D-LIVE!!(漫画)

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D-LIVE!!(漫画) - (2017/12/01 (金) 10:30:49) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/11/29 (曜日) 23:21:47
更新日:2024/02/02 Fri 10:26:11
所要時間:約13分で読めます





「お前に生命を吹き込んでやる!!」



『D-LIVE!!』とは皆川亮二氏作のアクション漫画の事。2002年~2006年まで週刊少年サンデーで連載された。
タイトルの意味する通り「乗り物」が主役の漫画で、脚本制作にはかつての皆川氏の作品である『スプリガン』のたかしげ宙氏や、『ARMS』の七月鏡一氏なども参加している。
この紹介の仕方で

「乗り物って一言でいっても沢山あるけど、どうせ二輪や四輪ばかりなんでしょ?」

と突っ込もうとしたソコのアナタ。中々鋭いご指摘だが心配ご無用、この作品は正にその「沢山あるけど」が範疇なのだ。
先ず第一話からして「ジェットスキー」でクルマではない。その後も「スノーモービル」「パワーボート」「ホバークラフト」「重機・建機」「電車・デュアルモードビークル*1」、「戦車」「戦闘ヘリ・戦闘機」「飛行船」「潜航艇」等々等々、陸海空問わず本当に様々な乗り物が登場する。
果ては「キックボード」「砕氷船」「火星探査車」なんてものまで…。
それに伴いストーリーの内容も、犯罪者追跡、潜入捜査、人命救助、要人護衛、害獣駆除、遺跡発掘、サルベージ、映画のスタント、芸術作品作成、レース出場、廃線巡り、護送車襲撃(!?)と盛りだくさん。正に

♪いろんな乗り物あるんだな~ いろんなお仕事あるんだな~♪

状態なのである。


各エピソードは「依頼の受注→解決」という形で進行する為、やや一本調子なきらいはあるものの、
上記の様々な乗り物の存在や、皆川氏が描く動きにメリハリのあるアクションシーン、そしてお決まりの決め台詞で締めくくられるラストの"お約束"が、
「次はどんな乗り物でどんな活躍をしてくれるのかしら」というワクワク感と、「相変わらずのクオリティ」という安心感を提供してくれる。さしずめ『シティーハンター』や『水戸黄門』に通じる面白さといった所か。
1エピソード数話という短さで、大きな伏線もなく、難解なストーリーもない。ちょっとした時間に肩の力を抜いて読むにはピッタリの少年漫画である。


主な組織と登場人物


  • ASE
「軍人からベビーシッターまで」あらゆる分野のスペシャリストを世界中に派遣する国際人材派遣会社。
会社名は"Almighty Support Enterprise"の頭文字から。主人公たちはこの会社のエージェントであり、ここに舞い込む依頼を受ける形でストーリーは進行していく。
この会社は「どんな状況でも絶対に依頼を達成する」という信頼で成り立っている為、依頼料は一回ウン千万と超高額。エージェントも誰もが各々の分野で一線級の実力を持つ凄腕ばかり。
…と、ここまでは聞こえがいいが、依頼の内容によっては諜報や武力でもってそれにあたる会社であるため多方面でしこたま恨みも買っており、エージェント達はASE所属というだけで命を狙われる事も珍しくない。
さらに管理体制がかなりお粗末で、情報が洩れて別組織から横槍を受けたり、依頼自体がASEの面子を潰す罠だったりという事もしょっちゅうある。
そしてそんな状況で「絶対成功」を強要される現場の人たち…。あ、やっぱり派遣はブラックなんやなって…
「もっと情報管理や依頼の吟味をしっかりと。」
作中でも度々目にする言葉であり、恐らくはエージェント達皆の願いである。

