SCP-030-JP

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SCP-030-JP - (2020/06/22 (月) 07:12:49) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/04/21 (金曜日) 11:49:02
更新日:2023/11/02 Thu 14:49:05
所要時間:約 5 分で読めます





食らって、増えて、埋め尽くす。


SCP-030-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『石油喰らい』。
JPのコードが示す通り、日本支部生まれのオブジェクトである。
オブジェクトクラスは文句なしの「Keter」。

概要

コイツが何かと言うと、昆虫の一種である。
具体的な特徴などを語る前に、まず特別収容プロトコル。

SCP-030-JPの全ての個体は一切の石油製品が使用されず建造された特別収容サイト-8161内の、同じく石油製品を一切使用していない特別性のAクラス危険生物収容室に収容されなければなりません。
SCP-030-JPの給餌のため100gのポリエステル繊維を毎日持ち込むことを除いて、サイト-8161には一切、石油、石油製品、そのほかあらゆる石油が利用された物質を持ち込んではなりません。
収容されているSCP-030-JPの数が10匹を超えた場合は10匹未満に数が減少するまで間引いてください。
封じ込め違反が起こった場合は、サイト-8161を完全に封鎖した上で内部に有機リン系殺虫剤を充たしてください。それでもなおSCP-030-JPの脱走の可能性がある場合、サイト-8161に備え付けられた、石油製品未使用の特別性水素爆弾を起動してください。

収容する場所にはとにかく石油製品を使うな、10匹以上に増やすな、収容違反が起こったらサイトごと抹殺しろ、それでも止まらなかったら水爆で吹っ飛ばせ、と厳重な上にやたら物騒である。
が、注目すべきはこの後。

現在財団の管理下に置かれていないすべてのSCP-030-JPは完全に絶滅させることになっています。財団の管理下に入っていないSCP-030-JPが発見され次第、機動部隊乙-ち("臭水守")が対応に向かいます。

このオブジェクト、この世から完全に消し去らなければならないという方針なのである。
こういう収容プロトコルは他にもないわけではないが、財団としては割合珍しいスタンスである。

なぜか?
それは、コイツの持つ特性が、ひいてはコイツの存在そのものが、K-クラスシナリオに直結するからである。引き金どころではない、原因そのものなのだ。

その特性とはずばり、項目名が示す通り、石油および石油製品を喰って生きている、ということである。
ちなみに外見はというと、白い毛でおおわれた20cmほどの芋虫であり、翅や触角の類はない。足はあるが、木の枝につかまることも出来ないほど貧弱であり、移動能力はないに等しい。
生物学的にはカイコガに近いが、成虫にはならず幼虫の姿のまま生育する*1

カイコガと同じなら、野生で生きることは出来ない。
移動もまともに出来ないのなら、脅威ではないのでは? と思うかもしれないが、甘い。

この虫ども、その弱点を補うかのように、繁殖能力が恐ろしく高いのである。
全ての個体は同時的雌雄同体であり、さらに単為生殖・両性生殖の両方が可能。加えて、先述したように幼虫の姿のまま成虫になるため、単独でも繁殖が可能。
さらに、一度の産卵で300個以上のタマゴを産み、さらには完全な成長までたった3日しか要さない、というとんでもない増えっぷりなのである。

現実だとこの手の害虫については、生殖能力を持たない個体を放つことで個体数を減少させる措置が取られることがあるが、この虫どもにはその手が通用しない。必要なら単独で子孫を増やせる上に、3日で成長する=繁殖可能になる。
これでは止めようがない。

しかし、昆虫なら鳥や獣が食べるのでは? と思ったかもしれないが、それも甘い。
何とこの虫ども、自然界には捕食者が存在しない。
他の生物にとって非常に不快な味を持つ上、消化吸収できる能力を持った生物がこの世に存在しないからである。いるとすればそれこそSCiPであろう。

そして最大の特徴は、上記した通り石油および石油製品を喰って生きている、ということである。
しかも、排泄物には可燃性がなく、エネルギーには出来ない、というごく潰しっぷりである。

