SCP-1677-JP

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SCP-1677-JP - (2019/11/01 (金) 10:00:20) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2019/10/31 (木曜日) 23:29:47
更新日:2023/12/03 Sun 20:58:35
所要時間:約 10 分で読めます






確かに金を取るためのものだけど、そういう使い方は想定してなかったと思うよ。



SCP-1677-JPはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスEuclidからのSafe
メタタイトルは「スペース・ジャンパー」。

概要

SCP-1677-JPはある条件を満たすことで発生する現実改変
なんか危険そうだが、そうでもない。むしろこの現実改変は起こしている側からしたら目的ではなく手段なので、そうそう危険なことは起こらないと思われる。
なぜなら、SCP-1677-JPの発生条件は以下のようなものだからだ。

  • 消費者金融「長嶺株式会社」に債務を負っている…つまり金を借りている債務者が
  • 全く返済しないまま返済期限を1週間過ぎる

そう、借金の取り立て。現実改変してまで揺すりに来るとは財団世界のサラ金は恐ろしいものである。
しかし借金の取り立てなんてむしろしばしば物騒な何かを伴うイメージがあるが、一体なにをされてしまうのか。その内容を見てみよう。

1.毎日午後5時(日本標準時)、債務者に一番近い扉の債務者から見て反対側にモンゴロイドの男性人型実体が出現する。
  SCP-1677-JP-1と指定されるこの人は青いアロハシャツを着て、サングラスを掛けている。
2.SCP-1677-JP-1が扉をノックし、声を荒げて債務者の名前を呼ぶ。
3.債務者が応答した場合、SCP-1677-JP-1は返済を督促してくる。ここで返済を約束するか、応答しないまま30分経過した場合SCP-1677-JP-1は消失する。

(#▼Д▼)<○○さーん!(ガンガン)○○さーん居るんでしょ!?

…つまり、絵に描いたようなコッテコテのチンピラが出現して取り立てに来るだけ。
直接こっちの財産を現実改変で差し押さえて来るとかじゃないんだ…こういう取り立ての人材も確保するのが難しくて自動化しました、とかだろうか。こんなことができるならさすがに他にもっとうまいやり方あっただろと思わざるを得ないが。
というかSCP-1677-JP-1にその場で返済するとかできないのか。あくまで様式的(婉曲表現)な督促および返済を約束させる機能しかないらしい。実に回りくどい。

あれ?出現して消えるだけだし現実改変要素少なくない?と思うかもしれないが、普通はこれで終わりなのだ。債務者が家にいたとかなら。
問題は上の2.の部分、「扉をノックし」「債務者の名前を呼ぶ(正確には債権者に声が届く)」という点。
この二つが困難な状態だった場合、これを可能にするように現実改変が発生するのだ。いやだからそんなことできるんならもっといい取り立て方あったでしょうよ。

実験記録

SCP-1677-JPの異常性の確認のため、SCP-1677-JP-1には反応しないよう指示されている債務者を用いてしゅみですとかクソザコ怪人みたいな実験が行われた。

#001

実施方法: 債務者1名をサイト-8104の広場に設置したパイプ椅子に座らせ、その約30 cm右に木製の開き戸を設置する。

結果: 17:00(JST)、SCP-1677-JP-1は開き戸の債務者とは反対側に出現し、開き戸をノックし始めた。17:30(JST)にSCP-1677-JP-1は消失した。

壁がなくても律儀にどこでもドア状態の扉の裏に出てきた。想像するとコントじみたシュールな光景である。
もう直接債務者に食ってかかればいいのにこうなるとは、本当に一番近い扉の裏に出てくるだけという例外を考えない甘い設計だったようだ。



#003

実施方法: サイト-8104内の私道にて、債務者1名を自動車の運転席に乗せて走行させる。

結果: 17:00(JST)、自動車が突如停止する。この時、内部の物体や債務者も同時に停止した。直後、SCP-1677-JP-1が運転席側の扉前に出現し、ノックを開始した。17:30(JST)にSCP-1677-JP-1は消失した。

車のドアも扉に含まれるのはいいとして、走ってるままじゃノックできないからってご丁寧に運動エネルギーや慣性を飛ばして止めてくるのか…
そうじゃなきゃ完全に事故になって債権者がものを聞けなくなっちゃうからだろうか?



