SCP-1363-JP

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SCP-1363-JP - (2019/11/26 (火) 18:01:15) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/07/08 (土) 18:55:40
更新日:2024/02/02 Fri 13:01:47
所要時間:約 13 分で読めます





えーっと、何をどうしたんだっけ?


SCP-1363-JPとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト (SCiP) 。
オブジェクトクラスはEuclid。



概要

コイツが何かというと、情報災害の一種である。要は現象系オブジェクトの一つ……ということになっている、一応今は。
一応というのは、このSCP-1363-JPのナンバーを割り振られたオブジェクトとされているものがなんなのか、日本支部どころか本部すら把握していないからである。

より正確に言うなら、SCP-1363-JPは、財団データベースおよび財団職員の記憶領域に対して発生した(あるいは現在進行形で発生している)、特定の期間の記録・記憶がすっぽり消えるという現象のことである。
その特定の期間とは、1900年代のある年のある月のある日、午後12:15分からおおよそ40時間の間に発生した、財団史上最大規模の収容違反のとある時間である。

その時何が起きていたのかという資料は残されている。
が、発生したアクシデントがあまりにも多いため、主要な部分、一連のイベントのキモとなる部分だけが報告書に抜粋されている。


タイムライン

  • 12:35
それはまず、アメリカ本部で起きた。3ケタナンバーのとあるKeterクラス実体が全く唐突に暴走を起こし、収容サイトを根こそぎ吹っ飛ばして逃亡した。ナンバーは伏せられているが、アベルじゃなかろうな?

  • 16:48
日本支部に収容されていた別のKeterクラス実体が未確認の異常性を発揮して収容を突破し逃走。これに乗じて、同じサイトに収容されていたEuclidクラス実体が大量に逃亡するという一大事が発生した。

  • 21:19
とある要注意団体が混乱に紛れて財団を攻撃、多数のSafeクラスおよびEuclidクラスオブジェクトが拡散してしまった。
Safeクラスは安全を意味しない、むしろ危険性に限ればKeterクラスをしのぐ実体もザラにある。そんなものが大量にバラまかれてはもはや収容がどうのというレベルではない。

  • 05:11
事態は拡大の一途をたどり、各国支部の全収容サイトにおいて、低脅威度オブジェクトの収容機能が同時多発的に喪失するという緊急事態が発生。さらに13分後、本部においてとあるEucild実体が混乱を引き起こし、それに便乗した別のKeter実体が大量のSafeクラスオブジェクトを奪取してサイトから脱走した。

  • 06:01
O5評議会から緊急事態宣言が発令。

  • 08:01
とある実体を追跡していた機動部隊からの通信がロスト、無力化。これにより該当オブジェクトの追跡は断念された。

  • 09:51
ある国の支部の通信が途絶。この時点で、当該国支部の収容オブジェクトは全て解放されただろうことが予想されている。

  • 11:40
泣きっ面に蜂とはよく言ったもので、今度はフランス支部で緊急事態。
あるKeter実体が予期せぬ異常性を発揮、収容を突破した。

  • 15:21
追い打ちをかけるかのように今度は韓国支部でも同様の事態が発生。
やはりKeter実体が予想外の挙動を起こし、これまたやはり収容を破って逃げ出した。

  • 17:11
さらにある国の支部の通信が途絶。もはや財団の機能は失われつつあった。

  • 18:29
別の要注意団体が財団を襲撃、多数の多数のSafeクラスおよびEuclidクラスオブジェクトを拡散。
収容違反ってレベルじゃねえ。

  • 18:45
この時点で、財団の保有する全ての機動部隊の無力化が確認される。
もはや、拡散したオブジェクトの再収容は実質的に不可能と見られた。

  • 19:45
悪いことは続くもので、日本支部を脱走した例のKeter実体が、別のKeter実体を手引きして脱走させるという事案が発生。機動部隊が動けないため追撃も出来ず、見送るしかなかった。

  • 20:11
本部の確認していた別のKeter実体が、本来のサイクルを無視して活性化したのが確認された。

  • 01:44
二か国の支部の通信が途絶える。

  • 03:26
ついに全ての通信が断絶。もはや、何が起きているのかの把握すら不可能となってしまった。




と、これが一連のイベントの大雑把な流れである。
これだけだと財団一巻の終わりのように思えるが、この報告書の存在が示すように、実際にはそうはならなかった。
ここに、イベントの発端となったあるサイトと、本部との通信ログがある。

エージェント・███: こちらサイト-[編集済み]、緊急事態が発生。SCP-███が脱走した。常駐させていた機動部隊は全て出動済み、至急応援を頼む。繰り返す、SCP-███が脱走した。至急応援を頼む!

オペレーター・████: こちら司令本部、SCP-███の脱走について了解した。確認できる範囲で構わないので、詳細を教えてほしい。

エージェント・███: 本日の12時15分、SCP-███は予期せぬ暴走を開始。サイトにいたエージェントが総員がかりで対処に当たるも、対象はサイト内部を破壊後に外部へ移動。現在、機動部隊が追跡を続けている。追跡中の者を除く職員に関しては、現在被害の確認を……っと、丁度報告があがったようだ。ええと……何だって?

