SCP-1513-JP

登録日:2018/06/09 Sat 20:46:17
更新日:2022/12/23 Fri 21:32:15
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我々側が任務を遂行する準備は、常に出来ています。



SCP-1513-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「標準周波数50Hz地域」。オブジェクトクラスはKeter。

オブジェクトの概要

まずはSCP-1513-JPとはなんぞやというところから始めよう。
SCP-1513-JPはISTL*1より東日本に存在する電線路であり、コイツが送電した電力で動く照明が不定地点不定期に異常性を起こす。
異常性を起こした照明(SCP-1513-JP-1)を視認するとドイツ民主共和国に対して愛国感情を抱くようになり、並行して反日感情を抱くようになる(SCP-1513-JP-2)。
といっても、日常生活に影響を及ぼすほどの力はなく、せいぜい匿名掲示板、もしくは同じ親独反日思想を持つ人が周りにいた時に心情を吐き出すくらいである。
ちなみに、異常事象は民家の照明、それも独身の人の家に起きる確率が高い。

異常事象が確認された際、直ちに機動部隊つ-5("電灯処分業者")が送り込まれ、適した記憶処理をSCP-1513-JP-2に施し、電力を落とすことでSCP-1513-JP-1の異常性を消失させる。

このオブジェクト群を財団が発見したのは2003/██/██のことであり、匿名掲示板での親独反日的書き込みが激増したことが財団の興味を引き、利用者の多くが東日本在住であったこと、また実験により異常性が判明した。

こんなもん収容できるはずがないため、とりあえずISTL付近の周波数変換所群を財団管理下に置いたうえでサイト-81KI群とし、周波数の変換を行うことでとりあず異常事象を東日本にとどめている。

なぜ東日本だけに異常性が起きているのか?

そもそも、電力の周波数についてご存知の諸兄はいられるだろうか?
電気には直流と交流という二種類の流し方があり、一般的に用いられるのは交流である。
交流は電流の向きが絶えず入れ替わり、一秒間に入れ替わる回数を周波数という。

かつて、明治時代の関東では直流送電を行っていた。しかし、交流が一般的になってきた情勢を見て交流に転換を決め、東京電燈は50Hz仕様のドイツ・AEG製発電機を導入し、1893年に浅草火力発電所を稼動させた過去がある。
一方西日本では、1888年創立の関西電燈が当初から交流送電を選択し、60Hz仕様のアメリカ・GE製発電機を採用していた。
この周波数が現在に至るまで流用されている。

さて、本題に戻ろう。異常性は50Hzの電力を流している電線に起こる。そのために明治から50Hz電力を用い続けている東日本にのみ発生し、財団は異常性を東日本にとどめるために周波数を管理下に置いた後も変換しているわけである。
なお、財団はこの異常性は導入されたAEG製発電機にあるとにらみ、調査を続けていた。

しかし、小規模なものも含め親独反日団体が存在しなかったかの調査が実施されるも、団体が多数存在したのは1959年から1989年の間のみと大きくズレが存在し、異常性の原因がAEG製発電機では無いことが判明。さらには団体の総数が1961年から徐々に減少していることがわかったものの、構成員の行方不明や時間がたち身元特定が困難を極めることから減少の原因は未特定のままになっている。

真相の発覚

2018/05/19、山梨県富士河口湖町は鳴沢村にある青木ヶ原樹海、そう自殺の名所であるあの樹海でパトロールを行なっていた地元自治体が、成人およそ3名分に相当する量の人骨を発見。警察の調査で発見地点の地下から約1██名分にも相当する夥しい量の人骨が発見された。すべては財団によって隠蔽され、捜査の結果1961年から行方不明になっていた親独反日団体構成員と推測された。死因は不明であり、財団は総力を挙げ捜査を進めている。

時を同じくして、財団ドイツ支部では要注意団体"東ドイツ国家保安省第25局"から発見された文書を研究していた。その中にSCP-1513-JPに関連する文書が発見された。以下はその文章である。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-01
ベルリン、1957年10月07日
国家安全保障省
第25局

私から、25局の目的に関するある提案があります。
我々25局の目的は、アノマリーを使用した諜報行為やサボタージュなどの国の利益になる工作です。生身の人間がそれをするよりも、アノマリーを使用すればより効率的に、より効果的に、そして犠牲者を最小限に抑えることができます。
ですが、たとえアノマリーを使用したとしても、目的達成のための犠牲は生まれてしまいます。また残念なことに、アノマリーの暴走による本来は生まれる筈の無かった犠牲が発生することさえあります。これら犠牲は組織に対する重大な損害となり得、また士気の低下も起こり得ます。
そこで私は、1つある提案をします――それは他国の人間を任務に用いるというものです。
我々の所有するアノマリーを使えば、事実の隠蔽はある程度なら行えます。そして利用された他国の人間の数がその「ある程度」であれば、私のこの試みは25局の存在同様に公になることはありません。
私の提案の実施をご検討いただければ幸いです。返信をお待ちしております。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-02
ベルリン、1957年10月10日
国家安全保障省
第25局

承認する。この提案は「プロジェクト・フライムート」として実施し、提案者のフークバルト・フライムートをプロジェクト指導者とする。
ただしプロジェクトは穏便に行うように。また、使用する他国民の人数は事実の隠蔽でカバーできる範囲内にすること。
署名:コンスタンティン・マーダー将校

