程度のリカバリーが可能なのであるが、SCP-161-JPにはそれを妨害するトンデモない後遺症が付随しているのである。

なんと、SCP-161-JPの犠牲者に再び「伊る」という単語を教えようとして、その読みを認識させると対象は漏れなく逆行性健忘を発症してしまうのだ。
この症状で失われる記憶は、「伊る」を耳にしたり、読み方を認知したりしてから過去数時間の記憶である。

具体的にどうなってしまうのかは、下記の実験記録の抜粋を参照して頂きたい。

【 研究員は 『子供が庭で伊りまわっている』と書かれたホワイトボードを指し示した 】
研究員「この文章を音読してみて下さい」
被験者「子供が庭で……、い…イりまわっている…か? わかんねぇな」
研究員「そこは『伊りまわっている』と読むのではありませんか?」
被験者「ん? あっ、そうそう! 伊るだよ伊る! ド忘れしてたよ。かー…、アレ? か…か……」
【 被験者は突然無表情となり、約5秒間にわたって眼球を左右に激しく痙攣したように動かした 】
研究員「大丈夫ですか?」
被験者「……ん? いや、ちょっと頭痛がしただけだよ。ところでさぁ、さっき言ってたテストっつーのは、まだ始まんないのか?」

ご覧の通り、被害者の記憶が「伊る」という単語を学習する前にまで巻き戻ってしまうため、どんなに努力をしても「伊る」概念を再び教えることが不可能になってしまうのだ。

残念ながら、我らが財団の総力を挙げた研究によってもこの異常の元凶を突き止めることは出来なかった。
有効な治療法も、予防法も未だに未解明のままである。

SCP-161-JPの犠牲者は未だに増加し続けており、このままでは人類の文化が訳のわからない単なる動作の連なりに変貌してしまいかねない。

最悪の事態に備え、財団はユネスコの全面協力のもと、伝統舞踊・武道・スポーツなど、「伊る」動作が関わる無形文化財の超長期保存計画に着手することにしたのである。



類似するオブジェクト

SCP-161-JPのように、元に戻すどころか当人に自覚させることすら不可能な異常をもたらすSCiPを財団はいくつも収容している。

…財団の明日はどっちだろう?

SCP-216-JP(通称・タブーなんてない)
中身を読んでしまうと、自分が最も禁忌であると考えている物事を実行したくなってしまうミーム汚染を引き起こす本。
とあるTALEでは、ある要注意団体の元凶となってしまった事も…。

SCP-984-JP(通称・@抜き言葉のすすめ)
一時期話題となった「らぬき言葉」と似たような感じに、特定の文字を使わずに暮らしましょうという啓発本…等に見せかけた認識災害を齎すオブジェクト。
本の内容を読んでしまうと、実際にその文字を認識できなくなってしまう。
因みに、此方には半濁音や踊音、要は「  」等の文字が認識できなくなるトラップが仕込まれていた。

SCP-1561(通称・暴君の託け)
本来なら、言葉にすることすら憚られる美しい装飾の施された王冠でございます。
少し頭に頂いてみれば、王冠の功徳により貴方は王になれるでしょう。


また、発動してしまうと関係者の過去の記憶に干渉して書き換えたり、時には現実改変まがいの異常を引き起こしてしまうSCiPも多数収容されている。


SCP-968-JP(通称・鎮魂歌)
今は亡き人気歌手、███氏の歌である「〈検閲済み〉」のある特殊なバージョンにのみ発生するSCiP。
曲を聞いた者を消滅させ、20世紀に起きたある航空機事故(貨物便が墜落した事故、とのこと)の犠牲者に後付けで追加してしまう現実改変を引き起こす。
ちなみに報告書では「せめてもの辻褄合わせのため、事故について『公的には旅客便墜落事故と偽装する』というプロトコルを実行済」とある。つまりSCPの世界観における「あの事故」は…?

SCP-1082-JP(通称・母犬のために)
紙を顔面に押し当てた相手の頭部に、描いてあるとおりのボールギャグを装着させてしまう設計図。
ボールギャグをはめられてしまった犠牲者は、その瞬間から第三者には犬に見えるようになってしまう。
しかも、関係者全員の記憶を書き換えて犠牲者が元々犬だったと誤認させてしまうおまけ付き。



財団の懸念

幸い、「伊る」動作は日常生活とはあまり縁がない。
しかし、もし「眠る」や「食べる」、「佐う」といった概念が消滅することになってしまったらその被害は甚大なものとなってしまうであろう。
財団は、早急な対処法の確立が必要と考え対策を練っている最中である。





「追記・修正」が消滅してしまわない事を祈りつつ……















































メタ視点からの余談


結論から言うと、

「伊る」「佐う」という言葉はこの世に存在しない。

このオブジェクトのように、財団の存在する世界にだけ通用している概念や用語を登場させ、見た事も聞いたこともない言葉を目にした、
第四の壁の向こう側に居る我々を混乱させる事を狙ったメタ的なオブジェクトも少なからず存在している。

また、このようなケースとは反対にオブジェクトの暴走などによって財団世界では既に手遅れな状態となっており、
第四の壁を超えた我々にのみ真相が見えているオブジェクトも存在している。


SCP-240-JP(通称・0匹のイナゴ)
農家さんへの嫌がらせか、自らが駆除されたという事実を過去改変によって「なかったこと」にしてしまうイナゴ。

SCP-522-JP(通称・空気中フランスパン濃度測定所)
謎の概念を測定する装置…のように見えて、実は!?(続きは当該項目で)

SCP-411-JP(通称・尊い犠牲)
手を触れた相手に永続的な疼痛を発生させる…だけではなく、【死と苦痛が無常の喜びである】という恐るべきミーム災害をばらまく人型のオブジェクト。
財団は、ミーム災害にかかった犠牲者たちの行動を先読みする事でこの怪人を封印することに成功した…自らの存在そのものと引き換えに。

オブジェクトの考案者たちは、時に第四の壁すらネタとして利用してくるため油断は禁物である。

繰り返すが、「伊る」も「佐う」も、そして『@抜き言葉のすすめ』の項目でさり気なく触れられている「 」も、
第四の壁の向こう側にいる我々の世界には初めから存在していないのでどうか安心して頂きたい。

あと、フランスパン濃度もーー




追記・修正は、次はどんな『財団世界のみに存在する概念』が登場するのか予想しながらお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-161-JP – 伊れない病
by undercat
http://ja.scp-wiki.net/scp-161-jp

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