    • 斑鳩悟(いかるがさとる)
主人公。
学校では何をやらせてもどんくさく出席日数もギリギリ、おまけに貧乏で常に腹を空かせている。といいとこ無しの人間で通っている。が、その正体はASEでもトップクラスのマルチドライバー。
冴えない彼が一度マシンに乗ればあらゆる不可能を可能にするヒーローに早変わり。どんな人間も彼には敵わなくなる。
但し学校での振る舞いは世を忍ぶ仮の姿…というわけではなく、あちらのダメな彼も本来の彼である。「超々高倍率の主人公補正を持っている本田さんと思ってもらえれば大体あってる。
ASEのマルチドライバーであった父の真(まこと)の死を切っ掛けに自らも父と同じ道を歩むと決意。真の相棒だった百舌鳥を師事し、幼いころからあらゆるマシンに関わってきた。
しかし彼の真価はその豊富な経験ではなく「どんなマシンとも瞬時にシンクロする」という特殊な才能にある。たとえそれが初めてのマシンでも一度乗ってしまえば極短時間で自分の手足の様に動かすことが出来てしまうのだ。
「子供の時分に初めて乗ったスクーターで、母親を後ろに乗っけたまま壁走りをした」といえばこの凄さがわかって頂けるだろう。本人曰く「マシンの声が聞こえる」とのこと。お前はどこぞの料理人か。
しかしその能力は「自分の乗るマシンに感情移入するあまりマシンを捨てることが出来ない」という致命的な欠点をも孕んでいる。
斑鳩の周りの人間は「それが原因で斑鳩はいつか命を落とす」と常に危惧しており、実際彼は死ぬような目に何度もあってきた。
それでも自分のスタイルを捨てようとしない彼はついに……。

「お前に魂があるのなら……応えろ!!」



    • クレーバー・オウル
ASE所属のエージェントで射撃術と諜報活動のスペシャリスト。この名前はコードネームで、「オウル」の名は師匠から受け継いだもの。
映画、特に007がお気に入りでその影響か「ジェームス・ボンドを超える男」を自称している。
確かに実力は超一流なのだが、彼も斑鳩同様致命的な欠点がある。しかも三つも。
一つ「極度の乗り物酔い持ちである事」
一つ「女性に目がない事」
一つ「その割にはあまり女性にモテない事」
いつも最初だけは完璧を匂わせる彼の活躍は、上記のどれかのせいで毎度台無しになる。そもそもこれは乗り物が主役の作品なので…。因みに高所恐怖症という設定は無かったことにされた。
要するにコメディリリーフなのだが芯は熱いものを持っており、彼は「無残に命が失われる」事(他人のを奪う、自ら散らすの区別なく)と、それを実現する「美しくない兵器」の存在を決して許さない。
その様な物をこの世から撲滅する為、彼は今日も危険な任務に身を投じ、女性を口説き、そして乗り物と闘う。
因みに上記の女性云々は過去に師匠が「ジェームス・ボンドの様な派手に立ち回る奴は二流だ。しかし女性を口説くテクニックだけは評価する。女性は情報の宝庫だ。」と言及していた事、
そう言っておきながら自身はモテていなかった彼を師事してしまった事が強く影響している。つまりダメな所も師匠ゆずりというわけだ。

「そこで僕は知ったのさ。命を捨てられると豪語する奴ほど簡単に他人の命を奪うってことをね。」



    • 清水初音(しみずはつね)
ASE所属のメカニック。
乗り物に関する知識と技術はずば抜けたものを持っており、マシンの整備・改造は言うに及ばず、スタンロッド・ゴム弾銃などの武器の自作や、スクラップ同然の戦車の修理までやってのける正に凄腕。
加えて、他界した父が運営していた鈴鹿8耐のプライベートチームを引き継いでいるという背景からか、レースに対しての思い入れが強く、勝負事に挑む者が持つべきタフな精神をも備えている。
割とすぐにヘコみがちな斑鳩はもちろん、女性に弱みを見せたがらないオウルでさえも彼女の発破に助けられたことがある。これで若干18才の女性というのだから凄い。
戦う力こそ持たないものの、ハード、メンタルの両面で頼りになる姉御肌な人物である。

「あんたがどんなにマシンをぶっ壊しても絶対に直してやるって!!でも…あんたが壊れたら私には直せないのよ…」



    • 烏丸理香(からすまりか)
ASE所属の(略)、地質学者で普段は大学の講師をしている。現代のハインリッヒ・E・ナウマン*2とまで形容されるほどの知識と明晰な頭脳の持ち主。
冷静な性格だが、斑鳩との関係について聞かれると顔を赤らめたり、キレると相手を張り手で吹っ飛ばして車両をへこます程叩きつける。
アマゾンの地質調査で亜取アキラと何度か一緒に仕事をした関係で、お互い名前で呼び合う仲。
彼女の登場話で絶対に無視できないのは、あの『ベンが完全武装している!』の『ベン』である。詳細はぜひご自身の目で確認して頂きたい。
話しのオチで斑鳩が空腹を訴えると、何処からともなくお菓子を取り出す。甘党?