追い打ちをかける事実として、この連中は個体の寿命はわずか30日だが、死骸の自然分解の速度が著しく遅い。
ならば人工的手段で処理すればどうだ、となるが、面倒なことにプラスチック同様、800度以上の高温で、適切な方法で処理しないとダイオキシン系の有毒ガスが大量発生する。
さらに、コイツが食べるのは石油と「石油製品」である。
灯油や重油などの油はもちろん、プラスチック、アスファルト、一般的な繊維、糸、ゴム、化粧品、洗剤、etcetcetc……逆に、何が食べられない? と聞きたくなるレベルである。

特性をまとめると、
  • 石油と石油でできたもの全てを食べる
  • 3日で繁殖できるまで成長する
  • 単体で繁殖でき、一度の産卵で300個体以上増える
  • 自然界にいても捕食されない
  • 寿命が短い
  • 死骸の分解速度が途轍もなく遅く、処理をミスると毒ガスが大量発生する。

と、人類社会にケンカを売りに来たとしか思えない呆れた連中である。


こんな連中を放置しておけば、1年かからずこの虫どもの死骸で地球が埋まってしまう。
NK-クラス:世界終焉“グレイ・グー”シナリオであると同時に、石油製品が食い尽くされれば人類社会は滅亡する。
XK-クラス:世界終焉シナリオの原因でもあるのだ。何なんだコイツら。

一応カイコガらしい特徴として、一定量の石油や石油製品を食べると、ポリエチレンテレフタレートの糸を吐き出す。これは紡績すれば普通に繊維として使用可能だが、慰めにもならない。

こんなのを放置しておけば人類が破滅してしまう、ということで財団は絶滅の試みに乗り出したが、野生の個体は100万以上が存在していると考えられる。
恐らく、山奥など人跡未踏の場所に集中しているのだろう。……逆に言えば回収されるまで恐ろしい勢いで、人知れず増え続けるということでもあるが。


ルーツ

当然だが、こんな生物が自然に生まれるわけもない。
それもそのはず、このトンデモカイコは人工的に生み出されたのである。
どこで?

まあ、予想はつくと思うが日本支部の要注意団体であり迷惑マッドサイエンティスト集団こと日本生類創研である。

1900年代のある時、機動部隊ゑ-3("緑の盾")が日本生類創研の放棄した研究施設を発見。その施設では10000匹を超えるSCP-030-JPと、ラベルが貼られた空っぽの木製の箱を発見・回収している。
これが、この虫どもが財団によって認識された最初の例だが、木箱に貼られていたラベルの内容はこんな感じだった。


エコロジー・キャンペーン用試作
ポリクイくん ポリッコ 名前はプレゼンの時に考えよう。とりあえず「ポリクイガ(仮)」で。
これが売れれば更に我々の研究を先に進めることが出来るだろう!
現状サンプルを増やすため繁殖能力を強化

絶対に逃すな!

       ↑ごめん^^;



あいつらダメだはやくなんとかしないと。


余談

実は虫がプラスチックを食べること自体は実際あったらしく、ゴキブリなんかも食べるらしい。ただしこいつらと同様に分解能力は持っていない。
だが2015年に、他の虫や釣りのエサとしてよく売られているミルワームにプラスチックを食べた上に分解して堆肥と二酸化炭素にする能力があることが発見された。
この発表がある以上、プレゼンして売りだしたとしてもおそらく失敗していたものと思われる。
つまり本当に必要だったのはより食欲旺盛なゴミムシダマシだったのだ。早速サンプルを増やして繁殖能力を強化しよう。

清水義範の短編小説『博士の異常な発明』にこの虫によく似た特性を持つバクテリアが登場している。
こちらは繁殖と自己進化が手を付けられないレベルまで拡大した結果……



追記・修正はポリクイガを絶滅させてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-030-JP - 石油喰らい
by tokage-otoko
http://ja.scp-wiki.net/scp-030-jp

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