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ベルリン、1957年10月07日国家安全保障省
第25局
私から、25局の目的に関するある提案があります。
我々25局の目的は、アノマリーを使用した諜報行為やサボタージュなどの国の利益になる工作です。生身の人間がそれをするよりも、アノマリーを使用すればより効率的に、より効果的に、そして犠牲者を最小限に抑えることができます。
ですが、たとえアノマリーを使用したとしても、目的達成のための犠牲は生まれてしまいます。また残念なことに、アノマリーの暴走による本来は生まれる筈の無かった犠牲が発生することさえあります。これら犠牲は組織に対する重大な損害となり得、また士気の低下も起こり得ます。
そこで私は、1つある提案をします――それは他国の人間を任務に用いるというものです。
我々の所有するアノマリーを使えば、事実の隠蔽はある程度なら行えます。そして利用された他国の人間の数がその「ある程度」であれば、私のこの試みは25局の存在同様に公になることはありません。
私の提案の実施をご検討いただければ幸いです。返信をお待ちしております。
ベルリン、1957年10月10日国家安全保障省
第25局
承認する。この提案は「プロジェクト・フライムート」として実施し、提案者のフークバルト・フライムートをプロジェクト指導者とする。
ただしプロジェクトは穏便に行うように。また、使用する他国民の人数は事実の隠蔽でカバーできる範囲内にすること。署名:コンスタンティン・マーダー将校
ベルリン、1959年03月02日国家安全保障省
第25局
お久しぶりです、将校。プロジェクト・フライムートの進捗報告を致します。
先日、私はアノマリーの制作に成功しました。これは50Hzの送電線により運ばれた電力を使用した電灯――電灯にした理由は、先進国の都心・近郊部であればどの民家にもそれが存在するからです――を、別のアノマリーへと改変するものです。アノマリーへ変化した電灯を視認した人間は、ドイツ国への愛国心の強い人間となり、それと同時にその人間の母国への誠意を失います。
そして私は、プロジェクト・フライムートの実施国として日本を選択しました。日本はドイツ製発電機の導入により、フォッサマグナの西辺より東と西で周波数が異なっており、導入がなされた東側はドイツと同じ50Hzです。標準周波数として50Hzを採用している国家は、他にも中華人民共和国などがありましたが、国家面積が狭く、人口が多く、そして送電網が充実しているという点で、中華人民共和国などの国家ではなく日本を採用致しました。
後日、プロジェクト・フライムートを東日本にて実施致します。報告があれば追ってメッセージを送信します。
ベルリン、1959年03月03日国家安全保障省
第25局
了解した。署名:コンスタンティン・マーダー将校
東京、1959年05月07日国家安全保障省
第25局
お久しぶりです、将校。プロジェクト・フライムートの進捗報告を致します。
東日本での25局エージェントの増産には、今のところ成功を維持しています。決して表に出すことはありませんが、彼らはドイツ国への深い誠意を内面に秘めています。そして既に私は、彼らが形成した親独・反日団体との接触に成功しています――我々の指示さえあれば、彼らはいつでも行動を起こすことが出来るでしょう。
既にいくつかの人員は、ドイツ国へ渡航済みです。私としては、数週間後にそれら人員と25局職員とを合流させる予定です。またそれ以外の人員の渡航も現在計画しており、基礎戦術学の継承も試みております。
我々側が任務を遂行する準備は、常に出来ています。未達成の任務があれば是非私にご一報ください。
ベルリン、1961年05月16日国家安全保障省
第25局
こんにちは、将校。ご多忙中お手数をおかけしますが、プロジェクト・フライムートに関するある提案を私から致します。
現時点で、東日本におけるエージェントの増産進捗自体には異常は見られていません。ですが増産された人員、そして形成された団体の数は目を瞑っておけるものではなくなってきており、またプロジェクト・フライムートの主導者であるフークバルト・フライムートの権力も、団体増加に正比例するように拡大しています。
調査資料にもある通り、日本において超常組織が存在していない訳"ではありません"――JOICL(*2)や東弊重工、更には財団や世界オカルト連合などの危険性の高い組織も存在しています。彼らの情報網であれば、プロジェクト・フライムートの存在はそれほど時間が経たないうちに認知されるでしょう。そしてそれは、同時に第25局の存在の判明を意味します。
私は、プロジェクト・フライムートの凍結、およびその主導者であるフークバルト・フライムートの抹殺を提言します。彼は最早、我々の同志ではなく、我々の前に立ちはだかる障壁となっています。情報漏洩の可能性だけでなく、その軍事力から謀反した場合の被害も甚大なものとなるでしょう。
「戦勝こそ美徳」とする人間は、最早このドイツには不要と考えます。
ベルリン、1961年05月17日国家安全保障省
第25局
承認する。フークバルト・フライムートの抹殺のため、専用の人員を配備する。署名:コンスタンティン・マーダー将校
ベルリン、1961年05月18日国家安全保障省
第25局
将校の快い承諾に感謝申し上げます。配備された人員は、すぐさま日本に向けて渡航させます。
また追加で提案なのですが、フライムートが過去接触していた団体構成員の抹殺も提言します。ドイツ国への忠誠心は我々側にも必要ではあるものの、盲信は返って逆効果となり、またその勢力およびフライムートへの忠誠から、フライムート殺害後の反乱が予測されます。
そのため私は、団体構成員殺害のための人員を追加で日本へ渡航させることを希望します。殺害についてですが、これは前述の団体の察知を防ぐため、定期的に、長い時間をかけて行うべきでしょう。殺害手段や遺体遺棄の場所については追って提案します。
ベルリン、1961年05月20日国家安全保障省
第25局
承認する。団体構成員抹殺のため、専用の人員を配備し、作戦は穏便に行うものとする。
貴君の健闘を祈る。署名:コンスタンティン・マーダー将校