「それで飢えをしのいでください」



    • ジェームス・波戸(はと)
ASE(略)、元SWATで軍役経験者という経歴を持つ格闘技と爆弾処理のエキスパート。関西弁を使う陽気なあんちゃん。
名前と口調から察せる様に日本人の血が入っており、軍人時代は比較的小柄で非力であるという人種的なハンデに苦しんでいた。
しかし作中ではそのハンデをものともしない素早い動きとキレのある格闘で大活躍する。皆川氏が描くこの人の戦闘シーンは、陰影やインパクトの瞬間の演出も相まって非常にカッコイイ。どうやら蹴り技が得意な模様。
斑鳩は乗り物が無いと戦えないので、白兵戦が必要な時はオウルやこの人の出番というわけ。劇中でも斑鳩とコンビを組む機会は多い。

「耐えることによって、見えないものも見えてくるってな。」



    • 亜取(あとり)アキラ
A(略)、生物学、特に植物学の専門家。IBAMA*3にも所属しており、自然の保護に尽力しつつ未知の動植物が持つ可能性を模索し続けている研究者。
どんな男でも思わず振り向いてしまうほどのグラマラスな美人……なのだが美しいのは見た目だけ。性格は非常に短気で常に口より先に手が出る。おまけにアホみたいに強い。
彼女のド鋭い踏み込みは自らのドレスのスカートを真っ二つに裂き、そこから繰り出される剛腕は武装した大の男を紙屑の様に吹きとばす。何故こっちを蹴り技担当にしてくれなかったんだ…
その為彼女は行く先々で「アマゾネス・クイーン」「ドゥルガ」といった、いかにも強そうな称号を頂戴している。本人は嫌がっているが、斑鳩曰く「とってもよく似合っています」とのこと。しょうがないね。

「アマゾンは未来の希望だ…我々人類が間違った方向に進まなければしっかりと応えてくれるはずさ…」



    • 百舌鳥創(もずはじめ)
ASE日本支部長で元マルチドライバー。かつては斑鳩の父である真とコンビを組み様々な伝説を残してきた。よって世界的な有名人であり、あらゆる方面に強力なコネクションを持っている。
過去の戦闘で片目の視力と相棒の真を失っており、現在は一線を退き管理職に落ち着いている。が、それでも尚「斑鳩の操縦技術」「オウルの射撃術」「波戸の格闘術」を足して3で割るのを忘れたようなデタラメさを誇る本作最強の化け物。が、流石にアキラの身体能力までは有していない
真の忘れ形見である悟を一人前のASEドライバーにするべく幼いころから鍛えに鍛えてきたが、心の内では常にその行為と生前の真と交わした"ある約束"との間で葛藤していた。
相棒との約束の為、父の後を継ぐと覚悟した悟の為、そして悟の才能に惚れこんでしまった自分の為、彼は物語終盤ある行動を起こす。

「俺はあの世でお前の説教をいくらでも聞くからよ!!なぁ真…」



  • キマイラ
「犯罪プランの提供」を主な生業とし、世の中の秩序の破壊を目論む所謂一つの悪の組織。
少しややこしい事に「キマイラ」という単語は作中では組織を示す言葉としても、そのボスを示す言葉としても使われている。
「組織名=ボス名」という構図自体は決しておかしくない。ただ、ボスと直属の部下以外の描写がない本当に組織かどうか怪しい謎多き組織なので、作中では両者の使い分けがかなり曖昧になっている節がある。
まあ組織の目的=ボスの野望なので「彼こそがキマイラ」という認識で問題はないのだが。というか↑のツッコミを回避するべくワザとぼかしている可能性が…
その目的とは「ナチスの遺産」と呼ばれる地下資源データ群が示すウランを入手し、大量の核兵器を世界中に流通させる事。
本作終盤はこのキマイラとASEの対決という形で物語が収束していく。