ちなみに、第25局は1956年から1989年までの間存在していた、アノマリーの利用・研究を目的とする東ドイツ国家保安省の秘密部門である。
主な焦点は、スパイ活動、妨害行為、民衆のコントロールの変則的な適用であり、現在財団は残された文書を研究して、部局の実態や解体後も放置されたアノマリーなどの発見に役立てている。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-03
ベルリン、1959年03月02日
国家安全保障省
第25局

お久しぶりです、将校。プロジェクト・フライムートの進捗報告を致します。
先日、私はアノマリーの制作に成功しました。これは50Hzの送電線により運ばれた電力を使用した電灯――電灯にした理由は、先進国の都心・近郊部であればどの民家にもそれが存在するからです――を、別のアノマリーへと改変するものです。アノマリーへ変化した電灯を視認した人間は、ドイツ国への愛国心の強い人間となり、それと同時にその人間の母国への誠意を失います。
そして私は、プロジェクト・フライムートの実施国として日本を選択しました。日本はドイツ製発電機の導入により、フォッサマグナの西辺より東と西で周波数が異なっており、導入がなされた東側はドイツと同じ50Hzです。標準周波数として50Hzを採用している国家は、他にも中華人民共和国などがありましたが、国家面積が狭く、人口が多く、そして送電網が充実しているという点で、中華人民共和国などの国家ではなく日本を採用致しました。
後日、プロジェクト・フライムートを東日本にて実施致します。報告があれば追ってメッセージを送信します。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-04
ベルリン、1959年03月03日
国家安全保障省
第25局

了解した。
署名:コンスタンティン・マーダー将校

文書 01#: 補遺1513-JP-1-05
東京、1959年05月07日
国家安全保障省
第25局

お久しぶりです、将校。プロジェクト・フライムートの進捗報告を致します。
東日本での25局エージェントの増産には、今のところ成功を維持しています。決して表に出すことはありませんが、彼らはドイツ国への深い誠意を内面に秘めています。そして既に私は、彼らが形成した親独・反日団体との接触に成功しています――我々の指示さえあれば、彼らはいつでも行動を起こすことが出来るでしょう。
既にいくつかの人員は、ドイツ国へ渡航済みです。私としては、数週間後にそれら人員と25局職員とを合流させる予定です。またそれ以外の人員の渡航も現在計画しており、基礎戦術学の継承も試みております。
我々側が任務を遂行する準備は、常に出来ています。未達成の任務があれば是非私にご一報ください。

ドイツへ送られ行方不明となっていた親独反日団体はフライムート氏によって率いられ、冷戦などの東ドイツによる作戦に用いられたと思われる。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-06
ベルリン、1961年05月16日
国家安全保障省
第25局

こんにちは、将校。ご多忙中お手数をおかけしますが、プロジェクト・フライムートに関するある提案を私から致します。
現時点で、東日本におけるエージェントの増産進捗自体には異常は見られていません。ですが増産された人員、そして形成された団体の数は目を瞑っておけるものではなくなってきており、またプロジェクト・フライムートの主導者であるフークバルト・フライムートの権力も、団体増加に正比例するように拡大しています。
調査資料にもある通り、日本において超常組織が存在していない訳"ではありません"――JOICL*2や東弊重工、更には財団や世界オカルト連合などの危険性の高い組織も存在しています。彼らの情報網であれば、プロジェクト・フライムートの存在はそれほど時間が経たないうちに認知されるでしょう。そしてそれは、同時に第25局の存在の判明を意味します。
私は、プロジェクト・フライムートの凍結、およびその主導者であるフークバルト・フライムートの抹殺を提言します。彼は最早、我々の同志ではなく、我々の前に立ちはだかる障壁となっています。情報漏洩の可能性だけでなく、その軍事力から謀反した場合の被害も甚大なものとなるでしょう。
「戦勝こそ美徳」とする人間は、最早このドイツには不要と考えます。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-07
ベルリン、1961年05月17日
国家安全保障省
第25局

承認する。フークバルト・フライムートの抹殺のため、専用の人員を配備する。
署名:コンスタンティン・マーダー将校

この文章からはフライムート氏ではなく、フライムート氏を快く思わない第25局の誰かによって書かれた文書であることに注意されたし。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-08
ベルリン、1961年05月18日
国家安全保障省
第25局

将校の快い承諾に感謝申し上げます。配備された人員は、すぐさま日本に向けて渡航させます。
また追加で提案なのですが、フライムートが過去接触していた団体構成員の抹殺も提言します。ドイツ国への忠誠心は我々側にも必要ではあるものの、盲信は返って逆効果となり、またその勢力およびフライムートへの忠誠から、フライムート殺害後の反乱が予測されます。
そのため私は、団体構成員殺害のための人員を追加で日本へ渡航させることを希望します。殺害についてですが、これは前述の団体の察知を防ぐため、定期的に、長い時間をかけて行うべきでしょう。殺害手段や遺体遺棄の場所については追って提案します。

文書 01#: 補遺1513-JP-1-09
ベルリン、1961年05月20日
国家安全保障省
第25局

承認する。団体構成員抹殺のため、専用の人員を配備し、作戦は穏便に行うものとする。
貴君の健闘を祈る。
署名:コンスタンティン・マーダー将校

追記・修正は東日本でお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1513-JP - 標準周波数50Hz地域
by SOYSOYSOY
http://ja.scp-wiki.net/scp-1513-jp

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最終更新:2022年12月23日 21:32

*1 糸魚川静岡構造線、詳細は各自調べていただきたいが、要はフォッサマグナの西側にある断層である

*2 日本生類創研の英語表記「Japan Organism Improvement and Creation Laboratory」の事。ハブページの企業ロゴにも書かれている公式な略称である。