SCP-3450

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SCP-3450 - (2019/04/07 (日) 00:38:46) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2019/03/16 Sat 00:20:32
更新日:2020/12/12 Sat 12:50:32
所要時間:約 10 分で読めます







いきなり、1人のWiki篭りが茂みの後ろから飛び出した! ハハハ、デデデは言った、貴様に我がナンバーワンの子分、アニィ・ウォルターは倒せまい!アニィは追記・修正してカービィの食欲を減退させたけど、カービィの食欲は想像以上に強くてアニィへと走っていって吸い込んでしまった!カービィがアニィを吸い込んだあと、カービィはデデデを追記・修正してペンギンに変えてしまった。カービィはペンギンを食べておいしいと思った。





SCP-3450はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト
オブジェクトクラスはSafe。

項目名は『OC DO NOT STEAL(オリキャラをパクるな)』。


概要

SCP-3450は…まあざっくり言えばまさに「冒頭の通り」である。
より詳しく説明すると、『星のカービィ』シリーズのファン・フィクションの形式をとったテキストファイルであり、
当初██████████.netというサイトに投稿され、読者による多数の報告に続いて財団エージェントから発見されている。

で、このテキストファイルはかつて読者が創作し、既存の架空物語に登場させた1体のオリジナルキャラクターを
デデデ大王が子分として引き連れ、それをカービィがおいしくいただいたあと、デデデを倒すという定型に従って進む。
SCP-3450が同一のオリジナルキャラクターを1回以上登場させた事例は確認されていない。

…という説明しか書かれていないが、それだけならよくわからんけどチープな文章で終わりである。
ここで実験記録を読んでみよう。

実験記録

ここでひとつ念頭に置いてほしいのは、
このオブジェクトの研究担当は経験の浅いリベラ次席研究員であるということである。

1回目 - 魔法のユニコーンプリンセス、シュガーコート

いきなり、1匹の美いユニコーンが茂みの後ろから飛び出した! ハハハ、デデデは言った、貴様に我がナンバーワンの子分、魔法のユニコーンプリンセスのシュガーコートは倒せまい! ユニコーンはカービィにキャンディ魔法のビームを撃ったけどまだ少し体力が残ってて死ななかったからキャンディに変わらなかった。するといきなりカービィはシュガーコートに走っていって吸い込んでしまった! カービィは彼女を飲みこんでデデデにキャンディレーザーを撃ち始めた。うわあああ、デデデは言って逃げたけどレーザーが当たってグミデデデに変わってしまった。カービィはグミデデデを食べてすごくおいしいと思った。

カービィが相手の能力を解析したとかでも何でもなく、「単にシュガーコートの技が弱かった」だけで済まされるあたりがチープである。
シュガーコートはリベラ次席研究員が幼少期に創作したキャラであり、文体もリベラ次席研究員がシュガーコートを生み出した頃の文体を真似ているとこの時点では推測していた。

私はこれから子供時代の 作品をもっと掘り返すのではなく、SCP-3450の異常性の限界をテストするための特別設計の下に、新たなキャラクターたちを執筆しようと考えている。今後はSCP-3450の各実験に先立って、前記キャラクターを主人公とする短編小説1編の構成を行う。

この結果を見たリベラ次席研究員は、幼少期の思い出をバラされることへの恐怖感…ではなく、
実験を行うためのちゃんとしたオリキャラの制作に挑む。

そんなリベラ次席研究員の決意。

話は逸れるが、これは私が財団研究者として初めて公式に配属されたオブジェクトだ! 長い道のりの第一歩であることを願う。

2回目 - メタフィクション作家ジェニファー・ハーウェル

2回目のオリキャラはこれ。

ジェニファー・ハーウェル、29歳の作家。極めてメタフィクション的な物語の主人公であり、自身が架空の存在であるという自覚を持っている。自身の存在を構成しているテキストとの直接交流によって現実を修正することが可能であると記述されている。

まあどこの世界でも最近流行りの第四の壁を突き抜ける創作キャラ。デップーちゃんが白ウォズに宿ったと捉えればわかりやすいだろう。

いきなり、1人の女が茂みの後ろから飛び出した! ハハハ、デデデは言った、貴様に我がナンバーワンの子分、ジェニファー・ハーウェルは倒せまい! ジェニファーは鉛筆を取り出してこのお話に「カービィは岩につまずいて怪我をした」と書いた。いきなりカービィは岩につまずいて怪我をした! ジェニファーは笑ったけれど、彼女が笑っている間にカービィは走っていって吸い込んでしまった! 彼女を飲みこんだ後、カービィは文字が自分の周りにいっぱいあることに気付いた! カービィは俺が岩につまずいて怪我をしたって言った所を消すて、「カービィはマキシムトマトを食べて元気になった」と書いた。そしてカービィは俺が2行目でデデデの話をしたすぐ後に「死んだ」と書いたからもうデデデは死んでいてカービィは勝った。

初手で倒さないから…めだかボックスのオールジョーカーズ相手だったらもうそれで命取りですよ。
にしても気合!入れて!書いた割には文体は変わらず、どうやらこの定型は変化しないであろうことが察せられる。悲しいかな。

3回目

サイード・カーン博士、62歳の物理学者。極めて経歴過多なコーネル大学の教授であり、粒子物理現象学を専門とするノーベル賞の受賞者。原資料においては、量子重力の現代的発展を大学院レベルに要約した38ページ分の独白を行っている。
もはやカービィを倒すことになんの関係があるのかわからない。一応リベラ次席研究員はカービィ実体の知性を確認したかったようだが…。