    • ミハイル・セルゲイビッチ・カラマーゾフ
キマイラのボス。
顧客に提供する犯罪プランを全て自ら手掛けているのみならず、現場にも赴き積極的に顔を晒す組織一の行動派。
そのプランの完成度の高さから、「ミスターパーフェクト」という恥ずかしい称号を持っている。祖国ロシアでは軍部も彼には頭が上がらないのだとか。
大富豪である自分の出自と、その出自が抱える暗部からは逃れられないという宿命、そしてそれ以外の事は何でも思い通りになってしまうという万能感から、心底世の中に飽き飽きしており世界中に混沌をばら撒く事でその飽きを埋めようとしている。
その為自分の命にもあまり頓着がなく、実動部隊に「テスト」と称してASEが護衛する自分を暗殺するように命令したりもする。例えるなら幽遊白書の左京みたいな奴。
「保身を考えない人間の抱く野望というのは、他人はおろか自分自身をもまきこむ強大な破壊行為と相場は決まっとる。」という言葉も破滅的な性格の黒幕である彼にはぴったり当てはまるだろう。
自分の完璧な犯罪プランに傷をつけた斑鳩と、自分と同じく「完璧」を謳っているASEに彼が興味を持った事が後々の因縁の始まりとなる。

「たった一人…僕のゲーム盤からすぐに飛び出してしまう人物がいた。斑鳩君…それが君だったんだ!!」



    • ロッコ・レイモンド
斑鳩のライバル役を務める敵側のマルチドライバー。通称ロコ。
金の工面の為にキマイラの仕事を受けており立場上は敵対しているが、斑鳩やASEに個人的な恨みはない。
彼は斑鳩とはあくまでマルチドライバーとしての対決を望んでおり、その為ならば立場を越えて、体を張って斑鳩の命を守ろうとする。敵なのに頼れる男。
無類のレース好きだった父親の影響から、レーサーになる事を夢みており、レースにかける情熱は誰よりも熱い。
ひょんなところから斑鳩とマン島TTレースに出場することになり、赤面して「ドキドキ」しながらサイドカーに乗ってはしゃぐ彼の姿は絶対的にカワイイ。本作のツンデレ枠。

「ふん…そこまで頼まれちゃ仕方ねえな。てめえとは本来敵対関係だが、今回だけは手を組んでやるぜ!!」



    • ユーリィ・カザロフ
ミハイルの一族が残した負の遺産の一つである暗殺部隊「カザロフ小隊」のリーダー。
キマイラの実動部隊として幾度となく斑鳩達に立ちはだかる。しかし悲しいかな、彼は左京にとっての戸愚呂(弟)などではなく、いわば悪の組織にとっての怪人ポジションなのであった…。
ボスの気まぐれで大事な戦闘員を失ったり、ASEの実力を見せつけるだけの噛ませ犬にされたり、再生怪人のごとくパワーアップして戻ってきても捨て石の如く扱われたり…。
かわいそうなのでこれ以上の言及は避けるが、間違いなく本作で最も不幸で報われない人物である。

「言ったはずだぞキマイラ…俺はお前の足元に落ちる黒い影…その影から逃れることなど不可能…」



  • その他の人物

    • 稲垣
斑鳩の知人の一人でJR職員。
一般人でASEの面々の様に特別な能力こそ持たないものの、こと鉄道に関してだけは知識、発想共に常識の範疇を大きく超えてくる鉄道オタク。
「ランディングギアを使わず両翼を擦らず着陸させなくては爆発するジャンボジェットがあります。どうすればいいでしょう?」という問いに、
「モノレール併走させてその間に降りればいいんじゃね?」と答え、自らモノレールの運転(未経験!)も買って出るくらいにはぶっ飛んでいる。実際にそのプランを通すASEも凄いが。
彼はその鉄道に対する造詣と愛の深さでもって度々斑鳩を助け、そして度々面倒事に巻き込む。

「心配するな、鉄道限定なら為せば成る!!」



    • 友人達
斑鳩の学校でのダメっぷりを披露する為だけに用意されている人々。毎度冒頭で斑鳩をイジって楽しんでいる。
つまりただのモブなのだが、ASEの仕事故に学校を休みがちで付き合いが悪い斑鳩とも卒業までつるみ、イザというときは彼の言葉を信じ、ASEドライバーという素性がバレてからも誰一人態度を豹変させることがなかった。
もしかしたら彼らの存在があったからこそ、斑鳩は安心してダメ人間で"いられた"のかもしれない。

「あいつがなんで卒業できるんだ?ほとんど学校来てねーのに!!」


「いくぞアニヲタ!!お前に追記修正の意志があるのなら…応えろ!!」

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