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SCP-1682-JP/AiliceHershey - (2019/12/26 (木) 17:28:21) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/08/17 (木) 21:03:35
更新日:2023/10/17 Tue 21:52:01
所要時間:約 13 分で読めます





扉を開けば、終わりはすぐそこに。


SCP-1682-JPとは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」にかつて登録されていたオブジェクト (SCiP) 。
項目名は「救難信号」。
オブジェクトクラスはEuclid。
JPのコードが示す通り、日本支部で生まれたSCPである。が、作者の都合により現在は削除されている。



概要

まず特別収容プロトコルだが、簡潔に言えば「コイツを封鎖してる物体を排除する方法を探せ」ということである。
なお、封鎖される以前はこうなっていた。
SCPS"ラモール"内に存在しているSCP-1682-JP-Aから-Dは、4人からなる機動部隊によって常に監視されています。SCP-1682-JPへの職員の侵入は、ワダツミ計画における調査を除き禁止されています。

SCP-1682-JP-1の出現が確認された場合、機動部隊による保護を行い、サイト-8194内にて標準人型収容ユニットにて収容を行ってください。SCP-1682-JP-1の、当該オブジェクトへの帰還は認められるべきではありません。一度でも保護されたSCP-1682-JP-1がSCP-1682-JPの入り口へ再接近を求めた場合、機動部隊による鎮圧、及び再収容が行われます。

例外として、ワダツミ計画における、SCP-1682-JP-1の当該オブジェクトへの帰還は全面的に承認されています。

この「ワダツミ計画」がミソである。


で、SCP-1682-JPとは何ぞや、といえば、財団所有の船舶の一つ、ラモール号の内部に存在する四つの次元ポータルである。
これら四つが通じる先は全て同じ並列世界で、向こうの世界にも財団は存在している。
環境や大気の組成、歴史などはほぼ同様だが、異なる点として、歴史上のイベントにおいて、基底現実においては生存している人物が、向こうでは恒久的な機能停止を起こしている、という部分がある。
……表現が遠回しだと思った諸兄は、どうか何も言わず読み進めてほしい。

まあそんなわけで、異世界と基底世界はおおざっぱな構成は同じだが、その歴史には大きな差異が生じている。
そのためなのかどうなのか、基底世界の生物や物質が向こう側に侵入すると、

  • 急速な身体、及び内臓器官の腐敗
  • 被験者が有している治療痕、及び損傷箇所の再現

という現象が起きる。当然ながら、こうなった生物/物体は機能停止、あぼーんである。
さらに向こう側の人口は基底現実の1/4と少ないが、オブジェクトの異常性は受けていない。それでも、それ以外の理由による機能停止は普通に起きている。よって、身体構造はさほど差はないと思われる。

侵入すると機能停止するポータルなんぞ、危なくて入れたもんではない。
だが、財団の仕事は確保・収容・保護。そこにオブジェクトがあるならば、可能な限り調査せねばならない。
というわけで、向こう側の財団=亜財団と連携してオブジェクトの収容を進める「ワダツミ計画」が持ち上がった。


ワダツミ計画とは何ぞや?

ぶっちゃけると、有人探査計画である。
向こう側に基底世界の職員を送り込み、亜財団との意思疎通を図りつつ、共同でオブジェクトの収容を進めよう、という話である。
8回にわたる潜入実験の末、当時30歳のカツウラ博士が抜擢された。

実験は11/10/27からスタートし、そこから1か月で博士は一旦帰還。
翌年01/14から第二次潜入がスタートし、そこからは月一度のペースで亜財団とコンタクトを取り、収容を進めていくことになる。

しかし、

カツウラ博士の喪失、並びにSCP-1682-JPの閉鎖を以てワダツミ計画は凍結されました。この計画において消費された人員、及び物品の回収は行いません。

結論から言えば、ワダツミ計画は失敗に終わった。


カツウラ博士の音声記録

ここに、博士が実験において残した音声記録がある。
一部はセキュリティの都合上検閲されているが、ほぼ全文を読むことが出来る。

  • 第一次報告
向こう側に侵入した博士は、なんと亜財団にオブジェクトとして収容されてしまった。
冷静に考えればSCP-1682-JPは向こう側にもあるのだから、出てくれば当然SCP-1682-JP-1である、向こう側にとっては。

亜財団も潜入実験を計画し、向こう側のカツウラ博士がそれに抜擢されていたのだが、実行する前に基底現実の博士がやって来てしまったわけである。

カツウラ博士は向こう側の自分をはじめとする亜財団の職員たちと交渉を続け、機密情報を明かしてまで信頼を得ようと試みた。幸い、機密情報は亜財団でも同じであったらしく、どうにかこうにか基底現実の財団へ連絡を取ることが出来た。

その中で、基底現実におけるいくつかのオブジェクトの収容方法を伝えたが、亜財団では確立していない手法だったらしく、驚かれたという。
肝心のワダツミ計画についてだが、後日互いの財団のO5による協議を行うこと、基底現実から直接やってくる人員はカツウラ博士のみに限定すること、を条件に受諾された。


  • 第二次報告
ここからが特に重要となる報告である。
なので、博士の報告を引用する。

まず、SCP-1682-JP-1は私達の世界に住む人類とほぼ同じ生活様式を有しています。ただ、[コード - ワダツミの提示が必要です ]。このような特徴は私達の住む世界の人類には見られず、また、そういった言葉による表現も私は見た事がありません。引き続き、それらに関しての情報を集めたいと思います。