オペレーター・████: どうした? 一刻を争う事態だ。余計なことは言わなくていい。被害報告を頼む。

エージェント・███: あー……サイト-[編集済み]内部の施設、および外壁がほぼ全壊。SCP-███の収容ユニットも損傷、以降の収容には利用不能と判断し、予備の収容ユニットを起動させる。なお、人的被害は無し。

オペレーター・████: ……聞き間違えたかな、もう一度言ってくれ。最後だけでいいぞ。

エージェント・███: 人的被害は無し。……おい、これは本当か? いくらなんでも、死亡者どころか負傷者すら出なかったってのは……えー、7回確認したらしい。少なくとも現時点において、確認されている死者・負傷者は共に無しだ。

オペレーター・████: 責任者は受勲間違いなしだな──了解、応援は30分以内に到着予定だ。行動可能なエージェントはSCP-███の追跡に合流せよ。

収容を突破したオブジェクトのうち、アクティブな行動を取ったKeter実体はいずれもがK-クラスシナリオを誘引する可能性を十二分に持っていた。ところがこの一連のイベントの中、財団のスタッフには死者どころか怪我人すら出ておらず、機動部隊は装備品が「なぜか、いきなり」機能不全を起こしたことで行動不能になっていた。

加えて、これが全世界規模の収容違反、かつまる2日近く続いたイベントにもかかわらず、収容を突破して外界をさまよっていた無数のオブジェクトは、ただの一度も一般人と接触した形跡がなかった。


そしてここに、最初に収容を突破したKeter実体へのインタビュー記録がある。
その中で、とある博士がその実体に対して「運が悪かったな」と述べたところ、その実体は怒ってこう反論した。

貴様は何を言っている? この我々が、イレギュラー如きで。不運如きでこうして無様な虜囚としての姿を晒すとでも思っているのか? 
我らの辛酸を、我らの屈辱を、そのようなもので片付けようと言うのか? 貴様は我らを愚弄するのか?

貴様らがあの日あったことを忘れているというならば、それは仕方のないことだろう。だが、我々がただ不運にも檻の中へ再び放り込まれたと勘違いされるのは我慢がならん! 
忘れるな。開幕こそは雑多な偶然が噛み合った為かもしれないが……あの戦いそのものには、運などが入りこむ余地は無かった!

特別なことなど、何も無かった。我々はただ敗北したのだ。我らのように歪な存在にでは無く。貴様らの信じる神の奇跡とやらにでも無く。臆病で、矮小で、脆弱極まる……我らがそう認識し、蔑んでいたはずの人類に。


ここで、タイムラインの最後の部分がある。

  • 03:28~03:58
拡散した全てのオブジェクトの捕捉および再収容が完了し、通信が復旧。事態は終息した。

そう、収容違反は解決されていたのだ。
拡散したSafe・Euclidオブジェクトのうち、複数が破損・異常性消滅によりNeautralizedになった、というアクシデント以外は、何もかもが元通りになったのだ。

収容能力を失ったサイト、装備が動かず無力化した機動部隊。
財団が財団たる所以、収容を維持する力を失った状態でありながら、なぜ全ては丸く収まったのか?
例のKeter実体へのインタビューを信じるなら、収容を突破したオブジェクト達は、財団の人間と戦い、敗れ、サイトに連れ戻されて再び収容下に置かれた、ということになる。

だが、全世界で起きていただろう収容違反、しかも明確な意思を持つKeter実体が、別のオブジェクトを用いて抵抗したのだ。機動部隊が動けないのに、誰が、どうやって、しかも一人の犠牲者も出さずにそれらを収容したのか?


結論を言うと、わからない。そしてこの「わからない」という事実に対し、財団は日本支部での調査と収容を決定し、SCP-1363-JPのナンバーが割り当てられた。
このオブジェクトの実態は、「一連の大規模収容違反における謎の記録・記憶の消失、およびオブジェクト再収容の経緯に関する記録の完全な欠落」という異常現象である。

事態終息後、財団はただちにサイトに残されたデータを調査した。
しかし、この一連の事態に関する部分のデータは原因不明のノイズが混入したことで著しく破損しており、さらに職員への事情聴取を行っても、「いつ、何があって、どうなったか」という大まかな部分は覚えていても、具体的に何が起きたか、という細かい部分は完全に忘れていた。
さらに、この大規模収容違反に対して自分たちがどのように行動し、どのようにしてオブジェクトらを再収容したのか、という部分になると、記録も記憶も完全に失われ、復旧も不可能となっていた。

ならば、収容違反を起こしたオブジェクトのいずれかの影響ではないか? と推測されたが、調査の結果、それらのオブジェクトには、収容違反の際の未知の異常性を含めても、これらの情報災害との関連性は認められなかった。

しかし、大規模な収容違反が起き、財団がそれに対処して事態を収めたのは事実。
この記録を復旧させなければならない。アイテムナンバーが与えられたのち、このオブジェクトに対して何のクラスを割り当てるべきかはかなり紛糾した。
「収容できてないし、これだけ大規模な情報災害ならKeterだろう」「いや、事象そのものは既に過ぎ去ったのだからNeautralizedだろう」と意見が割れたが、あくまでも映像機器や音声記録、職員の記憶に対する情報災害のみをオブジェクトとして分類し、詳細不明ということでのEuclid認定となった。



オブジェクトの言葉を鵜呑みにはできない。イベント:1363-JPが、財団を含めてどの組織にも対処不可能な規模だった以上、再収容にはやはり何か異常な存在が影響を与えたと考えるべきだろう。
……だが、もしこの言葉が真実であるならば……



SCP-1363-JP

私たちは何をした?





追記・修正は財団が何をしたのかわかる人にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1363-JP - 私たちは何をした?
by Qoochie
http://ja.scp-wiki.net/scp-1363-jp

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