いきなり、1人の男が茂みの後ろから飛び出した! ハハハ、デデデは言った、貴様に我がナンバーワンの子分、サイード・カーンは倒せまい! 男は黒板を取り出して方程式を書き始めた。とっても科学的なことがいっぱいで、いきなりカービィは頭が痛くなってきた! でもカービィは目を閉じてカーン博士を吸い込んだ。彼を飲みこんだ後、カービィはスーパースマートな科学的な脳を手に入れた! カービィは“プロトン”みたいな大きな物理学の言葉を言って粒子ビームを撃った! ビームはデデデに当たってボスを倒した。

やっぱりね(レ)

で、リベラ次席研究員のコメント。

どうして違う結果が出ると予想したのか自分でもよく分からない。


そしてその後。





更なる検査でも、私たちがまだ知らないことは何も得られなかった。戦って、食べられて、コピーされて、お終い。私たちが有意義な実験を使い果たしたか、或いは作家としての私がまずい行き詰まりに入ったかだ。これについて判断を下すのは、次回の実験で何を登場させるかを考えてからにしよう。





またしても不発。この物語は私を追い込み始めているようだ — 他の配属先でも、私は以前ほどには貢献できなくなっているらしい。まだ事実とデータをしっかり処理することはできるが、水平思考が難しくなっている。少しの間休憩して、心の元気を取り戻そう。きっと、この不愉快な二次創作のための有用な実験をもう一つ考え出すには十分な時間だろう。





ラリー・プロッター。新しいキャラを考えるのに2週間費やして、思いついたのはラリーパクりプロッターだけだ。

私は一体どうしたんだ? もうこれが単なるスランプだとは思えない。むしろもっと… スランプの種が残っていないかのようだ。この物語が私の考え付くべきものを全て、何もかも残らなくなるまで吸い尽くしているように。私は書くことも、働くことも、考えることもできない。私のオリジナリティが滑り落ちていくのを見守ること以外には何もできない。

このクソ忌々しい物語にはもううんざりだ。このクソ忌々しいピンク玉野郎にも、このクソ忌々しいペンギンもどきにも、このクソ忌々しい一行ごとに出て来る“いきなり”にもうんざりだ。もう一回だけ頑張ってみよう、それでも結果が出なければ… どうしようか。

リベラ次席研究員は当然ながら、このいまいましいピンクだまの二次創作だけが仕事ではない。
というより、このオブジェクトが他のオブジェクトと比較して単独でも任せやすいからついでにやらされてるという面は大きいだろう。

しかしそのオブジェクトによって、明らかにリベラ次席研究員は「想像力」「思考能力」「知性」「勤労意欲」といった悉くが食い尽くされている。
というより、人間が前向きに生きるために必要なすべてが、カービィに吸い込まれていると言えよう。


そして彼女は何も思いつかなくなった。


サイト管理官は、リベラ次席研究員に財団からのクビを通告した。



申し訳ありません、ヴァレリア。貴女の幸運を祈っています。




不可解な点

SCP-3450の実験ログはかなり省略されているらしく、リベラ次席研究員はかなり多くの実験を繰り返したことが想像できる。
ということは、それを読めばこのオブジェクトの異常性は

  • 読者が以前創作したキャラクターをカービィが食べる
  • そのキャラクターを創造できるだけの知性や創作に関係する意欲もカービィが食べる

という点が容易に推察できるだろう。特に二点目がリベラ次席研究員にとっては致命的で、
リベラ次席研究員の場合は仕事そのものとして創作活動をやっていたから勤労意欲まで吸い込まれてしまった。

にもかかわらず、だ。
この部分の異常性は単なる補遺で、それも「匂わされている」にすぎない。

補遺 2017/05/11: SCP-3450は繰り返し読まれた後にのみ発現する副次的な異常効果を持つことが確認されています。詳細については文書3450-01で閲覧可能です。

なぜ、報告書の説明にしっかり書かれていないのだろうか?
まるで、関わった人がみな、それを書ききる意欲が減退してしまったかのようである。





関連項目

今回は、創作にまつわるオブジェクト特集である。

SCP-732 - The Fan-Fic Plague (熱狂創作病)

SCP-732はスッゲームテキダゼ!!!!機動部隊Ω-7アベルのケツをケッテやったwwwwwwwwwww

ということで、真面目に書くと文章が脈絡とまとまりのない物語になる病気である。
ぶっちゃけ報告書よりもTale『チャウダークレフ』を読んだほうがよほどわかりやすい。

SCP-826 - Draws You into the Book (*ほんのなかにいる*)

間に創作物を挟むとその中に入れるブックスタンド。

ただし、創作物の中でブックスタンドを見つけないとそのままモブになってしまう。

SCP-4028 - La Historia de Don Quixote de la Mancha (ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ伝)

ドン・キホーテ本人がSCPだったよ、という衝撃の展開。
ただし実在人物とかではなく、デップーちゃんに時代錯誤の騎士道精神が宿って狂った感じのキャラ。
悪と巨人と魔法使いは許さない。おじぎのほうを倒せよ(第一巻だからしょうがない)

SCP-020-KO - 작가의 벤치 (作家のベンチ)

公園のベンチ。飲み物と白紙を置いておくと小説を書いてくれる。
内容は飲み物次第。

SCP-1001-JP-J - 夢見の星

現象系。財団職員の夢の中に星新一が現れ、「感想が聞きたい」と言い、新作ショートショートのネタを語ってくれる。
日本支部の第七図書館には、今まで語ってくれた作品の全てが収められてるという。行きてー!
なお、読み専の職員は喜んでいたが、書き手をやってた職員は「この人のネタには勝てねえ」と筆を折ってしまった。


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