SCP-4689

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SCP-4689 - (2019/10/10 (木) 23:17:22) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2019/10/10 (木曜日) 22:41:56
更新日:2023/11/10 Fri 18:10:28
所要時間:約 6 分で読めます





知ったことか、時には勝利が必要だ。


SCP-4689はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスNeutralized
メタタイトルは「ライオンってなぁに?」。

概要

SCP-4689は見たところ普通のライオンの群れ。老若・雄雌合わせて16頭からなっていた。
見たところ普通と言ったが、正直なところコイツの異常性は「存在すること」のみ。
知ってのように、ライオンは2037年に絶滅しており、すでに世間一般では認知していない人間も多い。21世紀にリョコウバトが見つかるようなものである。
実際、SCP-4689はライオンを知らない人間に発見されているのだ。

具体的な発見経緯はと言うと、2143年3月にアフリカ南部にあるアンゴラの孤立地域にて、農夫数名が「毛むくじゃらのチーターに襲われた」という通報をしたのを切っ掛けに見つかったというもの。そりゃまあ知らなければ雄のライオンがそう見えるのも当たり前であろう。
各種メディアが「ライオンはまだ生きていた!」と報じかけたが、財団が遺伝子改造したハイエナの死体を使ってその報道をフェイクニュースに仕立て上げた。なんか諦めずにあれこれ言い続けそうな雑誌がいくつか思い浮かびますね…

特別収容プロトコル

で、財団…もっと言うなら倫理委員会はこのいるはずのないライオンたちをどうするかの判断に迫られた。

最初は野生に返すことが考えられた。彼らは存在以外全く異常ではないのだ。
しかし、世界はすでにライオンの絶滅を受け入れていた。(一瞬広まりかけたとはいえ)今再び現れるのはどう考えても不自然だし、何かあった時に対応できるこちらのノウハウもほとんどなくなっているだろう。
人間だけではなく、かつて生態系においてライオンが占めていた部分はチーターやハイエナに取って代わられている。
やはり彼らは正常な世界に解き放つことはできない。

さらに収容しているにあたって、SCP-4689を構成するライオンの成獣は皆高齢化してきていたし、そもそも数がこれだけしかないのだから、繁殖させたとしても遺伝子的な限界でどちらにせよライオンは長く持たず再び絶滅してしまうことは明らかだった。

…結局、SCP-4689の全個体は2150年10月をもって安楽死された。
倫理委員会はこれが最も人道的な手段だったとみなしている。
これをもってSCP-4689はNeutralizedとなったのだった。存在することだけが異常だったものが存在しなくなったため、現在特別収容プロトコルは無し。
百年の時を経てどういうわけか復活したライオンたちだったが、もう世界は彼らには生きていけないところになっていた。残念の極みである。

追記・修正は昔の動物図鑑を見返しながらお願いします。



















…という内容の報告書が、オハイオ州の五大湖のそばにある動物園の倉庫から見つかった。
その裏には近くの財団サイトの電話番号が書いてあった。
そして、それはこう書いてあった看板に貼りつけてあった。

子供が「ライオンってなぁに?」と訊ねる日が来たなら、それは悲しむべき日です

財団がこの動物園を調べたところ、どうもこの中で時間が弄られたらしいことが分かった。
ただこの文書を残すためには多少周りを巻き込んでしまったようで、園内の時計は全部バラバラだったし、この倉庫の周りの植物が異常な生え方をしていたし、トイレの個室で「時間的腐敗現象」なるものが発生していた。トイレの一個室だけ異常に時間が進んでしまって劣化し果てたということだろうか。

結局何なのコレ?

ライオンが絶滅した未来から送られた、ライオンの絶滅を阻止するための文書と推測できる。
もちろんこの記事を建てている現在ライオンは絶滅していない。ただ野生種は絶滅危惧種であり、かつてはアフリカ~中東~インドにわたって広く生息していたのだが、現在はアフリカにポツポツと・インドにちょっとだけが居るのみとなっている。
どうやらこのままだと、ライオンは2037年に絶滅してしまうらしい。

現代の最寄サイトの番号と上記報告書を知っていることから送ってきたのは未来の財団職員、または財団の情報を知っているなんらかの組織の一員。しかも局地的・物理的な過去改変を起こせる強力なパワーの持ち主とお見受けする。未来ならそれくらい普通にできるのかもしれないが。
送られた目的もなにか複雑なものというわけではなく、看板の内容からしてただ寂しかったのだろう。ライオンと言ったらみんな知ってる百獣の王、一番強い動物。それを動物園でも未来永劫見られない、子供に見せられない虚しさは何事にも代えがたい。
でもやったのがもし財団職員ならかなり大きな規律違反な気もする…CK-クラス起こしてる可能性が高いぞ?

ともかくこの文書を知った現代の倫理委員会は新たな議題を立ち上げるべき、とされた。
すなわち「2020年代初頭、財団の権限は絶滅危惧種の動物を保護することまで含むべきか?」である。
これが通れば、2037年に絶滅してしまうはずだったライオンがその運命から逃れられるかもしれない。
よかったね送ってきた人。よかったねライオン。よかったね未来の子供たち。

懸念事項

しかし、そう上手くいかない可能性も考えられる。

まず最も現実的なものとして、このライオンを保護する提案が通らない可能性。
財団はあくまで異常なものを確保・収容・保護する組織であり、ライオンは少なくとも現在はアノマリーではない。このまま生息数が減ってついに絶滅してしまうとしても、それは自然の摂理だとみなされる。保全するなら従来の環境保護・動物保護団体がやればいい。
悲しいことだが、財団の仕事ではない…そう判断されることは十分考えられる。
あと、さんざん終わりかけてる財団世界の130年後までの正常な存在保証が得られるならライオンくらいいなくなっていい、みたいななりふり構わない活用法を取られるかもしれないし。

また、仮にこのままライオンが絶滅してその上でSCP-4689が発見された場合でも、そこまで問題にはならないという見方もある。
シーラカンスは1938年に生きているものが発見されるまで、恐竜と同時に全て絶滅したと思われていたのだ。他にも記憶に新しいところでは、1940年台に絶滅したと思われていたがさかなクンさんがきっかけの一つになって再発見されたクニマスがある。
つまり、種自体の知名度は別として、絶滅判定された生物が時を経て再発見されるのは珍しいことではあるが異常ではないのだ。
だからこの文書の警告があったとしても、現在の人間の判断が未来を変えない可能性がある。


とはいえ、作者は冒頭の通りコレはハッピーエンドである旨のコメントを残しているので、暗い方向に考えすぎず希望を持っていい、と思いたい。

追記・修正は実は弱ってきてる百獣の王をいたわりながらお願いします。

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