#004

実施方法: サイト-8156内の真空実験ユニットにて、防護服と酸素ボンベを債務者1名に着用させた状態で真空状態を作成する。

結果: 17:00(JST)、真空実験ユニット内部に地表付近のものとほぼ同組成の大気が出現する。また、真空実験ユニットの扉が薄く変形する。直後SCP-1677-JP-1が真空実験ユニットの外に出現し、ノックを開始した。17:30(JST)にSCP-1677-JP-1は消失した。債務者は実験後、ノックの音とSCP-1677-JP-1の声が正常に聞こえたと証言した。

なんか財団もムキになってきてない?空気がないから音が伝わらないということで空気を供給してきたし、扉が厚くてノックの音が伝わらないからか扉を薄くしてきた。



#005

実施方法: 5名の債務者をサイト-8104の標準実験ユニットに入れる。

結果: 17:00(JST)、5体のSCP-1677-JP-1が標準実験ユニットの扉前に出現し、同時にノックを開始する。この時出現したSCP-1677-JP-1はいずれも同じ外見や声であり、扉の大きさに対する人数の多さからノックができない個体が出現した。17:30(JST)にSCP-1677-JP-1は消失した。

(#▼Д▼)<○○さーん!(ガンガン)○○さーん居るんでしょ!?
(#▼Д▼)<△△さーん!(ガンガン)△△さーん居るんでしょ!?
(#▼Д▼)<××さーん!(ガン…ガン)××さーん居るんでしょ!?
(#▼Д▼)<□□さーん!(…ガン…)□□さーん居るんでしょ!?
(#▼Д▼)<☆☆さーん!(……)☆☆さーん居るんでしょ!?



#006

実施方法: 債務者1名をサイト-8104の広場に設置したパイプ椅子に座らせ、その約30 cm右に高さ10 cmの木製の開き戸を設置する。

結果: 17:00(JST)、身長約10 cmのSCP-1677-JP-1が開き戸の債務者とは反対側に出現し、開き戸をノックし始めた。17:30(JST)にSCP-1677-JP-1は消失した。この後類似の実験が行われたが、SCP-1677-JP-1が出現する最小の扉の高さは10 cmだった。

(#▼Д▼)<○○さーん!(コンコン)○○さーん居るんでしょ!?

大きさや数は問わないらしい。想像するととんでもなくシュールな光景である。
これをスルーしなければならない債務者が気の毒でならない。



#011

実施方法: サイト-8104の大型実験室内の小型実験ユニットに債務者1名を入れ、内部のクレーンによって小型実験ユニットを吊り上げる。

結果: 17:00(JST)、ターボファンエンジン型ジェットパックを装着したSCP-1677-JP-1が小型実験ユニットの扉の前に出現する。SCP-1677-JP-1はジェットパックによってその場でホバリングし、ノックを開始した。この時、ジェットパックによる騒音は通常よりも小さかった。17:30(JST)にSCP-1677-JP-1は消失した。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
(#▼Д▼)<○○さーん!(ガンガン)○○さーん居るんでしょ!?
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

足場を出現させればいいじゃん…なんでんなもん持ち出してまで浮く必要があるんだ…



発見経緯及び特別収容プロトコル

SCP-1677-JPの存在はとある警察署に1週間の間に4件の「見知らぬチンピラが借金の督促にやって来た」という通報と7件の「不審者が突然消失した」という通報があったことが発見につながった。
この警察署に潜入していたエージェントが通報者の家で確認していたところ、まさにそこでSCP-1677-JP-1が出現したことで異常が明らかになった。エージェントは通報者にAクラス記憶処理したうえでSCP-1677-JP-1を近くのサイトに移送しようとしたが、30分経って消失してしまったことで失敗した。おそらくここでひとまずのEuclid指定がなされたと思われる。

このあとこの警察署の管内で2件SCP-1677-JP-1の出現を確認できたのだが、その際「長嶺株式会社」という名がSCP-1677-JP-1から発せられたため当該企業を調査することになった。
すると、この消費者金融から金を借りている債務者の一人が超常技術者でありSCP-1677-JPを起こした人間だということが明らかになった。その本人によるとどうやら長嶺に脅されて作ったらしく、SCP-1677-JPはAIを搭載したアンドロイドであるSCP-1677-JP-1の出現を伴う自動的な現象だという。こんなことができる人間でもそうなるまでに落ちぶれることがあるのか…あとSCP-1677-JP-1が機械的な振る舞いしかしないのもこれで説明できる。機械だったのだから。
しかし幸いにも長嶺株式会社自体は要注意団体とかではなく、「この会社への借金を返さない者への取立人自動召喚効果」を脅して掛けさせた、ということらしい。事態はそんなに深刻ではなかったようだ。
それがなぜ取立人だというのに督促はするが取り立てはせず、債権者本人ではなくその至近の扉裏を出現基準点にし、無駄に高度な現実改変をしてでもノックの音と督促の声を届けようというクソプロジェクトになってしまったのかは分からない。発注の時点でこれだったのか、作った先述の技術者が借金を返せないのも納得の無能だったのか…