また、そのような物が存在するせいか、亜世界の歴史イベントは非常に大きな差異を有しています。それらのデータの収集も行い、比較を行う事も予定しています。亜世界の人口が非常に少ない事も、この事に起因するのでしょう。

更に、SCP-1682-JP-2、並びに第一次報告時に私が出会ったシゲサト博士は90%以上の確率で同一人物である事がわかりました。やはり、この世界の人類の一部は、私達の世界の人類の一部と同期を発生させているようです。つまり、[コード - ワダツミの提示が必要です ]に利用する事ができるのではないでしょうか。そのために私は、次回の調査において[5秒ほどの沈黙]「腐敗実験用機材」の搬入を進言したいと思っております

検閲されている部分はわからないが、この部分こそが基底現実と異世界の決定的な違いであり、向こう側の人口がやけに少ないのもそのせいらしい。

続けて終了報告だが、ここで一気に雰囲気が不穏になる。
報告します。[コード - ワダツミの提示が必要です ]、という表現についてまた新たに判明した事の報告を行います。

[コード - ワダツミの提示が必要です ]は私達の世界においては一般的には機能停止、という言葉と同義だそうです。SCP-1682-JP-1も、SCP-1682-JPに進入した私達の殆どがそうなってしまったように、恒久的な機能停止を起こします。その場合に、このような表現を用いるそうです。

このような状態になってしまった人類を、私達はトルオール半固定物質化装置、並びにアズバンド粒子分解槽にて保管しますが、SCP-1682-JP-1は儀式的な手順を以て、それらを燃焼し、地面に埋める事で保管を行うそうです。
実際に、亜財団内でSCiPに曝露してしまった人間を、そのような方法で保管している様子を、私は何度も目にしました。そのため、トルオール半固定物質化装置、もしくはアズバンド粒子分解槽の存在を確認しましたが、それらは存在していないようです。

その時の、彼らの顔が忘れられません。私は何か、間違った事をしてしまったのでしょうか?

基底現実において恒久的機能停止に陥った人間は、専用の装置を用いて保管されるが、亜財団にはそれはないらしい。
その代り、儀式的に燃やして、地面に埋めるという原始的な方法で保管しているようだ。
だが、亜財団にとって財団のやり方は驚くべきものだったようだ。


この後、カツウラ博士は帰還したが、その後何度かの滞在の後、帰還しなかった。
……そして、ワダツミ計画は永久凍結となった。


コード - ワダツミ送受信プログラム
このワダツミ送受信プログラムは、ワダツミ計画が実施されていた当時に使用されており、現在は完全に凍結されています。再起動にはコード - ワダツミの提示が必要となります。閲覧端末のID情報において、コード - ワダツミの提示、並びに送受信プログラムの起動を行いますか?









しばらくお待ちください…






信号が受信されました。







この報告書の最後の部分には、財団と亜財団の最後の交信記録がある。
それは、財団からの問いかけによって始まっていた。

SCP-1682-JP、その入り口を封鎖したのは亜財団だった。
なぜそんなことをしたのか? 亜財団は最後の通告として信号を発信し、財団に対してこう言った。

同一存在の死を我々は許容できない。

あのポータルが発見されてから財団が調査を行うたび、異世界では原因不明の突然死が発生していたというのだ。


貴方は気づいた。どこかの蓋が、取り除かれた事に。貴方はハッチを開けて、船内を走り出した。


亜財団の世界に、カツウラ博士は無断で残っていた。
そして彼は、数か月前に突如自殺したというのだ。すると、向こう側のカツウラ博士も突然死してしまった。
博士の報告にあった通り、基底世界と異世界の人間は、同一存在同士で同期していたのだ。
その理由がわからない財団に、亜財団は冷ややかに告げた。

そちらにとって、死とはそれほどに素晴らしいものであったのではないか?


ここではない。階段を駆け上がりながら、貴方は息を切らす。


カツウラ博士がそうした以上、他の職員がそうならないとは限らない。だからこそ亜財団は、これ以上の大量死を防ぐためにポータルを閉じたのだ。
それに対する情報操作や記憶処理など、隠ぺいのコストはバカにならない。ならば、どちらの組織のためにも閉じるのが最善だ、と亜財団は告げた。
だが、財団にはそれでは困る理由があった。


残っているのはあと一つだ。貴方は客室に向けて、廊下を全力で走り抜けた。


ポータルの封鎖を宣言した亜財団に対し、財団は何でも協力するからそれだけはやめてくれ、と懇願したが、亜財団は「だったらもうこっちに来るな」の一点張り。

ここにはない。そちらの世界にしか、救済は、神の慈悲は存在しないのだ。頼む、我々を、殺してくれ。

ここに救いなどありはしない。あるのは、ただ死だけだ。我々を、殺さないでくれ。


辿り着いた。そして貴方は客室の扉に、手を伸ばした。









そして、通信は切れた。
SCP-1682-JPは封鎖され、現在も開かれていない。


そしてここに、コード-ワダツミと、セキュリティクリアランスレベル4以上の職員のみが閲覧を許される、真の報告書がある。






今はただ、追記・修正してください。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1682-JP - 救難信号
by AiliceHershey
http://ja.scp-wiki.net/scp-1682-jp(元記事削除済み)

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