というわけで財団は長嶺株式会社を買収。SCP-1677-JPが一般に発生しないよう債権を無効化し、社員に記憶処理を施した。また作成者ともいえるパラテック系技術者は財団に研究員として雇用された。こういう異常の作成者本人が普通に財団に招聘されるのは珍しい印象だが、そういう人材が捕まらないばかりか敵対的なのが当たり前ないつもの財団と比べるとめでたいところだろう。有能だといいね。
これにてSCP-1677-JPの異常性は完全に財団の制御下に入ったため、Safeクラスに再分類と相成った。

現在は、その異常性が継続していることを確認するために債務者のDクラスがスクラントン現実錨のついた二重の収容室に収容されている。このDクラスは毎日夕方に30分だけ怒鳴られながら扉をドンドンされるのをガン無視し続けるだけの割と平穏な生活を送っている…のだろうか。

補遺

時は21世紀、宇宙にあるオブジェクトや要注意団体の宇宙進出が増加してきていることから、財団は月面基地を建てることにした。
この時、SCP-1677-JPの担当博士からこのような提言がなされた。

本計画に、以下の手順でSCP-1677-JPを組み込むことを提言致します。

1.月面基地の建設が完了次第、債務者数名を月へ移送する。
2.基地内部に宇宙服を着用した債務者全員が入った状態で、17:00(JST)までに入り口のエアロックを除く全ての扉を開く。
3.月面にSCP-1677-JP-1が出現したことを確認したら、基地内の酸素濃度を確認する。その後、17:30(JST)にSCP-1677-JP-1が消失するまで待機する。

この手順により、本来発生するであろう大気運搬コスト(特に、窒素の運搬コスト)を大幅に削減することが可能になると思われます。SCP-1677-JP自体も既に完全に財団の管理下にある為、利用価値は十分あると思われます。

そう、実験#004では真空状態の実験室に音を通すためにSCP-1677-JPは空気を発生させた。これを利用すれば、月面へ空気を運ばなくてよくなるのではないか。
現在の国際宇宙ステーションでも空気の確保や運搬は大変で、生存に必須な酸素はもちろん空気の大部分を占める窒素も運んで行かねばならない。酸素の方は水の電気分解や過酸化物でできた固体燃料から供給することもできるが、窒素は必要量が多いのにどうしようもない。
そこでSCP-1677-JPを使えばどうなるか。
実験#004で発生した空気は地球地上のものとほぼ同じだし、実験#003からして現実改変が「債権者が話を聞けなくなる」状態に繋がることはないのではないか…つまり一度SCP-1677-JP-1を呼び出してしまえば、基地全体で生存に支障がない程度の空気を発生させることができるのではないか、という提言だ。

財団の会計部門はこれに対して「人員が増えるので打ち上げ費用は増えるけど、全体的に見れば削減できる予算はオブジェクトを利用するというリスクを考えても十分」と賛成し、倫理委員会もこの審査を通し、O5も賛成多数で計画にSCP-1677-JPを導入することが決まった。実験#004の類似実験が21回行われ、SCP-1677-JPの信頼性も補強された。
そして月面基地と空気タンクが建設されたのち、債権者のDクラス3人を月に送ってSCP-1677-JPを発生させた。

(#▼Д▼)<○○さーん!(ガンガン)○○さーん居るんでしょ!?
(#▼Д▼)<△△さーん!(ガンガン)△△さーん居るんでしょ!?
(#▼Д▼)<××さーん!(ガンガン)××さーん居るんでしょ!?

結果は大成功で、月面基地と空気タンクに地球のものと同じ空気が充填された。

消費者金融がコスト(借金滞納)を減らすために作らせたオブジェクトが、人類の最前線を守る財団のコストを減らしてくれたのだ。
世の中何が幸いするかわからないものである。


追記・修正は無借金状態でお願いします。

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